なつかしの東京12チャンネル駄菓子屋映画

Memories of Trush Movies on TOKYO 12ch-TV

(1999/05/09)

 

地方の方はちょっとおわかりにならないかもしれませんが、東京の人間には「東京12チャンネル」と聞くとピンとくるイメージがあります。この東京ローカルのテレビ局、現在は「テレビ東京」ともっともらしい名前に変わり、それなりのタレントが出演する番組も放送していますが、かつてこのテレビ局の番組ときたらロクなものがなかった。昔、自由になるお金も少なかった学生の頃は、テレビで見られる映画で飢えをしのいでいるような状態だったので、現在の衛星放送みたいにノーカット、ノートリミング、字幕スーパーなんてものじゃなくとも有り難がってむさぼるように見たものです。それでも東京12チャンネルにかかる作品は、まず日本では普通お目にかからないような珍しいシロモノや、しょーもないクズばっかりでした。しかし、そこが捨てがたい駄菓子屋の味。当時のメモとあやふやな記憶で振り返ってみると…。


 

第1部 あのスタ−この監督の知られざる怪作

Chapter 1 - Great Filmmakers' Unknown Career

 

第2部 世界クズ映画の旅

Chapter 2 - Trush Movies around the World

 

第3部 クズの中にもクズ

Chapter 3 - The Trush of the Trush Movies

 

 


 第1部 あのスタ−この監督の知られざる怪作

 Chapter 1 - Great Filmmakers' Unknown Career

 誰にでも、忘れてしまいたいことや、隠し通しておきたい過去がある(笑)。

 

 

悪霊/異次元を覗いた人妻 Something Evil(1971年・アメリカ)

1979年11月13日 夜9時放送

監督:スティーブン・スピルバーグ

出演:サンディ・デニス、ダ−レン・マクギャビン

スピルバーグが無名時代に撮ったTVムービー。ニューヨーク郊外の屋敷に移ってきた一家が怪しげな事件に巻き込まれる…というお化け屋敷映画。ヒロインが夜中に赤ん坊の泣き声に誘われるように外へ出て、納屋の中に入っていくくだりなどは、「ジョーズ」や「ジュラシック・パーク」でも冴えてた、スピルバーグの脅しのテクニックが早くも登場。しかし、悪霊らしきものが屋敷に住みついている理由は最後まで明かされず、意味がわからない。もっとも12チャンネルの場合、ズッタズタにカットすることなど屁とも思わないから、それで話がつながらなくなった可能性もある。脚本はロバート・クローズと出ていたが、これ「燃えよドラゴン」の監督さん?

 

要塞警察/ウォリアーズ夜の市街戦 Assault on Precinct 13(1976年・アメリカ)

1980年2月14日 夜9時放送

監督:ジョン・カーペンター

出演:オースティン・ストーカー、ダーウィン・ジョンストン

実はこの映画、クズ映画なんかじゃありません。放送当時、もうカーペンターは「ハロウィン」などで知られてたので、これには期待した。仲間を警官に殺されたストリート・キッズたちが逆恨みして、町外れの警察署を襲ってくる。その警察署が移転の最中、それもあらかた引っ越しを済ませた後だったので、たまたまそこに居合わせた黒人警官、女刑事、凶悪犯の3人だけで戦わなければならなくなる。これがすごく怖い! 電気も止まり真っ暗の中、消音銃で襲ってくるストリート・キッズたちがまるでゾンビか怪物みたい。

 

ナイト・ビジター The Night Visitor(1971年・アメリカ)

1980年3月27日 夜9時放送

監督:ラズロ・ベネデック

出演:トレバー・ハワード、リブ・ウルマン、マックス・フォン・シドー

いきなりマックス・フォン・シドーがシャツとパンツで吹雪の中を走ってるシーンから始まり、実に寒そう。地主殺しの罪をフォン・シドー扮する兄にかぶせて精神病院に閉じ込めた妹(リブ・ウルマン)と、復讐をたくらむ兄のお話。ここにトレバー・ハワードの刑事がからむ。冒頭の寒いシーンは完全犯罪を狙う兄が精神病院を抜け出す場面。ベルイマン映画の名優が下着だけで雪の中をひた走る姿が強烈すぎて、後のお話はどうでもよくなる。ホントに見てて凍えます。

 

ファースト・ラブ/青い性 La Disubbidierza(1981年・イタリア)

