<各パーツの詳細>



(上)61年製、(下)62年製
弦の幅が微調整できるように細かい溝が切られたブリッジサドルは61年の途中までは上のように溝のピッチが1・2弦用、3・4弦用、5・6弦用の3種類が使われているのですが、61年の後半からは一番細かいピッチのサドルが使われなくなり、1・2・3弦用と4・5・6弦用の2種類のみになるというのが一般的な見解ですが、中には例外もあり、59年製なのに2種類のみのケースや62年以降のギターなのに3種類のサドルが使用されているというケースもあるようです。
ちなみにテレキャスターの純正オプションとして1967年頃から追加されたBigsbyユニットにはこのブリッジが組み合わされていました。


(左)61年製 556xx、(右)62年製 871xx
ボディに埋め込まれているブリッジのアンカーの突起部分の高さは61年までは左のように高いのですが、62年には右のように低いものが使われるようになります。これは62年に発売されたジャガーのミュート機構装着に対応するための仕様変更だったようです。
アンカーから出ている線はアース用の線で、これがピックガードあるいはピックガード裏側のシールドプレートに密着して弦アースになります。アノダイズドピックガード期は1弦側からだけしか出ていませんがタートイズシェルピックガードになってからは6弦側にも追加されています。


(左)61年製、(右)62年製
ブリッジ先端の高さ調整のためのスクリューは上記の変更とほぼ時期を同じくして、左側の接地部分が丸いタイプから右側の尖ったタイプに変更されます。これはすり鉢状になったアンカー中央部に正しく接地させるための変更だと思われます。


(左)62年製、(右)61年製
このスクリューの長さをノギスで測定すると9.5mmであり、59年以降のストラトのブリッジサドルのスクリュー(長いほう)と全く同一です。61年頃までは接地部分の丸いストラトのスクリューを流用し、62年頃から接地部分を尖らせた専用パーツへと変更したのでしょう。


(左)61年製、(右)62年製
テイルピースの刻印は61年前半までがPAT.PEND、61年の後半からは右側のようにPAT.ナンバーが入るようになります。テールピース上部に付いている丸いツマミが"trem-lock"です。アームを使用しない場合はこのツマミを下に下げておくとテールピースが完全にロックされた状態になるので弦交換時や、弦が1本切れた時にチューニングが狂わなくなります。
発売前のNAMM showでのFender price sheetによるとnon-tremolo versionが予定されていたようですが、この機構を付加することによりnon-tremolo versionを用意する必要が無くなった訳です。


アームの曲がり方には個体差がありますが、アーム部分にはクロームメッキが施されており、先端のキャップはストラトと共用です。右の画像で判るようにアームユニットへの差込部分は一段細くなっており、脱落防止の為に先端に向かって太くなるよう微妙なテーパーが付けられています。



(上左)59年製 288xx、(上右)61年製 556xx
(下左)61年製 559xx、(下右)62年製 871xx
TONE CONTROLのキャパシターの変遷です。当初はC.D(コーネルダブラー)社のパラフィンでポッティングされたもの(耐圧150V)でしたが61年の途中からS.K社のセラミックディッシュタイプ(耐圧50V)に変更されます。値はいずれも0.03μFです。
59年製のVOLUME POTはCTS製 1MΩ LINEAカーブ、TONEがCTS製 1MΩ AUDIOカーブ、上右の61年製 556xxではVOLUMEは同じくCTS製なのですが、TONEにはSTACKPOLE製丸溝タイプが使われています。下左の61年製 559xxはVOLUME/TONEともCTS製です。(下右の62年製は近年のCTS製に交換されています)


トグルスイッチはGibsonのエクスプローラやSGに使われているのと同じSWITCH CRAFT製です。右の画像は60年代後期製と前期製との比較画像で、スイッチロッド中央部のナイロン製キャップが黒いのが60年代後期のもの、白いのが60年代初期のものです。


トグルスイッチ本体がGibsonと同一なので、勿論スイッチチップもGibsonと同一パーツです。左側が60年頃まで使われたブラウンのタイプ、右側が61年頃からの白いタイプです。



