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あらためて地震時の原子力発電所のシステムとしての脆弱性を実感
海渡 雄一(弁護団) |
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1 3度目の検証 4月6日浜岡原発4号炉の検証が実施された。2号炉の検証下見、検証本番に続いて、一つの裁判所が3回にわたって、一つの原発を検証するということは異例なことである。 4号炉は2号炉と型式がずいぶん変わるかと思っていたが、意外にもほとんどデザインは変わらないもので、大きさが大きくなっただけという感じだった。我々の検証の一貫したポイントは、来るべき東海地震などの大規模地震の際に、この原発のどこに弱点があるかを指摘するところにあった。今回の検証には、弁護団からは河合、内山、望月、私が参加した。そして、補佐人として田中三彦氏と菊池洋一氏に協力を受けた。ここに記して感謝したい。 2 地震時の電源停止の現実性 最初のポイントは地震時の電源系に関する危惧である。大地震発生時には、開閉所の碍子が破壊されて、外部電源が喪失されるおそれがある。軽油タンク、デイタンクから非常用ディーゼル発電機に至る送油管は複雑で長い引き回しとなっており、その地震動による同時破断の可能性をあわせて、地震時の完全停電に至るシナリオを説明することができたと考える。 3 地震時の原子炉停止不能の現実性 今回は予備品倉庫で制御棒の予備品を確認した。2006年1月に、東京電力福島第一原発6号機の制御棒のひび割れ破損事故が報告されたことを皮切りに、本件浜岡原子力発電所3号機においても、使用済みの制御棒からもひび割れが見つかっている。ひび割れの発見されているハフニウムを覆っているシースと呼ばれるカバーと、タイロッドと呼ばれる支柱の状況を確認した。この材料は低炭素ステンレスSUS316Lであり、ひび割れの機構としては照射誘起型の応力腐食割れと見られている。ここにも、原子炉が地震時に停止できなくなる破局の芽が隠されている。 原子炉建屋1階では、制御棒駆動水圧系配管、スクラム・アキュムレーター、スクラム・ディスチャージ・ボリュームを確認した。185本ある制御棒が地震時に確実にスクラムに成功するためには、制御棒駆動機構に駆動水を送り込む水圧計配管が健全に維持されることが必要だ。しかし、この配管については、1978年2月22日に浜岡原発1号炉の制御棒駆動機構水圧系配管についてひび割れが発見されている。その配管は細く、格納容器建屋に直付けで貫通されている。地震時にこの配管が同時に何本も破壊され、原子炉の停止ができなくなる事態は決して杞憂ではない。この系統は、配管の密林のように入り組んでおり、長くかつ複雑であるため、検査は極めて困難であろう。 4 主蒸気系評価点20 今回の検証のひとつのポイントは被告から提出された耐震設計資料から読み取れる耐震設計上の弱点箇所を具体的に見たことである。その一つが主蒸気管のSWEEPOLET箇所である。主蒸気逃し弁は取り外されていた。SWEEPOLETは、主蒸気管から伸びる各種枝管であるが、地震時に、許容応力に対して極めて余裕のない設計となっており、大きな弱点となっている。 5 圧力容器を支える圧力容器支持スカート部の脆弱さ 圧力容器支持スカートは、原発機器の中で最も重要な原子炉圧力容器の巨大な重量を、圧力容器の下部で支えている円筒形のリング状の機器であり、ゆで卵立てのような構造物である(別図1参照)。圧力容器支持スカートは、一般の建物で言えば、建物の基礎部分に当たるものであり、原発の安全上、地震等の外力が生じた場合にも、少しの変形も許されない。圧力容器支持スカートの溶接部については、10年間で7.5%(従って寿命期間と考えられている40年間でも合計30%)について表面検査(液体浸透探傷検査)が行われるにとどまり、体積検査(超音波探傷検査等)は全く行われず、残りの92.5%(40年間で見ても70%)は、表面検査さえ行われず全く検査されていない。また、圧力容器支持スカート部を、下部頂板(スカートが設置されている部分)に止めている基礎ボルトは、目視検査可能な箇所は全て検査しているとされている。しかし目視検査可能なのはボルトの頭部のみであり、強度上意味があるコンクリートの強度・健全性、ボルトとコンクリートの接触部分の健全性(腐食の有無)、ボルトの健全性(折れていないか)等は目視検査不能である。 今回の検証ではスカートの外面とボルト部分を現実に確認し、写真に撮影することに成功した。この問題点を現実性をもって語ることのできる前提を作ることができたのである。なお、原子炉圧力容器が水平を保ち倒壊しないようにするためのスタビライザーとそのブラケットも実際に確認することができた。いずれも、耐震安全上、極めて重要な機器である。 6 再循環系配管評価点56(3号炉の評価点66) 言うまでもなく、今回の検証のメインは再循環ポンプと再循環系配管である。1台が約57トンもの巨大な重量を持つ再循環ポンプとモーターはフロアに固定することが出来ず、それ自体が大きな重量を持つ再循環系配管の上に載っている。この構造の小さい2号炉の場合はごちゃごちゃした構造のためによくわからなかったが、4号炉の場合ははっきりとわかった。