最終更新日:2001.1.1

2000年の回顧と2001年へ向けての展望

まずは昨年の日本のフォルクローレ界で注目すべき出来事などを記しておきたい。
来日アーチストはほんの一握りで、相変わらずの低迷ぶりであるが、その中でも、11月にファンの熱望によってペルーの天才ギタリスト、ラウル・ガルシア・サラテ氏の初来日が叶ったことは、嬉しい出来事であった。また7月にはスーパー・グループ、カリャワヤが昨年につづいて来日。メンバーがヒメネスからゼイナルド・ベガに替わったものの、ボリビアのフォルクローレの最高水準の演奏を披露した。タイピ・カラも近年コンスタントに来日しているが、今回は公演回数も少なく、またメンバーもゾランド・エンシーナスや菱本氏がいなかった分、物足りなさは否めない。ムシカ・デ・マエストロスにいたっては、来日はすれど、一般公演はしないということで、不満爆発である。
国内の演奏家の活動も活発であった。ただし、昨年は私自身があまりコンサート会場に足を運ばなかったので具体的なコメントはできない。一言だけ言えば、アルパ奏者の上松(あげまつ)美香さんの活動がめざましかった。

フォルクローレのイベント、演奏会も盛況で、福島県川俣町のコスキン・エン・ハポンやリトルワールドのラテン・フェスティバルに加え、三木山フォルクローレ・フェスティバルや、ラテン・フェスティバル・イン・長良川などが開催された。まだ知名度は全くないが、長野県丸子町での鹿教湯ストリート・フェスティバルも今後フォルクローレのイベントとして着目されるかもしれない。
昨年はフォルクローレのレクチャーも開かれ、フォルクローレの正しい知識を広めようという機運が見られた。カリャワヤの来日に際してのアンデス文明研究会との連携による講演会や、木下尊惇氏による様式や踊りのレクチャーなど。このような企画は今後も頻繁に開かれることを期待している。
チャランゴ奏者のスキル・アップと底辺の拡大を目指したTOYO草薙氏によるチャランゴ研究会が本格的に始動したのも昨年であった。私も見学に顔をだしたまま、その内容の濃さに圧倒されてずっと参加している。おかげで以前はかきならしすらきちんとできなかったのがだいぶ上達した。草薙氏は今年はチャランゴ研究会をさらに発展させた全日本チャランゴ同盟(JCD)なるものを展開するとのこと。今までは東京だけ、あるいは地方で臨時的に行われていただけのチャランゴ指導がインターネットのおかげでどこにいてもできるようになるかもしれない。

次にフォルクローレ関係のインターネット状況について。
時代の流れとはいえ、ホームページが急増している。ブーム下火のフォルクローレにあってもそれは例外ではないようだ。昨年上半期は週に1つくらいのペースで新しいサイトがオープンしたのではないかと思うくらい、ゴールド・ラッシュならぬウエブ・ラッシュだった。後半になってその伸びはやや減少したもの、その数はコンスタントに増え続けている。傾向としては、自分の所属するグループや、特定のグループをメインにしたサイトが増えているようだ。
それに比例してフォルクローレ関係の掲示板も急増した。掲示板は生の情報を手早く入手することが可能なので、情報収集の基本となるが、あまりに数が増えたため、定期的に巡回するのも大変になってしまった。結局、掲示板の数だけ、訪問者・書き込みも分散の傾向にあると思われる。
フォルクローレ関係のメーリングリストもいろいろあるようだ。私は1つしか入っていないが、それは最近投稿が減りつつある。メールよりも掲示板での情報収集がメインになりつつあるのだろうか。ただ、掲示板はその人が足を運ばなければならないが、メーリングリストならば、発信すれば情報が確実に相手に届けられるという利点がある。コンサート情報など、よりスピーディに情報を届けたい場合は有効だし、読む人も多いので、まだまだその役割は保たれるだろう。

次に現地のアーチストの動向についてを入手したCDから見てみたい。
近年ボリビアのアーチストが、オリジナルではなく、テーマごとのCDを作る傾向がある。昨年入手したものだけでも、カルカスのカルーヨ&パサカージェを筆頭に、ハチャ・マリュクのバンダ、ボナンサのチュキサカ等々。コレクターとしてはつい買ってしまうのだが、こういう企画ものはあまり賛同できない。上記のようなグループはすでに自らのステータスを確立しているのだから、なぜここで、横道にそれるようなものを作るのだろうか。あるいは今ボリビアの伝承曲を見直そうという風潮があるのだろうか。
長く演奏活動しているグループであるにもかかわらず、いままでCD化されずに、日本でもほとんど知られていなかったHiru Hichoがリラとラウロからたてつづけに2枚のアルバムを出したのは嬉しい(リラはベスト版)。かく言う私もこのグループを知ったのはごく最近だった。実力があるのに、海外に紹介される機会がなく、知名度が低いグループはまだまだ埋もれているのだろう。こういうグループの演奏をどんどんCD化してほしいと思う。
新しいグループもいくつか現れた。OASIS(1999)、KINRAY(1999)、KUTIMUY(2000)などがある。まだ海のものとも山のものともはっきりしない。その中でも注目すべきはMUNAYである。ARAWI、AYOPAYAMANTAの弟分にあたるとも言えるこのグループは、コチャバンバのグループの中でも若き貴公子として、今後の活躍が期待される。
TUPAYも新譜をだして、その人気はますます上昇中。しかし残念ながらこれはまだ手にれていない。
ボリビアでは相変わらず、トバやカポラルが流行っているようだ。ついで、ティンクとモレナーダあたりだろうか。
CD界の動向の中で、ここ数年チリのヌエバ・カンシオンの作品のCD化、復刻化の動きが目立つ。インティ・イリマニやキラパユンのレコードが軒並みCD化されている。推測だが、この動きの背景にはチリの著作権事情があるのではないだろうか。チリでは作者の死後30年で著作権の保護期間が切れる。すると1967年に亡くなったビオレッタ・パラなどはすでに著作権が切れているのでCDが出しやすくなる。実際にそれを受けたかのようにビオレッタ・パラのCDを見かけるようになった。するとヌエバ・カンシオン系の他のアーチストも再注目され、余波を受けてアルバムの復刻などということになったのではないだろうか。全くの推測だが、ありえない話でもないだろう。
国内のフォルクローレ関連のCDはわりとたくさんでているが、そのほとんどがさまざまなアーチストを集めたオムニバス版の傾向があるように思える。それはそれで悪いことではなく、当然といえば当然であろう。

最後に、自分の活動を振り返りたい。すっかりアンデス何でも塾の演奏要員として定着してしまい、弥生の園、横浜のサッカースタジアム、シンガポールへの遠征、日比谷公園でのイベント、代々木のワールド・フォルクロリアーダ、どこかの児童館、文京CATVなど、おかげで演奏する機会には困らなかった。しかしその活動のさなかにいままでいっしょに演奏していた横山尚彦さんが突然急逝されたことは本当に残念でならない。楽しい思い出と引き換えにかけがえのない人を失ってしまった。今は心よりご冥福をお祈りするばかりである。天国の横山さんに伝わることを信じて演奏を続けていきたい。
さらに昨年は、カルルナスの大坂さんとマルカ・パンパータの伊藤さんと3人でキラ・ウィルカという新しいグループを結成した。念願だったチャランゴ奏者としての自分の居場所をようやく見つけることができた。チャランゴもグレードアップしたので、今年はチャランゴ奏者としてバリバリ活躍したいと思っている。

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