植物はどのように環境に適応しているでしょうか?
  生物は長い進化の過程で刻々と変わる自然環境に巧みに適応し、種を多様化してきました。特に植物は移動できないので、 環境変化にうまく応答し、適応能力を発達させてきました。ここでは、植物が様々な過酷な条件を乗り越えて獲得して きた特性について述べましょう。

1. 寄生と共生
寄生植物
  世界最大の花を持つラフレシアは東南アジアの熱帯林に自生する寄生植物で、糸状の組織を伸ばしてブドウ科植物の組織中に 侵入し宿主の栄養を奪って、直径1mにもおよぶ大きな花をつけます。茎も葉もなく、自分では光合成 をしません。腐肉の臭いを放つのでハエが寄りますが、種子がどのようにして宿主に入り込むのか?なぜそんなに大きな花をつける のか?疑問の多い植物です。

ネナシカズラ(ヒルガオ科、左図)は日本でも日当たりのよい山野、丘陵、草原などによく見かけるつる植物で、 他の植物につるを巻きつ け、吸根(寄生根)を出して宿主に侵入します。葉はなく、従って光合成はしません。葉緑体を持たないので、緑色ではなく、 紫がかった褐色をしています。
ハマウツボ、ヤセウツボ(右図)、ナンバンギセル(ハマウツボ科)などは他の植物の根に寄生し、 全ての栄養を宿主から奪い取り、自分では光合成はしません。これらは水も栄養も宿主から奪う典型的な寄生植物です。


  植物が発散する揮発成分が昆虫やその天敵が餌を探すための重要な手がかりとなり、植物の生育場所、 植物種、生育条件など に関する複雑な情報を伝えることは、これまでに多く知られています。植物間の情報交換においてもこれらの揮発性物質が重要な 働きを持っていますが、それらの生態的重要性はあまりよく分かっていません。最近、ネナシカズラが寄主植物に 到達するために、寄主植物の発する揮発性物質が大きく関与していることが報告されましたので、簡単に紹介しましょう。

  ネナシカズラ属の植物は農業上でも重要な害草で、米国の10大雑草リストにも含まれていますが、 防除するのが非常に困難な植物です。葉も葉緑素も持っていないので、光合成が出来ません。従って、他の植物に寄生して、そこから 栄養を摂取しなければなりません。また、種子には栄養分が僅かしか含まれていないので、その栄養だけでは数センチメーターしか 伸長できません。発芽すると素早く伸びる方向を定め、2, 3日のうちに適当な寄主に取り付かなければ、枯れてしまいます。 寄生植物の中には、寄主植物の根から分泌される手がかりに接触しないと発芽できないものもありますが、 ネナシカズラ属はこのような特殊な発芽促進物質は要求しません。

  アメリカネナシカズラ(Cuscuta pentagona)を用いて、ネナシカズラ属の植物が、 どのように他の植物に到達し、その一部を寄主として選択するのかについて、以下のような実験が行われました。
  アメリカネナシカズラの種子を水の入った小さな瓶に入れて濾紙の中央に置き、トマト (Lycopersicon esculentum)苗の鉢を濾紙の縁の近くに置くと、 芽はトマトの方向に向かって伸長します。トマトの代わりにアフリカホウセンカ (Impatiens wallerana)を置いても、同じように 芽はホウセンカに向かって伸びてきます。アメリカネナシカズラの寄主とならないコムギ (Triticum aestivum)を置くと、 トマトほどではありませんが、弱いながら芽を引き付ける作用が認められます。植物の植わっていない鉢、緑や赤色の水の入った コップなどには、誘引作用は全く認められませんでした。これらのことから、寄主植物の出す化学物質がアメリカネナシカズラを 誘引すると考えられますが、寄生しないコムギにも弱いながら誘引作用があることから、植物体による光の影も影響すると 考えられます。
  光の影響をなくすために、種子の入った瓶がのせてある濾紙の左右に密閉容器を置き、これらをパイプでつないで、匂い物質のみが 中央のアメリカネナシカズラ種子の入った瓶に到達できる装置を作り、実験が行われました。 一方の密閉容器にトマト、他方にコムギをいれると、トマトの方に向かって伸長するものの方が多いことが観察されました。 次に、トマトから抽出した液を一方に、他方には抽出溶媒のみを入れると、抽出液の方に誘引されました。
  抽出液から分離された8種の化合物を別々にテストした結果、 そのうちの2化合物に強い誘引作用が認められました。しかし、 このうちの1つは、 コムギにも含まれる成分でした。コムギからは、これ以外に誘引とは反対に忌避する物質が見つかり、 これが寄主選択に負に作用するのではないかと考えられます。すなわち、コムギは揮発性の物質や光の影を作ることにより、 アメリカネナシカズラの芽の伸長をある程度誘引するが、忌避物質があるために寄生が成り立たないのではないかと考えられます。
  寄生植物の寄主発見と寄主選択に、植物の出す化学物質が関与しているというのは、これが初めての報告です。こんご更に 詳しいメカニズムが解明されることを期待しています。

