未発表エッセイ

海水生物飼育のススメのススメ

【海水について】

 海水生物の展示をやると、必ず聞かれること。「水はどうしているんですか?」
 そう、海水生物の飼育で最も心配されるのが、海水の交換である。
もちろん、「毎週、海に水を取りに行って」いるのではない。ペットショップに行けば、「人口海水の素」が売っている。私が自宅で使っているもの、今回の展示で使っているのは、「テトラマリンソルト」(4Kg・100リットル用、1600円程度)である。これは1リットルあたり40gで海水と同じぐらいの濃度になる。簡単に海水が作れるので、生物を長く飼育することができる。
 食塩水は避けたほうがいい。食塩水にはいろいろ化学物質が混ざっているので、生物が保ちにくい。天然塩ではどうかはわからないが、とりあえずやめたほうがいい。

【水槽機器について】

 海の生物を飼育するのは、金魚やザリガニを飼うのとはだいぶ違う。そこで海水生物を飼育する上での注意を書いておく。

1.水温

 日本の磯に生息する生き物なら、20〜25℃の水温があれば、活発に動くことができる。関東の室内ならそのまま置いておいても問題はないと思うが、心配な場合は「水槽用ヒーター」を使う。市販のものの中には、25℃に保つヒーターなど、1000円程度で扱いやすいものが多い。

2.海水循環

 水の循環は、エアレーションで構わないが、やはり、ろ過フィルターを使ったろ過装置がいい。最近の水槽セットにはついているが、装置自体は1000円ぐらいから多様にある。フィルターはカートリッジ式。

3.水質管理

 水質の管理も海水生物を飼育する上で重要なことだ。
 水の入れ換えは、半分ずつなら2週に1回、全体交換なら1カ月に1回が理想的。毎日、水の色や水槽の汚れをチェックしておけば問題ないだろう。ペットショップで売っている「麦飯石」や「活性炭」などをフィルターに入れておくと水質の悪化を抑えることができる。

4.環境管理

 採集してきた生き物は基本的に野生である。「自然状態に忠実」にこだわる必要はないが、「自然状態に近い」環境を整えたほうが生き物と長く付き合える。

 足場作り…ホームセンターで売っている園芸用の玉砂利でかまわないが、干潟の生き物は細かい砂を選んだほうがその生物らしい姿が見られる。

 隠れ家作り…特に磯の生き物は隠れているのが好きだ。隠れさせてあげないで、人の目にさらしておくのは大きなストレスになる。植木鉢や大き目の石を入れてあげるといい。観察者としては面白くないかもしれないが、共食いを防ぐために大事なことだ。どうしても見たいのなら、市販の「産卵ケース」や「ワンルームマンション」をつかうといいだろう。これなら、怪我をした生き物を保護することもできる。「ワンルームマンション」は生き物の輸送にも機能を発揮する。絶対に死なせたくない生き物や、敏感な生き物を個別にして、共食いしないように運べる。子供に人気の高いカニなどの甲殻類は、脱皮直後、体が柔らかいので襲われやすい。個別に隔離しておくと、脱皮の安全性も上がる。ただ、「産卵ケース」は下に砂利を敷いていないと、足場がないので、脱皮に失敗しやすくなる。脱皮についての注意はいろんなペットの本に書いてある。しかし、その対処法についてはなかなか書かれていない。僕の10年間の経験からそういえる、としておこう。小分けボックスは使いやすく便利である。

5.飼育しやすい生き物・しにくい生き物

 どうしても飼いにくい生き物がいる。生き物の命を無駄にしないように、注意を書いておこう。

  ナマコ
  カニ
  ヒザラガイ(多板類)
  魚類
  ヤドカリ                     飼いにくい
  巻貝
  ウニ
  エビ
  ウミウシ
  イソギンチャク
  クラゲ                      ふつう飼えない

 種によって、設備によって違いはあるが、大まかにこのように分けられる。原始的な生き物ほど飼いやすい…というわけでもないので注意しなければならない。クラゲやエビは水流など簡単な装置では再現が難しく、ウミウシ、イソギンチャクは市販のエサでは間に合わない。ヒトデやナマコは一緒に飼うこともできるし、自分たちのフンを食べても生きていられるので、年単位の飼育が可能。ただ、見た目が悪いものが多い。タコなど飼育経験のないものも多いが、子供たちが磯遊びをした後、持って帰りたがる生き物としては上記のもので対応できると思う。

6.保護者の皆さんへ

 特に未就学児の保護者の皆さんにお願いがある。5、6歳というのは生き物が面白くてたまらない年齢である。子供がヒトデやナマコを飼いたいといっても「気持ち悪いから」という理由で止めないで欲しい。その年齢は、どちらにも転ぶ時期でもある。大人が「気持ち悪い」といってしまったら、折角そこで芽生えた好奇心を摘んでしまうことになる。「気持ち悪く、汚いもの」が生き物なのである。飼っているときも、子供と同じくらい一生懸命に世話をし、不思議に思い、調べて欲しい。子供はちゃんと大人を見て、調べ方や片付け方を実につけている。僕がそうだった。生き物の飼育だけに限らないだろう。好奇心はTVゲームやマンガのためだけのものではないのだ。(2004年8月)