From TV with Love

ブラウン管からスクリーンへ


 

 

 本当は「アウターリミッツ」が見たかった

 「トワイライト・ゾーン」

 "The Twilight Zone"

 夫馬 信一

 by Shinichi Fuma

 

 今回、特集の準備しながら気が重かったのは、俺自身は一体何を書けばいいんだよ?…という、何とも語るに落ちた問題がかたずいていなかったから。適材適所の素材をそれぞれの方々にお願いして、ホッと我に返ってみたら、何と俺自身の原稿をどうするか決まってないじゃないか!

 今回はサボッちゃおうかなと思ったが、昨年秋にシネヴィヴァン六本木の特集で、映画館の支配人インタビューと上映作品リストづくりだけやったら、「Fは本当はシネヴィヴァンに愛着も何にもなかった」との評判が立ってマイッタ(笑)。二度とその轍は踏まないようにしなくては。そこで、自分の海外テレビシリーズ体験を振り返ってみると…確かに強烈なのが一作あるんですよ。その名は「アウターリミッツ」。

 アメリカのテレビ界には1話完結のSFホラーものという伝統があるみたいで、これもその一本なんです。この作品、あんまり日本じゃポピュラーじゃないかもしれないけど、見たら絶対クセになる作品です。あるエピソードは異星人侵略もの、またあるエピソードは異次元サスペンスもの、またはモンスターもの、未来もの…と、さまざまな形のSFホラーが楽しめて、当時まだ新人だったマーティン・ランドー、ロバート・ヴォーンらも出ていて、とにかくメチャクチャ面白くて怖かったけど、実はこのシリーズ通して流れているのは極限状況での人間の哀しみ…なんですね。

 それは、どちらかというとセンチメンタルな味わいで、子供心にいつもこのシリーズを見るとメランコリックな気分になってしまった。それ以来、センチメンタルな味わいのないSFやホラーは、何となく物足りなく思っているんですよ。あれは、僕のSFホラーの現体験に違いない。

 でも、残念ながらこれが最近ハリウッドで映画化されたって話があるわけじゃない。だから、今回特集の趣旨とは合わないんですよね。残念だな〜、このシリーズのことならいくらでも話せるのに。

 その代わりと言っては何ですが、このジャンルでは一番有名な作品で、何と近年の花形監督たちが勢ぞろいで映画化した作品を…と取り上げることにしたのが「トワイライト・ゾーン」です。

 何だか申し訳ないねぇ、天下の「トワイライト・ゾーン」をプロ野球の雨天中止の時に放送する「珍プレー好プレー」みたいな扱いにしちゃって(笑)。でも、みのもんたが偉そうにフンぞりかえる奥様番組よりも実は「珍プレー好プレー」が最高なように、「トワイライト・ゾーン」も代打とは言えバカにしちゃあいけません。…とは何とも無茶なこじつけではありますが、見てくださいこの豪華絢爛たる顔触れ! ジョン・ランディス、スティーブン・スピルバーグ、ジョー・ダンテ、そしてオーストラリアから当時「マッドマックス」引っ下げて颯爽と現われたジョージ・ミラー! 誰だい?スピルバーグ以外みんな今は峠を越えちゃった連中ばっかりなんて言った奴は。だから、バカにしちゃあいかんとは言ったものの、あくまで代打なんだよ代打!

 

 で、テレビシリーズ「トワイライト・ゾーン」と言っても、実は日本ではリアルタイムにはその名前使っていなかったりする。もっとベタですよ。「ミステリー・ゾーン」だもんね。でも、当時「トワイライト」ったって、誰にもわかるわきゃーないよね。実は今だってわかんないんだけど、若い奴は頭パーだから、どんなタイトルにしたって同じことなんだよ(笑)。このオリジナルのテレビシリーズも、「アウターリミッツ」同様に毎回一話完結のSFシリーズ。で、これにゾッコンだった当時の若手監督4人が結集ってとこが売りなわけだったんですよ。

 その映画版は…と言うと、いきなり始まるのがプロローグ。最初、配給のワーナー・ブラザースの社名ロゴマークが出てくるや否や、クリーデンス・クリアウォーター・リバイバルの「ミッドナイト・スペシャル」が流れ始めるのには度肝抜かれる。こちとらスピルバーグのことしか頭になかったし、「トワイライト・ゾーン」だし、まさかCCRの名曲が流れてくるとは思わなかったもんねぇ。このへんの感覚、いかにもこのプロローグと第1話を手がけたジョン・ランディスのもの。そう! 日本ではスピルバーグ作品と騒がれたこの「トワイライト・ゾーン」だが、実際は彼以上にランディスが主導権を握って制作されたものらしいんだね。で、何でCCRかというと、寂しい夜道をひた走る車が出てきて、このカーステレオから流れているんだなとわかる。運転しているのは「ブロードキャスト・ニュース」などで知られるアルバート・ブルックス、助手席にはヒッチハイクで拾われたらしいダン・エイクロイド。何だなんだ。まだ単なるプロローグだというのに、いきなりこんな豪華キャストかい。

