イカ、イソギンチャク、イルカ、イワシ、イワナ


イカ、烏賊


赤塚不二夫、『赤塚不二夫のハチャメチャ哲学』ごま書房

 オレがタマゴのネタをはずして置けば "先手、玉はずし" なんて言って、イカとタマゴにハシを渡して "後手、イカ玉ハシ渡し" なんていう。小山なんか手につまって、じっと寿司を見つめていたと思ったら、いきなりその寿司を食っちゃった。 "これは奇手です。前代未聞の手が飛び出しました" なんてとこで最高潮になるんだよな。

 

川上弘美「婆」、『物語が、始まる』中央公論社

するめの後にはイカ墨のスパゲティーが出てきて、その後には大根とイカの煮つけが来た。婆は素早く奥に消え、素早く食物を運んできた。

 

麺通団「コンベア式大衆セルフの定義 高松市・中西」、『恐るべきさぬきうどん 麺地創造の巻』新潮社

カウンターの端っこに「名物・イカやねん」なる奇っ怪な名称のオプションが、ポップ付で盛ってある。恐らくイカの足の天ぷら。名称につられてクシ付きのそれをチョイスし、ワクワクしながら食べたら、けっこうただのイカ天だったりしたがそれもご愛嬌。

 

ニーチェ、氷上英廣 訳「重力の魔」、『ツァラツゥストラはこう言った(下)』岩波書店

 わたしの口──それは民衆の口だ。お上品ぶった絹の兎たちの耳には、あまりにも粗暴、あまりにも率直にひびくだろう。また物を書く烏賊や狐どもには、それにもまして腑におちぬものだろう。

 


イソギンチャク


フィリップ・ディジャン、三輪秀彦 訳、『ベティ・ブルー 愛と激情の日々』早川書房


 ぼくはビールを手にして椅子に坐った。その間に彼女は湿布の仕度をし、着てるものをすべて脱ぎ捨てた。ぼくの目はいささか病気のいそぎんちゃくに似ていた。

 


イルカ、海豚


村上春樹、『羊をめぐる冒険』講談社

 いるかホテルは我々の入った映画館から西にむけて通りを三本進み、南に一本下がったところにあった。ホテルは小さく、無個性だった。これほど個性がないホテルもまたとはあるまいと思えるくらい無個性なホテルだった。その無個性さにはある種の形而上的な雰囲気さえ漂っていた。

 

ラーメンズ、『微妙ハンター』ぴあ

「あなたは本当のバスケットを見たことがありますか?」……どうやら名古屋のバスケットボールチームの紹介のようです。汗だくの大男と、ものすごい形相で指を立てる女の人がバスケのユニホームを着ています。大男の胸にはアルファベットで「ドルフィンズ」と書いてあり、下には水兵さんのイルカのキャラクターがボールを小脇に抱えてニッコリ。もはやその大男はバスケ選手に違いありません。そして横の女(たぶん大女)の下にもコアラのキャラクターが指先にこれまたボールを立ててこれまたニッコリ。大女の胸にはアルファベットで「コアラーズ」と書いて……

 

ミッシェル・ジュヴェ、北浜邦夫 訳、『睡眠と夢』紀伊國屋書店

大脳皮質の量には限界がある、だから次の情報を入れるのに以前の情報を忘れなければならない、それに逆説睡眠が絡む、とクリック先生はおっしゃるのです。そこで私は例外があります、と反論しました。イルカには人間と同じくらい発達した大脳皮質がありますが、逆説睡眠は認められないのです、と。これは私がモスクワを訪れたときにムカメトフ教授が私に教えてくれたことで、これは謎も謎、ソビエト的な謎です。

 


イワシ、鰯


川端康成「温泉宿」、『伊豆の踊子』新潮社

裏から藁屋根へかぶさった竹林は、いつも小鰯の群が泳ぐように揺れているが、お滝も彼女の母も、その葉ずれの音を聞いたことはない。

 

北原白秋「雲母集」の「流離抄」、高野公彦 編『北原白秋歌集』岩波書店

来て見れば鰯ころがる蕪畑蕪みどりの葉をひるがへす

 

小林一茶、秋山虔・桑名靖治・鈴木日出男 編『日本古典読本』筑摩書房

 麦秋や子を負ひながら鰯うり

 

立花隆、『臨死体験 上』文藝春秋

人間の心と体は密接に関連しているから、病気も治ると思えば治るし、治らないと思えば治らないという側面がある。だから、患者に自分の病気は治るという確信を与えるものは、イワシの頭でも加持祈祷でも、手かざしでも何でもきくのである。

 

中島らも『中島らもの 特選 明るい悩み相談室 その1 ニッポンの家庭編』集英社

 市場へ行くと魚屋さんなどが「イキのいいイワシだよ。トレトレのピチピチだよ」なんてことを言っていますが、あれなどは「生きのいい」と言わず「死にのいい」と言うべきなのでしょうか。さらに正確を期するならば、「死亡直後のイワシの死骸」とか、「推定死亡時刻午前五時ごろのサンマの死体」とか表現すべきでしょう。それでは食欲が湧きません(しかし、ダイエットしている人にはこの考え方は効果があるかもしれませんね)。

 

新美南吉「ごん狐」、『新美南吉童話集』岩波書店

 「一たいだれが、いわしなんかをおれの家へほうりこんでいったんだろう。おかげでおれは、盗人と思われて、いわし屋のやつに、ひどい目にあわされた」と、ぶつぶつ言っています。
 ごんは、これはしまったと思いました。かわいそうに兵十は、いわし屋にぶんなぐられて、あんな傷までつけられたのか。

 

村上春樹、『羊をめぐる冒険』講談社

「いわし、おいで」と運転手は言って猫を抱いた。猫は怯えて運転手の親指をかみ、それからおならをした。

 

村上春樹、『海辺のカフカ』新潮社

 空から魚が降ってきた!
   イワシとアジが2000匹、中野区の商店街に

 29日の夕方6時頃、中野区野方*丁目におよそ2000匹のイワシとアジが空から降ってきて、住民を驚かせた。近所の商店街で買い物をしていた主婦が2人、落下してきた魚にあたって顔などに軽い怪我をしたが、そのほかには被害はなかった。当時空は晴れており、雲もほとんどなく、風も吹いていなかったという。降ってきた魚の多くはまだ生きていて、路上ではねまわっており──

 

四谷シモン、『人形作家』講談社

 五十八年の三月、僕は唐十郎とパリに行き、鰯を食べて大病にかかります。帰国後、アメーバー性肝膿癰という、肝臓に虫がついて膿がたまる症状がでたのでした。

 


イワナ


糸井重里 監修、ほぼ日刊イトイ新聞 編、『オトナ語の謎。』新潮社

[動きが鈍い]
 春先のイワナは動きが鈍い。否、そういう動きではない。言葉の指す先がなんであるかというと、これがなんと数字である。新商品の売れ行きや、為替の動向などを見て発する言葉である。

 




TOPへ