ディスクブレーキ
ある方から
「フロントブレーキにダブルディスクとシングルディスクの2種類があるけど、ダブルディスクの方がよく効くの?」と問われたとき

即答できなかった。
ダブルディスクの方が本当によく効くのだろうか?
たとえば、同じキャリパを使い同径のダブルディスクのバイクとシングルディスクのバイクで比較したとき、その効きに変化はあるのだろうか?
そもそも、ブレーキが効くというのは、どういう事なんだ?
話をもう少し単純に考えよう。
ブレーキとは、タイヤの回転運動エネルギーをディスクをキャリパで挟んで摩擦を起こさせて熱エネルギーに変換する機械だ。
ならば、ダブルディスクのバイクとシングルデスクのバイクのブレーキ性能差はどうだろうか?
同じキャリパを使い同径のダブルディスクのバイクとシングルディスクのバイクで比較したとき、その効きに変化はあるのだろうか?

摩擦エネルギーに変えるブレーキの強さは、キャリパとブレーキパッドが同じなら、ディスクを挟み込むキャリパの強さで決まると思う。
どれだけ強く摩擦力を発生できるかで決まると思う。
そこにはシングルデスクだろうとダブルディスクだろうと形式は関係ない気がするのだ。
要は、如何に摩擦力を発生できるかである。

静止状態でブレーキレバーを握っていくと、キャリパーがじわりと左右に広がるポイントが確認できる。これがキャリパ剛性限界と呼ばれるものだ。
これは、どんなキャリパにも存在する特性だ。つまり、これ以上強く握ってもブレーキを強く効かせることは出来ないということ。
ダブルディスクとシングルディスクの比較において、単純に同じブレーキ圧力なら、ダブルディスクの方が2倍の摩擦が得られるので制動力が強く得られるが、シングルディスクでもブレーキ圧を高めれば、キャリパーが膨らむところまではダブルディスクと同様な制動力が得られるような気がする。

推論として、機械的な制動力はシングルディスクだろうがダブルディスクだろうが、ある速度までは同じ制動力が得られる。
その条件としては、シングルディスクはダブルディスクが発生している摩擦力を同じ摩擦力を得るためにブレーキの油圧を高める(レバーを強く引く)必要がある。
だが、その速度の上限は、キャリパの剛性限界までとする。
そこで、ダブルディスクの登場だ。
同じ力でレバーを握るなら2倍の摩擦力が得られるはず。
逆に言えば、弱い力でもシングルデスクと同等の摩擦力が得られることを意味している。
ここにダブルディスクの優位性があると思う。
機械的な側面で、同径のディスクでダブルディスクとシングルデスクのフロントブレーキを比較すれば、タイヤの回転を止めるという制動という点でダブルディスクの優位性は揺るぎないもでしょう。
ところでバイクは機械ですが、乗るのは人間ということが問題を難しくしています。
ここから先は、現行モデルという制限を付けましょう。
現代のバイクは、みな高性能のディスクブレーキを装着しています。
これらバイクは、シングルデスクでも容易にバイクをロックさせるだけの制動力を持っているという事実です。
これは、私のファットボーイのフロントキャリパ回りの写真です。
1つのキャリパ内に4つのピストンが内蔵されており、それを油圧で作動させます。
現在は、ブレーキホースもテフロンのステンレスメッシュのブレード巻きに変えていますが、
これ自体は、制動力に寄与しません。
もちろん、強い制動力を得るためには強くブレーキレバーを引く必要があります。
それに対して、最新型のスーパースポーツバイクのフロントのダブルディスクは、中指1本でも十分な制動力が得られます。
だから、ハーレーのブレーキは効きが悪いと結論づけないでくださいね。
本筋は、ここからです。
なぜハーレは強くブレーキレバーを強く引かなければならないのか?そして、なぜスーパースポーツバイクは中指1本でもブレーキがよく効くのか?
それは、バイクの重さが大きく影響しています。
ハーレーでも、ビックツインとスポーツスターを乗り比べると同じシングルディスクでもスポーツスターのブレーキの効きの良さが際だって感じます。
さらに軽いスーパースポーツバイクは、大径のダブルディスクを装備し、強い前傾姿勢でフロントタイヤに強い荷重をかけられるのでますます強い制動力が得られます。
高速域からブレーキをかけるときどうレバーを握りますか?
肝心なことはここですか、ここだけ心に留めておいてください。

ブレーキに指をかけフロンフォークを沈めフロントタイヤを路面に押しつけます。
そして、フォークが沈んで安定してから強くレバーを引きます。大事な点は、握ると言うよりレバーを引く感じです。
タイヤが高速で回転しているときは、タイヤの慣性モーメントが強いのでロックすることはありません。
安心してハードブレーキングが出来ます。
そして、ここで目指すスピードまで落としたら、ここからは、デリケートにブレーキを抜きにかかります。いわゆるリリースです。
レバーをいきなり離してしまうのではなく、スピード調整のために徐々に指の力を抜く感じです。
こうすることでデリケートで強いブレーキングが出来ます。
スピードが高いうちに強くブレーキレバーを引く、速度が低くなったらリリースです。
速度が低くなってもブレーキレバーに力を入れていると、タイヤのロックにつながってしまいます。
そんじゃ、こんなシングルディスクブレーキはどうですか?
ビューエルのフロントシングルブレーキです。
だれでも、これを見るならこのブレーキは絶対に効くと確信するでしょう。
でも、シングルブレーキだよね。

タイヤの回転を止める制動という仕組みを考えてみましょう。
タイヤの中心点から離れれば離れるほど、回転モーメント(力)は少なくなる。
回転モーメントが少ないところで、ディスクを挟めばより少ない力で制動効果を発揮出来る。つまり、挟む力が同じならディスクの直径は大きい方がより制動力をえることが出来る。そして、それが2セットあるダブルディスクはさらに大きな制動力を得ることが出来る。

ところが、このビューエルのシングルディスクはリムの外周部にマウントされている。
回転モーメントが直径に半比例するなら、タイヤの中心から遠く離れたリム部でディスクを挟むことは制動力という点で大きな利点がある。
これがビューエルのウリだ。しかし、この発想、凄いよね。
最後に、タイヤを機械的に止めようとする制動力と、バイクを止めようとする減速力は似ているようでも実は、違いがあると言うことなんです。
ブレーキの扱い方で、より短く安定しても止まれるし、それがひいては安全につながっていく。

さて、主題の回答としてシングルディスクブレーキは、ブレーキが効かないか?
「いえ、シングルディスクでも十分に満足のいく制動力が得られます」
そかし、その制動力を引き出すためには、フロントフォークを沈めた後に一瞬強くブレーキレバーを引くことで可能です。
ですが、その後のリリースはデリケートな処理が必要になります。

ここに至ると、既にブレーキ単体での話では済まなくなります。
フロントフォークのダンピング特性、車体の扱い、ライディングフォーム、バイクのあらゆる要素がブレーキングに関係してきます。
そして、最終的にはバランスの良いブレーキングに行き着きます。

ここから先は、自分のバイクで最高のブレーキングを探求していってください。
ハーレーでもスーパースポーツバイクでも、同じようにブレーキングの楽しさを見つけることが出来るでしょう。
フロントブレーキは、決して怖いものではありません。
むしろ反対に、バイクを自由自在に扱うきっかけ作りに利用できます。
減速できるからアクセルを開けられる。だから楽しい。
ブレーキング操作は、バイクを自在に扱うキーポイントです。
あなたのバイクのディスクは、青く焼けていますか?