サイゲルン Saigern(独)
 中世〜近世にかけて西欧で行なわれた、粗銅に含まれる銀を鉛を使って抽出する熔離法。これは銅に鉛が固溶しないことを利用した方法で、銅と鉛に対する銀の分配率が銅より鉛の方が大きいこと、銅と鉛の融解温度の差が大きいこと、そして銀と鉛が灰吹きにより容易に分離できるなどで実用化した。
 ヴァンノッチョ ビリングッチョ(Vannoccio Biringuccio, 1480-c1539/イタリア)の『火工術(De la pirotechnia)』(1540)に、銅-鉛熔融合金の冷却過程で、銅を上から順々に層状に剥ぎ取り貴鉛を底に残す方法と、銅-鉛合金のインゴットを加熱して貴鉛を流出させるという二つの方法がみられる。前者は古くから行われていた方法と云われている。15世紀半ば頃、ドイツ・ニュルンベルク(Nuernberg)で始まったのは後者の方法。
 参照→南蛮吹

 これ以前に大規模に行なわれた証拠は見当たらないが、熔離が行なわれていたことを示唆する資料はいくつかある。古くは紀元前2千年紀の古バビロニアの文書に、「『山の銅』が『洗われた銅』を作るために『洗われた(? 浄化する/精製する)』、そして、鉛が『洗われた銀』を作るために銀に使われた」とあり、銅に鉛を加えたとは書かれていないが熔離のことと推定されている。
 1世紀、「大プリニウスは、銀が“銅の汗”と呼ばれるとも記している。」(鶴岡真弓『黄金と生命』)。そして12世紀、テオフィルスの『On Divers Arts』において、「石が柔らかくなり始めるとき、鉛は特定の小さな空洞を通して流れ出る。そして、銅は中に残される。」など。
 12世紀初頭の『大観本草』の「蜜陀僧」の項に、「波斯(ペルシャ)国より出ず、と。今、嶺南(広東と広西)、[ビン]中(福建)の銀銅冶処にも亦之れ有り、是れ銀鉛脚なり。其の初め採鉱する時、銀銅相雑る。先に鉛を以(もちい)て同(とも)に煎錬すれば、銀は鉛に随って出ず。」と見え、明らかに熔離が行なわれており中国へも伝わっていたことが分る。
(参考web Liquation -Wiki)

棹銅(さおどう)
 精銅を棹状としたもの。長崎輸出銅はみな棹銅であった。(『神岡鉱山史』)

砂鉄(さてつ) iron sand
 岩石からはずれた微粒の鉄チタン酸化物。主要構成鉱物はチタノマグネタイトチタノヘマタイトで、これらの酸化物、ときに水酸化物を共生する。
 残留鉱床または漂砂鉱床を形成し、資源として利用されることもある。

酸化帯(さんかたい) oxidized zone
 鉱床が風化作用および地表水による酸化作用を受けた部分。
 地表水は鉱石脈石などを、それが含む酸素、炭酸、種々の有機酸、アンモニア、硫化水素などによって化学的に変化させる。例えば金属硫化物は種々の酸化物・水酸化物・炭酸塩類・硫酸塩類・塩化物・自然金属などに変化する。酸化鉱物中、最も一般的なものは水酸化鉄(褐鉄鉱)で、これが地表で焼ケ(ゴッサン)をつくる。

酸性,塩基性(さんせい,えんきせい) acidity,basicity
化学分野:
 酸(acid)と塩基(base)の定義は、現代ではブレンステッドの定義、あるいはルイスの定義が用いられる。
 ブレンステッドの定義
  酸はプロトン(H+(H3O+))を与える物質であり、塩基はプロトンを受けとる物質である。
 ルイスの定義
  酸は電子対を受け取る物質であり、塩基は電子対を供与する物質である。

 「無水酸化物」について
  酸性酸化物:水に溶解してプロトンを放出する酸化物
   例)CO2 + H2O → H2CO3
              + H2O → H3O+ + HCO3-
                         + H2O → H3O+ + CO32-
  塩基性酸化物:水に溶解してプロトンを受容する酸化物
   例)CaO + 2H3O+ → Ca2+ + 3H2O
  両性酸化物:酸・塩基いずれとも反応する酸化物
   例)Al2O3 + 6H3O+ + 3H2O → 2[Al(OH2)6]3+
     Al2O3 + 2OH- + 3H2O → 2[Al(OH)4]-