着生植物
  ティランディアという植物は北アメリカに分布するアナナス科のパイナップルの仲間で、他の木にとりつくと、枝を巻き込むように 根を巻きつけて固定し、長い葉を伸ばしてびっしり重なったロゼットを作ります。ロゼットの中心に雨水がたまり、落ち葉、虫、 鳥の糞などがその中で腐ると、それを栄養として利用します。自分で光合成をするので寄生植物ではなく、単に他の木に場所を借り るだけなので着生植物といいます。

  ヤドリギの仲間は緑の葉を持ち、光合成しますが、水やミネラルは宿主に依存しています。ヤドリギ科には 1,000以上の種があり、その多くは熱帯地方に分布していますが、日本にもオオバヤドリギ、 ニンドウヤドリギ、ヒノキバヤドリギなどが自生しています。 オオバヤドリギは照葉樹林に生育し、スダジイ、タブノキなどを宿主とした着生植物です。黄色の甘い果実は鳥の大好物で、 種子の周りのねばねばの組織が鳥の糞とともに排泄され、ねばねばで木に取り付きます。

  クリスマスツリーもヤドリギの仲間で、 他の植物の根に取り付き、吸根を差し込んで水を奪います。オーストラリアで、クリスマスツリーの根がケーブルのプラスチック 被膜を破って、人工衛星からの受信基地の施設の機能が麻痺した事件が報告されています。このように、ヤドリギの仲間は他の 植物から水とミネラルは奪いますが、光合成をするので着生植物といわれておりますが、一種の寄生と考えてもいいでしょう。

  カトレア、バニラなど多くのランも着生植物で着生ランといわれますが、着生の仕方が少し違います。ラン科の植物にはラン菌 というかびが共生しています。ラン菌はランの根に菌根を作るので、菌根菌といいます。ラン菌が有機物を分解して栄養を得るのを ランが横取りしていますが、ランは光合成するのでデンプンは自分で作ります。このように、ラン菌はランの根につくと、奴隷のよ うに働かされます。また、ランの種子は胚乳を持たないので非常に小さく、ラン菌の助けがないと発芽しません。

腐生植物
  ラン菌に全てを頼って、自分で光合成をするのをやめてしまった植物もいます。オニノヤガラ、ショウキラン、マヤランなどが それで、これらを腐生植物といいます。オニノヤガラ(右図)はナラタケ(菌根菌)に寄生し、ナラタケが他の植物に寄生して得 た栄養を横取りします。泥棒の上前をはねて生活しているようなものです。

地衣類
  サルオガセは菌類が組織内に藻類を取り込んで共生しているもので、地衣類といいます。分類学的には植物ではなく、菌類に 入りますが、外見は植物に似ています。葉緑体を持っているので、他の木や電線にぶら下がって、空気中の霧(ミスト)と 炭酸ガスを利用して自分で光合成をしています。地衣類は非常に厳しい環境条件でも生き延びることができるので、北極ツンドラ 地帯、海岸の乾燥地帯などにも見ることができます。トナカイの主食となるトナカイゴケも地衣類です。

寄生、共生を通じての遺伝情報の伝達
  全ての生物は、親から子へ遺伝情報を伝達しなければなりません。この垂直伝播がなければ種は簡単に消滅してしまいます。また 遺伝子の水平伝播もあり、これが進化の主要因子と考えられてきました。過去の水平遺伝子伝播の例として、バクテリアの接合に よる物理的な接触伝達が最もよく知られた例です。系統分類上別の界に分類されている種間での(例えば、バクテリアから植物へ) 遺伝子の水平移動もAgrobacterium属のバクテリアでよく知られています。 Agrobacterium tumefaciensはクラウンゴール病の原因となる病原バクテリアで、多くの植物 にガンに似た異常を起こさせます。染色体とは別にある大きなDNA(ガン誘導プラスミド、 Ti plasmid)の断片の一部を植物に導入することによって、ガンを引き起こします。植物細胞に これが入ると、このDNAT-DNA)は核に入り、寄主のゲノムに取り込 まれます。T-DNAにコードされたガン遺伝子が発現して植物にガンが生じます。この性質を遺伝子工学 の目的に利用して、植物の組み換えが可能になりました。また最近Rhizobium属のバクテリア でも植物への遺伝子伝播が可能であることが分かっています。

