平成19年(ラク)第114号
特別抗告人 井上大介
特別抗告理由書
平成20年1月3日
最高裁判所 御中
特別抗告人 井上 大介
〒441−8106
特別抗告人 井上大介
電話 090-1754-0752
名古屋高等裁判所平成19年(ラ)第364号裁判官忌避申立却下決定に対する即時抗告事件につき、同裁判所の決定に不服があるので、平成19年12月17日特別抗告を提起したが、その理由は以下のとおりである。
第1 原決定は忌避申立にかかる一連の記録内容を巧妙に変更したうえで判断を下しており、憲法32条が保障する適正な手続きのもとで裁判を受ける権利を侵害する違憲がある。これについては、一連の記録である「裁判官忌避申立書」(疎第1号証)、「裁判官忌避申立にかかる疎名書」(疎第2号証)、「裁判官忌避申立事件決定書」(疎第3号証)、「抗告状」(疎第4号証)、「抗告にかかる訂正書」(疎第5号証)を後記しておくので、これと原審から御庁へなされる送付記録との違いによって証明することとする。
以下については、原決定が適正な手続きのもとで行われていることを前提に、それでも原決定に憲法違反があることを述べるものとする。
第2 原決定には次に示すとおり決定に影響を及ぼすことが明らかな法令違反があり、公正に裁判を受ける権利を保障する憲法32条を侵害する違憲がある。
1 原決定では抗告人の申立事実の中に「回避規定」を持ち出して主張展開しているかのような認定をしているが、そのような申立事実はいっさいない。唯一抗告状で回避規定にかかる主張をした部分についても「抗告にかかる訂正書」で訂正済みである。原決定の上記事実認定には顕著な経験則違反、裁量違反がある。
2 同様に、原決定の(抗告の理由に対する当裁判所の判断)の後段において、「抗告人は、〜忌避理由があるのに、〜と主張する。」と申立事実を認定しているが、抗告状をみても明らかなように、抗告人は「忌避理由があるのに」などとは主張していない。「担当裁判官が忌避申立直後に当該書記官を交替させたのは、書記官忌避の申立理由でいうところの書記官の不正、すなわち不正な書記官印を使うなど違法不当な事務処理を行っていた事実を認め、これを隠蔽する目的があった」と主張しているのである。この事実認定の部分にも顕著な経験則違反、裁量違反がある。
3 法令の解釈適用の誤認もある。原決定では民事訴訟法27条、26条について、これは忌避申立の対象となっている裁判所書記官を引き続き訴訟手続きに関与させる場合の規定であって、他の裁判所書記官を立ち会わせて訴訟手続きを進行させることまで禁止するものではなく、裁判官が担当書記官を交替させて訴訟手続きを進行しても違法ではなく、裁判の公正が妨げられるものともいえないという。
しかし、これも抗告状で述べたことだが、忌避制度が裁判の公正の保障や信頼を趣旨目的としていることからすれば、書記官を交替させて本案を続行することには明らかな違法があるというべきであって、上記解釈を見出す根拠はどこにもないのである。そして、忌避制度の趣旨目的である「裁判の公正」をないがしろにする措置を上記不当な解釈のもとに漫然ととった裁判官に民事訴訟法24条が規定する裁判の公正を妨げる事情があることも明らかなことといえるのである。
以上であるから、特別抗告人は、原決定が破棄され、更に相当の裁判がなされることを求めるしだいである。
最後に第1で述べた一連の記録を順に記載しておく。更なる記録変更を防止するため、「裁判官忌避申立却下決定に対する即時抗告事件」(疎第6号証)の内容についても記載しておくこととする。
「裁判官忌避申立書」(疎第1号証)
平成19年(ワ)第2596号 損害賠償請求事件
原告 井上大介
被告 国
裁判官忌避申立書
平成19年10月12日
名古屋地方裁判所 御中
申立人 井上大介(自署)(印)
第1 申立の趣旨
裁判官内田計一に対する忌避は理由がある。との裁判を求める。
第2 申立の理由
1 裁判官内田計一は、裁判の公正を妨げる目的で、申立人の平成19年10月9日付提出にかかる裁判所書記官忌避申立事件に関係して、申立に対する決定がなされているわけでも本案に急速を要するわけでもないにもかかわらず、担当書記官を忌避対象の今井書記官から成田書記官に代えたうえ、申立によって生じるはずの次回口頭弁論期日の取り消しを無視して本案を違法に審理、続行しようとしている。
2 上記主張の疎名については追って提出する。
「裁判官忌避申立にかかる疎名書」(疎第2号証)
平成19年(ワ)第2596号 損害賠償請求事件
