環境汚染化学物質

地球は、太陽系第3惑星として誕生し、太陽からの距離、質量、大気組成(原始地球には、酸素はありませんが、藻類による光合成により酸素が大気にできました)など、生命が出現する環境に恵まれており、地球上に約25億年前に生命が誕生しました。その後、生物は、時間をかけて進化し、人類も、環境に適応しながら進化してきました。

人類は、メソポタミア、エジプト、インダス、中国の4大文明に代表される地域では、当時としては、高度な科学技術を用いた生活基盤を築きました。その後、イギリスで始まった産業革命では、生産活動に伴い、二酸化硫黄の大気汚染や、住宅の集中による下水道の整備の遅れから、発疹チフスの疫病が広まりました。この頃から、環境汚染が始まったと考えられます。

近代の戦争における環境問題では、毒性の強い環境汚染化学物質であるPCB(ポリ塩化ビフェニール)は変圧器、潤滑油として、兵器に多用されました。

また、サリン、タブン、マスタードガスなどの毒ガスが戦争に使用されました。

放射能汚染では、広島、長崎への原子爆弾投下が典型となっています。また、最近では、

湾岸戦争、イラク戦争などでは、劣化ウラン弾の汚染が指摘されています。

ベトナム戦争では、枯葉剤として投下されました農薬の中に不純物として含まれていたダイオキシンが戦争後に問題となりました。

日本での公害問題は、室町時代の製鉄に伴う大気汚染に始まり、昭和に入ってからは、4大公害に代表される公害問題がありました。すなわち、九州の水俣のチッソの工場排水に含まれていた有機水銀汚染、富山、新潟でのカドミウム汚染(イタイイタイ病)、三重の四日市の石油コンビナートから発生した硫黄酸化物による喘息被害がありました。これらは、高度成長に伴う副産物として発生したもので、その後、いわゆる公害国会で、環境保全に対する取り組みがなされました。

化学物質とは、化学的方法によって人口的に(副産物などそのものの製造を目的としない場合も含めて)合成された物質であり、世界には、2000万種類もあると言われています。

環境汚染化学物質を大別すると、

無機物質と有機物質に分類でき、それぞれ、スライドのように、分類できます。

また、分類ごとによく似た毒性を示すものもあります。

化学物質審査規制法(化審法)では、工業的に生産されている物質に限って、製造。輸入を禁止もしくは、制限している物質があります。

第一種特定化学物質は、毒性があり、難分解性で生物濃縮される物質が該当します。第二種特定化学物質は、第一種特定化学物質に比べて、生物濃縮がないものが該当しています。

また、指定化学物質は、これらの疑いがある物質です。

我国の大気及び水質において、規制されている代表的な物質です。産業界で、多用されている有害化学物質が規制の対象となっています。

環境で問題となる物質の単位は、ppm、ppbのオーダーが多く(ダイオキシン類ではppt)、微量な単位を取り扱うことになります。

未規制物質(生産量が多い物質を優先的に)に関して、汚染の現状を把握する必要があるため、環境中の有害物質の濃度をモニタリングして、目標値を設定しています。
環境汚染化学物質の特徴は、環境中で分解されにくく、その毒性が継続されること。濃度、長期曝露による慢性毒性を有していること。毒性が食物連鎖により生物濃縮されること。直接または間接的に生態系を変化させることです。
環境化学物質の生物への影響は、物質そのものの有害性が高く、生体が直接化学物質を取り込むことにより、影響を与える直接影響と、地球温暖化の主たる要因である二酸化炭素などのように、物質の生体に対する有害性は高くないが、生態系の変化等により、間接的に影響をうける間接影響があります。
化学物質の毒性は、毒性の発現期間により、毒ガスのサリン、シアンなどに代表され、短い時間で毒性が発現する急性毒性、静かな時限爆弾と言われ数十年後に肺癌を引き起こすアスベスト(石綿)などの慢性毒性とその中間的な亜急性毒性(ダイオキシン等)に分類できます。また、多くの化学物質は、急性毒性、慢性毒性をあわせ持っています。
化学物質の生体への標的臓器は、物質により異なっており、スライドのように毒性試験方法により毒性を識別することができます。当然、化学物質は、程度の差はありますが、単独の毒性をもつことは少なく、複数の毒性をあわせ持つことになります。

