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『こんなマリみては……いやじゃないかも“ここはグリーンウッド編”』

1月1日

トゥルルル トゥルルル トゥルル ガチャ

祐麒「松平さん!」

カチッ ツー……

瞳子母「瞳子ちゃん、電話、誰? お友だち?」
瞳子「あ、な、なんでもない! まちがい!」
瞳子母「あらそう。
 祥子さまのお母さんのおせち料理たべない? おいしいわよ」
瞳子「うん」

ガタ……

ツー ツー ツー

祐麒「……」
福沢母「どうしたの?
 まあ! 祐麒ふられちゃったの!?
 かわいそう、でも初恋は実らないものだっていうし、めげないでね祐麒!」
祐巳「こらこらこらこら!」
福沢母「なに? あたし何かいけないこと言った?」

ガラッ ピシャ

祐巳「祐麒!
 (そういうとき人がとる行動は、走るか寝るかのどちらかであろう)」

1月4日

祐巳「で、そのときひいたカゼがなおらず、正月からこっちずーっとうなり続けて、いまだ病床にあるというわけ」
柏木「な……なるほど」
祐巳「始業日までには学校に戻るっていいはってるけどね。
 ようやく、姉としての信頼を取り戻したと思っていたのに……。
 あなたが、あなたが余計なことをしたばっかりに!!」
柏木「あんただ、あんた!
 余計なこと言ったのも、したのもあんただよ!
 人に全責任押しつけてんじゃねーよ!」
祐巳「フビンな奴……」
柏木「しかし、どういうつもりだ瞳子ちゃんのヤツ。
 黙って切るなんて」
小林「ほんとに祐麒に脈があるのですか?」
柏木「と思ったんだがなー」
祐巳「しょせん、あなたみたいな3歩あるけば両手にひとかかえっていう、人外魔境の女ったらしが、祐麒みたいな男の純情を理解しようなどと無理な話だったんです」
柏木「あーうるさいっ!!
 錯乱してる場合じゃないだろ、紅薔薇のつぼみ」
祐巳「……それにしても、なんとかしてやらにゃならないだろーしなー……」

1月6日

花寺男子A「おーす、久しぶり!」
花寺男子B「よう、元気だったか!
 なあ知ってるか?
 福沢が例のお嬢様にとうとうアタックしたらしいぜ」
花寺男子A「えっ、だってあの女たしかお姉さま一筋じゃ……」
花寺男子B「それが、元旦早々ふられたんだと」
花寺男子A「さすが、福沢先輩だなー」

花寺男子C「それにしても、黙ってきられるというのはひどい……」
柏木「やっぱ、おれが瞳子ちゃんに直接あたるしかないんだろうな……」
花寺男子C「そりゃ責任問題だもんなあ」
有栖川「お節介した先輩としてはねえ」

ドカドカ

有栖川「祐ちゃん来たよ!」
花寺男子C「えっ!?」

バン

祐麒「先輩っ!!」
柏木「お、おうっ、なんでえっ」
祐麒「松平さんの住所おしえてください!」
有栖川「祐ちゃんラブレターでも書くの?」
祐麒「……」

ポン

祐麒「その手があったか!」
柏木「ちょっとまて!
 おまえまさか直接押しかけるつもりか!?」
祐麒「何度電話しても誰も出ないんです。
 他に方法がないじゃないですか!」
花寺男子C「だっておまえ、ふられたんだろ?」
祐麒「まだ、ふられてません!
 おれはまだ何も言ってないんだ!
 (なのになんで、なにが「ごめん」なんだ)
 結果が同じであるにしても、このままあきらめるわけにはいきません!
 彼女に気持ちを伝えて、ちゃんと断られないかぎり、まだ終わったじゃないんです!」
小林「なるほど、おまえの気持ちはよくわかった。
 しかし、いきなり女性の家に押しかけるのは非常識というものだぞ」
祐麒「じゃ……どうすれば……」
小林「学校があるじゃないか」
有栖川「ああ!」
小林「校門前なら彼女が朝夕必ず通るというわけだ」
祐麒「そうかよーし」

どやどや

花寺男子D「……福沢、おれたちは感動したぜ。
 がんばれよ! おれたちも応援するぜ!」
祐麒「先輩!」
花寺男子D「あたってくだけろ青春だ!
 おしておしておしまくれー!!」

