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中国語は面白い
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 これは簡体字を学問的に扱ったものではない。中国語の学習に欠かせない簡体字、これを何とかマスターしようとした努力の足跡をまとめたものである。 しかし、一簡字を総覧してみると、積み残しがあったり、行き違いがあったりするので、どうなっていくのだろう、という疑問が残った。それで一簡字に次いで、漢字簡化をさらに進めようとした二簡字の努力の足跡もまとめてみたくなった。廃案になったとはいえ、実社会の中では、まだまだ実用されている俗字が多い。二簡字を知っていることは、中国旅行にも役立つ。

         二簡字目次(部分)

  全体像を俯瞰し、かつ、記述中の参照項目を索引しやすいように、
 これまでの記事と、次回に記述予定の記事の目次を掲げておく。
   ローマ数字の部分をクリックすると、該当の記事が別画面で表示
  されます。


  二簡字  教養の簡体字        項   目

      I.                21                 二簡字とは
                     22        偏旁省略 (一) 第一表
           23                 (二) 第二表
     II.                24        一部取り出し
           25        草楷化字
     III.               26        一部消却 (一) 第一表
                       27                (二) 第二表
    IV.        28                  やどかりさん (一) 第一表
            29                                       (二) 第一表
     V.               30        やどかりさん (三) 第二表
            31                                (四) 第二表
    VI.              32        子亀君 (一) 第一表
            33                               (二) 第一表
  (予定)
   VII.              34        子亀君 (三) 第二表
                       35                               (四) 第二表
      VIII              36        新形声字 (一) 第一表
            37               (二) 第二表
  (以降未定)


         中国語は面白い--146      
     
教養の「簡体字」 (21)

M  二簡字とは  ー あすなろう君 ー
  


--- はじめにおことわり ---

 HSK や中検を受験しようとしている方は、混乱するといけないので、「教養の簡体字」(22) 以降は読まないでください。

* * * * * *


 第一次簡化方案から第二次案まで

 1949年の解放以後の中国における漢字改革の動きをまとめるとこうなる。解放以前の清代、民国時代にも漢字改革の運動はあったが、この際、それはおくとしよう。

1949年  中華人民共和国成立
1951年  毛沢東、文字改革を指示
1954年  国務院内に中国文字改革委員会成立
       漢字簡化方案(草案)
1955年   第一次異体字整理表公布
1956年  漢字簡化方案を国務院承認
1964年  簡化字総表 (類推簡化の拡大明確規定)

 その後、文化大革命の混乱で、しばらくこの動きは停滞したが、1972年頃から、活動が再開され、

1975年  中国文字改革委員会、第二次漢字簡化方案
       (草案)を国務院審議に提出
1977年  第二次漢字簡化方案(草案)発表
1980年  改訂の原則案提示ー全体討議
1986年  第二次漢字簡化方案(草案)の廃止と漢字の
       社会的使用の混乱是正に関する指示が出さ
       れ、正式に廃案とされた。

* * * * * *

 第一次漢字簡化方案(以下、「一簡字」という)が公布された後も、さらに文字改革を進める動きが継続された。この動きはいったん文革の混乱で中断されたものの、1972年から再検討が始まり、1977年にいたって、第二次漢字簡化方案(以下、「二簡字」という)の草案が示された。

 だが、発表された草案について、一簡字をさらに進めた簡化が必要であるということは認めるものの、この草案には、十分な社会的納得が得られそうもない点が少なからず見られるところから、当面この案を凍結して、改訂委員会を発足させ、さらに検討を続けることとした。

 しかし、草案発表から9年間、引き続き討論を重ねたが、甲論乙駁、意見不一(収拾がつかず)、1986年にいたり、結局、廃案とすることが決定された。

* * * * * *

 なお、二簡字方案(草案)の作成に、影響を与えたシンガポール華語の簡化についても、短く触れておこう。

 通商立国のシンガポールは、香港、マカオを始め、世界各国の華人との通商上、繁体字は不可欠な存在である。しかし、中国大陸での漢字簡化が進む中、「用簡識繁」の道を進めた。

【 ちょっと一言 】 台湾では繁体字を正字として使用しているので「正体字」という。2009年7月中旬に長沙で開催された中国共産党と台湾・国民党の定例対話「両岸経済貿易文化フォーラム」で、台湾側は「識正書簡」を提案したと報じられている。(朝日新聞 2009.7.29 )