原告 井上大介
被告 国
裁判官忌避申立にかかる疎名書
平成19年10月14日
名古屋地方裁判所 御中
申立人 井上大介(自署)(印)
申立人は、平成19年10月12日付提出にかかる裁判官忌避申立書について、申立理由を以下に疎名する。
申立人が本件忌避申立をするにあたり、次のような事情が存在した。
平成19年10月11日の午後、申立人が先に行った裁判所書記官忌避申立について、申立による次回口頭弁論期日の取り消しと当該審理の休止の確認をするために裁判所に電話したところ、民事第6部所属の成田書記官が対応し、「申立の決定は出ていないが事件担当の書記官が忌避対象の今井書記官から成田書記官に代わった」こと、「民事訴訟法26条、27条については書記官には準用されない、これは内田裁判長の見解であり、したがって次回期日は10月19日に予定通り行われる」との返答を受けた。
いささか信じがたい返答ではあったが申立人は確かにそのように伝え聞いた。これによれば、内田裁判官が公正な裁判を妨げる目的で違法な手続きやいいかげんな法令解釈までして強引に本案の続行をなそうとしていることは十分認められ、今後において公正な裁判が行われることを期待できないことは明白なことである。
「裁判官忌避申立事件決定書」(疎第3号証)
平成19年(モ)第569号 裁判官忌避申立事件
決 定
申立人 井上大介
主 文
本件忌避の申立を却下する。
理 由
1 本件申立の趣旨は、当庁平成19年(ワ)第2596号損害賠償請求事件について、「裁判官内田計一に対する忌避は理由がある」との決定をもとめるものであり、その理由の要旨は、同裁判官は、申立人の平成19年10月9日付けの裁判所書記官忌避申立てに対し、急速を要する場合にあたらないにもかかわらず、担当書記官を忌避対象の今井書記官から成田書記官に交替させ、本案の訴訟手続きを停止せず、訴訟手続きを違法に進行させようとしていることから、裁判の公正を妨げるべき事情がある、というものである。
2 当裁判所の判断
(1) 民訴法24条が規定する「裁判の公正を妨げるべき事情」とは、通常人が判断して裁判官と事件との関係からみて、偏ぴ、不公正な裁判がなされるであろうとの懸念を当事者に起こさせるに足りる客観的な事情をいい、当該裁判手続きにおける裁判官の訴訟指揮又は訴訟上の措置については、特段の事情のない限り、これに該当しないと解されるところ、申立人が主張する忌避の理由は、上記の「裁判の公正を妨げるべき事情」には該当しない。
なお、民訴法27条、26条は、裁判所書記官に対し、忌避申立がされたときは、急速を要する行為を除いて、訴訟手続きを停止しなければならない旨定めているが、これは、忌避申立の対象となっている裁判所書記官を引き続き訴訟手続きに関与させる場合の規定であって、他の裁判所書記官を立ち会わせて訴訟手続きを進行させることまで禁止するものではない。そうすると、同裁判官が担当書記官を交替させて、訴訟手続きを進行させようとすることをもって、違法であるということはできない。
そして、他に同裁判官に、裁判の公正を妨げるべき事情は認められない。
(2) よって、本件申立は理由がないから却下することとし、主文のとおり決定する。
平成19年10月19日
名古屋地方裁判所民事第10部
裁判長裁判官 戸田久
裁判官 朝日貴浩
裁判官 坂野好英
「抗告状」(疎第4号証)
平成19年(モ)第569号 裁判官忌避申立事件
抗告状
平成19年11月1日
名古屋高等裁判所 御中
抗告人 井上大介(自署)(印)
〒441−8106
抗告人 井上大介
電話 090−1754−0752
抗告人は、名古屋地方裁判所平成19年(ワ)第2596号損害賠償請求事件について、裁判官内田計一に対する忌避の申立をしたが(名古屋地方裁判所平成19年(モ)第569号裁判官忌避申立事件)、名古屋地方裁判所は、平成19年10月19日、上記申立を理由がないものとして却下する旨の決定をなし、平成19年10月29日その送達を受けたが、不服につき即時抗告をする。
第1 原決定の表示
事件番号 平成19年(モ)第569号
主文 本件忌避の申立てを却下する。
第2 抗告の趣旨
1 原決定を取り消す。
2 抗告人の忌避申立は理由がある。
との裁判を求める。
第3 抗告の理由