4本のコンスタント・ハンガー(バネ付きの支持材)によってこの巨大なポンプは中空に吊り下げられている。このハンガーを吊り下げるクランプの溶接は上向き溶接となっている。地震の際の再循環ポンプの衝撃的な上下動により、劣化したコンスタントハンガーの溶接部がはずれるようなことがあると、配管のノズル部にはたらく応力が限界を超える危険性がある。 このような事態に備えて、メカニカル防振機が各箇所に設置されているところも確認できた。しかし、想定を超える地震動がおそった場合には、このメカニカル防振機の性能を超えることとなり、健全性は維持できないであろう。 再循環系配管一本の破断は設計基準事故として想定されているが、その想定はむしろ非現実的なものである。なにより、再循環系配管が現実に破断した場合に他の機器に与える影響を予想評価していない。破断した配管の反動(パイプホイップ)や噴出する熱水・高温蒸気の影響で他の機器・配管あるいはケーブルなどが損傷する可能性が看過されている。さらに、地震時の強震動によって、再循環系配管が複数の箇所で破断する現実的な可能性があり、このような場合の安全性は安全審査において、検討すらされていないのである。 設計時の耐震設計の計算結果において再循環系配管の中で最も弱いと思われる箇所は、3号炉では評価点66番(検証した4号炉では56番)である。評価点56番は、圧力容器から出た配管が再循環ポンプを経て再び圧力容器に戻るときに5本の配管に分かれる分かれ目に当たる場所であり、十字型の配管接合部になっている(別図2参照)。今回の検証では、この原子炉の地震時の最大の弱点箇所を現実に確認し、これを写真撮影することができた。地震時にこの箇所が真っ先に破断し、ここから冷却材喪失事故につながる可能性が高いのである。 7 高線量で最悪の作業環境のペデスタル 前述したスカート部の内側の圧力容器の底部には、制御棒駆動配管や、各種計装配管が、蜂の巣のように配置されている(別図1参照)。今回の検証の最後には、この箇所に実際に立ち入った。 この箇所は原子炉内でも最も放射性物質によって汚染がひどい箇所であり、中に入るには、作業衣の上に、さらに服を二枚、手袋と靴下を二枚、酸素ボンベと全面マスクが必要であった。まるで、宇宙飛行士のような装備に身を固めて、検証コアチーム9名は炉心の直下に入った。この箇所に、裁判所と我々はわずか2分程度しか、とどまることができなかったが、その間だけで、0.02ミリシーベルトの被曝をした。この日の被曝量は全体で0.04ミリシーベルト(一日の一般人の被曝上限設定値は0.05ミリシーベルト)であり、残りの大半は主蒸気系と再循環系での被曝であるが、その被曝量からも作業条件の過酷さを推し量ることができる。原子炉圧力容器の直下のペダスタル内には、圧力容器の下部に挿入されている多数の制御棒駆動機構やインコア・モニターなどが狭い空間の中に密集している。圧力容器のそこにはいくつもの穴が開けられ、この制御棒駆動機構やインコアモニターを挿入する容器であるインコア・モニターハウジングやスタブチューブが差し込まれているのであるが、これまでたびたびひび割れの貫通による炉心からの冷却水の漏えいが発生している。 地震の際の振動とりわけ縦揺れによって、既に亀裂の生じている制御棒駆動機構やインコア・モニターが亀裂部から破損し、ハウジングが脱落した場合、圧力容器の底が抜けた状態となり、冷却水の喪失をとどめる方法がなくなる。 このような重要な機器があるペダスタルは空間線量も高く、全面マスクのもとでの作業条件は息苦しく劣悪で、すべての機器が十分に検査できる状況にないことは明らかである。 8 嶋橋さんのこと 1994年7月、浜岡原発で働き、白血病で亡くなった原発労働者の労災が認定されたことを覚えておられるだろうか。中部電力の下請けである中部プラントの社員であった嶋橋伸幸さんの労災申請がそれである。磐田労基署は嶋橋さんの両親の申請を認め、原発での被ばくと白血病死に因果関係がある判断した。私はこの事件に申請代理人として関与した。嶋橋さんは、まさにこのペデスタルで、このインコアモニターの保守、点検を仕事としていた。残された作業ノートによれば、炉の定期検査時に、嶋橋さんはこのペデスタルに入り、インコアモニターを取り外し、検査して再度これを装着する仕事に従事していた。私は、酸素ボンベを下げて、全面マスクでペデスタルに入ったとき、伸幸さんのお母さんである美智子さんから、「亡くなった伸幸が看病中に酸素ガスマスクを苦しそうに取ろうとしていた、原発の中での作業を思い出しているように感じた。」と話されたことを突然思い出した。そして、日々の作業の中で彼が感じたであろう息苦しさ、圧迫感、早く作業を終えなければどんどん被曝してしまう切迫した恐怖感などを、まざまざと感じたのである。我々は、ペデスタルのスタブチューブの健全性を確保するために十分な検査を実施するべきだなどと主張しがちであり、それは安全を願う付近住民の正当な要求であるといえる。しかし、完全な検査など、この環境では最初から不可能なのだし、検査の充実を言えば言うほどここで働く労働者の被曝を増やしてしまうのが現実なのである。このような非人間的な労働を、日々強いなければ継続できない原子力発電という発電方法にどうして、こんなにこだわり続けなければならないのだろうか。そんな、深刻な思いと大きな疲労感を残して、4号炉の検証は終わった。 |