(上左)59年製 288xx、(上右)61年製 556xx
(下左)61年製 559xx、(下右)62年製 871xx
6弦側のスライドスイッチをONにするとこのサブコントロールを経由したフロントPUだけの音が出るようになります。俗にプリセット・トーン/ボリュームと呼ばれており、使い方によっては各ピックアップに独立したVOLUME/TONEがあるようなもので、Jazzmaster登場まではマスターVOLUMEしか無かったフェンダーギターにとっては画期的な仕組みだと言えます。
サブコントロールに使われているPOTはいずれの年代もSTACKPOLE製の、標準より一回り小さいもので、VOLUMEには 1MΩ LINEAカーブ、TONEには 50kΩ AUDIOカーブが使われています。59年製だけは底面に丸溝があるタイプでその他の年代は底面がフラットなタイプです。キャパシターは59年製がコーネルダブラー製(耐圧150V)、61年にはフェンダーアンプではお馴染みの黄色いASTRON製(耐圧150V)が使われるようになります。その後62年にはメインコントロールと同様、S.Kのセラミックディッシュタイプ(耐圧50V)に変更されます。値はいずれも0.02μFです。

メインコントロールとは異なる抵抗値のPOTと容量の異なるキャパシターを使用しているため、スライドスイッチでフロントPUにした時の音と、トグルスイッチでフロントPUのみにした時の音は異なります。


(左)61年製、(右)62年製
プリセット用のスライドスイッチは60〜61年までは上部が平らで横にはWIRT CO.というメーカー名が刻印されています。62年頃からは上部が丸くなり、STACKPOLEの刻印が入っています。


(左)61年製、(右)62年製
61年までと62年以降のスイッチの大きな違いはその取り付け方法にあります。左の61年までは取り付けにナットが必要だったのですが、右の62年以降のスイッチはナットが不要になっており、組み込み時の生産性が向上しています。


59年製のスライドスイッチは外見は61年のWIRT CO.製と似ているのですが、裏側を見ると構造が異なっており、別バージョンのスイッチであることが判ります。しかし何の刻印も入っていないため製造元は特定出来ませんでした。


本来はJazz用ギターとして1958年にこの世に生を受けたJazzmaster、代表的な使用アーチストとしてまず思い浮かぶのは、なんといっても 「The Ventures」でしょう。初期のベンチャーズはボブ・ボーグル氏がジャズマスターを使用していましたし、ドン・ウィルソン氏は最初はストラトだったものの、後にジャズマスターを使用しています。いずれもサンバースト、タートイズシェルピックガード、スラブ指板で、59年後半から62年前半までのものだったと思われます。
その後のJazzmasterの歴史に関しては出版されている書籍に詳しく解説されているのでここでは省略します。

Jazzmaster発表の1958年にはGibsonからシンラインボディの完成形とも言えるES-335TDが発表されました。こちらはソリッドボディでJazzギターの市場を狙ったJazzmasterとは全く正反対のアプローチながら、Gibsonとしては画期的なダブルカッタウェイボディやセンターブロック構造の採用等、いくつかの類似点を見出すことが出来ます。その後のES-345TD/ES-355TDに搭載されるステレオ・バリトーンスイッチは、電気的に音色のバリエーションを作り出すFenderを意識したのかどうか判りませんが、当時のGibsonとしてはまさに革新的だったのではないでしょうか?
結局Jazzmasterは当初想定したJazzギターの市場ではヒットしなかった訳ですが、約$350のJazzmasterに対して、ES-335TDがわずか$267.5、ES-345TDでも$345.0というリーズナブルな価格で発売されたという事が少なからず影響しているのではないでしょうか?

同じく1958年には、Fender優勢のソリッド・ギター市場へGibsonからの『刺客』としてFlyingVとExplorerというモダニスティック・ギター達が送り込まれました。Gibsonのモダニスティック・ギター達が斬新なデザインのボディに既存のハードウェアを搭載しているのに対して、Jazzmasterは既存デザインを進化させたボディに斬新なハードウェアやサーキットを搭載しているところが対照的ですね。

それにしても1958年というのは、本当に素晴らしいエレクトリック・ギターや個性的な人達?が多く生まれている年ですね!(笑)

(完)


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