 2人はノリノリでCCR歌ってるけど、カーステ壊れちゃったんで、仕方なく往年のテレビシリーズの主題歌クイズを始める。で、昔「トワイライトゾーン」ってやってたよね、面白かったなぁ…という話になる。何ともうまい導入部なんだよ。

 で、結局は日本の落語なんかにもあるオチだけど、これがうまくキマって見ている者を心地よく驚かすんだよね。うわぁ…イントロからこれかよ。これはすっごく面白くなるに違いない。こんなのがあと4話?たまんないね。ところが…。

 とにかく例の有名なチャラララ、チャラララ…ってテーマ曲が流れて、やたら大げさな前口上が述べられて…というあたりは、オリジナルのロッド・サーリングによるテレビシリーズと同じ。そういや、あのテーマ曲は昔、マンハッタン・トランスファーが自分たちの曲で引用していたっけな。

 その第1話はまたしてもジョン・ランディス。たぶん、かなりノリにノッて演出してたに違いない。それが裏目に出たのかなぁ…。

 このお話はすっごく単純明快。テレビシリーズ「コンバット」(あのゴキブリ獲りの「コンバット」のテレビCFで流れるマーチみたいな曲が、実際にこの「コンバット」のテーマなのだ)で知られるヴィック・モローが主役のサラリーマン役で、白人の彼が昇進できなかったのに、ユダヤ人の同僚が出世して面白くないとわめくところからスタート。調子に乗ったあげく黒人も東洋人もフザけやがってと言い始め、お店の中も険悪な雰囲気になり、いいかげん一緒に飲んでいた友達も困ってしまう。

 僕もこういう状況になったことあって、あの時は困りました。僕の中学時代の友人が仕事上のトラブルか何かでウサが溜まっていた時期で、一緒に飲みにいくと悪酔いするんですよ。イヤな酒でねぇ。その日もいやな雰囲気になり始めていた。で、運悪く隣で飲んでた外国人の男と肩か何かがぶつかった。この外国人男はすぐに謝ったんですよ。だけどこの男が日本人の女を連れていたのがマズかった。面白くねぇ。で、フザケんな!となったわけ。だけど、元々ぶつかったのだって、本当は僕の友人が太っていたからだと思うんだよね。しかも、ストレートに「外人が日本の女を引っかけてるのが気にいらねえ」なんて言っちゃうのにはマイッタ。恥ずかしいからよせよ、ひがんでいるのがミエミエ(笑)。フーゾクでも行って抜いてこいって。結局何とかやめさせて、そいつ連れて店を出ましたよ。それ以来、そいつと飲みに行くのはもうコリゴリ。

 で、映画の話。友達がシラ〜ッとなっちゃったので、モローはフザケんなとわめいて店の外へ。ところがここからが、差別と偏見の地獄巡りになっちゃうんだね。

 ランディスって権威とか体制とか大嫌いで、「ブルース・ブラザース」なんか見てもナチとかKKKを思いきりコケにして、笑いの中で差別や偏見をやっつけていた。ここでもそんな彼の姿勢がモロに出ているんだけど、今回はコメディではなくシリアス、しかも短い時間に描ききらなきゃならないもんだから、モロに出すぎというか、いささかのひねりもなしにストレートに描いちゃった。

 偏見でこり固まった男をナチやKKKやヴェトナムなど、差別と偏見の最前線の現場に放り込んで、やられる側の立場に立たせてボコボコにするって話はわかりやすいけど、正直言ってチト芸がない。しかも、あの悲劇が起こっちゃったんだよね。

 これ有名な話だから、みんなも知ってるよね。撮影中、ビック・モローが死んだこと。ヴェトナム人の子供抱えて走っていたら、ヘリコプターの羽根がモローと子供の首をはねちゃったんだ。裁判ざたになってランディスが告発されることになり、結果やっぱり有罪だったのかな? 執拗に低空で飛ぶことを要求したがための事故だと言うけど、やっぱり熱が入りすぎちゃったのかなぁ。

 たぶんこのせいで(まさか首飛ばしちゃうフィルムは使えないだろうし)ヴェトナム場面などいくつかの場面を割愛しなければならなかったはず。そのためか、何だか舌っ足らずな印象は拭えない。でも、元々このお話ではオチもヒネリも乏しく、そう面白くなるものでもないよね。

 ランディスはこれ以降、ダメージから立ち直ることがまだ出来ていないみたい。何とエディー・マーフィーのヒットシリーズ「ビバリーヒルズ・コップ3」も台なしにしちゃうし、自らの代表作の続編「ブルース・ブラザース2000」も何だか元気ないし。ちょっと調子に乗り過ぎた代償は大きかったねぇ。

