今月の特集はALLROSE TELECASTERのご紹介です。

<特集No.72 ROSEWOOD TELECASTER 特集>

今月の特集は通称ALLROSEと呼ばれるROSEWOOD TELECASTERを、普通のTELECASTERには全く興味が無い寿庵皆男がご紹介いたします。

当時FENDER社の新進のビルダーだったフィル・クビキが作り1968年12月にジョージ・ハリスンの元に届けられたシリアルNo.235594を始祖とするROSEWOOD TELECASTERは、最も高価($375.00)なTELECASTERとして'69年から'72年まで生産されました。その生産本数は200本とも400本とも言われています。しかしハワード・リース氏は'69年に100本と言っていますし、ノーマン・ハリス氏が「Very Rare」と言う位ですからもっと少ないのかもしれませんが真相は不明です。

今回はまたまたレオスキフレンズのご協力のお陰でオリジナルの'69年製3本、'71年製1本の他に、'96年製CustomShop、'05年製MasterBuilder by M.Kendrick、'06年製MasterBuilder by J.English の合計7本を同時に比較するという滅多にない機会に恵まれました。


<original ROSEWOOD TELECASTER編>

左から'69年製 SN 267392、'69年製 SN 270991、'69年製 SN 271996、'71年製 SN 328988
外見は退色によりかなり色が異なるものの同じオリジナルROSEWOODの4本ですが、実はシリアルから初期の生産型だと思われる左端の個体はソリッドボディになっています。
各種TELECASTER本には生産型の初期はソリッドボディだったという記述がありますが、この個体もその内の1本なのでしょうか。


左から'69年製 SN 267392、'69年製 SN 270991、'69年製 SN 271996、'71年製 SN 328988
ボディバックはトップとは退色の仕方が違うので、木目と相まって違った味わいがありますね。


プロトタイプとも言えるジョージのものはホローボディであるというのが通説です。 なぜホローボディ説が一般的になったのかは判りませんが、仮にそれが真実だとするとなぜプロトタイプがホローで生産初期にはソリッド、その後またホローにしたのか疑問が膨らみます。
フィル・クビキ氏はインタビューでホロー構造だったとは語っていませんし、時系列で考えてもジョージのものはソリッドだったのではないでしょうか。


では一本ずつじっくり見てみましょう。



'69年製 SN 267392
前述のようにソリッドボディの個体です。退色が激しく、焼け方から長い間同じ場所に展示されていた可能性が考えられます。かなり使い込まれた個体で、リフィニッシュされておりパーツもいくつか換わっていました。
日本のストラト研究家の第一人者として私達が敬愛するH野氏によると、ソリッドボディはH野氏が知る限りではご友人であるギタリストN村氏が所有する'70年製とこの‘69年製2本のみしか知らないとのことですのでかなりレアな存在のようです。



'69年製 SN 270991
退色も少なく、TOPもBACKも美しい木目を持ちナット、フレットを含めオリジナル度が高い逸品です。今回の7本中最軽量で、ホロー構造が体感出来る1本です。



'69年製 SN 271996
上の個体と千番程しか違わないこの個体も非常に保存状態が良く、美しい色と木目に目を奪われます。ニアミント状態で金属パーツもまだ新品のように美しく輝いています。



'71年製 SN 328988
若干退色が進んだ個体です。ボディは2ピースですが、TOP、BACKは勿論ネックからヘッドにかけての強烈な木目が特徴です。「The FENDER 2」に掲載された個体ですが、その時よりもさらに使い込んだ形跡がありトラスロッド調節の為ピックガードが加工されてしまっています。


左から'69年製 SN 267392、'69年製 SN 270991、'69年製 SN 271996、'71年製 SN 328988
ボディ6弦側から見た所です。
左端の'69年製はトップとバックが完全な1枚板から作られていることが分かります。1枚の厚いローズウッドをわざわざスライスしてメイプルを挟んだのは、H野氏によると少しでも変形を少なくする為の手法だとのことです。
サンドイッチされたメイプルの厚みは'69年製 SN 267392 1.2mm、'69年製 SN270991 1.7mm、'69年製 SN271996 1.7mm、'71年製 SN 328988 2.1mmとなっています。


左から'69年製 SN 267392、'69年製 SN 270991、'69年製 SN 271996、'71年製 SN 328988
ボディ1弦側から見た所です。
ボディの厚みはエンドピン側で'69年製 SN 267392 44.4mm、'69年製 SN 270991 45.0mm、'69年製 SN 271996 44.2mm、'71年製 SN 328988 48.3mmとなっており'71年製が一番厚いようです。

