ナチ戦争犯罪情報公開法(清水試訳)

 ここで紹介するナチ戦争犯罪情報公開法(Nazi War Crimes Disclosure Act)は、1998年10月8日にアメリカ議会で成立した法律であり、これにより、アメリカはナチ戦争犯罪人に関する従来の機密資料を原則として機密解除し、公開することが定められている。この法律制定後の2000年12月27日、今度は日本帝国政府情報公開法(Japanese Imperial Government Disclosure Act)が制定され、米国保有の日本軍関係機密資料が公開されることになった。これらについて詳細は拙稿「ナチ戦争犯罪情報公開法の成立について」を参照されたい。

 

ナチ戦争犯罪情報公開法

 

 

合衆国規則タイトル5、セクション552及び1947年の国家安全保障法を修正し、司法省、または一定の情報関連部局によって、もしくはその他の目的のために行われる、いかなる調査もしくは訴追をも損なうことなく、情報公開法(Freedom of Information Act)のもとでの一定の人物の機密解除を要求し、ナチ戦争犯罪人記録の機密を解除するための法案。

開会中の議会において合衆国上院及び下院は以下の立法を行われたい。

 

セクション一 略称

本法の略称は「ナチ戦争犯罪情報公開法」とする。

 

セクション二 ナチ戦争犯罪人記録省庁間作業部会の設立

(a)定義 本セクションにおける用語

(1)「省庁」(agency)は合衆国規則タイトル五、セクション五五一でこの用語に与えられている意味で用いる。

(2)「省庁間部会」(interagency group)は本セクション(b)により設立されるナチ戦争犯罪人記録省庁間作業部会を指す。

(3)「ナチ戦争犯罪人記録」(Nazi war criminal records)は、本法セクション三でこの用語に与えられる意味で用いる。

(4)「記録」(record)はナチ戦争犯罪人記録を指す

 

(b)省庁間部会の設立

(1)総論 本法施行日以後六〇日以内に、大統領はナチ戦争犯罪人記録省庁間作業部会を設立する。省庁間作業部会は設立後三年間存続する。

(2)構成員 大統領は、本セクションの定める期間内に、もっとも完全かつ効果的に省庁間部会の任務を遂行するであろうと大統領の決定した個人を省庁間部会に任命する。そのうちにはホロコースト博物館長、国務省歴史官、合衆国文書士、大統領が適当と認めたその他の省庁の長、および三人以下のその他の人員が含まれる。大統領により任命された省庁の長官は、省庁間部会において長官の代理として活動する適当な公務員を指名できる。

(3)第一回会合 本法施行の日付から九〇日以内に、省庁間部会は第一回会合を持ち、本セクションの要求する任務を開始する。

 

(c)任務 本法施行日から一年以内に、省庁間部会は最大限可能な限り本法セクション三と合致するように

(1)合衆国のすべての機密扱いされたナチ戦争犯罪人記録を探索し、確認し、目録を作成し、機密解除を勧告し、そして国立公文書館記録管理局で公衆が利用できるようにし、

(2)各省庁と協力し、これらの記録の公開を促進するのに必要な行動をとり、そして

(3)これら記録のすべて、これら記録の処理、及び本セクションに基づく省庁間部会と各省庁の活動を記した報告書を、上院司法委員会及び下院政府改革監視委員会を含む議会に提出する。

 

(d)財政 本法の条項を実行するために必要な金額を割り当てられるべき権限を与えられている。

 

セクション三 ナチ戦争犯罪を犯した人物に関する記録の機密解除の必要条件

(a)ナチ戦争犯罪人記録 本法の目的に従い、「ナチ戦争犯罪人記録」という用語は

(1)一九三三年三月二三日(ドイツ議会における全権委任法の制定日……注清水)に始まり一九四五年五月八日(ドイツ降伏日……注清水)に終わる期間中に、

(A)ドイツ・ナチ政府、

(B)ドイツ・ナチ政府の軍隊により占領されたあらゆる地域のあらゆる政府、

(C)ドイツ・ナチ政府の援助を受け、または協力して設立されたあらゆる政府、または、

(D)ドイツ・ナチ政府の同盟者であったあらゆる政府、

のいずれかの命令により、またはいずれかと共同して、人種、宗教、民族的出自、もしくは政治的見解を理由に、いかなる人物に対しても迫害を命令し、教唆し、幇助し、またはその他の方法で荷担したと信じられるべき根拠を有すると合衆国政府が認定したあらゆる人物に関する、または、

(2)(A)一九三三年三月二三日に始まり一九四五年五月八日に終わる期間中に、ドイツ・ナチ政府またはその同盟国の命令により、その利益のために、もしくはその権威のもとに、迫害された人物から奪われた財産を含んでおり、または