「この話は、あっというまに学院中に広まり、多くの花寺生の感動を呼んだ……」

花寺男子C「問題は、その幼なじみですよね。どんな奴なんですか?」
柏木「ああ、細川可南子っていって……。
 おれはよく知らねえんだけど、瞳子ちゃんちの近所に住んでて、瞳子ちゃんちのおフクロさんが仕事で家を空けがちだったから、子供の頃はよく細川んちに預けられたりしていたんだ。
 いってみりゃ家族同然ってわけだ。
 そんで、小学校時代なんかは瞳子ちゃんになんかあると必ず細川がでてくるわけよ。
 瞳子ちゃんも細川のあとくっついて歩いてたみたいだし。
 中学に入っていきなり瞳子ちゃんと大ケンカしたけども、それも一時の話だった……」
花寺男子C「あの、それじゃ……福沢に見込みは……」
小林「ないかもしれんな。
 が、今の福沢ならたとえ目の前が地雷原でも突き進むであろう。
 好きにやらせてやれ。
 過保護」
柏木「つられたんだよ、あの紅薔薇のつぼみに!」

祐麒「カゼも完治した……行くっ!」

1月9日

カラーン コローン

有栖川「なんでいないのー?」
柏木「休みかな……」

1月10日

陸上部監督「こらーっ、福沢ー!
 きさま昨日の練習をさぼったと思ったら、今日も早退するつもりか!」
祐麒「用があるんです!」
陸上部監督「許さーん! あっまてっ!
 逃がすな陸上部員!」
陸上部員A「福沢〜!」
陸上部員B「監督はおまえにまかすって言ったろーがーっ!!」

どべしゃ

陸上部監督「なんだ、きさまらは!」
馬の足会A「我々は、最近結成された"福沢を応援する馬の足会"だ!」
馬の足会B「福沢の恋路を邪魔する者をけり倒すことが会の目的だ!」
陸上部監督「なにを〜」
馬の足会A「さあ! 今のうちに……あら」

有栖川「今日もいないね……」
柏木「妙だな、他に出口はないし」

1月11日

花寺男子E「あいつ、まだやるきかよー」
花寺男子F「女子校通いかー……」
花寺男子E「噂じゃ、相手つきあってる女がいるんだって?」
花寺男子F「……あいつがしつこいのは知っていたけど……」
花寺男子E「女運ないから……」

有栖川「どうだった? 松平さんちの電話」
柏木「バツ。
 おふくろさんもいるハズなんだがなー」
有栖川「何か他の手段を考えた方がいいかもね。
 祐ちゃんだって、そういつまでも6限サボるわけにいかないだろうし」
柏木「……おまえは別に一緒になってサボらなくてもいいんだぜ」
有栖川「先輩は?」
柏木「おれはサボりじゃねえよ」
有栖川「……先輩!
 ピンチピンチ!」

先生「あなた、一昨日頃からここでこうしているようですけど、本校に何か用ですか?
 学校は?」
祐麒「あの、友だちを待ってるんです」
先生「名前は?」
祐麒「松平……」

だ────っ

柏木「あっぶねえ……!」
リリアン生徒A「ねえねえ松平って……。
 うちのクラスの瞳子さんのことかなあ」
リリアン生徒B「あの人休みだよ。
 腕の骨折って入院してるんだよ」
祐麒「骨折ってどうして!?」
リリアン生徒A「えーとたしか、冬休みにスキーに行って転んだとか」
祐麒「入院先は?」
リリアン生徒B「えー、知らなーい」

1月14日

がちゃ

柏木「入院先わかったぞ!
 明日は病院が休みだそうだから……。
 入院先なら見舞いという名目で堂々とたずねていけるもんな!」
有栖川「しかも、確実!」

1月16日

看護師「松平瞳子さん?
 今朝、退院されましたよ」

ひゅ────……

柏木「……忘れてたぜ。
 福沢の無双の運の無さを……!」

瞳子母「思ったより早く退院できてほんとよかったわねー。
 とりあえず一息入れてお茶にしましょ」
瞳子(きっと、バチがあたったんだ。
 怒っただろうな、あの人……。
 だけど、今、あの人と話なんかしたら……)
可南子「じゃ、おばさま。今日は仕事休んじゃったんだ?」
瞳子母「もちろんよ!
 いつも可南子ちゃんとお母様にお世話になりっぱなしだけど、こんな時ぐらい瞳子ちゃんのそばにいなきゃ!
 ……おばさん、可南子ちゃんがいてくれてほんとよかったと思ってるの。
 おかげでおばさん安心して働けたわ。
 瞳子ちゃんもとってもいい子になってくれたし、いっそうちの子になってくれたらなー、なんて」
可南子「えー、でもわたし一人っ子だからなあ。
 大丈夫ですよ、おばさま。
 わたしがちゃんと瞳子ちゃんの面倒はみるから」
瞳子母「たのもしいわ」
可南子「ね、瞳子ちゃん」

トゥルルルル

瞳子母「あら電話……」
瞳子「はい……!」

ガチャ

可南子「どうしたの瞳子ちゃん。いたずら電話?」

バタバタ

ツー ツー

祐麒「……小林ビンセンくれ!」
有栖川「ひえ〜、もう、こわいもんなしだ〜」

1月18日

「松平さん

 ケガをして
 入院したと聞いて
 おどろきました。
 具合はどうですか?
 君にどうしても会って
 話したいことがあるので
 来週の月曜に君の学校まで行きます。
 校門の近くにいてください

 必ずいてください」

1月21日

ザッ

瞳子(なんで、なんであの人がこんなところにいるの!?)

