ホタテガイ、ホタルイカ、ホヤ、ボラ、ホラガイ


ホタテガイ、帆立貝   


スコット・フィツジェラルド、野崎孝訳、『グレート・ギャッツビー』新潮社

涼やかな青空が水に連なるあたりを、白い帆が動いて行く。白帆の行く先には、帆立貝の貝殻の形をした海に、無数の楽しげな島々が点在していた。

 


ホタルイカ


山下清「蛍いか」、『にほんぶらりぶらり』筑摩書房

 ホタル・イカは子どもを生むために、沖の方から海辺の近くへやってきて人間にとられるのです。そして、光ると死んでしまうそうです。ホタルよりもかわいそうです。舟はあちこちへまわって、ホタルイカの網をあげたが、やすいイワシだけがたくさんとれて、光るイカはほんの少しでした。

 


ホヤ、海鞘


千石涼太郎『酒飲みのための魚のはなし』朝日ソノラマ


 これほど好き嫌いが分かれる海の幸も珍しい。私も子供のころは、「何が海のパイナップルだよ、こんなまずいもの」と敬遠していたものだ。それがどういうわけか、酒を飲むようになってからは、品書きにホヤを見つけるとつい頼んでしまうのだから、人間の味覚の変化というのは不思議なものだ。

 


ボラ


村上春樹「シドニー日誌 10月3日」、『Sydney!』文藝春秋

東京までの道のり、僕はすっとシドニーの船舶博物館のショップで買ってきた、例のオーストラリア海軍の潜水艦についての本を読んでいた。第一次大戦において、トルコ軍の魚雷艇に攻撃されて航行不能になり、やむなく自沈させることになった気の毒な潜水艦──今でもマルマラ海の底に沈んで、ボラのすみかになっている──の話を。

 


ホラガイ、法螺貝


澁澤龍彦、『高丘親王航海記』文藝春秋

「ごらんなさい。これがジャヤヴァルマン一世の後宮に入場するのに必要な手形です。わたしは温州生れの唐人ですから、この国では一介の外国人にすぎませぬが、長く宮廷に仕えたために特別に下賜されたのです。」
 そういって片目をつぶり、にやりと笑った。見ると、それらはいずれも同じ種類のほら貝であった。

 

新美南吉「和太郎さんと牛」、『新美南吉童話集』岩波書店

 もと吉野山参りの先達をなんべんもやった亀菊さんは、ひさしぶりに鳴らしてやろうというので、宝蔵倉から法螺貝をとり出して来ました。しかし一吹き吹いて見て、驚いたことにもうその法螺貝は、しゅうしゅうという音をたてるばかりで、鳴りませんでした。「こりゃ、ひびがはいっただかや」と亀菊さんはいいましたが、息子の亀徳さんが吹いたら、その法螺貝はよい音で鳴ったのです。そこで亀菊さんは、自分が年をとったことがよくわかりました。

 

ジャン・コクトー、澁澤龍彦訳、『ポトマック』河出書房新社

 ポトマックは虹色に濡れたプリズムの眼で、空を見あげた。法螺貝の形をした大きな薔薇色の耳は、内なる太陽の無限のささやきを聞いていた。

 



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