 1969年にいたり、まず「簡体字表」を発布した。これは502の繁体字を簡化し、498の簡体字を定めたもので、慎重なスタートであった。

 この5年後の1974年、「502簡体字」の実施状況に自信を得たシンガポール政府教育部は、2287の簡体字を定めた「簡体字総表」を公布した。しかし、この中には49のシンガポール独自の簡体字が含まれており、大陸の簡化字との間に若干の齟齬が生じた。(シンガポールで中文の横書きが標準化されたのは、この年からである。)

 1976年、教育部は修訂本「簡体字総表」を出し、必要な調整を行って、中国本土で用いられている簡化字と一体化した。

 二簡字に影響を与えたのは、このうち、調整前に存在していたシンガポール独自の簡体字である。

* * * * * *


第二次漢字簡化方案(草案)の概要

ー あすなろう君 ー

 1977年12月20日の人民日報などの主要新聞に「第二次漢字簡化方案(草案)」が発表された。人民日報は翌12月21日から、二簡字第一表の簡化字 248字の試用を開始した。

 たとえば、さきに「無錫」の郵便切手 (1978) に、二簡字を用いた例を挙げたが、これもその一環であった。このような公的な印刷物にも印刷したほどであるから、街では二簡字が広く用いられた。いわく、


・・・・などなどである。これらは「白(酒)」、「(舞)会」(ダンスパーティー)、「(帮)助」(幇助)、「(副)経理」(副社長)、「(停)車場」(駐車場)の二簡字である。

 しかし、1978年7月にいたり、人民日報は二簡字の試用を終えて、一段落つけた。

 その後、9年間にわたり、甲論乙駁したものの、結局方案はまとまらず、廃案とされたことはすでに述べたとおりである。

 では、その二簡字の案とは、どんなものであったのか。

 二簡字草案は、第一表と第二表からなっていた。

 第一表は、すでに全国で使われている簡体字で、出版物でまず試験的に使ってみることを意図した248字、
 第二表は、一部地域、業種で使われているもの、実際に社会で使われている簡体字のうちとくに選んだもの、および、筆画が繁雑なもののうちよく使われる繁体字を簡略化して造字したものなどで、 605字を収めている。簡化偏旁、類推簡化を含めるとその数はさらに多くなる。

 第二表の簡化字については、さらに検討、修正が必要と認められるので、出版物等での試用は控え、社会的な討論に供して、広く意見を求めるとした。

* * * * * *

 「教養の簡体字」と銘打ってシリーズを始めた以上、二簡字草案はどんな簡化字を提案していたのか、実際に見ておかなければならない。
 

     
         中国語は面白い--147      
     
 教養の「簡体字」 (22)

N  二簡字 (1) 偏旁省略 (一)      
 


  第一次簡化字(以下、一簡字)と同じように、いくつかのグループに分けてみよう。

 一簡字では、
  A群ーかんむり・かまえをとってしまったもの、
  B群ーかんむり・かまえだけにしてしまったもの、
  C群ーへんかつくりのいずれかをとってしまったもの

に分けて詳述したが、二簡字ではこれらをまとめて「偏旁省略」として記述する。ただし、二簡字においては、第一表と、第二表との間には、その取り扱いにおいて格段の違いがあるので、その二つに分けてみる。

 (1-1) 偏旁を省略して簡化する。

 まずは、第一表 ( 一部、第二表を含む ) から見てみよう。    

 

<< 部、病、雪、私、貌 >>

 二簡字の中でも、とくに注目される簡化字である。これらはすべて第一表 に収められていたもので、このような大胆な簡体字が、すでに全国的に用いられていたとは、驚きである。もっとも偏旁を省略するといっても、「」と「」は「」と「」の古字(本字)で、もともとの字に戻ったことになる。

 とくに「」の二簡字は、「」の一簡字を見たときと同じ衝撃を覚えた。なんと「ふしづくり」が「部」の簡化字となる。これはまさにもう記号である。

 という風に、単純に説明したほうが分かり易いので、まずはそう述べたが、じつはおおざとを 「」 ( jie2 セツ) という「節」の古字に似せて、新しく造ったものである。だから、これは形態は偏旁省略ではあるが、実態は新造字なのである。

