To Be Continued...Again

素晴らしいシリーズ映画の世界 PART 2


 

あのラース・フォン・トリアーがテレビシリーズを製作したと聞いて、デビッド・リンチの「ツイン・ピークス」を想起したのは僕だけではないでしょう。しかしその怪異な世界観は、リンチのそれをも凌駕するユニークなもの。本来はシリーズ映画とは言い難い作品ですが、この機会にあえてtricoloreさんに紹介をお願いしました。


 

 

 トリアーらしい迷いのない映画「キングダム」

 The "Lars von Trier"-ism in "The Kingdom"

 tricolore

 by tricolore

 

 

 信仰っていうものを持ってる人っていうのは美意識が高いんですよね。美意識っていうよりも物事の善悪に対しての尺度って言った方が厭味がないんでしょうけど、本来人間っていうのは人が見てない所では羽伸ばして悪さする生き物じゃないですか?そういうことっていうのをまともな信仰はやっちゃいかん!と、しっかりとルールを作ってくれるわけですよね?でもですね、僕っていう根っからの無信仰の人間っていうのは、そういう風に人が作ったルールで生きていくのって幸せなんだろうか?って普通に疑問を感じるんですよね。だって自分の人生って自分にしか判んないものじゃないですか?我儘もあれば、プライドもあるし、誰だって好き放題しながら生きていければそれが幸せなんですよね。だからとにかく今やりたいことっていうのを周りのことなんて考えずにやって、やりたくないことなんて周りの迷惑なんて考えずにほっぽって、そうやって結局上手く行かずに打たれていくことでしか良い事、悪い事って学べないって思うんですよ。それからすれば何もやりたいことしないでね。ルールだけ守って、守れなければ自分の心が歪んでるからだって言ってるのはアホ臭くないですか?そんなもんやってない人間に我儘を無理矢理通すことの本当の意味なんて判るか!っていう話でね。正直我慢したり、深く考えたりっていうのはほんと我儘ばっかりばっかり言ってきた人間が身を持って学んで始めて出来るようなことに思うんですよね。だから僕って信仰を持つつもりなんて端っからないわけですけど。

 

 それでも僕が何も信じずに生きてるか?っていうと、僕結構自分に対してこうでなければいけない!って戒律めいたもの付けてることって多いんですよ。例えば親に人一倍見栄晴らせなきゃいけない!とか、人前で相手が知らないこと話したらいかん!とか、まあ、かなり個人的な信仰だけに言ってる事の意味判んないでしょうけど、これって僕がこれまで散々自分のやりたいことだけやってきた結果、やっと学ぶことの出来たいくつかのことなんですよね。でもですね。そういう自分にとっての美意識ってどんなアホ臭いものでも、それ持ってない人間って僕全く信用しないんですよ。大体どこそこの本屋から「幸せに生きる為の考え方」なんて物を買ってきて、それ読んで次の日から実践しようなんて考えてる人間はもうダメ。学ぶ前に打たれろ!って言いたくなる。そんなもん人間にとっての幸せが人それぞれなのと一緒で、信仰だって人それぞれに持てなきゃ意味ないじゃないか!って、しかもそういうかぶれた人間ほど他人に読んだこと無理強いしようとするからタチが悪いんだ。ほんと。やれ、自分が我慢して周りとの関係を円滑にするのが大人だとか、やれ、人生は常に

先を見通して常に自分に有利な道を進めるように考えて進まなければいけないとか、そんなもん出来る人間は意識しなくても十分出来るし、出来るってことは十分にそのことで打たれた経験あるってそんだけの話だよ。全く。

 

 ということで前置きがぜんぜん至らん方向に進んでるんですけど、要するに僕が何を言いたかったか?っていうと、これって人間だけに限らず映画っていうのもわざわざ説教臭いもん作って、知ったような美意識を押し付けてくるもんが一杯あるってことなんですよね。そういう映画観ると、この監督は客の知能レベルを馬鹿にしてるのか?って本気で腹立ってくるんですけど、極稀にとんでもない自分の信仰作って、それさえ守れれば何も要らないって我儘な監督が要るんですよ。で、まさにラース・フォン・トリアーっていうのが僕にとってそういう人で、はっきり言ってこの人の自分っぷりって観ていて心地いいですね。客がその美意識を理解出来ようが出来まいがそんなもん知ったことじゃない。ただ、これでしか納得できないっていう、母親殺そうが、奥さんに売春させようが、それでもそれが一番美しい愛の形だって本気で信じ込んでるんですよね。だからこの人の映画って僕には結構スッパスッパと小気味良いもんだったりするんですよ。もしもこの人が自分の傍にいたりしたら、僕かなり仲良くなってる気がしますね。ほんと。