  高等植物で、交配しない種間での遺伝子の水平移動が最近注目されています。植物同士の寄生が植物種間の遺伝子水平伝播を容易 にしていると考えられるようになりました。ブドウ科植物に寄生するラフレシア(Raflesiaceae科)のミトコンドリアの遺伝子の一部はその寄主であるブドウ科の Tetrastigma属(ブドウカズラ属)に近く、ラフレシアのミトコンドリアの 遺伝子の一部は寄主から水平移動で得られたものであると考えられています。

  逆に寄生植物から寄主植物への遺伝子の水平伝播は、この二つの植物が物理的に接触することによって起こることが系統発生学的 および生物地理学的に証明されています。
  オオバコ属(Plantago属、オオバコ科)には多くの種がありますが、ヨーロッパや北米原産 の3種のオオバコ(P. coronopusP. subspathulataP. macrorhiza)のミトコンドリ ア遺伝子の一部は、同じ地域に在来種として生育しているネナシカズラ(Cuscuta属、 ヒルガオ科)のそれに近く、ネナシカズラがこの3種のオオバコの共通の祖先に持ち込んだものと考え られています。
また、他の2種のオオバコ(P. rigidaP. tubulosa)もミトコンドリアの遺伝子の一部がハマウツボ科の植物に由来するものと思われ ます。生物地理学的にも、このオオバコ2種とこのハマウツボ科植物のほとんどの種がアンデス北部に のみ生息することから説明できます。これらの水平伝播は、系統発生や分子時計解析から、 比較的近年(200-300万年前)に起こったと考えられています。 これらの遺伝子の伝播は、寄生植物から寄主植物へ、直接DNAを受け渡したものでしょうが、生物的 な媒介者(花粉、かび、バクテリア、バイラス、昆虫)が仲介者である可能性も排除できません。

昆虫と特殊な関係を持つ植物
  植物の中には昆虫と特殊な関係を持って共生しているものが多く見られます。その多くは花粉や蜜を昆虫に与え、その見返り として受粉を手伝ってもらったり、外敵から守ってもらったりしています。
イチジク(Ficus属、クワ科)は果実の中につぶつぶが多くありますが、 この1つづつが1個の果実で、集合果といいます。 イヌビワ、インドゴムノキ、ガジュマルなどもイチジクの仲間です。イチジクの受粉はイチジクコバチによって行われ、 200種以上いるイチジクコバチは全て特定のイチジク1種の花粉のみを 運びます。受粉の方法がみごとなので、簡単に説明しましょう。

エジプトイチジクの受粉
  イチジクのおしべは果実の先端の穴の出口付近にあり、翅を持ったイチジクコバチ雌成虫がこの出口を通って外に出るときに、 全身に花粉をつけ、他の未熟な果実に入り込みます。産卵は雌しべの胚珠の中に産卵管を突っ込んで行いますが、雌しべには柱頭の 長い長花柱花と短い短花柱花があって、短花柱花では産卵管が中までで届くので産卵されます。長花柱花では産卵管が胚珠に届かな いので産卵しません。従って、短花柱花でコバチの幼虫を育て、長花柱花で種子を育てます。翅のない雄成虫(ウジの格好をしてい る)は羽化後すぐに胚珠から這い出し、雌のいる胚珠に穴をあけ、腹部を突っ込んで交尾します。交尾を終えた雌は胚珠から出て、 出口を通って外に出ます。この時にはイチジクの花粉も完成されているので、花粉が全身に付着します。この雌が未熟な果実に入り ます。イチジクを食べるとジャリという音がしますが、これは中のイチジクコバチを噛み潰した音ではありませんのでご安心くださ い。日本のイチジクはおしべがなく、受精しないで果実ができる品種だからです。ヨーロッパのイチジクは中に虫が入っていると聞 きましたが、真偽のほどはわかりません。

イヌビワの受粉
  イヌビワの受粉もエジプトイチジクの場合と同じですが、イヌビワは雌雄異株ですから、雌株のみで幼虫が育ちます。イヌビワを とって中を割ってみると虫が沢山いますので、食べる気にはなりません。そのまま口に放り込むとおいしい果実を味合うことが できます。

ハチを騙して授粉をさせるラン
  ヒメハナバチ属の1Andrena nigroaeneaの雄は、緑の美しい花のラン Ophrys sphegodesに引き付けられ、これに交尾を試みます。このランの花は春に咲き、花の形が雌バチに非常によく似ているからです。この時期には雌バチはまだ巣の中におり、若く経験のない雄バチは本当に交尾できる雌を見つける前にランの花に出くわしたのでしょう。この精巧にできた花に交尾しようともがいている間に、雄バチの頭にべとべとした花粉塊が付き、これを他の花に運びます。これを「偽交尾」といいます。これはランにとって有利ですが、雄バチにとっては、煩わしいだけのものです。