有栖川「やっぱいないじゃん」

祐麒「……」
可南子「そんなところにいると、この学校の先生に叱られますわよ」
祐麒「!」
可南子「あら、奇遇ね」

有栖川「げっ、直接対決だ〜」
柏木「なんで細川が……!?」

瞳子「!?」

可南子「この学校、男女交際に親の許可書がいるのよね」
祐麒「なっ何でここに……?」
可南子「瞳子ちゃんをむかえに。
 片手じゃ何かと不自由だからね。
 瞳子ちゃんが登校できるようになってからずっとむかえに来てるのよ。
 だから、こんなものをよこしたって無駄だからね」
祐麒「それ……!
 ……松平さんは、読んでいないのか?」
可南子「読ませるわけないでしょ。
 見つけたのがわたしだったからよかったようなものの、瞳子ちゃんのお母さんが見つけてたら……瞳子ちゃんが困ると思わなかったの?
 あれこれ追求されたり、責められたりするのは、瞳子ちゃんなんだよ。
 瞳子ちゃんのお母さんは、わたしびいきだからね。
 わたしの家とは、これからもつき合ってかなきゃいけないんだし。
 余計なことすると、瞳子ちゃんの立場を苦しくするだけよ」

有栖川「全然聞こえないけど、結構シュラ場……」

祐麒「……でも、おれ、松平さんが好きなんだ」
可南子「瞳子ちゃんはわたしのだよ」

祐麒「!?」
瞳子「……」
祐麒「……」
可南子「帰ろう、瞳子ちゃん」
祐麒「……松平さん!
 ……!
 なんで逃げるんだ松平!」
瞳子「……」
有栖川「祐ちゃん……」

瞳子(わたし、逃げてるのかな……。
 あの人から?
 違う、何から……。
 これ以上好きにならなければいいんだよ。
 今のままでいい。
 おかあさんとも可南子とも争いたくない。
 忘れてしまえ。
 忘れてしまえ。
 二度と会わなければ大丈夫。
 意気地がなくて、泣き虫で。
 いつもいつも、逃げてばかりいたよ。
 それじゃ、何もできないんだって、わかったはずなのに!)
可南子「気にすることないよ、瞳子ちゃん。
 わたしが瞳子ちゃんのこと一番よくわかってるからね。
 これからだって、ずっと、瞳子ちゃんのこと守ってあげるから。
 瞳子ちゃんは、今までどおりでいいんだよ」
瞳子「でも、わたし、彼のこと好きなの」
可南子「……そう……それで……?」

1月22日

祐麒「……」

花寺男子F「なー、どーなったんだよー。アリスー。」
花寺男子G「やっぱダメだったのか!?」
花寺男子H「なにー、おれうまくいく方に千円はっちゃってんだぞー!」
有栖川「うるさいな! 静かにしてよ!」

花寺男子I「ついに決着か!?」
花寺男子J「いやそれが、どうもよく……」

花寺男子K「この雨がな……」
花寺男子L「何があったんだ、昨日!?」

チッ チッ チッ

花寺男子N「じゃーねー」
花寺男子M「またな」

ポン

花寺男子N「!?」

花寺男子C「門の前に女の子がいるぞ!」

祐麒「!!」

だっ

有栖川「祐ちゃん、カサ!」
瞳子「!!」
祐麒「……」

有栖川「ほらほら、あーもうほんとに」

瞳子「……このあいだと、電話のときと、その前の電話のときのこと、ごめん……」
祐麒「う、うん」
瞳子「……今日、先生のおこられた」
祐麒「えっ……あっゴメンおれ……校則のこと考えなくて……」
瞳子「可南子ともケンカしちゃった」

先生(昨日、校門前で大声をあげていたのは、あなたが欠席の間3日わたって校門の前にいた男子学生ですね?
 どういう間柄です?)
瞳子(3日……!?)

祐麒「……えっ……」
瞳子「おかあさんは、ゆうべから口きいてくれない……でも……。
 でもね、わたし、あなたに会いたかった……!
 それで、もっとちゃんとした人間になりたくて、わたし……!」
祐麒「大丈夫!
 おれがついてるよ……!」

「その日、不幸の星のもとに生まれた、地道な少年が勝ちとった一世一代のハッピーエンドのおかげで。
 花寺学院は、何年かぶりに近隣住民からの苦情をうけることになった」

「その後、約2ヶ月の間、花寺学院で猛威を振るった流行語があったことはいうまでもない」