政治学の教科書


政治学には、標準の教科書といえるような「これ!」といえる教科書はありません。
というのは、
理由その1:政治学の中に、さらにいろいろな分野があるため、全部をまとめた教科書がつくりにくい。
理由その2:そのため、先生も全部の分野に詳しいというわけにいかなくて、なかなか教科書を書く勇気がない。
理由その3:理科系と違って、実験ができない分野が多いため、面白く書くということも難しい。
からです。

要するに、開けっぴろげに話してしまうと、
「難しくて書けない!」
ということです。どうだ、いいわけだ!!(←開き直り)

そうはいっても、学生にとっては教科書がないとなかなか勉強しにくいもの。
開き直ってばかりでは、お給料をもらって教えているのがあまりにも無責任。
ということで、それぞれ一長一短があるけれど、特徴的で、勉強の仕方によっては役に立つ、
という教科書をいくつか紹介しておきます。

初学者用 ・・・とにかく、政治学がどんなものなのか感じをつかみたい人には・・・

♪ はじめて出会う政治学
    わかる楽しさ まなぶ喜び

   真渕勝・久米郁男・北山俊哉 著
   有斐閣 1700円+税
 たぶん、今手に入る中で一番やさしい政治学の教科書。携帯電話や車検制度、さらには創作の物語まで使って、とにかく政治学に興味を持ってもらおう、考えてもらおう、とする書き手の態度がはっきりと見えています。重点的に扱われているのは、政治と経済のかかわりでしょう。産業界と政治家と官僚の関係とか、国際的な経済交渉などが扱われています。ただし、やさしくしようとしただけに、政治学のテーマを全部が全部扱う、というわけにはいかなかったみたい。書いている人達の専門のせいもあるけれど、「公共性」とか「権力」とか、抽象的なテーマはやや薄いかな、という感じを受けます。
 余談だけれど、学会でこの教科書を含めて政治学教育が話題になったことがあったんだけれど、「学生のご機嫌をとればいいというもんじゃない!」という感じの批判的な意見をいう学者さんもいました。さて、学生の皆さんはどう思うのかな?
*2003年に新版が出ました。

♪ 政治学がわかる。
   朝日新聞社 1100円+税
 上の本とは違った意味で、初心者用の教科書。というのは、政治学のあらゆるテーマが扱われているし、それなりにやさしく解説してあるので、上の本の欠点がカヴァーされているとも言える。ただ、形式が、それぞれのテーマを、それぞれに得意にしている先生方が書いていて、あんまり統一性がないというようになっているんだ。上の本も確かに3人の共著だけれど、話し合ってある程度は話がつながるようになっている。ところが、こっちはそのあたりきっぱりと思い切ってしまって、「統一性なんかなくてもいいじゃん!」というスタンスにしたわけ。だから、全部読み通そうとすると大変かもしれない。ただ、よく読んでみると、「このテーマを書いているA先生と、このテーマを書いているB先生、書いていることがなんか反対みたいだけれど、実は仲悪いんじゃないの?」というところが見えたりして、これはこれで面白いと思うよ。
*2003年に新版が出ました。

中級者用 ・・・多少興味があるので、ちょっと頑張って勉強してみようかなという人には・・・

♪ 政治 個人と統合
   阿部斉・有賀弘・斎藤眞 著
   東京大学出版会 1600円+税
 この教科書、教科書らしい政治学の教科書の中では一番読み物っぽい雰囲気をもっています。アメリカ政治や政治思想を専門とする著者グループの特徴が十分に発揮されていて、面白い例やはっとさせるようなアイデアもあちこちに見られます。それともう一つ、とっても視点がはっきりしていること。個人の自由のために政治が必要になるのに、その政治が個人の自由を縛ってしまう、という政治の難しさを前面に押し出して書いてあります。珍しく、考えさせるタイプの教科書です。
*1994年に第2版が出ました。

♪ 現代政治学
   加茂利男・大西仁・石田徹・伊藤恭彦 著
   有斐閣 1700円+税
 うーん、僕が今まで読んだ中では、これが一番標準的、スタンダードな教科書かな。そこそこわかりやすい説明で、ある程度広い範囲をカヴァーしていて、授業にも資格試験用にも使えそう。上の『政治』ほど、はっきりとした主張をしているわけではないけれど、その分、読む人が自分自身でいろいろ色付けをしていくことが可能な本になっています。ただ、中級用といっても、ちゃんとむずかしめの専門用語は出てきているので、できれば政治学辞典を側において、参照しながら読むといいかもしれないね。
*2003年に新版が出ました。

上級者用 ・・・チャレンジ精神旺盛な人には・・・

♪ 政治学講義
   佐々木毅 著
   東京大学出版会 2800円+税
 私の先生の書いた教科書なので宣伝します。人間関係は大事にしましょう。(^^)
 私が自信を持ってお勧めするこの本のセールス・ポイントは、「メチャクチャ難しい!!!」。もともと政治思想を専門にしている先生だけあって、政治の思想や制度の根本にある考え方は何か、ということを本当に徹底的に考えさせられます。
 ちなみに、あとがきでご本人が「本書は学生を政治学に入門させるための入門書ではなく」とキツーい一発をお見舞いしてくれています。チャレンジ精神のある人、「そんなもんでノックアウトされてたまるか!」という人、頑張って読んでみて下さい。
(追記:2003.4.1)上の紹介文を見て、この本を教科書に使っていたTT大学のM先生のところに「こんな難しい本を使うな!」というような苦情が行ったそうです。実際難しいんですけれど、難しい場合はそれをどうやって学生にわかりやすく伝えるかが教員の腕の見せ所というもの。学生の皆さん、苦情を言うときには、「こんな難しい本を使うな!」じゃなくて、「テメエ、もっとわかりやすく説明しやがれ!」(ただしもうちょっと丁寧な言葉遣いで)というように言って下さいね。:-P M先生!こんなんでいい???

♪ 現代政治学叢書(全20巻)
   東京大学出版会 各巻だいたい2000円台なかば
 「20巻もあるなんて絶対読めるわけないよ〜」と文句を言っているあなた。僕もそこまで鬼ではありません。全部読まなくてもよし、興味のあるのをチョイスしてみてはどうでしょうか。最初に書いたように、政治学はさらに細かく分野が分かれているので、全部まとめるのは大変。だったら、別々に教科書を書いちゃえ、というスタンスで書かれています。全体の傾向としては、統計や数理を使った(でも初学者でもついていくことはできる)とってもモダンな教科書になっています。どんな分野があるかについては、図書館等で自分で確かめてみましょう。ちなみに、第2巻と第8巻は未刊行。大学の先生もいろいろ忙しいのヨ。


以上、いろいろと紹介してきました。
他にも、政治学の教科書はたくさんあるし、もっと特定の問題に限定した教科書、
例えば日本政治の教科書とか行政学の教科書とか国際政治の教科書とか、
もわんさかとあります。
ここに書いていない教科書、もちろん書いてある教科書でもいいけれど、
読んでみて自分で紹介文を書いてみようと思ったら、是非書いてメールくださいね。
こちらに掲載するか、あるいはリンクを張らせていただくかしたいなと思っています。
(ゼミでそういうことやるのもいいかな?)