 

 で、今回「キングダム」っていうことで、これはこの人がデンマークのテレビドラマ用に造ってたっていうことらしいんですね。現在(1)(2)が出てて、本当だったら(3)で完結するはずだったんだけど、出演者が死んだり、トリアー監督が思いのほか偉くなったりで頓挫してしまったっていう話はFさんから聞きました。でも完結してない話でストーリーを語るっていうのも無理な話で、ましてやこれってミステリーって来たもんだから謎ばっかり残っちゃって、後味悪くてしょうがないんですよね。そもそもあの気持ち悪い赤ん坊がどうなったか?とか、皿洗いしてるあのカップルは何者なんだ?とか全部残されたままでどうしようもないんですけど、前置きから散々言ってるラース・フォン・トリアーの考える信仰っていうのはほんとよく出てる映画だと思いますよ。というかこの映画に出てる人間ってみんな楽しそうなんですよね。善人なり、悪人なりみんな自分なりに信じている生き方っていうのがあって、それをポリシーって言ってしまえばそれだけなんですけど、我儘やってそれで出来上がった自分って言うのをみんな受け入れている。それがすごく小気味いいんですよ。やっぱり。だからみんな迷いがない。何でも迷わずに自分の思うままに行動して、そっから出てくる悪意や善意がグルグルと話をミステリーに持ち込んでくるっていう、そう考えるとこれっていかにもラース・フォン・トリアーらしいテレビドラマだったりするんですよね。確かに今現在彼が作る映画とは趣が違っても、彼が作ってきた世界観っていうのはず〜っと前から同じ物で、更には『エピデミック』『エレメント・オブ・クライム』の頃に見せていた実験的要素もふんだんに取り込まれている。まあ、それでも『ヨーロッパ』ほどの完成度には乏しいし、『奇跡の海』ほどの自分進行への徹底的なこだわりにも乏しいんですけど、十分にこの人らしい作品といっても問題はないんではないか?と。そんなようなことを『それなりに面白い!』って思いながら考えてみました。

 

 

 

<「キングダム」シリーズ>

キングダム The Kingdom(1994・デンマーク)

(第1章/第2章)

監督・原案:ラース・フォン・トリアー、製作:オーレ・ライム、脚本:ラース・フォン・トリアー、ニルス・ヴァッセル

出演:エルンスト・フーゴ・イエアゴー、キアステン・ロルフェス、ウド・キア、セーン・ピルマール、ギタ・ニアビュー

「ヨーロッパ」で異才ぶりを見せつけたトリアー監督がテレビ放映用に制作したミニ・シリーズ。いわくありげな洗濯場だった沼地跡に出来た大病院「キングダム」を舞台に、さまざまな怪現象と人間模様が交錯する作品。ホルマリン漬けで瓶詰めにされた女の子の死体が登場するシーンなど衝撃的な場面も多い。日本ではまず劇場公開された。

 

キングダム II 第3章/第4章 The Kingdom II(1997・デンマーク)

監督・原案:ラース・フォン・トリアー、製作:オーレ・ライム、脚本:ラース・フォン・トリアー、ニルス・ヴァッセル

出演:エルンスト・フーゴ・イエアゴー、キアステン・ロルフェス、ウド・キア、セーン・ピルマール、ステラン・スカルスガルド

前作(第1章/第2章)の続き。これも日本ではまず劇場公開された。なお本シリーズはあと一本で完結の予定だったが、レギュラー主演者の死去等の事情によりその計画はとん挫したという。

 

 

tricolore

邦画、ミニシアター系映画などなど、難解であったりクセの強い数々の作品をユニークな視点から解き明かしていく鹿児島在住のtricoloreさん。今回もこの方ならではの語り口で紹介してくださいました。

artistic

http://www3.synapse.ne.jp/artistic/

 


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