不育症(2):子宮形態異常・内分泌異常・染色体異常

2014年8月記

本ページの出典・引用元は、厚生労働科学研究費補助金「不育症治療に関する再評価と新たなる治療法の開発に関する研究」班により平成23年3月に発表された「厚労研究班の研究成果を基にした不育症管理に関する提言」、および、平成24年3月に発表された「反復・習慣流産(いわゆる「不育症」)の相談対応マニュアル」です。

同研究班のHP、及び、出典・引用元の提言/マニュアルのリンク先は以下です。

以下、太字は上記提言/マニュアルからの引用、細字は本HP管理人の個人的記載事項という記載方式となっております。

子宮形態異常

子宮形態異常とは、子宮が多少ユニークな形態をしている場合のことを指します。
いろんなパターンがあるのですが、下図に描かれているようなものが典型例です。
「子宮奇形」という言葉が使用されることも多いのですが、あまりいい響きではないので、この言葉はやめましょう、という意見があります。

(図は「反復・習慣流産(いわゆる「不育症」)の相談対応マニュアル」p12より引用)

なぜこのように子宮形態異常になるのか、というと、女性の皆さんには、そもそも子宮の元になる器官は左右2個できるのです。
その左右2個ある「子宮の元」が「くっついて」1個の子宮になるのですね。
この過程のどこかでトラブルが起こると、子宮形態異常が起こります。

以前より、双角子宮・中隔子宮の方が流産なさった場合、胎児の染色体異常の割合が低いことが知られていました。
すなわち子宮形態異常がリスク因子の一つとなりうる、と考えられているわけです。
でも、産婦人科医をやっていると、子宮形態異常の方の分娩を扱うのは稀ではありません。
「しょっちゅう」という言葉をつかってもいいぐらいの頻度です。
なので、子宮形態異常=全例流産というわけでもありません

子宮形態異常で特に不育症と関連が深いのは「中隔子宮」であると言われています。
「中隔子宮」と「双角子宮」は、内腔が2つの部屋にわかれている点では同じなのですが、中隔子宮の方が妊娠予後が悪いことが知られています。
結局、部屋を2つに仕切っている『間仕切り』の質の差なのだろう、と言われています。
双角子宮の『間仕切り』は子宮内膜→子宮筋層→子宮漿膜と、本来の「子宮の壁」を構成する全ての成分が存在するのに対し、中隔子宮の『間仕切り』は、本来の「子宮の壁」を構成する成分全てが備わっていないわけです。
なので、中隔子宮の『間仕切り』は、機能的に「健常な子宮の壁」たりえないのですね。
実際に中隔子宮の中隔は、血管が少ないのではないか?とか、ホルモン感受性が低いのではないか?とかいった報告があります。

なので、僕ら産婦人科医が「子宮内腔が二つに分かれている」方を拝見した場合、「中隔子宮」なのか?「双角子宮」なのか?の鑑別を慎重に行う必要があるわけです。
でも、これが結構難しい場合もありますし、また、「中隔子宮」と「双角子宮」の中間、みたいな場合もあり、奥が深いです。

では治療に関してどのように考えられているのか?という点が「反復・習慣流産(いわゆる「不育症」)の相談対応マニュアル」に記載されています。
以下、同記載内容のサマリーです。

子宮形態異常があれば即手術、というわけではなく、個別に慎重に手術適応を判断していかねばならない、ということです。

内分泌異常

本ページで取り上げている厚生労働科学研究費補助金「不育症治療に関する再評価と新たなる治療法の開発に関する研究」班のガイドラインによると、内分泌異常でスクリーニング検査すべきは「甲状腺機能」「糖尿病」が挙げられています。
で、これらの異常が見つかったら、内科医にコントロールしてもらいましょう、と書かれています。
全体の頻度としては、「甲状腺異常」が6.8%で見いだされたとあります。

従来「推奨」されていたFSH/LH/PRLなどの下垂体ホルモン検査、さらには黄体機能検査は削除されています

染色体異常

非常にデリケートな部分ですので、完全に「ガイドライン」に準拠した内容のみを記載します。

とあります。
染色体検査というのは、高度な個人情報を含むわけですので、どんな検査なのか?何がわかるのか?結果はどのように(誰に)知らされるのか?などなど、十分なカウンセリングと同意の上で施行されるべき検査なのは、言うまでもありません。

で、さらに夫婦間での「生殖」というシーンでは、さらに特別な配慮が必要です。

ご夫婦のどちらかに転座があった場合、それがどちらなのか?を知らされない権利を考慮しなさい、というわけです。
で、ここからが大事。

どういうことかというと、不育症夫婦のいずれかに転座が見いだされた場合、本当にその転座が過去の流産の全ての原因なのか?という大疑問があるわけです。
つまり、例えば、過去の既往流産が、本当は胎児因子の偶発染色体異常(例えばモノソミーとか)によって偶発的に起こっていた。でもそれは知らずに、スクリーニングで両親が染色体を調べた。たまたま均衡型転座が見つかった、とか。
過去の既往流産は実は抗リン脂質抗体症候群によるものだった。でもそれは知らずに、スクリーニングで両親が染色体を調べた。たまたま均衡型転座が見つかった、とか。
なので、既往流産の理由が本当に全てその転座が原因であると断定できるのかに疑問が残るわけです。

ということで、染色体異常に関しては無責任にネット上で書き散らかす内容ではありませんので、公式のガイドラインの抄読のみに留めさせていただきます。