人工授精総論

2014年3月記

人工授精(AIH)というと、一般的には「子宮内」人工授精(Intra-Uterine Insemination:IUI)のことを指しますが、実は、精子を戻す「場所」は何も「子宮内」に限った話ではないわけです。
事実、歴史的には色々な所に精子を戻すtryがなされてきて、最終的に今の形に落ち着いているわけです。
その中には、「歴史的価値しかなさそうなもの」~「うまく利用すればもしかして効果的なのかも?」というものまでさまざまです。
ここでは、そんな人工授精の種類を見ていきたいと思います。

どこに精子を戻すか?

【腟内精液注入法:Intra-Vaginal Insemination(IVI)】

精液を液化のみして、腟内に注入する方法です。
性交障害のカップルに応用可能で、管理人は現在でもしばしば利用する方法です。
ネット上では「スポイト法」と呼ばれています。
その気になればご自身で行うことも可能ですが、本HPではきちんとした医療機関での監督下に行われることをお勧めいたします。
管理人注:本HPでは、医療機関での監督無しにご自身で行われたIVIの結果の副作用/合併症への責任は負いかねます

【子宮頸管内精液注入法:Intra-Cervical Insemination(ICI)】

精液を子宮頸管内(頸管粘液内)に注入する方法です。
同様に性交障害のカップルに対し、医療機関で行われる場合にはIVIのみでなく、ICI+IVIとすることが可能になります。

【子宮内人工授精:Intra-Uterini Insemination(IUI)】

無条件で「人工授精(AIH)」と言う場合、これのことを指しています。
精子を子宮内に注入する方法です。
この場合、精液そのものを注入するのは(恐らく)稀で、何らかの方法で精液を洗浄処理し、注入するのが一般的だと思います。
(管理人は、過去に一度だけ射出精液そのものを子宮腔内に注入する先生を見たことがあります。)

【卵管内人工授精:Fallopian-tube Sperm Perfusion(FSP)】

洗浄処理した精子を4cc(IUIの8倍程度)に希釈して、子宮内に挿入したバルーンカテーテルから高圧で子宮内に注入することにより、卵管まで精子を行き渡らせようとする方法です。
コクラン(2013)では「非卵管性不妊」で明らかなエビデンス無しとしていますので、利点があるのかどうかについては十分な吟味が必要なようです。

【卵胞内人工授精:Intra-Follicular Insemination(IFI)】

卵胞に針を刺して、卵胞内に直接精子を注入しよう、というものです。
今でも時々論文が出てきますが、精子注入の最適量がはっきりしていない手技です。
これも利点があるのかどうか?十分な吟味が必要です。

【腹腔内人工授精:Intra-Peritoneal Insemination(IPI)】

1980年代後半~1990年代前半に論文が散見されます。
もはや凡人の管理人には、利点があるのかどうか?の考察も及びません。
でも、ネットで検索すると結構引っかかりますね。

精子以外に卵子も戻しちゃえ!

【子宮内精子・卵子注入法:Gamate Intra-Uterine Transfer(GIUT)、Uterine Sperm-Egg Transfer(U-SET)】

子宮内に精子のみでなく、卵子も同時に注入しよう!という方法です。
卵管因子の方は、そのままでは絶対不妊なわけですが、確かにこれなら妊娠可能性があるように思われます。
但し欠点は、本来卵管内にいるべき「授精~分割期」胚を、子宮腔内に戻すことがどうなのか?ということです。
胚の栄養要求性から考えると、胚発育に悪影響を及ぼしそうな気がします。
但し、管理人は、実際にこの方法での妊娠例を経験しております。

【配偶子卵管内注入法(Gamate Intra-Fallopian tube Transfer(GIFT)】

卵管内に精子と卵子を戻す方法です。
確かに生理的な方法ですが、欠点は、卵管に配偶子(精子・卵子)を戻す際、腹腔鏡が必要になってしまう点です。
この方法は、体外受精真っ盛りの現在でも行われていると思います。

管理人より一言

そういうわけで、実は、単に「人工授精」と言っても、戻す場所により色々な方法があり、また、「卵子も一緒に」なんて考え方もあるわけです。
どれもこれも臨床応用可能か?というと、実際に今日までの生殖医療の歴史の中で淘汰を受けた結果が今日の日常臨床の形であり、単に「目新しい」と言うだけで飛びつくのは禁物だと思います。
但し逆に、「歴史的に淘汰をされた」と言って、完全排除してしまうのもどうかと思います
目の前の個別の患者さんで条件を照らし合わせて考えてみると、思いがけず「もしかしたら使えるかも知れない」なんて場合もあるのかもしれません。
事実、管理人も、IUI以外の方法でいい思いをしたことがあります。
選択肢の一つとしてポケットの中に潜めておく必要はあるのではなかろうか?と思っています。