今月の特集はオリジナルゴールドフィニッシュの終焉です。GTFさんの執筆です。

<特集No.76 オリジナルゴールドフィニッシュの終焉>

今月の特集は、1952年にデビューし、1958年にひっそりと消えて行った、ゴールドフィニッシュギターをご紹介します。
今回ご紹介するLESPAUL、ES-295については、先達によって書籍等で語りつくされた感がありますので、ここでは一般的な内容は割愛させていただき、固有の仕様を中心にコメントさせていただきます。
画像の両端はデビュー時のLESPAULとES-295。


1958年製LESPAUL(左)と同年ES-295(右)

1952年。前代未聞のゴールドというフィニッシュで衝撃的なデビューを飾ったLESPAULとES-295。
デビューからしばらくは順調に出荷本数を伸ばしていましたが、1954年以降、若干の波はあるものの年を追うごとに出荷数が減りはじめます。
売上回復を狙って、GIBSONはLESPAULモデルに対し、ブリッジ変更(1953年末、1955年)、ピックアップ変更(1957年)という一連の改善を行いますが 増産への決定打とはならず、1958年、ついにはサンバーストに衣替えするという決断に至ります。(残念ながらその後も短命でしたが・・・)

一方、ES-295は、ベースモデル(ES-175)の20フレット化に伴う変更(1955年前後)、ピックアップ変更(1957年末)というどちらかといえば、ベースモデルやGIBSON全体の流れに準じた必要最小限の仕様変更にとどめられました。
こちらは1958年夏の出荷を最後に生産ラインから外れてしまいます。その後、1959年に一旦は復活しますが、一時的なものだったようです。
1959年の正確な出荷本数は分かりませんが、そう多くは作られていないと思われます。


MODEL
1952年
1953年
1954年
1955年
1956年
1957年
1958年
1959年
1960年
LESPAUL
1716
2245
1504
862
920
598
434
643
635
ES-295
297
637
357
166
193
71
49
?
-


では、細部を見ていきましょう。

・ヘッド(画像:トップ)
GIBSONロゴの位置については、2001年10月号 で考察したように、1952年から1957年にかけてはGIBSONの「G」の下側が4弦ペグポス ト付近にあります。そして1958年にはこの2本のように上に移動するようです。
ES-295のペグは経年変化(化学変化?)によりシュリンクしています。いつかはポロっ と壊れるのでしょうね。(涙)


・ヘッド(画像:バック)
ES-295のペグはマイナスネジで留められています。


・ポジションマーク
中級機種のポジションマークにはパーロイドが使われています。
フレットもまだ細いものが使われていますね。


・ボディ(画像:トップ)
ゴールドフィニッシュに比較的多く見られる緑青、ウェザーチェックもなく、出荷後、半世紀を経過したとは思えないほどのコンディションをキープしています。
ES-295に比べLESPAULは若干日焼けして、暗く沈んだ色合いに変化しています。
ES-295のシリアルは「A28007」です。
「GIBSON ELECTRICS THE CLASSIC YEARS」によれば、1958年の最終プロダクションモデルのシリアルが「A27993〜A28009」となっていますので、この個体は最後から3本目ということになります。


トグルスイッチのリングはそれまでのプレーンなタイプに代わって1958年からすり鉢状のナットが使われているようです。この2本もそのタイプがついています。


・ボディ(画像:バック)
バックを見ても2本ともバックルウェアが殆ど無く、非常に良いコンディションで す。


・ピックアップ
資料によると、PAF搭載にあたっては、次のような流れで展開が進められたそうです。

1.手始めにGIBSONの主要カテゴリである、フルデプスボディ、シンラインボディ、ソリッドボディそれぞれの中級機種(具体的にはES-175、ES-350、LESPAULモデル)に搭載して市場の反応を見た。
2.市場でも受け入れられることを確認し、徐々に上位機種に拡大していった。
3.結果、1958年前半頃までにはトップラインのSUPER 400、Byrdland、L-5まで展開された。

上記のように、LESPAULモデルには1957年前半くらいからPAF搭載が行われていましたが ES-295への搭載は比較的遅く、1957年末頃(1958年初頭?)に行われたようです。
このためES-295のPAF仕様は数が少なく、あまり目にする機会がありません。
しかし悲しいことに、PAF搭載のLESPAULスタンダードと同じエスカッションを持つ唯一の機種のため部品取りされることが多く、残念ながらこの個体のエスカッションも交換されています。
「レア」さだけで言えば、PAF搭載のES-295の方が断然貴重だと思うのですが・・・


・ケースのラッチのメーカー名
ケースのラッチをよく見ると「EXCELSIOR STAMFORD CONN.」という刻印があります。
私が確認できた範囲では、スクエアな形状のハンドルを持つケースにこのタイプのラッチがついていました。
(RS修平氏によると、50年代初期のフェンダーのケースにもEXCELSIOR製のラッチが使われているそうです)
右は先月特集したラップスチールのラッチですが、こちらは「THE EAGLE LOCK COMPANY TERRYVILLE CONN.」という刻印があります。
どちらもコネチカット州の古い鍵のメーカーです。コネチカット州は鍵が有名なのでしょうか?


・結び
オリジナルコールドフィニッシュ終焉から50年。この節目の年に終焉に立ち会った2本を紹介しました。
ゴールドフィニッシュは今でこそある程度の人気を保持していますが、当時のことを考えると感慨深いものがあります。
このゴールドフィニッシュはLESPAUL氏のアイディアだったと言われていますが LESPAULモデル開発時の話として、「GIBSONはヘッドに”GIBSON”というロゴを入れることさえ躊躇していた」という趣旨のLESPAUL氏の記事を読んだ覚えがあります。
もしかしたら、GIBSONは最初のソリッドモデル、しかもゴールドフィニッシュという今までのGIBSONらしからぬギターにかなりの抵抗があったのかもしれません。
LESPAULモデルの初期プロトタイプはサンバーストだったと言われています。またES-295も初期モデルにサンバースト仕様がありますので、本当はサンバーストフィニッシュで出荷したかったのかもしれませんね。
そういう意味では、1958年にようやくGIBSONが望んだ姿でデビューしたと言えるのかもしれません。



(完)