 この芽は、すでに「節」の一簡字(上掲)にあった。この一簡字は、まず、たけかんむりをくさんむりに簡化し、ついでつくりの左部を省略し、ふしづくりのみを残したが、このふしづくりの上部左に横線をのばして、かつてここに別の部分があったことを示唆した。だから、「部」の二簡字は、新造字のようではあるが、「節」の一簡字のつくりを横取りしたものである。



<< 幹部、病災、雪辱(耻)、私産 >>

 「」が「疒」(やまいだれ)になるのは、一簡字の「まだれ=広」、「がんだれ=厰」の流れ、「」が「雪」の簡化字とされるのは、雲、電などの一簡字の流れを引き継いだもので、大きな驚きはない。

 一簡字の先例

 「」はまさに記号化といえよう。あめかんむりをとって簡化した例は、一簡字ですでにいくつか見てきた。二簡字には、「雪」のほかに、「霹靂」がある。

(一簡字) 雲、電、霑 -- 雪、霹、靂 (二簡字)

 「」( xue3 ) の本字は「あめかんむりに彗」である。
雪辱 (中国語では「雪耻」( xue3 chi3 ) などに用いられる「雪」は、そそぐ、はらう、の意であるが、そのもとはこの「彗」( hui4 ) の意である。「彗星」(すいせい)は「帚(ほうき)星」をいう。「ヨ」が「雪の簡化字」であるとの記憶がある世代はいいが、後の世代では、もともともっていた意に戻りにくくなってしまう。記号化の運命といおうか。

 なお、「耻」のみみへんが、簡略化されているが、これは二簡字の簡化である(後述)。

【 ちょっと一言 】 なお、「恥」は第一次異体字整理表で使用停止とされ、「耻」が選用字とされている。

 「」( si1 ) も、「私」の古字である。やはりやどかりさんとするより、偏旁省略と単純に考えたほうが分かり易い。「私産」( si1 chan3 ) は、私有財産をいう。
 
 「」( mao4 ) もすでに述べたとおり、「貌」の本字である。つまり、これも本字帰りといえよう。

 「」も「」も、現代漢語通用字表にはない。二簡字では、これを通用字に復活させようと試みた。 




<< 殿、修、騰、雄、眉・嵋、媚 >>

殿 は左部分、修 騰 は右部分のみに簡化した。

は一簡字ですでに「月」をはずしている。

 「」(「肱」のつくり)( gong1 コウ、かいな)は、「肱」 ( gong1 二の腕、腕 ) の古字(本字)である。しかし、二簡字では、「肱」に戻らず、「」( xiong2 ) の簡化字とする方をとった。おそらく筆画の多い方の字を優先させたのであろう。「」は、現代漢語通用字表には記載されていないので、二簡字が廃案となったいまは、一般には使われていない。したがって、中日辞典などには収録されていない。




<< 修復、沸騰、雄偉、媚態 >>

 「」( mei2 ) は、「目」を省略して簡化した。「嵋」は「眉」に統合し、「」( mei4 ) は、つくりを眉の二簡字にして簡化する。

 「」は四川省にある峨嵋山(がびさん)に使われているが、二簡字が廃案になった今でも、「峨眉山」( E2 mei2 shan1 ) と書かれることが多い。

 なお、第二表 に規定される簡化字であるが、「楣・湄・鶥」( mei2 ) (それぞれきへん・さんずいに眉、[眉鳥])も「眉」の二簡字に統合される。「楣」(きへんに眉)は、門や入り口の上に渡した横木、まぐさ、「湄」(さんずいに眉)は、みぎわ、「鶥」([眉鳥])は、ホオジロの意。二簡字の世界では、これらの区別は前後の文脈に頼ることになるが、それにしてもそれぞれにふさわしいへんをつけた現在の漢字は、よくできているなと感じる。


 
  二簡字の特徴に、ある特定の単語に限り、偏旁を省略するというのがある。

 << 朦朧、蚯蚓、蝌蚪、[木斗][木共] >>

 「霹靂」( pi1 li4 へきれき)は、いずれもあめかんむりを省略して簡化することはすでに述べた。「朦朧」( meng long ) も基本的には月を省略して簡化した。「朦朧」には、いくつかの漢字が当てられているが、二簡字では、上記に統一した。

