実用性重視

デートムービー最終兵器

The Lethal Weapon of the Date Movies


 

 本音の会話がしたいなら「チェイシング・エイミー」

  "Chasing Amy" Makes You Honest

 あんの

 by Anno

 

 僕の一番最悪だったデート映画は、あのスタジオ・ジブリの名作アニメ『火垂るの墓』だった。

 もう彼女、涙ボロボロ。映画を見終わった後も、彼女は黙って泣くばかり。

 見た映画館も最悪だった。この映画の冒頭、少年が餓死してのたれ死にしていくシーンの舞台は三ノ宮駅なのだが、うっかり、その舞台である三ノ宮駅内の映画館で見てしまったのだ。映画が終わって外に出ても黙ったままの二人。デートで映画を見る時はロケーションが大事……というのは今回の本題ではない。問題は映画を見た後「黙ったまま」という部分である。

 当時の僕は20歳。若かった。しかも彼女は僕より年上だったのである。ほとんど、正直に言うと全く女性の方とのおつきあいについて経験の無かった(山奥育ちには20歳でも経験が無くて当然なの!)僕にデートの沈黙化は拷問だった。

 喫茶店に行っても、居酒屋行っても、しんみり演歌の世界。神戸の町を歩きながら「この町も空襲にあったんだよな」と語り合う始末。同時上映の「トトロ」の話題した記憶無し。以来、僕のデートムービーのモットーは「デートの時に会話の踏み台になる映画を」である

 そんなわけで、デートの時に話題に困らない映画『チェイシング・エイミー』です(前置き長過ぎ)。

 『チェイシング・エイミー』は、恋、セックス、独占欲、片思い、相手への押し付け、相手を大事に思う気持ち等、二人の人間の間に「恋愛」という感情が存在した時に起こる出来事を切なく描いた作品だ。

 「まだできあがってない」「おつきあいして日が浅い」「友達だけど、片方は充分おつきあいする気がある」、ようするに勝負(なんの?)する前の二人にのみ実用性のあるデートムービーとなる。「恋愛」「男女間」についてのお互いの考え方を話し合う時に、これほど話題の踏み台にしやすい映画も珍しい。

 そう、これは正直な本音抜きに感想を語れない映画なのだ。

 

 デートにはトランプのポーカーの要素がある。普段のつきあいでは見ることのできない相手のカードが、デートという一騎討ちの状況で初めて見ることができる。

 このデートポーカーは、はっきり言って怖い。ルールが決まっているトランプと違って、デートポーカーでは相手が何枚カードを持っているかわからないのだ(僕の場合、いつも絶対と言っていいほど相手の持ってるカード数のほうが多い。なぜだ?)。しかし、相手のカードが1枚づつオープンにされて、相手の思いがけない一面を見るのがデートポーカーの醍醐味であり、知ることによって相手に踏み込んでいけるのだ。

 でも、オープンされたカードが自分の見たくないカードだったら?

 自分が許せない(←イヤな言い方だな)カードを相手が持っていたら?

 この『チェイシング・エイミー』という作品は、その擬似的シュミレーションによって成り立っている作品なのである。

 主人公二人のカードオープンの応酬で物語が進行していく。主人公の一人であるホールデンは「彼女が好きだ!」というカードだけで、もう一人の主人公アリッサの友達から恋人になる。その時、彼は彼女がどんなカードを持っているか考えていなかった。

 やがて、彼女の持っているカードが自分の「淡いファンタジー=思いこみ」とは違ったものであることを知ったホールデンはあがき始める。

 この部分、特にアイスホッケー場でアリッサが手持ちのカードを全てオープンするシーンは、相手の恋愛観が知りたい時の会話の踏み台にお勧めだ。

 この後「例の二人組」が登場して、それまでの展開を総括するような会話がありますが、自分が相手と話す時は参考にしないように。付け焼き刃の「自分の本音」はすぐにバレる。本当の「自分の本音」をぶつけないと、相手も「自分の本音」を絶対に言わない。 

 クライマックス、思わぬ不意打ちから三角関係になったホールデンが考えに考えた「自分の本音」カードを、アリッサが出した天下無敵(この作品を未見の方、どう天下無敵なのかはぜひとも実際に作品を見て御確認下さい)のカードで吹っ飛ばされるシーンのことを思うと、自分の都合だけで「本音」をぶつけるのも怖くなるけど、気にしない気にしない。

 

 最後にこの映画をデートムービーとして使う時の注意を。この映画、カッコをつけた感想を言うとすぐにバレます。正直な感想が引き出しやすいだけ、全然カッコつけれません。

 「本音」の会話がしたいときにのみ実用性を発揮する映画『チェイシング・エイミー』。ぜひともデートムービーにどうぞ。

 

 

あんの

神戸にお住まいのあんのさんは、「でんでんはうす」のオーナーでんでん氏の旧友。現在は札幌のかのこさんの「cubby hole」夜の掲示板における最重要レギュラーメンバーです。

 

 

Date Movies - Index 

"The Bodyguard from Beijin" by Misa

"The Natural Born Killers" by Tetsuya Maruyama

"Meitantei Conan" by Miyee

"Big" by Keisuke

"Boogie Nights" by Satoshi Ohkura

"Keeping the Faith" by natsumegu

"Follow Me" by Shutetsu

"French Kiss" by Mie

"Always" by Yama

"Hana-bi" by Naomi

"Groundhog Day" by Eiga-ya Hiroki

"The Fabulous Baker Boys" by Kanoko

"An Autumn's Tale" by Shinichi Fuma

 

 

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