人間の四つの機能

 ユングは内向・外向からさらに進んで、人間だれしも持っている機能に注目しました。その人間の機能とは「思考」「感情」「感覚」「直観」の四つです。まず、四つの機能それぞれについて説明しましょう。
 
 「思考」は一般的なイメージのとおりだと思ってよいでしょう。物事や自分の考えなどを筋道を立てて考える機能です。
 「感情」は感情表現が豊かで、かつ感情のコントロールに関係します。つまり、どうした局面ではどんな感情を使うか……とか(後述しますが、喜怒哀楽があまりにも激しい人は、逆に感情タイプではない可能性が高いのです)。物事の判断の傾向としては好き・嫌いが判断のポイントとなります。
 「感覚」は五感を使い、快や不快などを重要な決定要素としています。
 「直観」はいわゆる「カン」なのですが、ユングに言わせると、直観とは無意識下での総合的な判断のことで、無意識の領域から突然現れるように見えることから「閃き」のように見えるのだとか。そこまでいかなくとも、「直観」タイプは物事をこまごまと捉えるのではなく、全体的・包括的に捉える傾向があります。

 これらの四つの機能にはそれぞれ対立関係があります。
 思考←→感情、感覚←→直観……という対立関係です。ま、平たく言えば、論理的に考えるときには感情的な要素は入り込めないし、感情は論理的に捉えがたい。また、感覚的に細部にこだわろうとすれば(感覚)、総合的な判断(直観)はある程度犠牲にしなければならないし、その逆もまた然り……とでも、理解していただけたらと思います。
 さらにユングはこれらの四つの機能が内向的・外向的に表れることで性格のタイプ分けを行いました。それが以下の八つのタイプです。

 その中で、特に自分が最も得意とするものを主機能、最も苦手とするものを劣等機能と呼びました。実際には人それぞれだとは思いますが、主機能と劣等機能一般的にはこのような関係になります。


 以下、八つのタイプについて、私流の解説です。
 ちなみにどのタイプが主機能なのかを知りたい方はこちらへ。


外向的思考
 このタイプの人は頭良いです。現実社会で勝ち抜ける人ナンバーワンといったところ。いろいろな知識とか情報とかを上手に整理して計画的に活用できる人です。テストなんかもゲーム感覚でやって、またそれが上手くいく。行動力や実務能力もありますからグイグイ人を引っ張っていきます。実際、政治家をはじめとして官僚や役人、医者や弁護士などの社会的エリートに多いといわれています。
 しかし。
 このタイプの人は内向的感情が劣等機能にあたるため、内面的な心情や理念・信条といったものがとっても弱い! 映画を見たり音楽を聴いたりしても評論家みたいなことは言うのですが、自分の言葉で感想が言えない。というのも、このタイプにとっては「自分がどう思うのか」とかよりも、外界の現象こそが重要で、それについて如何に「合理的に」対処するかを重視するリアリストであるためです。こうしたことから、外見的には人間くささがなく、冷徹な雰囲気を漂わせることもあります。
 ただ、劣等機能の力で逆に、極端な理想主義に走ることもありますが、その場合は独善的で不寛容な言動を取ることも多いです。

 あと、このタイプの人はマザコンになりやすいことでも知られています。というのも、内向的感情は誠実な愛情を喚起させるのですが、気をつけないとそれが母親へと向かってしまうから※。ただ、それさえ気をつければ、案外、家族や身内とかには優しい人になれる……かもしれません。口に出したりしないからわかりにくいけど、ね。
 蛇足ですが、ユングによればこのタイプはほとんどが男性だといわれています。このあたり、欧米で嫌われる理由の一つなのかも(秋山さんは「女性の社会進出が進めばこのタイプの女性も増える」とフォローしてましたが)。

※補足すると、内なる内向的感情が一定の女性のイメージを作り上げたとき、「優しく包み込む(=内向感情型の)女性」と母親とが重なりやすい。このあたりが後に『元型論』の「グレートマザー」につながっていく。


内向的思考
 このタイプは独特の考え方を持っています。あまり現実的なことには関心が行かず、あくまで自分独自の理論や方法、思想を打ちたてようとします。現実の動きに左右されることなく、抽象的な問題を解明しようとします。また、自分の信念に関しては絶対的といって良いほどの確信を持っています。一般的なイメージとしては哲学者や数学者をはじめとした研究者とかかな。実際、キルケゴールやカント、ニーチェなんかはこのタイプだったのでは、といわれています。
 このタイプの人は頑固で人付き合いもあまり良くないので誤解されがちですが、基本的に誠実で穏やかな人なので信用できる人です。
 ただし、考え方が抽象的すぎたり、浮世離れした思索にとらわれたり、どうどう巡り的な思考に陥ったりすることも珍しくないので、このタイプに分類された方は少しは現実にも目を向けてくださいまし。

