これまで公開した過去のコラム山梨自転車通勤普及協会山梨ラーメン紀行トップページサイトマップ/管理人について管理人のブログ



裏口から長野へ(甲府〜大弛峠〜信州峠) ('07/06/03)

 予てより計画していた、

 「自宅」→「大弛峠」→「長野県川上村」→「信州峠」→「自宅」

…という林道/県道のみ走行、国道を全く使わず長野に行って帰ってくるというサイクリングを敢行。

クリックすると大きくなります
県境付近拡大。オレンジ色が走った道。反時計回り。画像をクリックすると大きくなります。

 我々山梨県民は、長野県に行くにはR141で野辺山、もしくはR20で富士見に入るという手段が一般的。
しかし山梨の地図の北側を見ると国道以外にも2本、長野県に抜けている道があることに気が付く。それが“大弛峠”と“信州峠”だ。
僕は最近、ひょんな事がきっかけで自宅の北方に感心を持つことになった。以来少しずつ自転車による踏破を広げ、いよいよ今回の計画に至った。

 通過する大弛峠(「おお"TA"るみ」ではなく「おお"DA"るみ」川上村役場確認済み)は、標高が2360mで富士山五合目より高く、おまけに長野県側が未舗装のダートになっているという自転車にとっては(自動車にとっても)難所。ウチの標高が大体300mなので2000m登ることになる。

 使用した自転車は、何年も前にゴミ捨て場から拾ってきたMTB。手入れして普段通勤に使っている物。
ただし、この日の為にタイヤを軽い物に交換した。850g→400gなので2本併せて900gの軽量化だ。たった1Kg弱だがタイヤの慣性モーメントを抑えることで山道での足への負担が軽減される。ヘタに持ち物を減らして軽量化するよりも効率がよい。

 以下、今回の記録。時間と距離は大雑把。特に時間については写真を撮る度に小刻みに停まっていたのでもっと短縮できると思う。
なお今回は画像にマウスカーソルを乗せるとちょっとしたコメントが出るようにした。(いつもは面倒なのでしていないので。)

基本データ
・ 実走行距離:144.7Km ・ 時間:13時間30分 ・ 積立標高:不明、恐らく数千mは登ったのではないか?
持っていった物
・ 水分/食料(・ゲータレード2リットルペットボトル ・カロリーメイト2箱 ・ハチミツとクエン酸の特製ドリンク500ml・ドリンク剤100ml3本(タウリン2000mgの物) ・ぶどう糖1袋)
― 川上村までお店がないことが予想されたので多めに購入―
・地図 ・高度計 ・デジカメ ・お金
服装
・ 何を着て行ったらよいか悩んだが、出発が早朝という事と、道中の標高を考え防寒のため、短パンTシャツの上に長ズボンとトレーナを重ね着した。靴は普段履いている甲の部分がメッシュになっている軽いもの。ただし水には弱い。

 

■ 自宅 → 積翠寺 → 太良峠 → 帯那山
  [・距離:17km ・時間:7:00着 2時間]

 梅雨入り前の6月某日。朝4時起床。しっかり朝御飯(カレーライス)を食べ5時甲府の自宅を出発。
天候はやや雲があるが晴れ。意外なことだが太良峠への道のり、とくに要害温泉からのセメントの打ちっ放しの勾配10%以上もあろうかと思われる道ががこの旅の中で1,2番に辛かった。

 困った事に、旅の導入部分で既に『ムリだ、帰って出直そうか』『ここでこんなにキツイのなら大弛はムリだ』と真剣に思った。帯那山で一気に半分の高さを上ることになるのでキツイのは事実だがこんな弱気な事で行けるのか?
2、3日前から気になっていた腰痛もぶり返したり、昨晩3時間しか眠れなかったことが原因だろう。睡眠は大事だ。次回は別な道を検討しよう。
この「ロー」な気持ちは帯那山手前まで続いた。

朝日に浮か富士山 早朝の甲府盆地を見下ろす

 

■ 帯那山 → 弓張峠(水ヶ森) → 黒平峠 → 乙女高原 → 焼山峠 → 琴川ダム
  [・距離:40km(区間23km) ・時間:9:00時着 4時間(区間2時間)]

 クリスタルライン。帯那山登山口から先は未知の領域。いわばここからが旅のスタートだ。気分も復活。天気は曇り時々晴れ。快調に漕ぎ進める。

ここから先は未知の領域

 山道の木漏れ日の中を走っていると多少の登りも気持ちが良い。
途中の乙女高原ではトイレを借りた。綺麗なトイレで利用をお勧めできる。ここは昔スキー場だったという。標高は1600m。雪が降らなくて閉鎖されたらしい。

乙女高原にて ここがかつてスキー場だったとは

 さらに焼山峠を過ぎ4Kmほど進むと琴川ダムが見えてくる。5年前の地図には出ていないこのダム。こんなに作って本当に必要なのかな?

