松原健之『金沢望郷歌』


05/12/21
 来年、花開いて欲しい歌手を一人あげるとすれば、松原健之(まつばら たけし)だろう。

 今、彼の唄う『金沢望郷歌』が有線チャートの上位にジワリと入ってきた。
 この歌の作詞は、同じタイトル「金沢望郷歌」という小説を書いた作家の五木寛之。
 作曲はヒットメーカーの弦哲也で、この曲や水森かおりの『五能線』で、今年の日本レコード大賞作曲賞に輝いた。

 当然、金沢から火がついたのだろうが、むしろ青春歌謡と言ってもいいぐらい爽やかな歌で、これが実にいい。
 ♪ このまちに生まれ〜 このまちに生きる〜 ♪ の節は、ご当地ソングとして最高の殺し文句だろう。

 唄っている松原健之も素直な好青年の印象で、今どき珍しく歌手らしからぬ素朴な雰囲気を漂わせている。
 彼の武器は、音程がまったくブレない透き通るような高音と癒し系の声。
 いわば『涙そうそう』を唄う夏川りみの男版だ。

 元々、松原健之の歌の才能を見出したのは作曲家の平尾昌晃だが、数年前に演劇の前進座70周年公演「旅の終わりに」の脚本を手がけた五木寛之の目にとまり、客演で主題歌を唄った。
 「旅の終わりに」の原作は「海峡物語」で、このコーナーの“冠二郎編”で紹介したので割愛するが、このときの彼の歌声が鮮烈に耳に残った。

 当時は“小松原たけし”の芸名だったが、プロデュースした五木寛之が五木ひろしと親交があったご縁で、彼は五木ひろしのプロダクションに所属する。
 そして、今年、W五木の後押しで芸名を“松原健之”と改め、『金沢望郷歌』で颯爽デビューしたのだ。

 この辺りまでくると、どうしても「旅の終わりに」のストーリーとこれまでの松原健之の現実の展開が重なってしょうがない。

 近頃、老若男女が口ずさめる歌は少ないが、『金沢望郷歌』は誰でも唄えるメロディーで、久しく忘れていた清涼感たっぷりの歌だ。
 歌謡ファンなら・・・特に女性にはぜひ一度、聞いてほしい。
 一度聞くだけで「これ、いいわあ」となるはず。

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