(B)その取引がこれらの財産の所有者、または相続人、または譲受人、またはその他の正当な代理人の同意なしに行われた、

と信じるられるべき根拠を有すると合衆国政府が認定したあらゆる取引に関する、

機密扱いされた記録またはその記録の一部を意味する。

 

(b)記録の公開

(1)総論 パラグラフ(2)、(3)および(4)にもとづき、ナチ戦争犯罪人記録省庁間作業部会は、小セクション(a)に記述されたナチ戦争犯罪人記録を全体として公開するものとする。

(2)プライバシーによる例外 省庁の長官は、以下のような特定の情報をパラグラフ(1)に基づく公開から除くことができる、

(A)個人のプライバシーを明らかに不当に侵すもの

(B)秘密の人的要員の所在を暴露し、または諜報源もしくは諜報手段の利用に関する情報を暴露し、あるいは情報源の不当な暴露により合衆国の国家安全保障上の利害が明白かつ明示的に損なわれるであろうときに人的情報源の所在を暴露するもの

(C)大量破壊兵器の開発または使用において有益な情報を暴露するもの

(D)合衆国の暗号システムまたは暗号活動を損なう情報を暴露するもの

(E)合衆国の兵器システムにおける最高水準のテクノロジーの適用を損なう情報を暴露するもの

(F)今でも有効である現行の合衆国軍事戦争計画を暴露するもの

(G)合衆国と外国政府との関係を重大かつ明示的に損なうような、または進行中の合衆国外交活動を重大かつ明示的に弱体化させるような情報を暴露するもの

(H)国家安全保障上の利益から保護活動が公認されている大統領、副大統領その他の公務員の保護に当たる合衆国政府官吏の現有の能力を明白に、かつ明示的に損なうような情報を暴露するもの

(I)現行の国家安全保障非常事態準備計画を重大かつ明示的に損なう情報を暴露するもの、または

(J)条約または国際協定に違反するもの

(3)例外の適用

(A)総論 パラグラフ(2)の小パラグラフ(B)から(J)に想定された例外を適用する際には、ナチ戦争犯罪記録の公開に対する公衆の関心はその記録の機密解除と公開によって満たされることを前提としなければならない。かかる例外の主張は、機密解除と公開が例外として確認された特定利益にとり有害であると省庁の長が決定した場合にのみ許される。かかる決定を行った省庁の長官は、上院司法委員会と下院政府改革監視委員会を含む適切な管轄権を備えた議会の委員会に、直ちにそれを報告するものとする。パラグラフ(2)で述べられた例外は、さもなければバラグラフ(1)により公開されるべき記録を省庁の長が除外できる唯一の根拠とされるべきものである。

(B)タイトル五の適用 パラグラフ(2)の小パラグラフ(B)から(I)に規定された例外を適用するという省庁の長の決定は、合衆国規則タイトル五のセクション五五二(b)(1)に基づいて保有する記録の場合に適用されるものと同一の審査基準に従うものとする。

(4)適用の制約 この小セクションは記録には適用されない。

(A)司法省特別調査室によるあらゆる積極的もしくは消極的な調査、審問または訴追に関連し、あるいは支持するもの、または

(B)特別調査室のみが所有、保管、または管理するもの

(C)一九四七年国家安全保障法の例外の非適用性 一九四七年国家安全保障法(五〇 U・S・C、四三一)のセクション七〇一(a)は、本法セクション三のもとでのナチ戦争犯罪人記録を構成するいかなる作戦ファイル、またはそのいかなる部分にも適用されないものとする。

 

セクション四 ナチ戦争犯罪人記録に対する情報公開法の要求の早急な処理

(a)早急な処理 合衆国規則タイトル五のセクション五五二(a)(6)(E)にもとづく早急な処理のために、ナチ戦争犯罪人記録を要求しているいかなる人物もこれら記録に対する急迫した必要を有するものと考えられるべきである。

(b)要求者 このセクションの目的のため、「要求者」という用語は本法セクション三(a)(1)で述べられた方法で迫害を受け、ナチ戦争犯罪人記録を要求するあらゆる人物を意味する。

 

セクション五 発効日

本法ならびに本法によりなされた修正は本法制定後九〇日の時点で発効する。

 

一九九八年一〇月八日裁可

議会記録

六月一九日 上院通過

八月六日 下院通過

 

ナチ情報公開法に関する資料、省庁間部会に関する資料は国立公文書館記録保管局のウェブサイトを参照されたい。URLは、http://www.nara.gov./iwg/

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