琴川ダム。昔の地図には載っていない。

・ キツネに遭遇
 この区間でキツネを見た。フサッとした尻尾。軽やかなステップ。チラッとこっちをみる警戒心にみちた目。間違いなくキツネだった。

 

■ 琴川ダム → 大弛峠
  [・距離:57km(区間17km) ・時間:11:00着 6時間(区間2時間)]

 ダムを抜け突き当たりを左に曲がる。ここから峠入口までの坂は道幅は広いが意外とキツイ。
そこを抜けると、いよいよ大弛峠入口だ。標高は1500m。800m登るだけと思うと気は楽だ。
「大弛峠まで14km」の表示。今後1Km置きにこのポストが出てくる。山梨県側はサービスがよい。(長野県側は何もない)

14Kmポスト

 撮影兼休憩をとりながら順調に進む。途中、野生のキツネを目撃したりおかしな形の山が見えたり、曇が多く遠くの眺めこそ見えなかったが変化に富み、富士スバルラインより楽しい。
それから数台の車は見たものの、自転車には一台も会わなかった。ある意味「快適」であったと言える。

・ 残雪発見
 2000mを越えたあたりで雪を発見。最初は土嚢が積んであるのかと思ったが雪だ。そこから先は当たり前のように残雪を目にする。至る所で湧き水が出ている。荒川の源流だ。すくって飲んでみたらつめたくて美味しかった。

6月の残雪にびっくり 荒川の源流となる湧き水

・ そして峠へ
 湧き水のせせらぎや鳥のさえずりを聴きながら登りつめて行くと車が沢山停まっている広い場所に出た。
大弛峠だ。ついに山梨と長野の県境に到達した。R20白州付近、R141清里付近に続く第三の県境(←勝手に定義)に着いた。周囲は人が多くザワザワしている。みな登山家だろう。

シャッターチャンスを狙っている山岳写真家 2360mで撮影

 ここは東に国師ヶ岳、西に朝日岳を経て金峰山と山登りの要所でもある。僕もせめて見晴らしの良いところまで出て一大パノラマを写真に収めたいところだが、今回の目的は“通過”だ。散策は別の機会にしよう。
汗で濡れたTシャツを着替える。道中僕を抜いてきたという御一行に話し掛けられた。いろいろ訊かれたが最後に『独りで孤独でしょ』と言われたので、『いえ、気楽ですから』とニッコリ答えた。

 驚いた事に、県境から見事にバッサリと舗装がされていない。他に道があるのか探したが、“これ”らしい。さて、いよいよダート下りだ。

県境から未舗装! いさぎよくバッサリとダート開始!

 

■ 大弛峠 → あちばけダム → (県道68号) → 川上村役場
  [・距離:82.5km(区間25.5km) ・時間:13:23着 8時間23分(区間4時間23分)]

 ダート下り開始。ガクガクッとすごい振動が脳をシェイクするが前方に集中。大きな石を避け、スピードを抑えるためブレーキは握りっぱなし。慎重に慎重を重ね進んだ。

・ トラブル発生
 ところがトラブル発生!サドルのネジが激しい振動で緩み始めたのだ。スタート時からキイキイと音がして気になっていたのだがついにグラグラになってしまった。
工具はスパナならあるがサドルネジ用の六角レンチは持っていない。工具を借りるにも県道に出るまでガソリンスタンドは無い。これは困った。
小石をネジの穴に押し込み強引に締め応急処置を施したが、数百メートル進むとまた緩み始める。その繰り返しだ。

 サドルのネジ、前方注意、スピード制御…とても景色を楽しむどころではなくなってしまった。ネジが落ちたら一大事だ。いっそ思い切ってサドルを外して立ち漕ぎで里まで降りようか… なんてことも考えた。

 難儀しながら進んでいると、前方にバイクが停まっている。さっき峠を少し下りた場所で少しお話した人が休んでいた。御一行様以外に、僕が高度計を確かめていたら話し掛けてきてくれたおじさんだった。バイクの一人旅だ。