製錬分野:
 O2-イオンを受け入れるものが酸性物質で、O2-イオン供給するものが塩基性物質。
  例)SiO2 + 2O2- → SiO44- (酸性物質)
    CaO → Ca2+ + O2- (塩基性物質)

酸化物 陽イオン−酸素間引力
Na2O
CaO
MnO
FeO
ZnO
MgO
Cr2O3
Fe2O3
Al2O3
TiO2
SiO2
P2O5
0.36
0.70
0.83
0.87
0.87
0.95
1.37
1.50
1.66
1.85
2.45
3.30
塩基性










酸性
 Cr2O3、Fe2O3、Al2O3、TiO2 などは、これらが添加されるスラグの組成により塩基性あるいは酸性酸化物としての性質を示す両性酸化物。
 →塩基度参照

地学分野:
 火成岩の分類用語で、化学用語の酸性・塩基性とは無関係。混乱しやすいので最近はフェルシック(珪長質)・マフィック(苦鉄質)という言葉が使われている。
酸性岩 珪酸(SiO2)が約66wt%以上
塩基性岩 珪酸(SiO2)が約42〜52wt%00
超塩基性岩00 珪酸(SiO2)が約42wt%以下
 フェルシックは feldspar(長石) と silica mineral の頭文字に-icをつけた造語。フェルシック鉱物はSi,Al,Na,Kに富むほぼ無色に近い鉱物。
 マフィックは magnesium と ferric、ferrous の頭文字に-icをつけた造語。マフィック鉱物はMg,Feに富み、他に多種の遷移金属元素を含むことから濃い色を呈する。このような有色鉱物を指す。
(珪長とは珪石、長石を、苦鉄とはマグネシウム(苦)、鉄を表わしている。)
超マフィック岩石 マフィック鉱物が70vol%以上
マフィック火成岩類 マフィック鉱物が40〜70vol%
中間火成岩 マフィック鉱物が20〜40vol%00
フェルシック火成岩類00 マフィック鉱物が20vol%以下


酸化焙焼(さんかばいしょう) oxidizing roasting
 酸化性雰囲気の中で行われる焙焼。主に硫化鉱を酸化物にすることを目的とする。
 焙焼法のうち普通に行われていて、硫化鉱から硫黄を酸化して気体のSO2として除くとともに、主要金属を酸化物にする。また原料の硫化鉱中のAs、Sb、Teなども蒸気圧の高い酸化物となるので気化して除去される。なお、硫黄を完全に酸化しないで残し、次工程で焼結に利用するなどのことも行なわれる(局部焙焼)。

残留鉱床(ざんりゅうこうしょう) residual deposit
 鉱床の形態的分類で、地表またはその近くの岩石、鉱床が風化作用を受け、新しく生成した難溶性有用鉱物が残留濃集してできた鉱床。


シアン化法 cyanidation process
 →青化法

試金(しきん) assay
 鉱石や合金などの金属成分を定量分析すること。

試金トン(しきんとん) assay ton
 試金分析に用いる質量単位で、29.1667g。記号:AT

自然銀(しぜんぎん) native silver
 天然に産する銀。金とは連続固溶体を形成し、水銀、銅とも合金をつくる。silver-3C、silver-2H、silver-4Hの多型が知られている。通常自然銀と呼ばれるものはsilver-3Cで、立法晶系。通常は毛状、樹枝状、箔状、苔状などで、灰〜黒色に変色している。中低温熱水鉱床、黒鉱鉱床および各種銅鉱床の酸化帯に産する。

失蝋法(しつろうほう) lost wax process
 →ロストワックス法

四分銀法(しぶんぎんほう) inquatation
 金銀合金より高純度の金を分取する方法で、含金量1/4に対して銀3/4の量(不足時は銀を加え)の合金とし、薄板状にして硝酸を加えて銀を溶かし、金と分離する。これは銀原子が金原子に囲まれていると、銀に硝酸が到達できず銀を溶かすことができないので、銀の中に金原子ができるだけ分散状態で存在するようにしたもの。

熟銅(じゅくどう、にぎあかがね)
 不純物の程度が利用可能なレベルの銅。
 奈良時代の文書を集めた史料集『寧楽遺文』に所収されている「造東大寺司諜」によれば、「生銅」「未熟銅」「熟銅」などというように銅にさまざまな品質のもののあったことが知られる。
 『続日本紀』の和銅元年(708)正月16日「武蔵の国から和銅(にきあかがね)を献上した」の和銅=熟銅(にぎあかがね)が自然銅であったとして熟銅=自然銅とする説もみられるが、これは‘精錬を要しない純度の’(自然)銅と解すべきであろう。