 「蚯蚓」( qiu1 yin3 みみず)、 「蝌蚪」( ke1 dou3 おたまじゃくし)は、いずれも虫へんを省略した。おたまじゃくしの親の蛙は、さすがにむしへんを省略していない。みみずもおたまじゃくしも、単語として二字の組み合わせで、すぐそれと分かるので簡化したが、蛙を「圭」にしたらどうなるか。

 だが、蛙もふつうは一字では用いず「青蛙」( qing1 wa1 ) というから、「青圭」でも通用するかも知れない。あくまでこのような俗字を使う人が、増えて行くかどうかにかかっている。後に述べることになるが、「螳螂」( tang2 lang2 カマキリ)もあるが、これも偏旁省略されていない。

 話はどんどんそれていくが、それでは「ボウフラ」はどうか。これはもうすでにこれ以上簡略にできないくらいの筆画の少ない字の組み合わせであるので、簡化対象にはならない。

 最初の2字が中国字で、後の二組が日本字である。字形が微妙に異なる。中国語の発音は jie2 jue2 である。これはピンポンにつぐよく考えられた漢字である。念を押しておくが、これはもちろん簡化字ではない。

 なお、蝶々は一簡字では「蝴蝶」( hu2 die2 ) と書くが、二簡字では「蝴」→「胡」(第一表)、「蝶」→[虫失](第二表 )に、それぞれ個別に簡化されている。

 「[木斗][木共]」( dou3 gong3 ときょう)の「と」はきへんを省略して簡化した。[木共] は元からきへん、てへんのいずれも用いていたが、二簡字ではてへんに統一した。

 ひとつ目は bi4 ji1 サージ、ふたつ目は ka3 ji1 綿サージの一種、カーキ色の二簡字である。これらは一簡字を経由しないと分り難いので、それをカッコ内に示した。

 この簡化手法は、いまのところ「[ロ加][ロ非]」、「[ロ馬][ロ非]」( ma3 fei1 モルヒネ)にまでは及んでいない。

 

【 ちょっと一言 】 中国語のコーヒー ( ka1 fei1 ) は、くちへんである。因みに「」は jia1 「」は bei4 と発音する。いずれも装飾品の一種で、前者は首飾り、後者は珠子である

     
         中国語は面白い--148      
     
 教養の「簡体字」 (23)

N  二簡字 (1) 偏旁省略 (二)      
 


  二簡字草案は第一表と第二表に大きく区分されており、第一表はすぐにでも実施してもよい簡化字を収録し、第二表には、特定の分野ですでに俗用されているが、社会一般化するには、社会的な合意を得る必要がある簡化字を収録していたことは、冒頭に述べた。

 二簡字草案の紹介に当たっては、その趣旨を生かして、第二表を第一表とは別建てとした。以下は第二表に掲げる偏旁省略簡化である。

 (1-2) 偏旁を省略して簡化する。

 第二表は、まだまだ検討を要する部類の簡化字である。これらの社会的な浸透度は、第一表より低い。しかし、それだけにこの中には、かなり大胆な簡化字が提案されていた。



<< (無)、既、没、酸・*、蜂・峰・鋒・烽 >>

 この中には、日常的に非常に頻繁に用いられる「」が含まれている。「既」の二簡字は、「無」の一簡字に酷似するので、字形に 注意!

 余談になるが、中国語の手書きのなぞなぞを見たところ、こう書いてあった。

冷水泡茶 -- 旡味

 さて、「既味」とはどういう意味か。辞書にあたってみたが見当たらない。中国語の老師にたずねてみようとメモしたが、そのすぐ下にこんななぞなぞがあったので、この謎が解けた。

尼姑頭上大花 -- 毫旡瓣(弁)髪(法)

 つまり、尼さんの頭に大きな花、とかけて、瓣(花びら)も髪の毛もない、と解く。→ まったく「弁法」(方法)がない。「毫既」ではなく、これはすぐ「毫無」(まったく・・・ない)の間違いだろうと分かった。

 結局、「」(「既」の二簡字)の手書きと思っていたのは、「無」の一簡字「」のつもりであったのである。そういえば、一簡字総表の注に、両字を混同しないようにとの言及があった。

【 ちょっと一言 】 「旡」は ji4 と発音するもとからあった漢字で、げっぷ、しゃっくり、を意味するが、現代漢語通用字表にはない漢字(つまり、いまではふだん用いられない漢字)であるので、厳密にいえば「やどかり」さんであるが、ことのほか重要な字であるので、あえてここに置いた。

