全部抱きしめて

 雨の降っている日、逸樹が何も言わずにじっと雨を見つめていると、
また、あの人のことを考えているのかなと思ってしまう。
逸樹と駆け落ちしようとして、交通事故で死んだ恋人とその子供。
逸樹の永遠の恋人。
逸樹は忘れることが最近では多いと言うけれど、
雨が降るとなぜか痛くもない昔の傷が痛むらしい。
彼女たちが忘れないでといっているかのように。
逸樹が彼女たちのことを完全に忘れ去る日なんかこない。
逸樹を俺だけのものになんかできない。
でも、彼女を思ってる逸樹ごと全部愛することしか俺にはできない。
雨の日には彼女のことを思っている逸樹ごと愛するしか。

 俺はじっとしとしと降る雨を見ていた逸樹に近づき後ろから抱き締めた。
「愛してるよ、逸樹」
「僕も愛してます。ずっと一緒にいてくださいね」
どこかでいつも愛する人がいなくなることを恐れている逸樹。
「ずっとずっと一緒にいような俺たちは」


 
 (あとがき)
 真由子さんと貴也くんに焼きもちをやきつつそれでも進哉くんには逸樹を愛して欲しいという願望で書きました。

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