  ラン科の植物には約3万種が知られています。昆虫を花粉媒介者とする植物の多くは、媒介昆虫にエネルギー豊富な蜜を、授粉の代償として支払いますが、ランの1/3は見返りを全く支払いません。 ほぼ1万種は、蜜を提供する植物を真似て昆虫を騙します。さらに、これらの植物の中には、昆虫を性的に誘惑するものが400種もあります。

  最近、ランが昆虫を引き付けるために用いている「匂い物質」の分析が行なわれています。通常各々のランの匂いは、複数の「匂い物質」の混合物で、種によって混合比が異なり、1種類の媒介昆虫のみを呼び寄せます。 したがって、これらの匂い物質からランの種を同定できるし、ランがどのように多様化したかを研究することができます。

  通常種分化は、地理的あるいは時間的隔離により、生殖が隔離されることから生じます。これを異所的種分化parapatric speciation)といいます。ランは地理的にも時間的にも隔離されることなく、特定の花粉媒介昆虫を持つことによって、種が分化したのではないかと考えられます。このような種分化を同所的種分化sympatric speciation)といいます。ランは同所的種分化の研究に最も適した材料の一つです。

  花粉媒介昆虫に見返りを与えない花は授粉率が低く、見返りを与える花に較べて、果実のつきは半分程度にしかならないそうです。ランは雄バチを騙すだけで、見返りとして何も与えません。騙された雄バチは、騙されたと知ると、近隣の花には降り立たないで、遠くに生えているランに降り立って授粉します。これによって、近親交配を避けているのではないかと考えられています。すなわち、ランは種子の量を犠牲にして、質を高めるよう進化したと考えられます。

  雄のA. nigroaeneaを騙す匂い物質は14種の化合物から成り、多くの植物外皮のワックスと共通のものであることが分かりました。また、A. nigroaeneaの雌が雄を誘うフェロモンも同じ化合物群からなっています。雄バチがダミーの花に交尾を試みるのはそのためです。 ランは化合物の混合比を微調整し、雄バチの訪花を高めることによって、生殖率を高めてきたのでしょう。また、特定の種のみを引き寄せることにより、これが遺伝的な生殖隔離となって、新種が進化してきたのでしょう。

  オーストラリアに自生するランChiloglottis trapeziformisが作る誘引物質 (chilogolottone)はハチ の1Neozeleboria cryptoidesの雌が出すフェロモンと全く同じ化合物です。オーストラリアにはChiloglottis属のランが30種存在しますが、これらは同じ場所に育ち、外見も花の時期も同じですが、遺伝的には別種です。これらのランは化学的に少しずつ違った誘引物質を作り、違った種のハチを誘引することによって、種の境界を決定してきたのでしょう。これはまだ研究の途上にありますが、ランとハチの関係がさらに明らかになれば、同所的種分化の証明になると期待されています。

  花だけが目的を達成し、昆虫には何の得もなければ、その花は絶滅に追いやられるとCharles Darwinは考えていたようですが、このようなランが実存するのは事実です。何故このような進化が起こったのでしょうか?昆虫には雌の数が少ない場合もあり、雄がとる戦略は「雌に見えるものなら何でもよい、そんな余裕はない」と考える進化生物学者もいます。

アリと植物の関係
  植物の中にはアリと特殊な関係を持つものがあります。アカシアのとげの基部にアリが巣を作ります。アカシアは葉柄の基部に 蜜腺を持ち、一年中蜜を分泌しています。このような蜜腺を花外蜜腺といい、サクラの葉柄、アカメガシワの葉の基部、 カラスノエンドウの托葉などにも見られます。また、アカシアは葉の先端にオレンジ色の脂肪分に富む小さいビーズをつけ、アリ の幼虫の餌として提供します。これらの見返りとして、アリはアカシアの害虫を追い払ったり、木の周りに芽を出した他の植物を 食いきったり、伸びてきた他の木の芽を切り取ったりしてアカシアを守ります。従って、アカシアの木の周りには植物は生えま せん。

  アリノトリデ(アカネ科)は着生植物で、マングローブの木によく着生しています。アリノトリデの茎にアリが巣を作り共生してい ます。アリノトリデはアリの糞や死骸などを分解し、リン酸塩や硝酸塩などを摂取しています。