 「既」→「旡」にともない、慨、概、漑 の三字もつくりを「旡」に簡化する。これらも 第二表 において提案されているものである。

<< 食既、憤慨、概念、灌漑 >>

 これを見ても、二簡字の草案がいかに急進的な案であったかがうかがい知れよう。「」の二簡字については、のちに改めてふれる ( 第一表子亀君)。なお、「食既」( shi2 ji4 ) は、皆既食をいう。なお、憤慨 ( fen4 kai3 ) の「忿」( fen4 ) は、二簡字である。(やどかりさん第一表で後述)

 これらの特徴的な二簡字の中で、とくに注目されるのが、「」である。毎日、毎日、何回となく目、口、耳にする字で、その影響は計り知れない。この場合も、「殳」( shu1 古代の竹槍)という字がもとからあったので、やどかり(後述)さんではあるが、やどかりといっても、「殳」はごくまれにしか目にしない漢字である。だから、これを「没」に乗っ取らせたわけである。 さんずいを省略して簡化したグループに入れた方が分かり易い。

 しかし、多くの人が指摘したのは、「設」との混同である。上記のように、「没」と「設の一簡字」は、字形が酷似していて読み間違えやすかった。では、どちらを変えるか。使用頻度から見れば「没」、音の近似性からいえば「設」( she4 ) であろう。それにごんべんよりさんずいを省略した方が、一画多く削減できる。しかし、社会的な浸透度が十分でなかったのであろう、「没」の二簡字案は、第二表 に含まれていた。議論の余地が大きかったのであろう。 
 

 

 << 没関係、沈没、炭蜂乳 >>

 周知の通り、「没関係」( メイクアンシー mei2 guan1 xi0 ) は、No problem 、ケンチャナヨ、マイペンライ、などの各国表現と並んで、よく使われる最重要表現である。

 「」は「没有」(メイヨー)で、「ない」をあらわし、「関係」は「重要性」をいう。「很有関係」はたいへん重要である、の意。「そんなの関係ねえ」の意味ではない。「大したことありません」あるいは「差し障りありません」くらいの意である。

 「」は、二つの音と意をもっている。「沈没」(chen2 mo4 )、「没収」( mo4 shou1 )、「出没」( chu1 mo4 ) などの「没」は mo4  「・・・ない」の「没」は mei2 である。なお、「」( [シ冗] ) は「沈」の一簡字である。

 「」、「」(やまいだれに氈j、「」、「」、「」(のろし)、「」(ほこ)は、へんを省略し、つくりだけに簡化した。「碳」([石炭])( tan4 ) は、炭素をいう。化学元素名では、いしへんを用いることが多い。したがって、炭酸、炭酸飲料には「碳([石炭]) 」を用いる。

【 ちょっと一言 】 たとえば「珪素」は「」( gui1 ) といい、アメリカのシリコンバレーを「硅谷」( gui1 gu3 ) と呼ぶ。

 なお、「蜂乳」( feng1 ru3 ) は、ローヤル・ゼリーの意。「王漿」( wang2 jiang1 ) ともいう。牛乳は「[女乃]」( niu2 nai3 ) というが、「蜂乳」は[女乃]でなく、「乳」を用いることに 注意!

 「」(やまいだれに氈j( suan1 ) は、だるい、痛い、の意であるが、いまは「酸」で代用されているので、統合されても問題ない。たとえば「酸痛」( suan1 tong4 ) (体が)だるくて痛い、「肩酸」( jian1 suan1 ) 肩こり、というのは、この意味での「酸」である。酸っぱい肩ではない。 
 



<< 得、鼓、解、漏、脳・瑙・碯・[*] >>

 「」、「」、「」はそれぞれ偏旁を省略して簡化した。簡化の手法自体は分り易いが、結果として作られた字が、「日/寸」、「十/豆」、「刀/牛」では、慣れないと異様に映る簡化字である。ここでとくに注意を要するのは、「得」のつくりが、「旦+寸」ではなく、「日+寸」と横棒が一つ省略されていることである。

