まこやんの事件簿 其の32

スポーツ新聞かい! の巻



窓口に、10数人の男性がやってきた。

「何事ですか?」と尋ねたら、代表らしき人が


「A社で非常に悪質な法律違反がありました。」

「速やかな行政介入をお願いします。」


と答えた。

やってきたのは、A社の労働組合の役員達で、いずれも憤懣やるかたない様子。
どうも労使紛争がおきているらしい。

聞いてみると、

「夏のボーナスが一方的に削減された。」

とのこと。

まこ「う〜ん、賞与ですか・・・・」

相手「何か問題でもあるんですか?」

まこ「定期賃金と違って、賞与は微妙ですからね〜」

相手「いえ、微妙じゃないですよ。」
   「A社ではこれまで毎年7月と12月には必ず各々2か月分の賞与が支給されてたんですよ」

まこ「ほほ〜〜」

相手「ほら、就業規則にもそのように書いてあるでしょ」

まこ 「なるほど・・・」

相手「とにかく、これは絶対に違法ですから、速やかに是正するよう厳しく指導してください。」

ということで、このトラブルを処理することになり、数日後、早速A社に乗り込んだ。

対応したのは、初老の労務担当者のS氏。
同人の表情は心なしかこわばっていた・・・
本題に入ろうとしたら、S氏はこれを制止し、「労働組合の機関紙」を示した。

まこ 「これが何か?」

S氏 「とにかく、これを読んでみてください。」


見ると、大見出しで

会社の暴挙に、遂に監督署が介入!
監督官まこやん氏は、
「この悪質な違反を必ず是正させる」と豪語。


ってなことが書いてあった。

まこ「うわ〜〜〜(-。-;)」


S氏 「こんなことを言ったんですか?」

まこ「言うてまへん、言うてまへん。」

S氏「ホンマですか?」

まこ「ほんまほんま」


いぶかしむ労務担当者をなだめ、とにかく事実関係の調査に協力するよう求め、やっと調査完了。
やはり労働組合の主張に分があり、賞与の支払い義務があると確認できたので、A社に対し
  「約束の賞与を払っていないのは、労働基準法違反である。」
という趣旨の是正勧告書を交付し、
  「●月●日までに支払ってください。」
と是正を求めた。

S氏からは、「止むを得ません」「経営は非常に厳しいのですが、なんとかしてみます。」
という返事をもらったのだが、その後も大変であった。
経営は思ったよりも厳しく、こちらが定めた是正期日までには差額の支払いができなくなってしまった。

S氏「しばらく待ってください」

まこ「労働組合が納得するかどうか・・・」


S氏「とにかく、必ず支払いますから、あと1ヶ月待ってください。」

まこ「う〜〜〜ん」


予想どおり、労働組合からは

  「そんなことでいいんですか?」

  「もっと厳しく会社を追及してください。」


などと苦情の嵐。


そんな労働組合をなだめ、もう少し待つように説得していたのであるが・・・・

そんなある日、労務担当のS氏が、血相を変えて監督署にやってきた。

まこ「どうしたんですか?」

S氏「どうもこうもありません、これを見てください。」


S氏が示したのは、また労働組合の機関紙だった。
見てみると、またも大見出しで

会社が、監督署の指導を無視
まこやん氏も、
「行政指導をコケにされた」と大激怒



ってなことが書かれていた。

まこ「ひぃ〜〜(@_@;)」

S氏「そんなに怒ってはるんですか?」

まこ 「怒ってまへん、怒ってまへん。」

S氏「なんでうちがこんな悪者に・・・(T_T)」

まこ「・・・・・・・」

S氏「まさかあなた、
組合とつるんでいるんじゃないでしょうね」

まこ「つるんでまへんって」

急いで労働組合幹部に電話し、
「会社を煽ってはだめです。」

「是正のためには、それなりの信頼関係が必要なんですから。」

「こんなことしてたら、解決が難しくなりますよ。」


と申し入れた。


それからも労働組合をなだめ、会社には督促を繰り返し、1ヵ月後にやっと問題の解決をみた。

そして・・・・・

S氏が是正の報告にやってきて

S氏「ほれ、このとおり組合も・・・・」

と言いつつ、くだんの機関紙を差し出した。

さあ、今度は何が書いてあるのかなと見てみると・・・・

完全勝利!
会社は、遂に賞与を全額支払った。
これは、我々の地道な努力の成果であり、団結と連帯こそが要求実現への唯一の道であることが改めて確認されたのである。
今後も、我が組合に結集し、要求実現に向けたとりくみを・・・・



ってな記事が・・・・・

まこやんは、S氏に対して

「よかったですね、ああよかったよかった」


などと言いながらも、心の中では


「まこやん大活躍って書かんかい!(`ε´)」

と叫んでいた。


終わり