樹枝状晶(じゅしじょうしょう) dendrite
 過冷却状態にある溶液からの凝固に見られる結晶成長の一形態。成長は樹枝状に急速度で起こり、各枝の方向は正確に結晶学的方向に一致する。初期の冶金学者が、全ての金属は常に樹枝状に凝固すると考えたほどしばしば見られる。

この走査電子顕微鏡写真の結晶は凝固の途中で
残りの液体金属を除去するという特殊な手法に
より作成されたもの。
『金属の百科事典』丸善 1999
Fe-C 合金の樹枝状晶
白ハ(しろかわ) 
 熔融した銅マットに空気を吹き込み、マット中の硫化鉄(FeS)を酸化鉄(FeO)として珪酸とスラグ化させ、硫化銅(Cu2S)が残った状態のマットを指す。破面が白いところから白ハと呼ばれる。

白味(しろみ)/白目(しろめ) 
 鉛製錬ないし南蛮吹の操業の際に出る副産物で、鉄、銅、砒素、鉛、アンチモン等を含むスパイスないしドロス状のもの。ビスマスを含む場合もあり、その成分も名称も産地、銅鉱石に含まれる諸元素の量の違いで異なる。馬白目(羽白目、堅白目)、豊後白味など。白味は白目とも呼ばれる。白味を銅合金鋳物に使うのは日本独特の方法と云われ、寛永通宝や色金の合金材料として用いられていた。なお、小豆白味は砒素、伊予白味(唐白味)はアンチモンを指す。
 参考:白目

白鑞(しろめ)/白目 pewter
 1) 錫と鉛の合金(『和名類聚抄』、『倭漢三才図会』では鉛一斤に錫十両を錬ったもの)。
 2) →白味/白目

浸出(しんしゅつ) leaching, lixiviation
 鉱石または精鉱中の目的の金属を適当な溶剤によって溶かし出すこと。

靭性(じんせい) toughness
 材料の粘り強さを指す用語で、機械的応力による破壊までに要したエネルギーの大きさで表わす。

滲炭(しんたん) cementation, carburizing
 鉄の表面層に炭素を浸透させて表面層を硬くする処理。靭性に富み、かつ耐摩耗性を得るために行なわれる。
 →セメンテーション

真鍮(しんちゅう) brass
 →黄銅

深熱水鉱床(しんねっすいこうしょう) hypothermal deposit
 地下深所で高温条件(深さ3〜10km、温度300〜600℃)で生成した鉱床。鉱脈・交代鉱床が多い。
 →熱水鉱床参照


スカルン鉱床 skarn deposit
 炭酸塩岩が熱水による交代作用を受けて形成される塊状熱水鉱床。スカルン鉱物と呼ばれるCa・Al・Fe・Mgなどの珪酸塩鉱物(ざくろ石・単斜輝石・緑れん石・珪灰石・ベスビアナイトなど)を伴うことが特徴。スカルン鉱物からなる岩石はスカルンと呼ばれ、石灰岩とチャートの互層やマールなどが熱変成を受けても形成されるが、鉱床となるものは、ほとんど珪長質マグマの活動に伴って発生する熱水により形成され、大規模な物質移動を生ずる。スカルン鉱物の組合せは原岩の種類(石灰質・苦灰質など)により大きく異なる。磁鉄鉱・赤鉄鉱・黄銅鉱・閃亜鉛鉱・方鉛鉱・灰重石・鉄マンガン重石・錫石・輝水鉛鉱などがスカルン鉱物中に鉱染し、あるいは塊状に胚胎してFe・Cu・Zn・Pb・W・Sn・Mo・Au・Beなどの鉱床となる。

スケール scale
 高温度で金属表面に生成する酸化被膜をいう。俗に黒皮と呼ばれることがある。

すばい(素灰、須灰、炭灰) brasque , black ash
 1)木炭粉に強度を与えるため、若干の粘土等の物質を加えた混合物。ルツボや小さな炉のライニング(内張り)に使用される。
 2)炭焼きで堅炭を作るとき、消火に用いられる灰(素灰)。

