| ちょこっと文学! | ||
| ファッション・料理・シャンソン・映画。フランスに魅かれる理由は人によってさまざまですが、私にとってフランスの最大の魅力の一つは文学にあります。本当は文学史にのっとって様々な時代の本を自分の言葉でみなさんにご紹介していきたいのですが、とりあえずそのような壮大なプランは脇へ押しやり、日仏にこだわらず、みなさんにも是非読んでいただきたいおフランスがらみの素敵な本を好き勝手にご紹介いたします。みなさんの原稿もお待ちしてますね。 (注)このページは原稿を書くのに再読してからと考えておりますので、更新はゆっくりになると思いますが気長におつきあいあれ。 |
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| 「歌姫を待ちながら」 佐々木レイモン (ディーディーエヌ) | ||
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| 5月15日に発売された、できたてほやほやの作品です。ウィーンに留学中の歌姫に恋したおやじが、失業のためパリにバカンスへでかける。そして・・・ と、書いてしまえば単なるハーレクイーン風ロマンスかという感じですが、この作品がすばらしいのは、作者と歌姫との間には何もおこらない、すなわち"Rien"ということであります。 彼は歌姫をひたすら待つ、夢想にふけり、策略をねる。歌姫を待っている間に、起きるヘンテコな出来事の数々、すれ違い、焦燥感と失望。人生ってそうよねー。という感じで、笑ってはいけないのですが笑ってしまいます。 しかし不思議なことに、読後感はあわれなおじさんという感じではなくて、人間というのは"Rien"ということからもいろんな意味で豊かになれるのであるなーということ。ある種の建設的な人間にとっては自殺にでも追い込まれそうな"Rien"という状態が、豊かでゴージャスな夢想の時をつむぐ不思議な能力をもっているということが、小説のようなアヴァンチュールもなく、のほほんと普通の暮らしをしている私たちに活力を与えてくれます。小説が現実を凌駕するのではなく、現実が小説の中に入り込み、ロマンチックを食い殺してしまうところがなんといっても新しい! 日常に退屈しているあなたに、是非おすすめの一冊です。 |
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| 「セリーヌの作品〈第10巻〉虫けらどもをひねりつぶせ」
Louis‐Ferdinand Celine 著 片山 正樹 訳 (国書刊行会) |
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| さて、セリーヌをどのように紹介するか。「知ってる、知ってる私セリーヌのバッグ好きなのよねー。」と思っているあなた、そんなあなたにどう説明するか、私は悩んでいるのであります。 この作品は国会刊行会からでているセリーヌ全集(全15巻)のうちの10巻目にあたるのですが、まずは国会刊行会のホームページを覗いてみると、次のように書かれてあります。 「1932年『夜の果てへの旅』でフランス文壇に登場し、その破格な文体と衝撃的内容によって、世界の読書界に一大旋風を巻き起こしたセリーヌ。不正の象徴としての<ユダヤ人>に鋭い筆鋒を向け、戦後は<戦犯作家として投獄され、その死に際しては司祭から葬儀の執行を拒否されたセリーヌ。全世界、全歴史、全人類の欺瞞を呪詛し、その糾弾に生涯を賭け、絶望的な闘いに倒れた<敗残の巨人>セリーヌ。」 ふむふむ。お分かりいただけたかな?「よくわかんなーい」との声が聞こえてきそうですが、まあてっとり早く言えば、ものすごくお下品なお言葉遣いで、世間に悪態をつき続け、牢屋に入れられ、葬式さえもまともにしてもらえなかった嫌味なおっさんの本です。なので、セリーヌのバッグを身につけていらっしゃるようなおしゃれなマダム・マドモワゼルには、装丁からいっても黒にオレンジというおたく風なところが、持ち歩くにはあまりふさわしくないご本なのであります。 では、なぜにここで紹介などするのか?それは、とってもおもしろいし、実のところ大変に素敵な本であるからです。 まずは、悪態のつき方が的を得ている。その過激さ加減が、「もっと言って、もっと言ってー。私は怖くて言えないけど。」という感じで、とっても素敵なのである。さらに、読み進めていけば、世間一般からすれば憎まれおやじでしかなかった輩が、とんでもない、なんという純粋な心の持ち主、世界に対してものすごく深い愛情を抱いているいとおしいお方ではないですかと、恋してしまう女性も少なくないでしょう。(少ないかな?) また、リズミカルな文体も魅力。ばっちり、日本語でも楽しめます。翻訳大変だったろーな。私には逆立ちしてもできません。ということで、この全集は第40回日本翻訳文化賞も受賞しております。 ともあれ、好きか嫌いか一度読んでみましょう。値段は高めですが、セリーヌのバッグに比べたらなんてことありません。バッグ購入以上の快感をお約束いたしますよ。 |
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