1982年8月12日 夜9時放送

監督:アルド・ラド

出演:ステファニア・サンドレッリ、テレサ・アン・サボイ、マリオ・アドルフ、カール・ディムンチ、ジャック・ペラン、マルク・ポレル

単なる筆下ろし映画かと思ったら…ちょっとイタリア現代史を下敷きにしたお話になっていて、戦中と戦後でガラッと態度が変わった大人に幻滅した少年(カール・ディムンチ)が主人公。この少年が肺炎にかかると、やってくるのがサンドレッリの看護婦といとこ(「カリギュラ」のテレサ・アン・サボイ)というわけで、ぐっとエッチな雰囲気になってくる。事実、期待通りこのお二人がやってくれます。しかし、看護婦との関係を親に感付かれて仲を引き裂かれた少年が、銃まで持ち出して大騒ぎしたくせにアッサリあきらめるのにはガッカリ&唖然。そのあげく「きっとボクはずっと反抗していたいんだナ」なんて甘ったれたことをホザくラストには、思わず「このガキャー、ナメてんじゃねー!」と怒りがこみあげてくることうけあい。

 

課外スクール For Your Love Only(1977年・西ドイツ)

1984年3月22日 夜9時放送

監督:ヴォルフガング・ペ−タ−ゼン

出演:クリスチャン・クアドフリッヒ、ナスターシャ・キンスキ

ナスターシャ・キンスキーの無名時代の作品。彼女が扮する女子高生が先生と関係していて、それを昔の恋人に知られて脅される。襲われた彼女はこの男を殺してしまい、それを連続殺人犯のしわざにしようとする。キンスキーのコギャルぶりだけが見もので、思った通り彼女は脱ぎまくりますが、出来栄えはテレビの2時間サスペンス並み。注目は監督が「Uボート」で注目される前のペーターゼンということ。今でこそ「アウトブレイク」や「エアフォース・ワン」などでハリウッド監督の顔をしてますが、この人にもこんな時代があったのです。

 


 第2部 世界クズ映画の旅

 Chapter 2 - Trush Movies around the World

 マサラ・ムービー(笑)なんざ生ぬるい! 井の中の蛙になるな! 世界は広いぞ!

 

 

嵐を呼ぶ女 (1968年・フランス)

1980年1月10日 夜9時放送

監督:ミレンコ・スタコビッチ

出演:アニー・ジラルド、イバン・パルウッチ

この作品、新聞にはフランスの映画と出ていたのですが、フランスらしいのは主役のアニー・ジラルドだけで、舞台はユーゴのど田舎、出てくる連中もユーゴ人らしい。監督もこの名前からするとユーゴ人らしく、本当はユーゴ映画じゃないだろうか? 田舎の純朴な青年が、町からやってきた女教師(これがジラルド)に弄ばれ、ボロボロにされてしまうというお話。この青年の純朴さたるや半端じゃなくて、ジラルドが都会からやってきた飛行機乗りの男に夢中になると、彼女の歓心を買いたいがあまりに、自分の胸に飛行機の入れ墨を彫ってしまうんだから恐れ入る。もっともそれを見たジラルドには当然のごとく嘲笑されちゃう情けなさだ。地元の民謡のような素朴な歌が狂言回し的に使われたり、なかなか興味深いが、一番目を引いたのは全部木製の手作りらしい村のボーリング場。これには驚きました。

*筆者・注:この映画の原題名は長い間分からないままだったが、Internet Movie Databeseで検索したところ、女優アニー・ジラルドの出演作に「Bice skoro propast sveta」という1968年のユーゴ映画を発見。ただし、この作品の監督には1960年代のユーゴ映画界の新鋭アレクサンドル・ペトロヴィッチの名が挙がっていて、東京12チャンネル発表の「嵐を呼ぶ女」の監督名ミレンコ・スタコビッチとは異なっていた。しかしアニー・ジラルドに1968年前後、別のユーゴ映画の出演作が存在していたとは考えにくい。また他の「嵐を呼ぶ女」出演者として発表されたイバン・パルウッチなる俳優の名が、「Bice skoro propast sveta」のキャスト表にも存在していることが判明。従ってユーゴ言語(おそらくセルビア語)で書かれたクレジットを判読し損なうなどの理由で12チャンネルが誤った監督名を発表した可能性が高いと判断し、ここではこの「Bice skoro propast sveta」を「嵐を呼ぶ女」と断定した。

 

ビッグ・ワイルド The Cry of the Black Wolves(1976年・西ドイツ)

