今月の特集はTwo-Rock Ruby kitの製作記です。

<特集No.52 Two-Rock Ruby Kit製作記>

Two-Rockといえば皆様おなじみの、アメリカのK&M Analog Designsという会社で作られているアンプですが、そのラインナップ中、出力管にEL34を使用したRubyというアンプがありました。(現在は生産終了のため、日本に数台、いや世界に数台しか存在しないと思われます)
今回はそのRubyのキットの製作記をご紹介いたします。

このキットを製作することになった経緯ですが、今年の春頃たまたまN澤名人とFender/Rhodesの件で会話していたときのこと、「ところでさぁ〜Rubyのキットがあるらしいんだけど修平さん作ってみない?Two-Rockのキットなんて今まで作った人居ないし面白いんじゃない?」というお話がありました。
確かにフェンダーアンプのレプリカキットは世の中に沢山ありますが、Two-Rockのキットなんて見た事も聞いた事もありません。それもそのはず、Two-RockのAmpをkitで販売するのはこれが世界初なのだそうです。
まあ素人の私が組んでまともに音が出るようになるかどうかは判りませんが、音が出ようと出まいと、素人アンプ弄りシリーズの第五弾の素材としては面白そうです。
ということで、早速送って頂くことにしました。

それからしばらく経ち、6月の半ばになって送られてきたキットの内容を見ると画像のようにアルミ製のシャーシと出力トランス、電源トランス、そして手書きの配線図と何かの回路図に手書きで加筆された回路図だけでした。
何かの手違いで他のパーツを入れ忘れたんだろうと思い、笑いながらN澤名人に「他のパーツを入れ忘れてるみたいですよ」とお電話しました。しかし、しばらくしてN澤名人が過去のメールの確認をしたところ、K&MのJoeさんからのメールには「Ruby Kit(シャーシ、電源トランス、出力トランス、及びドキュメント数枚)を送るから日本のフレンドにヨロシク!!」と明記されていたそうです。
それを聞いた私は愕然としました。基板すら入っていない、シャーシとトランス2個と数枚の紙がJoeさんのおっしゃるところのRuby Kitだったのですね・・・・(ひょっとして、単なる余剰パーツの在庫整理???)。


これが手書きの配線図です。以前私がMarshall 2061Xの現物を見ながら作成した配線図のほうがちょっとキレイかも知れませんが(笑)、FenderやMarshallの量産品と違っていかにもアンプビルダーの製作するアンプという趣きがあります。


こちらが回路図ですが、別のアンプのプリ部、パワー部、電源部を切り貼りして、さらに手書きで加筆されています。(しかも配線図と回路図では整合性が取れていない部分が・・・(涙))
おそらく他に正式な回路図があるに違いないと思い、それを送ってもらうようにお願いしましたが、K&MのJoeさんによると、「他の配線図や回路図は無い、回路はチェックしたがこれで間違いはない」との返事でした。
しかし、素人の私が見ても配線図と回路図に相違点があるのが判るのです・・・さすがアメリカン!・・・・・なんだか先行きが不安に・・・。
上級者ならまだしも、アンプ製作に関してズブの素人の私にはこれだけの情報ではRubyをまともに完成させる事など不可能です。
N澤名人はご親切に「何が必要なのかパーツリストを作ってくれたら秋葉でパーツ買い揃えてから送るから!」と言ってくださいましたが、Two-Rockで使っているようなパーツが秋葉で手に入るかどうか判らないので安全策をとり、K&MのJoeさんにTwo-Rockで使っているパーツを揃えて送ってもらうようお願いしました。

で、パーツが届くまでの間に配線図を見ながら回路図を修正しました。よく見ると、50Wattマーシャルの回路のプリ部を1段増やしてマスターVOLを付け、センド・リターンを追加したような回路だということが判りました。


それから数週間後に送られてきたパーツ群です。穴あけしてハトメが付いた基板とPOT,ジャック、スイッチ、抵抗、キャパシター、ダイオード、チューブソケット、パイロットランプ、ヒューズ、ボルト&ナット等です。これ以外にロータリースイッチやジャック等が必要でしたが、それらは日本の電子パーツ屋さんで調達しました。


キャパシターはK&Mのロゴ入りのオレンジドロップです。組み込む前にチェックを兼ねて容量を測定してみましたが、さすがに厳しい品質管理基準をクリアして納品されたものらしく、誤差は全て2%以下に収まっていました。この他の抵抗類も組み込み前に測定して異常が無いことを確認しました。右の画像は「Pacific Transformer」製のトランスです。最初に送られてきた内容にはシャーシとトランスしか含まれていなかったということは、これがkitの要(かなめ)ということなのでしょうか?