 『ラッキー!』

 事情を説明し工具を借りた。合うレンチは無かったがマイナスドライバーを六角の対角線に挿し込み強く締めた。これで硬く締まった。

 工具を返しお礼をいう。この人は何度もここに訪れているらしくいろいろ楽しい話を聴かせてくれた。感謝!。そういえば僕のタイヤがオフロード用でない事に非常に驚いていたな。

バイクのおじさん。工具を貸してくれた。

 スピード制御、サドル修理、バイクの人と雑談…役場までのこの区間では時間を費やしてしまった。あと振動でチェーンも外れ時間を食った。時間に追われたくはないが、ライトのバッテリーを外してきたので明るいうちに帰りたい。

・ 鹿を見た
 鹿が二匹僕の目の前を通過した。優雅だったな。

・ 千曲川源流
 山梨県の川は基本的に太平洋、つまり南へ向かって流れる。しかし長野県の川は日本海へ向かうので北へ向かって流れている。
ここ千曲川源流の流れも北に向かって流れていた。当たり前の事だがすごく不思議な気分だ。
川原に下り空いたペットボトルに水を持ち帰り道中での水分とした。残りは翌日コーヒーを淹れるのに使った。

千曲川の源流。綺麗で美味しい水。日本海に注ぐ。

 数キロ続いたダートもいつしか舗装道に変り振動もおさまった。道幅も広がりあちばけダムを左にみて県道へと合流。ダートもいま思うとすごく楽しい物である。
すこし暖かくなったのでトレーナーと長ズボンを脱ぐ。(それでも標高1300mある)

あちばけダム。後にみえるのが日本のヨセミテと呼ばれる廻目平。

 6月になったばかりなのにセミが鳴いていたのには驚いた。雪を見て数時間後セミの音を聞く。面白い一日だ。

 千曲川に沿って県道を7kmほど進むと右手に川上村役場が見える。昨日林道の通行規制の確認をする為に電話したところだ。ここの電話を昨日鳴らしたと思うとなぜか可笑しな気分だ。

川上村役場。立派な建物である。 

 

■ 川上村役場 → 信州峠
  [・距離:91km(区間8.5km) ・時間:14:33着 9時間33分(区間1時間10分)]

 この区間の距離の記録をとり忘れた。だから地図からおよそ拾った。もっとも少し迷走したので例え記録したとしてもアテにならない。

 役場から2Km進み県道68号線を左に折れ県道106号線へと入る。セミの合唱と肥料の香ばしい香りのなかを走る。これを道なりに行けば信州峠のはずだが「106号線」を示す標識が見当たらず走っていて不安だった。念のため畑の手入れをしている人に訊いたらあっていてホッとした。

 それにしても通行人が少ない。それと大規模な畑が広がっているが何を栽培しているのだろう?
それから農家の人達だろう。軽トラックの荷台に数名を乗せて移動しているのを何台も見た。確実に道路交通法違反だ。まっ、田舎だから良いか?

 対向車は山梨ナンバーばかり。いよいよもってこの道で間違いない。
信州峠の標高は1470m。大弛峠ほどドラマチックではなく『あれっ』と思ったら着いていた。
そして山梨県に再突入!

信州峠。山梨県へ再突入。

 

■ 信州峠 → 増富ラジウム温泉 → 木賊峠 → 長窪峠 → 観音峠 → 敷島 → 自宅
  [・距離:144.07km(区間53.7km) ・時間:18:32着 13時間32分(区間3時間59分)]

 実は、僕の中では信州峠を抜け山梨に再突入した時点でこの試みはほぼ完結していた。ところがここからが辛かった。

 長野県の県道106号線は、山梨県に入ると「県道610号線」となる。
信州峠を下る途中、瑞牆山(みずがきやま)がよく見渡せる所があったので写真に撮る。変な形の山だ。

瑞牆山(みずがきやま)

 須玉町の和田という所を左に曲がり県道離脱。増富ラジウム温泉へと向かう。ここは温泉が有名で温泉旅館が立ち並ぶ。
入り易そうなところがあったらひと風呂寄っていこうと思った。しかし「入湯のみ〜円」の看板を出しているところがない。宿泊が前提なのだろうか?だから今回は温泉はパスした。『入浴のみ歓迎』ののぼりを出せば客が入ると思うが…