  アリノスダマはアリがいなくても、茎の一部を肥大化してアリの巣として利用できるよう準備しています。

菌と特殊な関係を持つ植物
  サルノコシカケの胞子がナラの樹皮の傷から内部に侵入すると菌糸を伸ばし、内部の心材のセルロースやリグニンを分解し、これを 栄養として増殖します。ナラが老木となって樹勢が衰えると、菌は急速に増殖し、最終的にはナラの幹から顔を出します。この菌は 病原菌ではなく、この菌が腐らせるのは心材の死んだ細胞でナラの木には害はありません。むしろ、心材の分解物はナラによって 再利用されるし、中空になると幹が弾力的になり、根にかかる負担が減少するので木の安定性は増します。強風で若木が倒れるのに、 樹齢数百年の老木が残るのはこのためです。

  死んだ心材を分解するものに、シイタケ、エノキダケ、シメジ、ナメコなどがあり、これらを木材腐朽菌といいます。これに対して、マツタケやバカマツタケは樹木の根を菌糸で覆い菌根を作り、樹木にミネラルを与え、樹木から炭水化物をもらいます。 このような菌を菌根菌といいます。「きのこ」は子実体と呼ばれる菌の生殖器官で、菌糸がこれを支え、栄養も与えていま す。

2. アレロパシー(他感作用)
  アレロパシーとはある植物が他の植物の生長を抑制する物質を出して自分を守ることをいいます。広義には、植物に寄生する微生物などが有害物質を放出して、植物を守ることも含まれます。例えば、ナスの下には特定の植物しか生えない、クルミの木の下には他の木や草が生えない、ユーカリの木の下には何も生えないなどがよく知られていますが、これらは植物が生産する 有害物質が主な原因です。

  空き地に最初に侵入するのはブタクサで、有害物質を出して周りの草の生長を抑えます。翌年春にはヒメジョオンやハルジョオン が、夏にはアレチノギクやヒメムカシヨモギがまた別の有害物質を出してこれらを駆逐します。さらにその翌年にはセイタカ アワダチソウが有害物質で先住の植物を追い出して、以後しばらくセイタカアワダチソウの天下が続きます。しかし、 セイタカアワダチソウは自分の有害物質で自家中毒を起こして衰退し、イネ科のススキやチガヤあるいはマメ科のクズにとって 代わります。

  ヤグルマギクの1種(Centaurea maculosa、キク科)はもともとヨーロッパ種ですが、これを 米国西部に導入したら、北米の野生種を追い出して、これに置き換わってしまっていました。この原因は C. maculosaが毒素カテキンを生産し、北米に土着の野生種の発芽や生長を抑えるためである ことが明らかになりました。ヨーロッパ種は、C. maculosaを含めて、カテキンには抵抗性で、 この植物の周りの土壌に蓄積したカテキンの量では全く影響を受けません。しかし、在来種の C. diffusaはカテキンに感受性で、カテキンにより反応性の高い活性酸素が発生し、 これによりCaイオン関与のシグナル伝達が起こり、遺伝子発現に変化を生じて細胞が死ぬ ことが明らかにされています。

  外来種が在来種を追いやるのは主に繁殖力の違いにあると考えられてきました。したがって、植物が化学的な作用によってお互いに干渉しあうという考え方は従来は受け入れらませんでした。 毒物を供給する側の植物は、この毒物を受ける側の植物の周囲にその毒物を運ばなければなりません。作る側の植物の周りの毒物量 は受ける側の植物の周りよりも高いはずです。ということは、作る側の植物はこの毒物に対して抵抗性になるように進化してきたに 違いありません。しかし、受ける側の植物にも抵抗性を高めるような淘汰圧がかかります。したがって、植物が共存すればその植物種はお互いの毒素に抵抗性を進化させていかなければなりません。しかし、共存しない場合は、お互いの毒物に対して感受性が異 なっても不思議はないと考えられます。従って、アレロパシーも外来種が蔓延する原因の1つと考えられるようになりました。

  ホウセンカの1種(Impatiens glandulifera)は、英国では、最も侵略性の強いものの一つで すが、この近縁種であるキツリフネ(Impatiens noli-me-tangere)は数が少なく、 絶滅危惧種です。これも化学物質に対する抵抗性の違いによるものと考えられます。

  また、ヤグルマギクC. maculosaの在来生息地にいる土壌微生物は雑草の生長を抑制する効果 が高く、侵略地である北米の土壌微生物は、C. maculosa自身の生長を高める作用が強いこと が示されています。これらのことから、この外来種の侵略を北米で成功させた理由は、化学物質だけではなく、根圏の微生物相の 違いも影響していると考えられています。

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