また重量は スペック一覧表を見て頂くとお分かりのように、さすがにソリッドボディの個体が4375グラムと一番重いものの、他の個体は4kgを切っています。 ROSEWOOD TELECASTERといえば「死ぬほど重い」とおっしゃる方も多いようですが、実測してみるとそれが先入観からくる誤解であるということが分かります。



左上)'69年製 SN 267392、右上)'69年製 SN 270991
左下)'69年製 SN 271996、右下)'71年製 SN 328988
ボディをエンドピン側から見た所です。
左上の'69年製が1枚板の真ん中でスライスして薄いメイプル板をサンドイッチしているのが良く分かります。専門家ではないので良く分かりませんが、ブックマッチ等々、板の合わせ方は材の大きさや木目によって異なるようです。


左から'69年製 SN 267392、'69年製 SN 270991、'69年製 SN 271996、'71年製 SN 328988
ROSEWOODのヘッド形状は通常のTELECASTERと特に変わるものではなく、'72年までの特徴であるウイングタイプのストリングガイドが1個という仕様です。ジョージのものとは異なりワンピースネックである為、メイプルのプラグがあります。
この年代の仕様としてロゴデカールを貼った上からヘッド表面のみラッカー塗装が施されています。年代によりロゴの傾き方が異なるという説もあるようですが、特に規則性は無いようなので単なる個体差と言えるでしょう。


通常のTELECASTERは'67年の中頃から黒いCBSロゴに変更されますが、ローズウッドのネックに黒いロゴでは目立たないという理由からか、'66年頃に使われた『金色のトランジションロゴが使われている』・・・・・・と一般的には言われています。
しかし、こうして並べて見てみると実はロゴの内側は金色ではなく銀色で、ヘッド表面のラッカーの黄変およびローズウッドの油分が滲んで金色に見えているということが分かります。
参考までに金色のトランジションロゴを持つ'66年製のストラトと並べてみました。
左端の個体は補修用のトランジションロゴにリデカールされています。左から2本目の'69年製はラッカーの変色が少ない為、銀色がはっきり分かります。(ノーマン・ハリス氏の写真集に載っている個体のロゴも銀色ですね。)


アップで見るとローズウッドの油分が滲んで金色に見えているということが良く分かりますね。


左)ROSEWOOD TELECASTER、右)TELECASTER BASS
RS修平氏の分析によると、銀文字で右肩にRマークが入ったロゴデカールは'68年頃から生産されていたTELECASTER BASSにしか使用されていないそうです。従ってTELECASTER BASSのデカールのモデル名部分を切り取って流用したのではないかと推測されます。


左から'69年製 SN 267392、'69年製 SN 270991、'69年製 SN 271996、'71年製 SN 328988
個体差なのか、左端のソリッドボディの個体だけメイプルのスカンクストライプがちょっと長めです。



左上)'69年製 SN 267392、右上)'69年製 SN 270991
左下)'69年製 SN 271996、右下)'71年製 SN 328988
左上のソリッドボディは'69年の初期製なので、普通のTELECASTERと同様ピックガード下に配線用のエクストラ・キャビティが開いています。またこの個体はフロントにハンバッキングPU用のザグリがあったのを綺麗に補修してあります。
'69年の途中からは、ネックポケット側からコントロール・キャビティまでドリルで配線用の穴が開けられるよう変更されたため、ホローボディの3本にはエクストラ・キャビティはありません。ピックガードに隠れている部分を見るとそれぞれの退色具合が良く分かりますね。 左下と右上の'69年製は殆ど退色しておらず、右下の’71年製と左上の'69年製はくっきりと日焼け跡が付いています。


左から'69年製 SN 267392、'69年製 SN 270991、'69年製 SN 271996、'71年製 SN 328988
オリジナルのピックガードの裏面は赤または濃いグレーのパーロイド柄です。表面の黒および白い部分の材質が塩化ビニール、パーロイド部分がセルロイドと異なる材質を貼り合わせてあるため、経年変化により中央部が膨らんでいます。(左端の個体は'75年以降の黒白黒3プライに交換されています)



左上)'69年製 SN 267392、右上)'69年製 SN 270991
左下)'69年製 SN 271996、右下)'71年製 SN 328988
コントロール・キャビティを見るとソリッドとホローの違いが一目瞭然です。ホローボディのキャビティ内部には薄いメイプル板がフニャフニャと波打ち、ジャック付近は乱暴に破られているという感じです。ホロー部分のボディの板厚をキャビティの縁で測ると薄いところでそれぞれ6.0mm、5.1mm、7.0mmでした。
ここでは'71年製のものが一番厚くなっていますが、H野氏が以前見た'72年製はかなり薄く、内部に補強の為の支えがあったとのことですから年代による変化というよりは、削りすぎ等の個体差なのかもしれません。ただ狂いを少なくする為に板厚を薄くした可能性もあるとのことです。
POTはそれぞれ'66年17週のスタックポール製、'66年36週のCTS製、'66年36週(Vo.)&同34週(Tone) のCTS製、'66年36週 のCTS製です。
スイッチは通常のテレキャスター同様、全ての端子の先端が切断されたCRL社のものが使われており、キャパシターは0.05μFのセラミックディッシュが使われています。'67年以降にボリュームPOTに付けられたハイパスコンデンサーも確認できます。