1 忌避制度の趣旨は、裁判の公正を妨げる事情がある時に、裁判によって裁判官や書記官を職務執行から排斥することで、裁判の公正を保障し、更には裁判の公正について国民の信頼を得ることにあるとするところ、忌避対象の書記官を他に交代すれば訴訟手続きを進行させても違法はないという原決定の解釈では上記公正な裁判に対する要請に到底適うものではない。すなわち、忌避申立にかかり、決定裁判がなされないうちに当該書記官が事件から離脱するなどということは、その時点で裁判所が公正な裁判を妨害している違法というべきであり、また、26条によって本案停止という強力な措置が規定されているのも、決定裁判による公正な裁判の保障や信頼の必要性を根拠とするものであるから、当該書記官の離脱が回避規定に基づくものでない以上、いかに担当者を交代したところで本案を続行することに違法がないとはいえないものである。原決定には明らかに法令解釈の誤認がある。本案続行については、急速を要する場合のほか、いかなる例外もないことは26条によって明文化されているところでもある。
加えて、内田裁判官が当該書記官忌避直後に担当書記官を違法に代えたのは、当該忌避理由にある書記官の不正を認め、これを隠蔽する目的があったにほかならないからであって、裁量を逸脱した上記不当な解釈にかかるところをかんがみても、同裁判官の一連の行為には違法不当な目的が存していたといわざるをえないものである。これによれば、内田裁判官による忌避にかかる措置は裁判の公正を妨げる「特段の事情」に該当する違法なものといえ、同裁判官の忌避が認められるべきである。
2 以上にある内田裁判官の違法不当な目的による忌避措置を追認する形で解釈判断した原裁判所の決定もまた違法不当な目的でなされたものといえるもので到底認めることはできない。
よって、抗告人は上記趣旨にある裁判を求めるしだいである。
「抗告にかかる訂正書」(疎第5号証)
平成19年(モ)第569号 裁判官忌避申立事件
抗告にかかる訂正書
平成19年11月1日
名古屋高等裁判所 御中
抗告人 井上大介(自署)(印)
抗告人は、平成19年11月1日付提出にかかる抗告状について下記のとおり訂正する。
第1 抗告状「第3 抗告の理由」の9〜10行目にかかる「当該書記官の離脱が回避規定に基づくものでない以上、」の部分を抹消する。
「裁判官忌避申立却下決定に対する即時抗告事件」(疎第6号証)
平成19年(ラ)第364号 裁判官忌避申立却下決定に対する即時抗告事件(原審・名古屋地方裁判所平成19年(モ)第569号)
決 定
抗告人 井上大介
主 文
本件即時抗告を棄却する。
理 由
1 本件抗告の趣旨及び理由は、別紙「抗告状」及び「抗告にかかる訂正書」(各写し)記載のとおりである。
2 当裁判所も、本件忌避申立ては理由がないと判断する。その理由は、次のとおり付け加えるほか、原決定「理由」中の「2 当裁判所の判断」記載のとおりであるから、これを引用する。
(抗告の理由に対する当裁判所の判断)
抗告人は、本件の担当裁判官が、急速を要する場合でないのに、忌避対象の裁判所書記官を回避の規定によらずに他の裁判所書記官に交替させて訴訟手続きを進行させることは、裁判の公正を妨げるものであり、違法であると主張する。しかし、民事訴訟法27条、26条は、裁判所が忌避申立のあった裁判所書記官とは別の裁判所書記官に立ち会わせて訴訟を進行することを禁止した規定ではない。また、そのような措置が取られたからといって、裁判の公正が妨げられるとはいえない。
抗告人は、本件の担当裁判官が忌避申立ての直後に当該書記官を交替させたのは、忌避理由があるのに、これを隠蔽しようとする目的によるものであるから、本件においては、裁判の公正を妨げるべき特段の事情があると主張する。しかし、忌避理由の有無は、忌避申立てのあった裁判所書記官の交替の有無にかかわらず、当該忌避申立事件に対する裁判により明らかにされるものであるから、本件の担当裁判官が、忌避理由があるのに、これを隠蔽しようとする目的の下に、忌避申立てのあった裁判所書記官を交替させたとは認められない。
3 よって、本件即時抗告は理由がないから、これを棄却することとし、主文のとおり決定する。
平成19年12月11日
名古屋高等裁判所民事第4部
裁判長裁判官 岡久幸治
裁判官 加島滋人
裁判官 鳥居俊一
疎名方法
疎第1号証 裁判官忌避申立書の写し
疎第2号証 裁判官忌避申立にかかる疎名書の写し
疎第3号証 裁判官忌避申立事件決定書の正本の写し
疎第4号証 抗告状の写し
疎第5号証 抗告にかかる訂正書の写し
疎第6号証 裁判官忌避申立却下決定に対する即時抗告事件決定書の謄本の写し
添付資料
1 特別抗告理由書副本6通
2 疎号証各7通
以 上