The Society For Music Theory Of Japan
日本音楽理論研究会


第21回例会発表概要 川本聡胤

       タルカス ―― プログレッシヴ・ロックの研究  川本聡胤

 1950年代中頃、若者の間で、ある新しいスタイルの音楽が生まれた。それは、駆り立てるようなリズムと、大音量のギターや電気的に増幅されたヴォーカルを特徴とし、また分かりやすい歌詞と、ブルーズ和声およびブルーズ形式に基づくもので、人々はそれを「ロックンロール」と呼んだ。ロックンロールは、ある意味で、大人の聴くクラシック音楽の対極に位置するものといえる。事実、クラシック音楽に見られるような込み入ったリズムや繊細な生楽器、文学的な歌詞と難解な和声や形式などは、ロックンロールには一切見られないからだ。ロックンロールという音楽は、その意味で、クラシック音楽に反抗して生まれた音楽といってもいい。

 ところが、1960年代末頃になると、次の世代の若手ロック・ミュージシャンたちは、もっと新しいタイプのロック音楽に飢えるようになった。彼らによると、ロック音楽というものは、クラシック音楽の対極というだけの位置付けに甘んじるべきではない。ロック音楽は、従来のロックンロールとクラシック音楽とを、より高いレベルで統合した、もっと包括的な音楽へと進歩(progress)するべきというのである。そして彼らは、ロックンロールの要素と、クラシック音楽の要素とを自由に織り交ぜた、新しいタイプの音楽を生み出した。それはプログレッシヴ・ロックと呼ばれ、1960年代末から1970年代末までの約10年間、ポピュラー音楽界を風靡した。しかも彼らの努力のおかげで、ロック音楽はその音楽語法を飛躍的に拡大することになり、その後のロック音楽は大いに多様化することになる。その意味で、ロック音楽史におけるプログレッシヴ・ロックの重要性は、計り知れないものがある。

 本発表では、以上の背景をふまえ、具体的な楽曲分析を通して、プログレッシヴ・ロックがクラシック音楽の要素をどのように取り入れたのかに関する考察を行う。特にここで分析作品として選んだのは、エマーソン・レイク・アンド・パーマー(ELP)による1972年作『タルカス』である。エドワード・マカンによれば、これはプログレッシヴ・ロックの4大傑作の1つである。またこの曲の中には、モーツァルトやベートーヴェン、ブラームスやワーグナー、そしてバルトークやストラヴィンスキーなどといった、古典派、ロマン派、20世紀のクラシック音楽の要素が見いだされる。これらがどのようにロック音楽的な要素と融合されているのかについて、本発表では、参加者とともに洗いざらい分析していくことができればと思う。


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