兎肉発見!

私の住んでいる町は小さいので、スーパーマーケットなども小さく、品揃えもあまり良くありません。たまには違うお店へ行ってみようと思い、ある日近郊の町にある同系列の大きな店舗へ行ってきました。Sainsbury's(セインズブリーズ)という大手スーパーです。大人でも迷子になってしまうくらいの大きなお店で、品揃えも豊富です。

早速お肉コーナーへ行って探してみました。すると、あるではないですか、パックに入った兎肉が!「Fresh Boneless Rabbit Portions」とラベルがついた、ちょっと小さめのパックです。早速買ってみました。

一見鶏肉に似ていますが、それより赤みがかっています。一体どの部位のお肉なのかは書いていませんが、同じくらいの大きさの肉が2つ入っているので、モモ肉かもしれません。包丁で切ってみると、思ったより固めで少々筋っぽい手ごたえがあります。

このパックに書いてある基本的な調理の仕方によると、「ローストする場合は200度に温めたオーブンで30〜35分加熱」、「カセロール(casserole)する場合は炒めてから170度に温めたオーブンで1時間〜1時間半加熱」とあります。カセロールについては「いよいよ料理」の最後の方で少し触れていますが、イギリスでは大きな耐熱の陶器製のなべという感じで、オーブンに丸ごと入れて加熱することができます(イギリスのオーブンは大きいので、余裕で入ります)。

前のコラム「いよいよ料理」でご紹介しているレシピのように作ってみました。今回は兎肉の分量が少なめだったので、その分野菜を多めしました。今の季節(初夏)、かぶは手に入らない(と思う)ので、かぶ無しで作りました。「シチューにかぶ」がホビット流儀なのかもしれませんが、かぶは入れなくてもまったく構わないと思います。

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いよいよ試食です。気になる兎肉のお味ですが、何となく鶏モモ肉に似ています。しかし食感は、「美味しんぼ」風に表現するなら「ぷりぷりしていて弾力があり、それでいてまったりと舌の上でとろけていくように柔らかい」といった感じでしょうか。

はっきり言って、とっても美味しいです!!!

切る時に気になった筋っぽさは全くありません。やはり「じっくり時間をかけて煮込む」ことがポイントなのでしょう。このぷりぷりさは、鶏肉にはちょっと真似できないのではないでしょうか。鶏モモ肉ならこの柔らかさに対抗できると思いますが、兎肉の持つこのぷりぷりさはほとんどありません。やはり野原を元気に駆け回る後ろ足だけのことはあります(自分の中ではこの兎肉はモモ肉だと決めつけてます。他にお肉がついていそうな部位って見当たらないですし)。

こんなわけで、すっかり兎肉のファンになってしまいました。このレシピを、どうか正式に「偽サムの香り草入り兎肉シチュー」と呼ばせて下さい。

しかし難を言えば、大きな店舗に行かないと買えないことと、値段が高いことでしょうか。500gあたりの値段を割り出して比較してみると、次のようになりました(全てSainsbury'sでのお値段。1ポンド190円で計算)。

  • 鶏モモ肉・・・3ポンド39ペンス(約645円)
  • 鶏ムネ肉・・・5ポンド75ペンス(約1090円)
  • 兎肉・・・7ポンド90ペンス(約1500円)

うーん、高いです、兎肉。残念ながら頻繁には買えません。これからも鶏肉で代用することが多くなりそうです(もちろん鶏肉も美味しいので大好きです)。

古本屋で買ってきた少し昔の(80年代の)イギリス料理の本には兎肉のレシピがいくつも紹介されています。しかし最近では、例えば新聞の料理コーナーなどで兎肉のレシピを見かけることはほとんどありません。兎料理はあまり一般的でなくなってきているのかもしれません。

最後に、「J.R.R.トールキン 或る伝記(評論社刊)」より、興味深い記述を引用します。1944年に、第ニ大戦のため南アフリカに進駐している息子のクリストファーに宛てた手紙です。

“四月二十五日、火曜、「貧弱な講義をし、ルイス兄弟とC・W と(白馬亭で)半時間会った。芝を三面刈り、ジョンに手紙を書き、『指輪』の始末に終えない部分と格闘した。満月近い頃になると月の昇るのがそれぞれの晩にどれだけ遅くなるかということ、そしてウサギのシチューはどうやってつくるのかということだ!」”

兎肉シチューのレシピが「始末に終えない」というのが微笑ましくもおかしいです。トールキン教授はどうやってレシピを見つけたのでしょうね。多分、奥さんのエディスさんに訊いたんじゃないかなあ・・・と、私は思っています。


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