1981年5月12日 夜9時放送

監督:ハラルト・ラインル

出演:ロン・エリー、ライムンド・ハームストロフ

1903年のアラスカを舞台にしたというだけでも珍しい映画だが、雪深い山奥で展開するマカロニ・ウエスタンふうのこの作品が西ドイツ製というのも興味深い。「竜巻キッド」と名乗るならず者たちの金鉱探しに巻き込まれるアウトローの戦いのお話だが、途中、火を起こす場面で氷をレンズ代りに使うあたり緊迫感ゼロでオカシイ。主役のロン・エリーって見たことある名前だと思ったら、1975年の「ドク・サベージの大冒険」で主役を張った男。アメリカで初めて主演映画を撮ったものの不発で、ここまで流れてきたとは泣かせます。

*筆者・注:この映画の監督であるハラルト・ラインルは、戦後西ドイツでさまざまなジャンルの娯楽映画をつくり続けて来た人。あちらでは娯楽畑一筋の映画人として結構知られた人物らしい。何とマカロニ・ウエスタンよりも早く1960年代初めから、戦後ヨーロッパ製西部劇を製作した人物でもある(マカロニ・ウエスタンの祖「荒野の用心棒」発表は1964年。もっとも戦前にまで目を向ければ、ヨーロッパ製西部劇の発祥はサイレント期にまでさかのぼる)。参考:「イタリア映画大回顧(東京国立近代美術館フィルムセンター)」記念冊子収録の「遠い響き - 日本人にとっての<イタリア性>」西村 安弘…より

 

エア・パニック '81 ЭКИПАЖ(Ekipazh)(1980年・旧ソ連)

(このロシア語の原題は、かなり怪しいので悪しからず。)

1981年10月22日 夜9時放送

監督:アレクサンドル・ミッタ

出演:ゲオルギー・ジョジョーノフ、アナトリー・ワシーリエフ

これぞ珍品中の珍品、ソ連製のパニック映画! 主人公は、娘が未婚の母になるのであわてている初老のパイロット、プレイボーイのパイロット、妻のヒステリーで家庭崩壊のパイロットの3人が主役。前半1時間はこの3人の家庭の事情を延々と描いているため退屈でいやになるが、あまりと言えばあまりに西側的なエピソードばかりなのが面白い。おかしいのは、突然脈絡もなしに羽田空港でのハイジャック事件が描かれること。これは主人公たちが見ているテレビのニュースということになっているのだが、ここに特別出演するのが栗原小巻! 人質になった女性の役で1カットだけ出演しているのだが、それと言うのもこの映画の監督アレクサンドル・ミッタが、かつて東宝とモスフィルム合作の彼女の主演作「モスクワわが愛」を撮ったことがあるため。でも、当時ソ連で人気があった彼女を無理やりゲスト出演させるあたり、パニック映画らしい気分が出ていてアホらしくもうれしくなる。アフリカで地震が起こり、コンビナート建設で現地にいる技術者と家族を救出に行くあたりから本題に入り、「タワーリング・インフェルノ」「大地震」「エアポート…」みたいに、地震、火災、ダム決壊と特撮のつるべ打ち。飛行機が人々を救出して無事飛び立ったあとも、尾翼に穴が開いたため、飛行中の機外に出て修理にあたるアクション・シーンが登場。どれもこれもヘタクソな演出でサスペンスもへったくれもないけど、あらゆるパニック映画の見せ場を網羅しようという涙ぐましい意気込みは伝わってくるし、次から次へと起こるアクシデントはほとんど不条理なナンセンス・ギャグの域に達していて、苦笑・失笑・爆笑を誘う。雨の場面で、レンズにビシャビシャ水がかかっても気にしないおおらかさもサイコー!

 


 第3部 クズの中にもクズ

 Chapter 3 - The Trush of the Trush Movies

 夜空に星があるように、地上に花が咲くように…世の中、下にはやっぱり下がある(笑)。

 

 

禁断の殺意/人妻モニカの愛の終末 Death Haunts Monica(1977年・スペイン)

1979年12月4日 夜9時放送

監督:ラモン・フェルナンデス

出演:ジャン・ソレル、カリン・シューベルト、ダミアン・ベラスコ

建設会社社長のジャン・ソレルと妻のカリン・シューベルトをめぐる愛憎ドロドロのサスペンス。社長秘書が社長の妻に「社長に愛人がいる」とチクッたことから夫婦仲が悪くなる話と、社長の後暗い過去についてのネタを握った男がゆすりにくる話。この2つがゴチャゴチャになり、なぜか家に忍び込んできたゆすり男を社長の妻が殺し、死体をダムに捨てたら自宅の風呂場に舞い戻ったりする。秘書と社長の愛人は同性愛者で、会社乗っ取りを画策して殺される。社長のパートナーは社長の妻に「すべて社長の仕業だった」と言い出す。社長の妻は妻で、家に戻ってきた社長を撃ち殺してしまう。ところがそれは空砲で、社長は陰謀を見抜いていた…って何が何だかわからないお話。誰が犯人だかわかりますか? 私は、ラストまで見てもまったく腑に落ちませんでした。(こたえ:社長のパートナー)

