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 童謡詩人の金子みすずさんの作品を集めました。どうぞ味わってみてください。
 
※「金子 みすゞ」
 山口県大津郡仙崎村出身の童謡詩人。大正末期から昭和初期にかけて、すぐれた作品を発表し、西條八十に“若き童謡詩人の巨星”とまで称賛されながら、昭和5年(1930年)26歳の若さで世を去った。








  「花屋の爺さん」
   花屋の爺さん
   花売りに、
   お花は町でみな売れた。
   花屋の爺さん
   さびしいな、
   育てたお花がみな売れた。
   花屋の爺さん
   日が暮れりゃ、
   ぽっつり一人で小舎のなか。
   花屋の爺さん
   夢に見る、
   売ったお花のしあわせを





  「石ころ」
   きのうは子供を
   ころばせて
   きょうはお馬を
   つまずかす。
   あしたは誰が
   とおるやら。
   田舎のみちの
   石ころは
   赤い夕日に
   けろりかん





  「蜂と神さま」
   蜂はお花のなかに、
   お花はお庭のなかに、
   お庭は土塀のなかに、
   土塀は町のなかに、
   町は日本のなかに、
   日本は世界のなかに、
   世界は神さまのなかに。
   そうして、そうして、神さまは、
   小ちゃな蜂のなかに。





  「草と土」
   かあさん知らぬ草の子を
   いく千万の草の子を
   土はひとりで育てます
   草が青々繁ったら
   土はかくれてしまうのに





  「わたしと小鳥と鈴と」
   わたしが両手を広げても
   お空はちっとも飛べないが
   飛べる小鳥はわたしのように
   地べたを早くは走れない
   わたしが体をゆすっても
   きれいな音は出ないけれど
   あの鳴る鈴はわたしのように
   たくさんな歌は知らないよ
   鈴と小鳥と それからわたし
   みんな違って みんないい





  「不思議」
   わたしは不思議でたまらない
   黒い雲から降る雨が
   銀に光っていることが
   わたしは不思議でたまらない
   青いクワの葉食べている
   蚕が白くなることが
   わたしは不思議でたまらない
   たれもいじらぬ夕顔が
   一人でパラリと開くのが
   わたしは不思議でたまらない
   たれに聞いても笑ってて
   あたりまえだということが





  「つもった雪」
   上の雪
   さむかろな。
   つめたい月がさしていて。
   下の雪
   重かろな。
   何百人ものせていて。
   中の雪
   さみしかろな。
   空も地面(じべた)もみえないで。





  「土」
   こッつん こッつん
   ぶたれる土は
   よいはたけになって
   よい麦生むよ。
   朝からばんまで
   ふまれる土は
   よいみちになって
   車を通すよ。
   ぶたれぬ土は
   ふまれぬ土は
   いらない土か。
   いえいえそれは
   名のない草の
   おやどをするよ。





  「星とタンポポ」
   青いお空のそこ深く
   海の小石のそのように
   夜がくるまで沈んでる
   昼のお星は目に見えぬ
   見えぬけれどもあるんだよ
   見えぬものでもあるんだよ
   散ってすがれたタンポポの
   川原のすきにだぁまって
   春のくるまで隠れてる
   強いその根は目に見えぬ
   見えぬけれどもあるんだよ
   見えぬものでもあるんだよ





   「こころ」
   おかあさまは
   おとなで大きいけれど
   お母様の
   おこころは小さい
   だってお母様はいいました
   小さい私でいっぱいだって
   私は子供で小さいけれど
   小さい心の私は大きい
   だって大きいお母様で
   まだいっぱいにならないで
   いろんなことを思うから





  「大漁」
   朝焼け小焼けだ大漁だ
   オオバいわしの大漁だ
   浜は祭りのようだけど
   海の中では何万の
   いわしの弔いするだろう





  「みんなをすきに」
   私は好きになりたいな
   何でもかんでもみいんな
   ねぎもトマトもお魚も
   のこらず好きになりたいな
   うちのおかずはみいんな
   かあさまがお作りになったもの
   私は好きになりたいな
   だれでもかれでもみいんな
   お医者さんでもカラスでも
   残らず好きになりたいな
   世界のものはみいんな
   神様がお作りになったもの





  「花のたましい」
   散ったお花のたましいは、
   み仏さまの花ぞのに、
   ひとつ残らず生まれるの。
   だって、お花はやさしくて、
   おてんとさまが呼ぶときに、
   ぱっとひらいて、ほほえんで、
   蝶々にあまい蜜をやり、
   人にゃ匂いをみなくれて、
   風がおいでとよぶときに、
   やはりすなおについてゆき、
   なきがらさえも、ままごとの
   御飯になってくれるから。





  「鯨法会」
   鯨法会は春のくれ、
   海にとびうおとれるころ。
   はまのお寺が鳴るかねが、
   ゆれて水面(みのも)をわたるとき、
   村のりょうしがはおり着て、
   はまのお寺へいそぐとき、
   おきでくじらの子がひとり、
   その鳴るかねをききながら、
   死んだ父さま、母さまを、
   こいし、こいしとないてます。
   海のおもてを、かねの音は、
   海のどこまで、ひびくやら。





  「露」
   だれのもいわずにおきましょう。
   朝のお庭のすみっこで、
   お花がほろりとないたこと。もしも噂がひろまって
   蜂のお耳にはいったら、
   わるいことでもしたように、
   蜜をかえしに行くでしょう。
                  





  「木」
   お花が散って 実が熟れて、
   その実が落ちて 葉が落ちて、
   それから芽が出て 花が咲く。
   そうして何べん まわったら、
   この木は御用がすむかしら。





  「もくせい」 
   もくせいのにおいが
   庭いっぱい。
   おもての風が、
   ご門のとこで、
   はいろか、やめよか、
   そうだんしてた。




  「日の光」
   おてんと様のお使いが
   そろって空をたちました。
   みちで出会ったみなみ風、
   (何しに、どこへ。)とききました。
   ひとりは答えていいました。
   (この「明るさ」を地にまくの、
   みんながお仕事できるよう。)
   ひとりはさもさもうれしそう。
   (わたしはお花をさかせるの、
   世界をたのしくするために。)
   ひとりはやさしく、おとなしく、
   (わたしはきよいたましいの、
   のぼるそり橋かけるのよ。)
   のこったひとりはさみしそう。
   (わたしは「かげ」をつくるため、
   やっぱり一しょにまいります。)





  「お魚」
   海の魚はかはいそう
   お米は人に作られる、
   牛は牧場で飼はれてる、
   鯉もお池で麩を貰ふ。
   けれども海のお魚は
   なんにも世話にならないし
   いたづら一つしないのに
   かうして私に食べられる。
   ほんとに魚はかはいさう。





  「蓮 と 鶏」
   泥のなかから
   蓮が咲く。
   それをするのは
   蓮じゃない。
   卵のなかから
   鶏がでる。
   それをするのは
   鶏じゃない。
   それに私は
   気がついた。
   それも私の
   せいじゃない。





  「水と風と子供」
   天と地を
   くゥるくゥる
   まわるは誰じゃ。
   それは水。
   世界中を
   くゥるくゥる
   まわるは誰じゃ。
   それは風。
   柿の木を
   くