「代表制を補完する」 要旨

近年の代表制批判において、ポスト・モダニズムを始めとするアイデンティティー・ポリティクスの側から、代表制の存在そのものを否定しかねないような議論が現れてきている。確かに、理論的には、欠陥のない代表制を構想することはほぼ不可能であろう。しかし、同じように鋭い代表制批判を行いながら代議制の改善に固執した多元的国家論の例にも見られるように、政治理論が現実を捨象することが出来ない以上、代表制批判から導かれる結論にも一定の幅があってよい。P.ハーストによる結社民主主義論は、制度構想に曖昧さを残すポスト・モダンの多元化論と異なり、理論の洗練度よりも具体的な制度構想を優先させることで、政治的有効性を獲得しようとしている。多元性が賞揚される現代においては、代表制は「多元主義」の圧力から逃れられないが、代表制の可能性を皆無とせずにそれを補足する具体的な制度を構想するという方向性も、またあり得る道なのである。