パーツが揃ったところで製作に取り掛かります。最初は夏休みの工作にしようかと思っていたのですが、8月は何かと忙しく結局取り掛かったのは8月も終わろうとする頃でした。
まずは各パーツをアースに接地させるためにシャーシの塗装を剥がします。本当はどの部分がアースに接地するべきなのか良く判っていないのですが、とにかくアースが確実に取れてないと後の問題判別がメンドウになるだろうと思い、念入りに剥がしました(笑)。


シャーシ上でパーツの位置関係を確認してみると、基板を固定する為のネジ穴が空いていなかったのでドリルで追加しました。その後トランス、チューブソケット、ラグ板、スイッチ等のパーツを元々シャーシに空けられていた穴に従って組み付けて行きます。後で手戻りが発生しないよう、組み付けたパーツがきちんとアースに接地しているかどうかテスターを当てながら作業を行いました。
kitの要と思われるトランスですが、左の画像で判るように電源トランスがシャーシの端ギリギリに位置しています。
この時点では『さすがK&M Analog Designs、各部のレイアウトがミリ単位で計算されているんだなぁ』と感心しましたが、後にこれが大きな問題を引き起こす事になろうとは夢にも思いませんでした・・・・。


続いてPOTの取り付けです。POTの裏面にアース用のレールをハンダ付けするため、シャーシに取り付ける前にペーパー掛けしておきます。右側がレールをハンダ付けした後の画像です。
ちなみにPOTは全てALPHA製でシャフトはアルミ製です。


電源、インピーダンス切り替えスイッチ、ジャック等の配線を行います。シャーシへのアースポイントをどこにしようかと悩みましたが、Fender AMPで良く見られるように電源トランスの留めネジに端子を共締めしました。


次に基板に抵抗とキャパシターを取り付け、布被覆の配線材をハンダ付けしていきます。抵抗は普通の金属被膜抵抗で、キャパシターは前述のオレンジドロップ。トレブル用のキャパシターはシルバーマイカ製です。
製品としてのTwo-Rock Ampにはビニール被覆の撚り線を使用してあるのですが、今回は製品と全く同じものを組み上げても面白みが無いのと、作業効率を重視して古いFenderアンプに使われているような布被覆の単線を採用しました。布配線だと線を剥く手間が省けますし、なにより数色の線材を使い分けることで配線間違いを無くす効果もあります。


基板へのハンダ付けが終わったらシャーシへ取り付けてPOTへの配線を行います。右の画像ではNFB用の抵抗がワイヤレス(宙吊り)配線になっていますが、決して失敗して基板にパーツが取り付けられなかったのではなくこれが配線図通りの配線なのです。


左の画像はチューブソケットへの配線が完了したところです。さあ次はヒーター配線という段階になって、基板を取り付ける前にヒーター配線を済ませておくべきだったということに気が付きました(笑)。しかし既に後の祭りです。緑色の配線材は他の線材よりも太いためかなり取り回しに苦労しました。右の画像はヒーター配線完了後、試しに電源を入れてちゃんと電圧が掛かっているか確認を行っているところです。
残すは電源の整流部と平滑部のみなのですが、配線図上にどうしても理解できない記述があったのでK&MのJoeさんに直接メールで問い合わせをしました。


質問内容としては、
Q1.メインの47microFの平滑用キャパシターに並列で入れる抵抗が100Kx2本直列になっているようですがこれで正しいのですか?
Q2.配線図の下のほうに22microFのキャパシターをパワースイッチに繋ぐよう書かれていますが、これは正しいのですか?という2点です。
Q1.のメインの平滑用キャパシターに並列で入れる放電用の抵抗は普通は220Kが使われるところですが、Q2.の22microFのキャパシターをパワースイッチにつなぐ意味については全く理解できません。
数回のメールのやり取りをした結果、
A1.配線図には100Kの抵抗を2個直列に繋ぐよう書いているが、手持ちに200Kまたは220Kの抵抗があるのならそれで置き換えても良い。
A2.そのキャパシターは使わないので無視してちょうだい。 という回答を得ました。



Joeさんからの回答により漸く配線が明確になったので電源整流部および平滑部を作成し、シャーシに組み込みます。ちなみに電解キャパシターはRUBY製です。線材を色分けしたお陰で配線作業をスムーズに行う事が出来ました。


POTにノブを取り付け、チューブを挿す前に電源投入チェックです。小一時間程して異常が無いのを確認してからB電源の電圧チェックを行いました。チューブを挿し、ダミーロードを取り付けてから再度電源を入れ電圧チェックを行います。(各部へ供給されている電圧に関しては回路図に記載が無いので正しい数値は判りませんが)特に異常な電圧では無いので善しとし、スピーカーを繋ぎ、ギターを繋いでの音出しテストです。
無事に音が出ました。各ノブやスイッチが全て正常に機能することを確認し、とりあえずシャーシの組み上げは完了しました。(これが松永ライブの三日前、9月14日の深夜でした)


松永でのライブ終了後、スタジオに持ち込んでテストを行い、最終的なバイアス調整と若干大きめだったノイズ対策を行いました。どうも2段目のグリッド−GAIN POTの間の配線でノイズを拾ってるようでしたので、そこにシールド線を使う事にしました。左の画像の赤丸部分がグリッド側の配線で、シールドは熱収縮チューブでカバーしています。右の画像がGAIN POT側の画像で、信号線をPOTの2番端子、シールドをPOTの1番端子に落としてます。
(ちなみにINPUTから初段グリッド間は初めからシールド線を使用しています)