左上)'69年製 SN 267392、右上)'69年製 SN 270991
左下)'69年製 SN 271996、右下)'71年製 SN 328988
ホローボディのリアピックアップキャビティにはホロー加工時の治具穴痕を埋めたメイプルのプラグがあります。'71年製はボディ加工の工程が異なるのか二箇所にプラグがあります。(当然ソリッドボディには存在しません)



左上)'69年製 SN 267392、右上)'69年製 SN 270991
左下)'69年製 SN 271996、右下)'71年製 SN 328988
'69年製3本のネックデイトはそれぞれ「3 MAY 69B」、「3 290 9 9B」、「3 290 9 9B」です。「3 290 9 9B」という表記は'69年〜'71年にしか存在せず、最初の3がテレキャスター、次の3桁の数字は意味不明、次の9は生産月、その右側の9は生産年の下一桁、最後のBはネック幅を表しています。'71年製にはネックデイトが入っていません。



左上)'69年製 SN 267392、右上)'69年製 SN 270991
左下)'69年製 SN 271996、右下)'71年製 SN 328988
リアピックアップのキャビティ同様ソリッドボディのネックポケットには治具穴痕のプラグが無く、他の'69年製には1個、'71年製には2個のプラグがあります。


以上、オリジナルのROSEWOOD TELECASTER4本を検証してみました。

1968年12月にジョージ・ハリスン用プロトタイプが素晴らしい柾目の1ピースローズウッドを使って製作されましたが、それは変形防止の為に薄いメイプル板をサンドイッチしたソリッドボディだったと思われます。翌'69年には市販化をはかり、同じくソリッドボディで数本〜数十本生産してみたところ、重いというクレームとともに反りによるクラックというトラブルが発生したため、その対策としてホロー構造に変更したのではないでしょうか。
翌'70年はグルーン氏の書籍によるとROSEWOOD TELECASTERは製造されていませんが、H野氏のご友人であるN村氏の個体は'70年製とのことなので'69年初期に生産していたソリッドボディを'70年になって出荷したのかもしれません。
1970年4月の「Let It Be」公開後、ROSEWOOD TELECASTERへの関心の高まりを受けて'71年と'72年に再び製造されたものの、材の調達が困難だったために生産数は少ないのではないかと推測します。

業界歴30年を超えるH野氏でさえ、これまでに見たROSEWOOD TELECASTERは10本。非常に稀少で謎が多いギターだと言うことです。
バブル期に数本扱ったことがあるという某ヴィンテージ専門店のN島氏によると、1本1本仕様が異なっていたとのことです。材料の入荷具合に左右されコンスタントに製造されるモデルでは無かったということを物語っているのでしょうか?
またクラックの入った個体も見たとのことで、湿度管理等デリケートな取り扱いが必要のようです。


こちらもご覧ください!復刻モデル編スペック一覧表



今回はROSEWOOD TELECASTER特集ということで4本のoriginal ROSEWOODと3本の復刻モデルをご紹介しました。
サンバースト・レスポールよりも遙かに稀少なモデルだけに謎の多いギターですが、一般的にはBEATLES好きのアイテムとして認知されているだけかもしれません。
華麗なローズウッドの外見とは裏腹に、世間一般のイメージとして高い・重い・見かけないという三重苦を背負った、存在もレアだが欲しがる人もレアな悲運のギターだと言えるのではないでしょうか。

因みにジョージ・ハリスンのROSEWOOD TELECASTERをデラニー・ブラムレットから借りて弾いたことがある沖縄在住のギタリスト、デヴィッド・ラルストン氏と会う機会があったのであのギターの感想を聞いたところ、「ボロだ。サスティーンが無いし重い。」と長年のファンの夢を打ち砕く様なコメントをしてくれました(泣)。
でも良いんです。私にとってはジョージ、そしてDuaneも手にした憧れのギター。
それがROSEWOOD TELECASTERなのです。

今回の特集作成にあたって貴重な機材の提供、情報提供等、全面的にご協力いただいたM岸ふくかいちょ様、I崎公様、DR.GEN様、H野様、N島様に深く感謝いたします。



(完)