
住めば都?!ブルーフィールズ
第1回
ブルーフィールズでの最初
はじめまして。中米ニカラグアのブルーフィールズ市に住むげーこです。どうぞよろしくお願いします。
中米で最も広い国がニカラグア。その領土の半分は「大西洋岸自治地域」が占めているが、人口は全人口の10%しかない。植民地時代、この地域はスペインではなく「モスキティア」の名前でイギリスに統治されていたので、人種も言葉も文化も太平洋側とは違う。他の中米の大西洋側も似たような状況にあるが、ここニカラグアの大西洋岸の特徴は、内戦中の1987年に自治地域を創設したところにある。自治制度は実質的にはほとんど機能せず中央政府の政治の道具として利用されているのだが、この話はまた今度しようと思う。
ブルーフィールズの人口は5万人。この町を初めて訪れたのは今から9年前だったが、一緒に訪れた近くのコーンアイランドがよっぽど良かったので特に印象に残らない町だった。5年前、インターンシップで3ヶ月滞在した時は、ここはできれば住みたくない町だなと思ったが、結果として住み着くことになった。人生は不思議なものだ。
最初の4ヶ月は間借りをしながら住む家を探していた。大学では探検部に所属し、途上国で貧乏旅行したり生活したりしてきたが、この時期はそんな私でもかなりへこたれた。旅行や滞在を楽しんでるわけでも仕事で手当貰ってるわけでもない不便な生活はたいへんだった。とんだ新婚生活だった。
何がたいへんだったかというと、住環境が整ってなかったことだ。停電と断水はしょっちゅう。電気は別になくても早寝すればいいのだが、水がないのは不便だ。電話もないので電話局までいちいち行かねばならず、うちに連絡をとりたい人は苦労していた。携帯電話は高嶺の花。当然インターネットとも無縁で、インターネットカフェなどないし、唯一あるコンピューター学校では1分30円もとるのでとても高くてほとんど利用できなかった。
冷蔵庫がないので午前と午後一日2回は片道30分歩いて町の中心まで生鮮食品を必要最小限だけ買いに行っていた。雨季で雨ばかり降るのに加え道は舗装されていないのでどろどろ。洗濯機もないのでジーンズもシーツも手洗いだが雨で洗濯物が全然乾かなくて困った。雨漏りがひどくてベッドの上に手桶や鍋をいくつも並べていた。
窓にもドアにも蚊よけのスクリーンはなく、夕方になると蚊が襲撃してくるので、夕食の後はベッドにつるした蚊帳の中に避難し過ごしていた。テレビは壊れているのか映らない。雑音が多いラジオはあるが自分たちのものではない。周囲は治安が悪い地区で、夜間よく外で騒ぎがあった。
首都在住の大家は、元旦那の連れ子である姉妹とその旦那を管理人として住まわせていた。古い小さな木造の家に7人住んでいた。大家は家のメンテナンスには一切関知せず管理費すら渡さないので、何か壊れたらそれまでだった。おかげで庭へ出る木の階段が抜け落ちて胸を強打したことがあった。病院でレントゲンをみた医師に「胸骨骨折だ」といわれ、病院をうろうろしている時、別のキューバ人の医師にフィルムを見せたら、実はただの打撲だと判明した。一時は大心配した。件の階段は我々がとんかちで修理した。
管理人姉妹は電気代未納で止められてもプロパンガスが切れても、ろうそくで過ごしたり薪で料理したりして平気だったので、最後の方はいまいましく思いながらも我々が負担していた。今思うと、戸棚として使われていたあの冷蔵庫は、電気代が惜しくて電源を入れなかっただけ、壊れていたテレビも修理してないだけ、電話も電話代滞納してただけだったのだろう。
こうして書くと、不便な思いをするくらいなら自腹を切って負担すればよかったのかもしれないが、例えば食器洗い洗剤(固形せっけん)が切れたので私が買って台所に置いておくと、瞬く間に同居人がそのせっけんで自分の服の洗濯をしてしまうのだ。長く住むつもりだったならいろいろ取り決めただろうけど。
こんな生活はもうそろそろ限界だと思った頃、やっと売りに出している家が見つかった。刑務所と警察の隣で、常に武装した警官や看守がいるのでこの町で最も安全な場所だ。唯一の欠点は隣の刑務所の木工作業所の騒音だったが、あまり気にしないで即刻購入した。
この家も築3年のわりにメンテナンスがないのでぼろぼろだったが、ぼちぼちと修理・改善を重ね、二階部分も建て、やっと快適な環境を整えることができたのはつい最近だ。今でもソファーがないし、雨が降るとバルコニーから浸水するし、まだまだ完全に設備が整ったとはいえないが。
というわけで、ブルーフィールズでの最初は私にとってはたいへんな生活だった。が、こちらの人にとっては小さい頃からこんなだし、これからもずっとこうなのだ。我々がマイホームを手に入れられ、少しずつ住環境を整えていけるのも、恵まれているからなのである。上を見ればきりがないが、下を見てもきりがない。
げーこ@ニカラグア
2004.1.27
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