さらに若干ハムノイズが多いような気がしたので、AC100V周りの配線を若干変更し、ハムノイズ対策としては定番とも言えるパイロットランプから100Ω 1/2Wの抵抗をアースに接続しました。
最後にシャーシに日付を書き込み完成です!!
シャーシ単体での重量を量ったら7.2kgありました。
(シャーシはアルミ製で非常に軽いので、その殆どがトランスの重さです)


完成したシャーシをN澤名人から頂戴したRuby用のキャビに納めようとしたところ、なんと、裏側のパネルの支持部分が邪魔で電源トランスが入りません。今更トランスの位置を変更したくないので、悩んだ挙句キャビの干渉する部分を思い切ってノコギリで切り取ることにしました。
そうして裏側からシャーシを入れることには成功したのですが、今度はフロント側のパネル支持部分に当ってしまいました・・・・半べそ状態になりながらも同様にノコギリで切り取りました。


で、ようやくキャビに収めることが出来たので、「ヤレヤレ苦労したワイ」と思いつつフロントパネルを取り付けようとしたところ、何かがおかしい・・・・・。そうです、電源トランスが前方に張り出しているためフロントパネルが取り付けられないのです・・・。
某消費者金融会社の『事前にしっかり計画しましょう』というフレーズが頭をよぎりました。しかしシャーシへのトランス取り付け位置は私が決めたわけではなく、既に空けられていた穴に取り付けただけなのに・・・・まさかこんなことになろうとは・・(涙)。
後日、製品としてのRubyの画像を見たところ、シャーシに予め空いている電源トランス取り付け用の穴とは別の穴を開けて、位置を内側にずらしているということが判明しました。


結局、フロントパネル無しの間抜けな状態になりましたが、とりあえず完成です。
コントロールパネルは左からINPUT,BRIGHT SW,GAIN,TREBLE,MIDDLE,BASS,MASTER,PRESENCE,LOOP BYPASS SW,STANDBY,PILOT LAMPとなっています。(LOOP BYPASSすると段数が減り、MASTER無しの1VOLUMEになります。)
サイズは横幅47cm、高さ27cm、奥行き27cm、重量は12.4kgです。横幅が狭い割に背が高いため、頭でっかちに見えるこのキャビは個人的に好きではないので、そのうちN澤名人にもっと高さを低く横長にして奥行きも少なくした、カッコ良いキャビを作ってもらうことにします。

気を取り直して音を出してみると、おおっ!!ちゃんとマトモな音が出ました!!
まだハムノイズを完全に除去できていないので今後微調整が必要ですが、とりあえず今回の素人アンプ弄りシリーズ第五弾もなんとか成功です!!
このTwo-Rock RubyのKitはかなり自由度の高いkitだったため、市販の至れり尽せりのKitでは得ることが出来ない貴重な経験をさせて頂きました。
このような素晴らしい機会を与えてくださったN澤名人とK&MのJoeさんには本当に感謝しております。

(注)Two-Rock Rubyは既に生産終了しているため、今後kit販売する事はないそうです。




<2005.10.14 追記>

ハムノイズ除去の為に無い知恵を絞って色々と試してみました。AC100V配線をやり直してみたり、電源部の平滑用キャパシターの容量を47から100microFに増やしてみたり、しかし全く変化無しでした。
何が原因なのか皆目見当がつかなかったので、プロに問題判別をお願いしようかとも思いましたが、プロに頼ってしまっては素人Modifyシリーズの主旨に反すると思い直し、試行錯誤しているうちに初段の12AX7を抜いてみたらかなりハムノイズが減ることがわかりました。そこで、おそらく平滑部の残留リプルがどこからか初段の信号部に入り込んでいるんだろうと思い、配線図で平滑部のアースのとり方をよ〜く見直していたら・・・・・・・・・・判りました。


上の図で,鉢△量隶で示しているところは明らかに配線間違いです。これだと電源部の残留リプルが出力管の信号部に入り込んでしまいます。次にですが、薄く点線が書いてあったのでてっきり配線するものだと思い、裏側で配線していたのですが、ここからリプルが初段の信号部に混入していたのです。
アンプの基本が判っている方でしたらこのようなアース線の接続の仕方など配線図を見ればスグに間違いだと気づくでしょうから、ミスは犯さないのでしょうが、そこはさすがズブの素人!基本が全く判ってないのに弄ってますからね!感心するやら呆れるやら・・・・(笑)


訂正した配線図です。この配線図の通りに配線を変更し、ようやくハムノイズが除去できました。
それにしても、K&MのJoeさんが自信満々で『何度もチェックしたけど、この配線図に間違いはない』とおっしゃったのですけど・・・・・(涙)。
しかし、この配線図に間違いがなく、スムーズに組みあがっていたら決してアンプ製作の基本を学ぶことが出来なかったと思います。
敢えて?試練を与えて下さったK&MのJoeさんには重ねてお礼申し上げます!!


(完)