「DAY FOR NIGHT」開設6周年記念企画

F私撰・韓国映画の20本

F's Choice : 20 Korean Films


第一部 知られざる時代

「ホワイト・バッジ」

"The White Badge"(1992)

監督:チョン・ジヨン

出演:アン・ソンギ、イ・ギョンヨン


 この作品は1992年の東京国際映画祭に出品され、見事グランプリ監督賞を受賞した作品。僕も映画祭でこの作品を見た。韓国映画のめざましい勢いが、いよいよハッキリしてきた時期の作品だ。

 ただし東京の映画祭でグランプリを取った作品にも関わらず、東京での一般公開はヒッソリしたもの。いまだ日本での韓国映画の評価はそんなものだった。

 この映画は珍しくも韓国のベトナム参戦を扱った作品だ。そんな事実があった事すら知らなかったのだが、韓国はアメリカの同盟軍としてベトナム戦争に参加していたんだね。

 物語は、ある一人の男の元にかつての知り合いから電話がかかってくるところから始まる。電話の主は、主人公と共にベトナムで戦った戦友だった。この男は戦争の後遺症に悩まされ、すっかり生活を破綻させているらしい。ただならぬ気配を感じて戦友と再会した主人公は、否応なく忌まわしい戦争の事を思い起こす…。

 最初は比較的気楽なものだったベトナム参戦。ところが戦争が泥沼化するにつれて、韓国軍も前線へと駆り出されて行く。危険と隣合わせの日々…さらに毎日の残虐な場面に麻痺していく神経。壊れてしまった心は、戦争後に帰国しても取り戻せなかった…。

 ストーリーは典型的な「ベトナム戦争」後遺症モノ。「ディア・ハンター」(1978)、「プラトーン」(1986)…などと同工異曲と言えば、確かにそれまでだ。だが、韓国がベトナム戦争に参戦していたという(日本の僕らには)意外な事実にまず驚かされる。アメリカ人より僕らにとって身近な韓国人が被った悪夢だから、従来のアメリカ映画のベトナム背戦争モノよりグッと切実に見る側に迫ってくる。しかもその背景には、何やらさまざまな犠牲を下敷きにして繁栄していった韓国社会…という構図もチラついているのが見事だ。国家のために働かされながら、国家に切り捨てられる兵士たち…というテーマは、後年のシルミド(2003)にも相通じるものだと言えよう。当時僕が映画祭で見た時も、結構衝撃を受けた作品ではあった。

 だが今回この映画のことを思い出してみると、また違った意味での怖さがあるんじゃないか?

 アメリカの同盟国ということで、ノコノコとベトナムくんだりまで出かけていった韓国軍。そもそもが韓国の軍事政権が、アメリカに忠義立てするために行った派兵だ。最初は大した事ないとタカをくくっていたし、実際大した事になるはずじゃなかった。ところが戦況が泥沼化して事態は一転。参戦はとんでもない悪夢と化す…。

 これってまさに今こそ…この日本でこそ上映すべき映画じゃないのか?

 今見たら、この映画ってまったくシャレになってない。おそらく怖さも二倍三倍だ。「華氏911」なんかメじゃない。こっちの方がよっぽどおっかない。だって、これはまったく人ごとではないのだ。

 アン・ソンギがここでも堂々の主演。この当時はアン・ソンギ一枚看板の主演映画が、続々つくられていた頃なんだよね。この後も…やはり東京国際映画祭に出品された「永遠なる帝国」(1995)などで主役を張っていたアン・ソンギだが、それから間もなく「重鎮」として脇で押さえに回る「超大物」扱いへと変わっていった。

 確かに「ミスター韓国映画」とも言える大物なだけに、「西部警察」や「太陽にほえろ!」の石原裕次郎的ポジションに回らざるを得ないのも分からないでもない。だが、本来ならまだまだ最前線でバリバリやれる年齢のはずだ。世界の映画界広しと言えども、彼に匹敵するだけの真の国民的スーパースターってフランスのジェラール・ドパルデューぐらいしか思い当たらない。久々の主演作「ピアノを弾く大統領」(2002)の圧倒的な魅力を見れば、なおさらそう思ってしまうよ。アン・ソンギの一枚看板の主演作、これからも大いに期待したいんだけどね。

 


 

 

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