 そして、この「トワイライト・ゾーン」という映画の最大の話題が、実はこの悲惨な事件だったというところが、何よりこの映画の悲劇的なところだと思うんだよね。

 で、お次は御大スピルバーグの登場なんですよ。で、これがねぇ…。老人ホームが舞台で、くたびれ老いぼれ果てた老人たちの前に、不思議な男スキャットマン・クローサーズが現われ、カンけり遊びをしようと言う。で、遊びを始めたら老人たちがみんな若返って子供になり、どこかへ去っていく…というお話。あまりにミエミエに子供心の大切さをムキ出しストレートに訴える内容。ガキでいいんだと力説するのはいいけど、何かあんまり開き直られるとねぇ。当時、「E.T.」大成功で飛ぶ鳥落とす勢いのスピルバーグ、しかし、すでにもうこの時点からあの何とも気持ち悪い失敗作「フック」の前兆が見え隠れするんだよね。これの話はもういいだろう? 

 ところが、第3話のジョー・ダンテは、もっとコッテコテになってきて、もはや胸焼け状態。女教師と超能力者の少年のお話で、少年の作り出す幻想がギトギトの怪物やアニメキャラみたいに飛び出してくるんだが、これらの処理がどれもこれも「グレムリン」みたいに変にアクがつよくてウンザリ。お話よりその処理の仕方のアカぬけなさにイヤになる。そう言えばダンテは後年の「エクスプロラーズ」で、少年たちが裏庭で宇宙船をつくるというウソっ話をみずみずしく描いてすごくよかったのに、後半にやっぱりギトギトの脂っこいエイリアンのキャラを出してブチ壊しにしてたっけ。このエピソードも、もうこれでいいよね。

 で、トリの第4話はというと、ジョン・リスゴー扮する飛行機恐怖症の男が、嵐の晩に飛行機に乗らなきゃならないのでビクビク…というお話。ところがビビりながらフト窓から主翼を見ると、不気味な怪物が乗っかっててエンジンをバリバリ食い破ってるではないか。いや〜、あわてるあわてる。ところがこの怪物、どうもリスゴーにしか見えないらしい。それでなくても真っ青なリスゴー、レッド・ツェッペリンのライブの時のジミー・ペイジみたいに不健康そうな汗をビッショリかいて、ジタバタギャーギャー騒いで機内で大暴れ。すっかりキじるし扱いされ誰にも相手にされなくなったリスゴーは、たまたま乗り込んでいた刑事の拳銃奪って、窓ぶち破って怪物を撃つ。するとケケケッと笑って怪物は退散。しかし他の誰も怪物は見ていないから、リスゴーは完全にヤバい人と見なされて拘束される。飛行機は空港に無事着陸、リスゴーは救急車に乗せられて精神病院に一直線。だが、着陸した飛行機のエンジンは何者かに食い破られているのだった。一方、救急車ではなぜかクリーデンスの「ミッドナイト・スペシャル」が…。当惑するリスゴーに向かって救急車の運転手ダン・エイクロイドが話しかけてきて…と、プロローグと呼応する円環状の構成となって終わる、ちょっとシャレた幕切れ。

 とにかくこのエピソードは大迫力で、ジョン・リスゴーのキレた熱演もあってマジで怖い。飛行機ってそれでなくてもイヤ〜な感じあるもんね。俺も先日、台風で欠航相次ぐ中を空港でキャンセル待ちしてまで飛行機に乗って、最初はマジで生きた心地しなかったもんね。誰もが思い当たる恐怖を描いて、これはかなり力のこもったスリラーになってます。監督は誰かと言えば「マッドマックス」で世界にはばたき始めたジョージ・ミラー。アブラの乗ってきた人特有の、うまみのある演出でこの作品随一の面白さとなってます。それなのにねぇ、今この人どうしてるんだろ? 何で消えちゃったんだろうね。

 そう言えば、この作品にはもう一人注目すべきクリエーターが参加してるんだよね。その名はリチャード・マシスン。SFホラー作家の彼はあの「激突!」の原作脚本でも知られているけど、ここでも原作脚本を手がけてるのがミソ。面白いわけだわ。

 しかし、最初は当時波に乗る若手4人が競作とあって、どこまで面白くなっちゃうんだろと心配した(?)ほどだが、出来上がってみるとちゃんとプロローグと第4話しか面白くないというふうに、並みの映画どまりになっちゃうんだね。ま、オムニバス映画なんてそんなもんだけどね。

 でもねぇ、それもせいぜい「トワイライト・ゾーン」ごときだからねぇ。これが「アウターリミッツ」なら全然違ったんじゃないか?…と、最後までブチブチと未練たらしくグチを言う俺なのでした(笑)。

 

 

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