 このタイプの劣等機能は外向的感情になります。知らない人とかには、はっきり言って愛想が悪いのですが、親しい友人とか恋人、あるいは評価してくれた人には非常に親切になります。が、その愛情がトンチンカンでしつこくて、的外れなことが多い。このタイプの人の優しさは「雌ライオンが人間の子どもにじゃれ付くようなもの」と形容されてもいるのですが、つまり相手の迷惑お構いなしに親愛の情をぶつけたりするんです(で、それを下手に指摘すると逆ギレする……)。
 また、普段静かなのに批判さるとムキになったり、酔っ払うと恥ずかしいことを連発するのもこのタイプに多いそうで……。


外向的感情
 このタイプの人は他人の感情を読み取り、自分の感情をコントロールするのがすごく上手です。楽しいことがあれば一緒に笑ってくれるし、悲しいときには愚痴をよく聞いてくれるし、しまいには思わずもらい泣きしたり。だから、組織とかの潤滑油役やコンパとかの盛り上げ役にピッタリだったりします。他人に対してもごく自然に優しく接するし、初対面の人との会話にも自然に溶け込んでいったりするから人気もあります。
 でも、このタイプの人、TPOに応じた自分の感情コントロールが上手すぎて、えてして八方美人とか裏表の激しい人とかという陰口をたたかれたりもします(ついでに言うと、身内には意外にクールだったりする)。それに何か他人に合わせないと不安になるということから何でもかんでも他の人に合わせようとする傾向も見られます。

 というのも、自分の内面を考えるための機能である内向的思考が劣等機能だからです。ふっと、一人になって自分を振り返ると「お前(自分)は駄目なヤツだ」とかという自虐的な思考に囚われてしまう。これから逃げようとして友達に合わせて、遊びに行っているうちはまだいいのですが、それが嵩じてくると一種の被害妄想に進み、攻撃の矛先が自分から他者へ進むこともあります。また、劣等機能の反動で哲学とかに手を出すことも多いのですが、さっぱりわからずにすぐに飽きたり、付け焼刃の知識で馬鹿にされたり、ある思想や宗教を狂信的に信じ込んだりすることもあります。
 何だか悪口ばかり書いたような気がしますが、補助機能を生かし、劣等機能をある程度コントロールすればリーダーとしてピッタリかもしれません。外向的感情タイプの人には親分肌・姉御肌の人も多いという話も聞いたことがあります。


内向的感情
 このタイプを一言で言い表せばツンデレです。感情タイプなので豊かで激しい感情を持つと同時にそのコントロールに長けているのですが、それがなかなか表面に出ない。クールを通り越して、感情そのものがないんじゃないかとさえ思ってしまう。でも、心の内側にはパトスが激しく燃え盛っています。
 そのため、この機能が強い人は神秘的なイメージやモラリスト的・宗教家的印象を与えるのですが、ある程度の社会性を身に付けていると、穏やかで優しい雰囲気を醸し出します。そして、その情熱と愛は広く人類的なものに向けられることが多く、看護師や社会福祉活動、ボランティア活動などに向いているのがこのタイプだと言われています。もっとも、人や物に対する好き嫌いが激しいので、嫌いな人に対しては本当にけんもほろろですが。
 イメージとしては常に穏やかで少しのことでは動じない人やクールなんだけど、さりげなく優しい人、またはふとしたきっかけで情熱の輝きを見せる人……といったところでしょうか。

 ただ、このタイプの人を個人的に好きになる(つまり恋愛感情を抱く)と一寸大変です。というのも、近寄ろうとすればするほど冷たく撥ね退けられる(ように感じられる)。逆にこの人が人を好きになっても親しくなろうとすればするほどひどい態度をとったりする。要するに好きなんだけど心と態度が一致しないのです。きっと、心の中の感情がかき乱されるような感じがして怖いのでしょうね。
 そして、もうひとつ。劣等機能(ここでは外向的思考)との関係で言います。未熟な外向的思考が暴走し始めるとつまらない噂や相手の些細な態度などが妙な現実味を帯びているように思えてしまう。極端な例を挙げれば、恋人の携帯電話の履歴に知らない名前があったというだけで動揺する(例えそれが学校の友人や会社の同僚のであっても)。
 で、影の中の外向的思考に引きずられて情報収集を始めるのですが、整理できないものだからどれがホントでどれが嘘なのかがわからず、結局一人芝居になってしまって疲れ果てる……ので、済めばまだいい。
 外向的思考の活動性まで表れるとどんな卑劣な手を使っても「敵」を葬り去ろうとしたり、包丁もって「あんたを殺して私も死ぬ〜〜!!」と追い掛け回してみたり(この例え、ちと古いか(^_^;))。
 このタイプの方、くれぐれも噂話には気をつけませう。