毒性の強弱は、スライドのように、半数致死量のLD50などを指標として使用します。この中で、ADI(一日許容摂取量)と、TDI(耐用一日摂取量)は基本的には、同意語ではありますが、ADIは化学物質を意図的に摂取した場合であり、食品中の添加物、農薬の場合に用いられ、TDIはダイオキシン類の評価の場合に用いられます。

左には、代表的な物質の毒性の強さを示していますが、ボツリヌス毒素Aは、LD50から計算しますと、人の体重を50Kgとすると 1グラムで900万人が死亡する毒性を持っていることになります。同様に、破傷風毒素は、600万人、ダイオキシン類で最も毒性が強い2.3.7.8−TCDDは20万人になります。
環境基準は、「維持されることが望ましい基準」であり、行政上の政策目標です。これは、人の健康等を維持するための最低限度としてではなく、より積極的に維持されることが望ましい目標として、その確保を図っていこうとするものでする。また、汚染が現在進行していない地域については、少なくとも現状より悪化することとならないように環境基準を設定し、これを維持していくことが望ましいものです。
 さらに、環境基準は、現に得られる限りの科学的知見を基礎として定められているものであり、常に新しい科学的知見の収集に努め、適切な科学的判断が加えられていかなければならないものです。
環境基準は、工業専用地域、車道その他一般公衆が通常生活していない地域または場所については、適用しません。
有害大気汚染に関わる環境基準についても、工業専用地域、車道その他一般公衆が通常生活していない地域または場所ついては、適用しません。
また、
継続的に摂取される場は人の健康を損なうおそれがある物質に係るものであることから、将来にわたって人の健康に係る被害が未然に防止されるようにするために、その維持又は早期達成に努める必要があるものです。
ダイオキシン類に係わるに関わる環境基準についても、工業専用地域、車道その他一般公衆が通常生活していない地域または場所ついては、適用しません。
生活環境の保全に関する環境基準は、河川、湖沼、海域に対して定められており、スライドは、河川の中でも、最も清浄な環境が求められている基準の例でする。
人の健康の保護に関する環境基準は、年間の平均値ですが、シアンは、最高値とされています。
有害性の高い物質については、基準値を定めず、検出されてはいけないとされています。
主に、農薬の環境基準です。
富山、新潟でのイタイイタイ病の原因となった金属で、現在でも、米の中に、微量含まれています。
融点が低く、やわらかく、加工しやすい金属であり、古くから産業面での使用が多く、鉛蓄電池に多用されています。最近の研究では、子供に対し、低濃度の曝露で、神経発達の危険因子になりうる可能性が指摘されています。
ヒ素元素は、色々な形態(化合物)をとりますが、三酸化ヒ素が最も毒性が強く、スライドに記載した毒性があります。ナポレオンが死亡したのは、毛髪の分析結果から、ヒ素中毒の可能性が推察されています。なお、ヒジキ等の海産物にも、ヒ素が含まれているようです。
クロムは、肺がんなどの発ガン性も指摘されています。
水銀は、金属ですが、常温で金属蒸気となるために、その取り扱いには、注意が必要です。
アルキル水銀は、水俣病に代表されるメチル水銀がありますが、金属水銀と比べて、格段に毒性が強い物質です。
トルエンは、インキ、塗料などの原料として使用されており、有機溶剤としては、最も産業界での使用が多く、代表的な化学物質の一つです。中枢神経抑制作用と嗜好性により、シンナー遊びに見られる急性中毒例があります。
トリクロロエチレンは、産業界においては、機械部品の脱脂洗浄溶剤として多用されています。よく似た毒性、性状を示す物質としては、テトラクロロエチレン、ジクロロメタンなどがあります。これらの物質は、塩素系有機溶剤と言われ、不適切な取り扱い等により、しばしば、土壌汚染、地下水汚染が問題となっている物質です。
ベンゼンは、トルエンなどと同様に、芳香族炭化水素ですが、その毒性は、再生不良性貧血などの血液の癌を引き起こすために、他の物質とは違った、より厳しい管理が求められる物質です。
セレンは、左に示すような毒性がありますが、人体に対しての必須元素であり、土壌中のセレンが極端に不足していた中国黒竜江省の克山地域では、多くの人が心臓病で死亡しました。
必須元素の例ですが、いずれも、過剰に取り込むと有害な物質であることは言うまでもありません。
有害物質の摂取方法は、図に示しますように、様様な経路がありますが、結局、汚染源を特定し、有害化学物質の発生を抑制することが重要であると考えられます。
備考:上記の一部は、安原昭夫著 「しのびよる化学物質汚染」を参考。