スパイス speiss
 砒素含有鉱石の溶融製錬で発生する金属砒素化合物。砒ハ。

素吹、寸吹(すぶき) 
 1)鉱石の熔融製錬工程の古称。
 2)熔融製錬の第一段階の工程。別称:荒吹

スラグ slag
 1)鉱物質原料の溶融によって生ずる非金属物質。
 2)金属の製錬工程において脈石または不純物が融剤と結合して目的物から分離し、上層をなす酸化物を主成分とする融体の総称。別称:鉱滓。非鉄精錬でぱ(カラミ)、鉄製錬ではノロと呼ぶ(厳密に使い分けられてはいないようだ)。脈石や目的金属に入ることが望ましくない不純物が溶融分離されたもので非鉄製錬では鉄もカラミに入る。
 3)溶接にあたり溶着金属と共に生ずる非金属物質。あるいは石炭灰や金属酸化物が耐火レンガに付着し、その融剤作用によって熔けて生じた物質。


青化法(せいかほう) cyanidation process
 金、銀鉱石から薄いシアン化ナトリウム溶液で金、銀を錯体として浸出し、ろ過した溶液に沈殿剤(亜鉛など)を加えて金、銀を置換・析出させて金、銀を得る湿式製錬法(メリルクロー(Merrill Crowe)法)。金、銀はシアンと錯イオンを形成して溶解する性質を利用したもので、この反応には酸素を必要とする。1887年、金鉱石に初めて適用された。
 1970年頃から金、銀の錯体を活性炭に吸着させ、これを加熱したアルカリ性シアン溶液によって溶出して得た高濃度の金、銀溶液を電解収集する方法(CPIプロセス)が開発された。

精鉱(せいこう) concentrate
 粗鉱から脈石選鉱によって除き、品位を上げた鉱石

脆性(ぜいせい) brittleness
 もろさ。物体が外力により永久ひずみをあまり生じない内に壊れる性質。

青銅(せいどう) bronze
 1) 銅に錫を加えた合金(錫青銅)で鋳物に用いられる。別称:唐金。錫10%前後のものが大砲の砲身にも使われたことから、「砲金」とも呼ばれる。
 本来「青銅」は、緑青に色付けした銅製品の金属名として使われていた(ex 青銅盆)が、これが銅合金の代名詞となったものと思われる。ちなみに、アルミニウム青銅、シルジン青銅のように錫を含まない銅合金にも「青銅」が付けられている。
 2) 銭の異名としても用いられた(『増補下学集』)。青ざしの銭。

製錬(せいれん) smelting
 鉱石または粗鉱から脈石を分離して、随伴している不要物質を分離し、目的金属を採取する方法。

精錬(せいれん) refining
 製錬で得られる粗金属の不純物を利用可能なレベルに精製する工程。

セメンテーション cementation
 1)金属材料の表面層に他元素を拡散侵入させ、硬さ、耐食性および耐熱性などの向上を図る操作。
 2)銅に亜鉛蒸気を拡散侵入させ、これを溶解して黄銅を得る方法。
 3)金-銀合金を明礬を加えた塩の中で焼き、発生する塩素ガスで銀を塩化銀にすること。
 4)イオン化傾向の違いにより金属が置換析出すること(ex. Cu2+ + Fe → Cu + Fe2+)。置換法

選鉱(せんこう) ore dressing, beneficiation
 粗鉱から脈石を除く工程。手選法、比重選鉱法(重力選鉱法)、浮遊選鉱法(浮選法)、磁力選鉱法、静電選鉱法などがある。

銑鉄(せんてつ) pig iron
 鉄鉱石を製錬して得られた高炭素(約2wt%以上)の鉄。

浅熱水鉱床(せんねっすいこうしょう) epithermal deposit
 マグマ起源の上昇熱水溶液から地下浅所(1km以内)で、かつ低温条件下(100〜200℃)で生じた鉱床。実際にはこの定義からはずれるものも多い。
 →熱水鉱床参照


造滓剤(ぞうさいざい) flux
 目的とする性質のスラグを作るために加える融剤

層状含銅硫化鉄鉱鉱床(そうじょうがんどうりゅうかてっこうこうしょう) bedded cupriferous iron sulfide deposit
 かつては層状含銅黄鉄鉱床と呼ばれたが、磁硫鉄鉱も伴うことからこの名称になった。別称:含銅硫化鉄鉱床
 →キースラガー

粗鉱(そこう) crude ore
 鉱山から採掘されたままの鉱石。有用鉱物以外に無価値鉱物(脈石)を伴っている。

粗銅(そどう) blister copper
 溶融した銅のマットに空気を吹き込み硫黄を燃焼させ除去して得られた銅。未精製の銅。別称:荒銅、黒銅
 (転炉工程で硫黄、鉄、その他の不純物を酸化除去したもので、銅含有率は、普通約98%。)

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