外向的感覚
 大雑把に言うと、このタイプにとっては今の現実こそが全て、です。合理性は無味乾燥のようだし、直観は論理の飛躍にしか見えない。
 で、五感を使うことに長けていて、そこからいろいろなものを導き出すことを得意とします。色や音などの微妙な違いを見分けたり、一度会っただけの人の特徴もすぐに覚えたりすることも可能です。そして、その感覚を活用して、日々の生活を十分に楽しむこともできます。
 従って、ソムリエにデザイナー、芸術家(特にミュージシャンとか)、技術者に職人などといった職業は天職のようなものですが、実は地味な仕事も確実にこなします。
 このタイプが気をつけなければならないことは二つ。一つはあまりに外界にとらわれると外向的感覚の人が持っていた独自のモラルとかも消え去り、下品な享楽家や漁色家になる危険性をはらんでいます。最悪の場合、ドラッグやアルコールなどへの依存症になることもあるといわれています。
 もう一つは劣等機能である内向的直観との関係です。このタイプの無意識に潜む内向的直観は原始的で不気味な状態のままです。これをあまり抑圧して暴発させると非現実的なものが急に現実的に見えてしまう。
 
 と言っても、分かりづらいと思いますので、具体的な表れの例を挙げると、UFOやオカルト、果てはカルト宗教といった極端に現実離れした世界に旅立って帰ってこなくなるといった人、いません? そうした人は抑圧していた内向的直観が爆発したのかも。もともと、こうした非現実的なものは感覚タイプの人には理解し難い――なぜなら、感覚的世界を超越した世界は、五感によって物事を感じ取るこのタイプにとっては全く不可解な領域でしかない――のですが、あまり外界にとらわれると無意識下の内向的直観がバランスをとるために強烈な力で、非現実的な世界へと引き込もうとするからです。
 そこまで極端でなくても、なにかのおまじないとかに固執するようになったら危険信号です。


内向的感覚
 このタイプも感覚を使うことには長けています。ただ、このタイプの人が見たり感じたりするものは普通の人とは少し違うものだったりします。ユング研究者の間とかでよく例示されるのが、雲が大きな怪物のように見えたり、コップの水から大きな海をイメージしたり、静かな森に行くとから妖精がどこからともなく現れた……とかとか。
 ま、一言で言うと、非常にイメージ豊かで空想好きな人です。一目見たものや一寸聞いただけものものからいろいろなイメージを膨らますことのできる、豊かな精神性と芸術性を持った人が多いようです。
 そうした訳で芸術家(特に印象派の画家やファンタジー作家)や文字通り晴耕雨読の悠々自適な生活を好む人によく見られますが、私が思うに、結構ごく身近にいるタイプでもあります。というのも、内向的感覚タイプは自分の中の何気ない日常生活に満足する側面があるので、平穏無事な生活を送れれば、特に冒険的なことをしようともしないので、「大変なときもあるけど、仕事のあと、一杯飲んで、家で寝るまでの間は音楽とかを聴いてゆったりしていれば満足」という人は案外、このタイプだったりするためです。

 このタイプの人は一見すると人畜無害でお人好しのように見えることから、いやな仕事を押し付けられたり、野心家の犠牲にさせられることもあります。こうなると、劣等機能の外向的直観が悪さを始める可能性が出てきます。
 具体的には、「世の中は汚い。醜い」とか「将来のことは考えたくない」と思うようになり、刹那的な生き方になったり、自分の世界に引きこもって、現実(特に現実的な将来)を直視することを拒否しようとします。というのも、劣等機能にあたる外向的直観は無意識の総合判断から現実の未来を予測させたりするものですが、それが未熟で原始的であるため、世界(および未来)は不気味で危険で、破壊的なものにしか見えず、将来に対して悲観的なイメージを抱きがちになるからです。芸術家たちの悲劇的な生涯もこのため……なのかな。


外向的直観
 このタイプの人をイメージ的に言えば、「チャレンジャー」です。
 このタイプの人にとっては平凡な日常生活は退屈を通り越して苦痛でしかなく、常に新しい可能性を求めて、動き回ることに生きがいを感じる。こう言って良いでしょう。
 なにしろカンがよく働くものだから常に新しいアイデアや発想が浮かび、その将来性を探り、周囲にもそれを喧伝してまわります。
 このため、ジャーナリストや投機家、実業家や政治家(最近はどうなのかな(笑))などに多いタイプだといわれています。もちろん、ギャンブラーは言うまでもありません。

