あとがき

 三熊野神社大祭。このお祭りは何百年もの間、明治維新,太平洋戦争等々の幾多の障害を偉大な先人達が乗り越え、子々孫々に伝えられてきた。そして、戦争が終わり、世の中が次第に復興し始めると、お祭りが唯一の楽しみであったのどかな時代が終わり、他の楽しみが蔓延する情報化社会に突入した。今思えば、これは、横須賀のお祭りにとって過去経験したことのない大変な障害であったはずである。皆が他の娯楽に走り、お祭りも次第に廃れていったかもしれない。確かにそういう兆候が見られた時期がなかった訳ではない。しかし、現在は廃れるどころか、多くの若者がこの土地に根付き、お祭りに参加し、そして、見事なお祭り文化を築きあげようとしている。

 ここに至ったのは、保存会の啓蒙活動もその一助を成したことは事実であると思う。しかし、それよりも何よりもこのお祭りが素晴らしいからである。この素晴らしいお祭りに参加する者は、お祭りを皆真剣に考えている。それが為に衝突することもあり、いやな思いをすることもある。そして、お祭りというものが、いやになりかけることもある。しかし、お祭り当日、祢里の上で奏でられる笛や太鼓に曳き手が調子を合わせて声を掛け、祢里を曳き、それと同じ調子で祢里が揺れる。こんな三位一体の様を見るとき、「ああ、やっぱりお祭りはいい」とつくづく思うのである。

「好きこそ物の上手なれ」という諺があるが、確かに好きであれば芸事も上達するし、好きでなければ続かない。しかし、好きなだけでも続けることはできない。幾多の困難を乗り越え、長い歳月にわたって受け継がれれてきた間には、先人達も並々ならぬ苦労したこともあったことと思う。そんな中でこの三社祭礼囃子を永年に渡って伝承、継承に労を尽くしてきた偉大な先人達に深く敬意を表したい。

 時代の波が以前よりも何倍も早く回り、人々の感覚も瞬く間に変遷していく。そんな世の中になり、この先、このお祭りも、もしかしたら廃れていくかもしれない。しかし、その場合にも、その次の時代にまた見直され、復興する時代が必ず訪れる。その時、跡形もなくなってしまっていない様に、お囃子を始めとしてお祭り文化そのものをしっかりと保存、伝承していかなくてはならない。まだ見ぬ未来の横須賀人が、我々と同じようにこの素晴らしいお祭りを実感できるように・・・  

 

追記

この記念冊子作成においては、そのほとんどについて故太田博明氏が書きとめていたものを参照し、作成致しました。氏は、諸々の事項を単に書きとめておられただけでなく、年毎に編集し、夫々が一冊の本の体をなして編纂されており、今、我々が見ても時系列的に非常にわかりやすくなっておりました。この資料のおかげで、この記念誌が完成できたといっても過言ではありません。この資料を拝見させて頂き、我々保存会も日頃の活動をこまめに書きとめ、しっかりと編集していくことの重要さを痛感致しました。

 故太田博明氏に敬意を表すると共に、大事な資料をお貸し頂いた氏のご家族に対しまして深く感謝申し上げます。

 

 

 

平成十二年十一月吉日

静岡県小笠郡大須賀町横須賀 三社祭礼囃子保存会

                               




※平成12年11月「伝統から芸能 そして お祭り文化の開花 熱き者達の50年」より
 


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