予測研究

(予研)第2005-1号(1)

余震活動と降雨について

内陸浅発の被害地震で降雨によって余震活動に影響がみられるか、雨量データと有感地震とを比較した。
2004年新潟県中越地震と2005年福岡県西方沖地震をグラフ化したが降雨と余震活動との間に明確な関係はみられなかった。
                  報告:石塚 正純

2005年5月7日公開



(1)はじめに

  地震と地下水には関係があることがわかっています。地盤に水がしみこんでいてこの水が別の場所に移動したりすると、水圧で支えられていた地盤が崩れるモデルもあります。地下浸水が地震を誘発することは宏観現象として古くから世界で知られていました。
  現代では高さ100m以上の大きなダムを造ると湖底にかかる水圧によって地盤に水がしみこみ、小地震が発生しやすくなったり、時には大きな地震が起きたりすることが知られています。アルペンルートで有名な黒四ダムでも人造湖の水位の変化によって微小地震の回数も変化するとのことです。力武常次先生の「地震を探る」によると外国の例として次が挙げられています。
  ●アメリカ/フーバーダム(高さ142m)→M5.0
  ●ギリシア/クレマスタダム(高さ147m)→M6.2
  ●インド/コイナダム(高さ103m)→M6.4
  ●フランス/モンティナールダム(高さ130m)→M4.9
  ●ローデシア/カリバダム(高さ125m)→M6.1
これらは湖底にかかる水圧が直接の原因ではなく、地下にしみこんでいった水が地盤の「ひずみ」を放出する引き金になっているそうです。

  もっとも詳しく調べられたのはアメリカのデンバー市の水地震です。
  デンバー市では軍事工場からの放射性廃水の処理に困り、深さ3000mを超える井戸を掘って1962年3月から排水することにしました。すると翌4月から深井戸のまわりで地震が起きはじめ、排水量に応じて地震回数も変化し中断すると地震回数も急に少なくなりました。1964年9月から再排水をはじめると地震が増えはじめます。デンバー市は年に1回有感地震があるかないかの場所です。さらに地震の震源は深井戸の周囲3kmx8kmのだ円形の中にあり、深さも4.5-5.5kmでした。この深井戸は断層の中にたまたま掘られ、地質はガサガサで水はどんどん吸われますが岩石割れ目の摩擦は弱まりついにはスリップして地震が起こったものと考えられています。
  この後日本でも松代群発地震の後に松代にて注水実験を行い同現象を確認しています。

  前置きが長くなりましたが、つまり被害級の地震が発生すると断層周囲での地割れもあり地盤も緩くなっているところへ、降雨の地下への浸水によって余震活動に影響があるのではないかと考えました。そこで震源が浅く内陸断層型の中越地震と、震央が海底ではありましたが福岡県西方沖地震の地震回数と雨量とを比較してみました。


(2)新潟県中越地震

  グラフ上は地震発生前の10月15日からのグラフです。本震は10月23日でした。地震回数が多く、ある程度落ち着く11月1日以降のグラフを下に載せました。12月31日までなのは12月下旬から積雪が始まったため、積雪データを避けるためです。雨量データはアメダス長岡の1日の雨量です。

  本震前に結構大降りの雨が降っていたことがわかります。しかしデータ期間中、雨の日が多いことと余震活動が活発なため雨量との明確な関係がわかりません。余震活動が落ち着く11月中旬以降、20mmを超える雨量のあと震度4以上の揺れが起きているようにもみえますが、これも判然としません。



(3)福岡県西方沖地震

  グラフは地震発生前の3月15日からのグラフです。本震は3月20日でした。雨量データは福岡気象台での1日の雨量です。

  本震前に雨が降っていますが、震央は海域であり果たして降雨の影響を受けるのか疑問でした。どちらかというと潮汐の影響の方が大きいように思われました(潮汐は現在未検証)。しかしグラフをみると余震活動が落ち着く4月1日以降、雨が降ると有感地震の回数が前後の日より若干増えたり、震度4以上の地震が発生しているようにもみえます。震央が海域であることもあって本当に降雨の影響かどうかはわかりませんが、興味深い結果であったと考えます。



(4)まとめ

  2つの被害級地震で検証したが余震活動と降雨の関係は明確にはわからなかった。福岡県西方沖地震での余震活動は降雨との関係を感じさせるものであったが、震央が海域であり果たして降雨の影響を受けるのか疑問ではある。どちらかというと潮汐の影響が大きいように考えられるので、別途潮汐との関係を調べてみたい。
  最後に各データは、気象庁のアメダス長岡と福岡気象台の降雨データおよび震度データベース検索を使用させていただきました。
  参考文献としては、「地震を探る」力武常次・山崎良雄/東海大学出版会 1975を参考にしました。