 このタイプの劣等機能は内向的感覚です。前述しましたが、内向的感覚は日常的な生活などから豊かなイメージを膨らますことができるため、平凡な毎日にも満足できるのですが、これが外向的直観タイプには最も苦手で、身体的な幸福なんてさっぱりわからない。
 はっきり言えば、食べ物や飲み物は口に入れば何でもいいし、風呂に何日も入らなくても気にならないし、着るもののセンスもなし(ま、服のセンスは直観でもカバーできるけど)。極端になると自分が疲れているとか体調不良だとかいう自覚すら失い、過労で倒れたり、逆に無意識の内向的感覚が強く働きだして、細かいことが気になって気になって仕方がなくなる。
 そのため、古典的な解釈では強迫観念や諸々の恐怖症、その他の心気症(心因による体の異常)の原因といわれています。

 また、常に新しいものを求めるあまり、アイデアを出すだけ出したら、後は知らん顔(案の実行は完全に他人任せ)とか、非現実的で空想的な提案を出して顰蹙を買ったりすることもあるようです。
 新しいものや理想を求めるのもいいですが、たまにはゆっくり周囲を見回してみるのも良いものですよ。


内向的直観
 このタイプの人もカンが良いのですが、そのカンは外側に向かうのではなく、自分の内側向かうため直観タイプの非現実的な側面が強く現れています。と、いうのも、前にユングの言う「直観」は無意識による総合判断だと言いましたが、内向的直観はその中でも特に「集合無意識」と呼ばれる領域と強く結びついていると言われていることによります。

 要するに、このタイプの人は、普通の人なら心の奥底に眠っているままのイメージがこんこんと湧き出だしているタイプ……といったところです。
 そして、このタイプの人がその内的イメージへの直観を発達させるとシャーマン的素質を開花させたり、新しい文化や芸術、思想の先駆者となることもあります。そのため、宗教家や占い師、あとは芸術家(特に詩人に多い)に多いタイプです。
 ただ、あまりにも前衛的、あるいはイメージ的でありすぎるため、なかなか世間的には理解されず、よき理解者や宣伝者にめぐり合えないと、または他の心的機能を補助機能として活用できないと単なる奇人変人としか見られなかったりします。そう、生前、ほとんど評価されなかったニーチェみたいに。
 だから、埋もれた天才とか、ブラブラしている大人物とか、仙人みたいな人とか、ナントカと天才は紙一重みたいな人とか、一寸……いや、かなり現実から乖離した人もこのタイプには少なくありません。あるいは、天然ボケなんだけど、時々物事の本質について鋭く言い当てる人、といったトコでしょうか(なんだか漫画のキャラに一人はいそうだなぁ)。

 このタイプの劣等機能は外向的感覚です。内向・外向を問わず、感覚的なものが苦手なのが直観タイプなのですが、外向的直観が「どう感じるか」が苦手なのに対して、こちらはむしろ感覚を「どう使うか」が苦手です。具体例としては、いつも見たり聞いたりするものなのにその存在や特徴などに最後まで気付かない……「天然」と呼ばれる人に多いというのもその所以です。また、感覚のズレは時として現実と非現実を曖昧にしてしまうため、なんでもない現象を幽霊やUFOだと思い込んでしまうことも多々あるとか。お化けを見たという人は大抵、このタイプなんだそうです。

 あと、このタイプの人も恋愛が非常に苦手です。まぁ、一般的に内向型の人は恋愛下手なのですが、このタイプの場合、「感覚を使うこと」が苦手なことと関係しています。と言うのも、恋愛といっても、いつまでも「プラトニックラブ」のままってことはないですよね。関係が深くなっていくと、手をつないだり、キスしたり、抱き合ったり、その他、あんなことやこんなことなんかもしたりする。こうしたことはモロに感覚を「使う」ことです。
 内向的直観タイプの人は、こうした恋愛が進展することによる身体的コミュニケーションに対して潜在的に恐怖感を抱いてしまいます。そして、異性や性そのものに対しての恐怖へと発展することもあるとか。
 体操とかヨガとかで身体感覚を養うこと、そして思考や感情などでイメージを合理的な裏付けや具体的な形にすると良いかもしれませんね。

※集合無意識とは人類共通の心的領域のこと。無意識よりもさらに深部の領域にあるとされ、その内容は神話的モチーフや形象によって成り立っている。詳しくは『元型論』を参照のこと。


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「タイプ論」について騙る(2)
           ――四つの機能