 

イタリア女囚物語 Diario segreto di un carcere femminile (Love and Death in a Woman's Prison)(1974年・イタリア)

1982年5月4日 夜9時放送

監督:リノ・デ・シルベストロ

出演:アニタ・ストリンドンバーグ、ロノサ・マイナルティ

オープニングのタイトルバックは、新入りの女囚とワイセツな身体検査というお約束のシーンが早くも登場するので思わず苦笑。ところが、いきなり場面変わって、麻薬組織のボスが別の組織の連中に追われるカーチェイスがスタート。何なのだ、これは? と思う間もなくヘロヘロなカーチェイスは終わって、ボスは捕まる。どうも、このボスがヘロインをチョロまかしたらしく、そのカギを握るのが冒頭に出てきた女囚で、ボスの愛人らしい…とここまでわかるのが一苦労。そこに警察側のおとりとして新たな女が女囚として入所。少しは面白くなるかと思えば、レズとけんかに明け暮れる刑務所の中で、おとり捜査もまるで進まない。使えねー女! そもそも刑務所の場面と、ボスが悪者に問いつめられている場面が交互に出てくる便秘状態で、話がまるで先に進まずスッキリしない。ボスは死に、愛人からヘロインのありかを聞き出したおとり女も、出所したとたんに襲われてガケから転落。それからどうなる?…と見ていたら、トートツにおしまい。見たら激怒できることだけは保証します。

 

ハイティーン襲撃 Ritiro collegiale (Midnight Blue)(1977年・イタリア)

1982年11月16日 夜9時放送

遠征中の女子陸上選手たちが海で水遊びをするところからスタート。早い話がブラをはずしておっぱいを見せるために用意されたシーンです。こいつらのうち3人が、近くにある親戚の別荘で遊ぼうと抜け出す。そして、また海で遊び、ブラをはずして…って、他にやることないんか、こいつらは! そこに、いかにも怪しげな3人男登場。しかし、無防備にも仲間に入れて、別荘に泊めちゃうんだからコギャルは始末におえません。男たちのうち1人が、シャワーを浴びてる女ににじり寄って…いよいよサスペンスものらしくなるかと思えば、女は待ってましたとばかりに大股開き。夜通しやりまくりで、余った女の子2人は隣の部屋のベッドで全裸でつまらなそうな顔をしているんだから、どうしようもないズベ公です。ところが翌日買い物に出て、新聞で3人が強姦殺人の脱獄犯だと知って、さぁ大変! 男たちも正体を知られたと態度を豹変。女の子たちを人質にとり、あぶれていた他の2人の男も女にありつく。ところが女の子は簡単に脱出できて、槍投げの槍で男たちをブチ殺します。このシーンだけのために、女の子を陸上選手にした脚本はスゴイ! 男たちの死体を埋めてズラかろうとしたら、脱獄犯の仲間たちに取り囲まれる…というラストはまったく救いようがないが、主人公のコギャルどもがてんで好きになれない連中なので、ザマァ見ろというか自業自得という感じにしかならない。槍投げのアイディアだけの映画。

 


 

…というわけでお贈りいたしました「東京12チャンネル駄菓子屋映画特集」いかがでしたか? 昔はくだらない映画も名作も、ズタズタにカットされた吹き替え版を黙って見ていたものです。ところが最近は衛星放送はあろか、地上波でもノーカット字幕で放送したりしています。いい世の中になったもの…と素直に喜べばいいんでしょうが、何か違うんじゃないでしょうか。テレビ雑誌なんか見てると、ゴールデンタイムのお子さまもお年寄りも見てる時間帯の映画に対して「あそこカットされてた」とか「吹き替えでカッコ悪かった」とか「英語じゃないとオシャレじゃない」とかアンちゃんネーちゃんがいろいろほざいてます。黙らっしゃい!! 若えの、タダで映画見せていただいてゴタク並べんじゃねぇ。そんなにノーカット、ノートリミング、字幕スーパーが見てえんなら、劇場行っておあし払って映画見たらどうなんでえ!! …お後がよろしいようで。

 

 

第1部 あのスタ−この監督の知られざる怪作

Chapter 1 - Great Filmmakers' Unknown Career

 

第2部 世界クズ映画の旅

Chapter 2 - Trush Movies around the World

 

第3部 クズの中にもクズ

Chapter 3 - The Trush of the Trush Movies

 

 

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