今世紀最高の音楽作品は何か?


突発的で申し訳ないんだが、・・・・と言っても別に誰かに謝っているわけじゃないけれど、20世紀でもっとも優れたクラシック音楽作品はなんだろうか?と、とんでもないことを考えてみた。
しかも、なるべく私の好みを入れないようにしたい。
だが、私見を排除し、マスコミに散見されるような評論家の意見や、一般の人気投票の結果を受け入れれば、より客観的な意見になるかというとそれも疑問が残る。
評論家の立場なら、今世紀最高の作品を決定するなんてナンセンス(古い言葉!)だと言うに決まっている。一般の人気投票でも、大勢の意見を集約したところで、世論というものは、マスコミのイメージ戦略にすぐ操られてしまうような、いい加減なものだから、どちらも当てにならない。

では、レコードの売り上げの総計で決定するのはどうであろう?
これも宣伝の仕方や録音の回数によって違ってくるので、作品の優秀性とは無関係であろう。ではその作品が世界中で演奏された回数はどうだろう?これも単なる人気度や演奏のしやすさに左右されるから必ずしも優秀性の証左とはならない。

となると、こんな試みはやはりナンセンス(またしても古い言葉!)、ということになるのだろうか?しかし最高の音楽作品が厳然と存在している場合もある。
例えば、バロック音楽におけるもっとも優れた作曲家は、まぎれもなくJ.S.バッハであって、これに異議を唱えようとしても理由が思いつかない。そして、バッハの最高傑作がマタイ受難曲であるとしても、やはり否定要因がなかなか見つからない。

古典派を代表するのはモーツアルト・・・様式美の追求からすればそうだろう。しかし後のヨーロッパを席巻した市民革命とも関連させれば、一個人の自我に目覚めたベートーヴェンの音楽に軍配をあげるべきではないだろうか?ではロマン派以降は?・・・・ヨーロッパ世紀末思想の爛熟を考慮して、神を殺ろしたワーグナーであろうか?あるいは信仰の闇に絶叫したマーラーの交響曲だろうか?

このように社会の動きと連動させて考えるならば、20世紀は西洋思想の行き詰まりと帝国主義の終焉と大量虐殺の時代である。ならば、第一次大戦前後に傑作を発表したバルトーク、あるいは全体主義によって翻弄されてきたショスタコービッチの音楽になろうか。2人のうち、聖俗合わせ持った秀作を量産したという意味で、私はショスタコービッチに軍配をあげ、そのショスタコービッチの作品の中で、もっとも評価の高いのが交響曲第8番であるから、この曲が20世紀における、もっとも優れた作品であるのかもしれない。・・・・という結論が出る。

本当にそうだろうか?
私見を交えると、私は交響曲なら第4番の方が好きだ。
もう少し自問自答を繰り返えそう。
例えばシェーンベルクやブーレーズやケージはどうなんだろう?
この3人に共通することは、思想面も含めた新しい音楽技法の開拓である。
しかし20世紀という時代を象徴する音楽という意味では、なにやら物足りないような気がする。斬新な思想や難解な技法を編み出したのは確かだが、それでも20世紀の一翼を飾る要素の一つにすぎない。

一方ショスタコービッチの音楽には、別段に新しい技法も無ければ、あからさまな思想の表明もない。オーケストラの編成も保守的ある。しかしその音楽の中には、人間の生々しい悲劇が決定的に刻まれている。その残酷な人間性は、旧ソ連に留まらず、地球上の多くの地域に勃発している破滅行動の心理に通底していると思う。
このような根元的な音楽が、私に強烈な印象をもたらす。20世紀に生きる現代人の恐ろしさ、その馬鹿馬鹿しさがこれほど直情的に表現されている音楽が他にあるだろうか?
・・・・と、そういう結論になった。ああ、どうしても私見が入ってしまうな。

あなたにとって、今世紀最高の作品は何ですか?

それにしても、いくら考えても20世紀は悲劇と閉塞感ばかりが目立ってしまう。こっちの方が重大の問題であるに違いない。


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