 だが入らなくて正解だった。もし呑気に湯に漬かっていたら、この後訪れる寒冷地獄で湯冷めを起こし大変な事になっていただろう。

 増富ラジウムから木賊峠へ向かう。
本谷川沿いに走る道は、特徴のある石や木に「弁慶の力石」「くじら石」「布袋の木」などと名前が付けられ目を楽しませてくれる。ダイナミックさは昇仙峡程ではないが上流にダムを介さないため水も綺麗。人の入りも少なく自然が残されている。良い場所を見つけた。

滝壷 巨石には「弁慶の力石」と名付けられている。写真の印象よりデカい。 本谷川の清流。上流にダムがないので綺麗。

 木賊(とくさ)峠に向かうが、これが標高1670mもあってこのとき既に12時間走ってきた体にはつらい。漕いでも漕いでも続く長く険しい坂道に腹を立てやっとの思いで木賊峠を登りきる。

 この辺の林道をひっくるめて「クリスタルライン」と呼ぶが、網の目のようになっていて分岐点の度に地図を広げて見ることになる。ここで疲労による思考低下で(普通でも方向音痴だが)一箇所間違えてしまった。 木賊峠の分岐で池の平林道を使って金桜神社に出るつもりだったが、遠回りとなる別な道を選んでしまったのだ。
ちなみに、冒頭の地図はこの“間違えて実際走った道”をトレースした物である。

迷路のようなクリスタルライン

 つらい登りは終わるが、ここからが旅の最後を締めくくる寒冷地獄の始まりだった。

・ 寒冷地獄

 日は西に傾き、山林を吹き抜ける風は心地よさから寒さへと変って行った。この日甲府の最高気温は25.3度。いわゆる“夏日”。しかし午後5時過の山林は違った。

 汗を吸った衣服が風に冷され冷たい。楽しいはずの下坂が下れば下るほど寒くなる。これは辛かった。鳥肌が立ちっ放しで意識レベルが低下。残雪の残る大弛峠の方が暖かだ。きっと真夏の暑い盛りに来れば天然のクーラーで快適だろう。
温泉に入り時間が遅くなっていたら気温は更に下がり湯冷めを引き起こし、車も殆ど通らない所だから最悪の場合、遭難したかもしれない。入らなくて良かった。

 標高が下がっていくほどに少しずつ気温が上がってゆく。山道を抜けポツポツと民家がある所までようやく出た。ジュースの自動販売機を見つけホットコーヒーを飲む。
…生き返った。
 気を取り戻し、更に下ると見慣れた道にでた。毎週走っている昇仙峡の道だ。ここからはあと僅か。慎重に行こう。

ただいま甲府盆地

 

■ 翌日

 朝起きると左腕の筋が痛い。大弛峠を下るとき、後輪のブレーキを握りっぱなしにしていたからだ。それ以外にはふくらはぎが少し痛む程度。
不思議な事に、腰痛が治っていた。ダートの激しい振動で骨が入ったのか?

豆を挽き、汲んで来た千曲川の水でコーヒーを淹れる。不味いわけがない。

一杯とちょっと分しか作れなかった。

 

■ 反省点

工具/ネジの増し締め
本格的なダートコースは今回がはじめてだったが、激しい振動でネジが緩むことが分かった。
スタート前は要所のネジは増し締めしておくべきだった。あと工具も一通り携帯すべきだった。
帰りのクリスタルラインはパス
今回は『国道を使わない』という趣旨だったが、県内に再突入してからの須玉、増富、敷島の峠は余計だった。
次回は拘らず、R141などを絡めて走りたい。
太良峠の見直し
本文でも書いたが太良峠での旅の導入部分がいきなりキツかった。
未だ未確認だが千代田湖を抜けて帯那山に出るルートもある。次回までにこのコースを検討する。

 …以上、林道好きの人には物足りない、サイクリングに興味のない人には何だか分からないレポートになってしまった。

 一つ言える事は、独りで林道を走っていると、めずらしい高山植物、普段お目にかかれない動物、おかしな形の岩や山など様々な“気付き”“発見”がある。
 そしてそんなある時、自分は『生きている』というより『生かされている』ということに気が付くだろう。

 車で走り抜けたり、自転車といっても例えば競技など時間に追われたり、複数人で連なって走っていたらこうした感覚的な体験は得られない。だからこれからも独りで走りつづける。

 

 最後までご覧いただきありがとうございます。2ヵ月後に再度行ったときの続編がありますのでよければ併せてご覧下さい。