<< 得意、解決、漏斗、脳袋 >>

 「得意」( de2 yi4 ) も「解決」( jie3 jue2 ) も、度肝を抜かれる簡化字である。得意の「意」は、後述するが、「乙」( yi3 ) の音を借りて簡化した子亀君である。解決の「決」は、一簡字で既述のとおり、さんずいをにすいに換えている。

 「」( lou4 ) は、さんずいを省略し、かつ、雨を二簡字にして(四点を二点に省略。後述)簡化した。前の三字に対して、この二簡字は、わりと元の字のイメージを維持していて、親しみ易い。「漏斗」( lou4 dou3 ) は、漏斗(じょうご)をいう。

 「脳・瑙・碯・*」( nao ) (*=[碯ー石+土]) は、脳の一簡字のつくりを以って一括して簡化した。上記の「脳袋」( nao3 dai0 ) は、「頭」の意。

 「瑪瑙」( ma3 nao3 メノウ) の「瑙」は「脳」の二簡字で置き換える。「」は「瑙」の異体字。「」は方言で「丘」の意味を持つが、多くは地名に用いられている。


<< 弱、能、滕・藤、渦・蝸・窩・萵、旋、候・侯 >>

 「」( ruo4 ) は、片方のみに簡化した珍しい例である。「」( neng2 ) は、へんを省略した。これもちょっとどぎまぎしそうな簡化字である。一見、突飛なように見えるこの簡化字であるが、しかし、この簡体字はかなり以前から実際に用いられてきていた。

 「」( teng2 ) は月を省略し、かつ、つくりの下部の「水」を「小」にして簡化した。同時に「」も統合した。 

 「渦・蝸・窩・萵」( wo ) の一簡字は、上記の二簡字にへんをつけた字である。それぞれのへんを省略して簡化し、かつ、一字にまとめた。「」( xuan4 ) は、やはりへんを省略した。

 「侯・候」( hou2 ) は、にんべん、ぎょうにんべんを省略し、かつ、上部をユからエに換えた。一画多くなる。多くの字で、一画でも減らす工夫を重ねてきているのにである。

 さらに、もうひとつ疑問がある。「侯」の古字・別体字に「厂+矢」、「危ーふしづくり+矢」があるのに、なぜそうしなかったのか。

 第一表で、いくつかの単語の偏旁省略を取り上げたが、第二表 にもいくつかある。主なものだけを挙げておく。

 

<< 鸚鵡、蜻[虫廷]、檸檬、彷徨 >>

 「鸚鵡」( ying1 wu3 オウム) は鳥を、「蜻[虫廷]」( qing1 ting2 トンボ)はむしを、「檸檬」( ning2 meng2 レモン)は木を省略して簡化した。「鸚」の「嬰」は、日本字の桜のつくりと同じく簡化された(第一表)。「青」、「蒙」の簡化字は、二簡字第一表 に規定されている。これらの二簡字については、改めて後述する。

 「彷徨」( pang2 huang2 ほうこう)は「[彳旁]」とも書くので、ぎょうにんべんを省略したと考えてよい。「ほう」は「旁」の二簡字(第二表)である。

  「[虫廷]」の「虫廷」の二簡字は、第二表に規定される「廷」の二簡字であるが、これは同時に「」、「」( ting2 激しい雷)の二簡字でもある(後述)ので、付言しておく。また、「廷」のえんにょうはしんにゅうに置換されているが、これも二簡字で規定されているものである(後述)。

 ミミズ、オウム、トンボなどが簡化されて、なぜ、「蛞蝓」( kuo4 yu2 ナメクジ)、「蝙蝠」( bian1 fu2 コウモリ)、「蜥蜴」( xi1 yi4 トカゲ)などが、簡化されないのか、おおいに疑問をもたれるところであるが、世間での俗字の普及が一般化しているか否かで分かれるのであろう。

【 ちょっと一言 】 実際には、むしへんを取った俗字が一部で用いられている実例を見たことはある。

 なお、「蜂」と「蝸」は、個別的にむしへんを省略して簡化されていることは、すでに上に述べたとおりである。

 

 上に掲げた「熊」、下に掲げた「角」、「事」は、二簡字である(後述)。

 白居易の有名な詩の一節「蝸牛角上争何事」は、二簡字ではこうなるはずだった。

  (2009.06.01)(2009.06.18改)(2009.07.04改)(2009.08.05改)(2009.08.07改)(2011.02.02改)
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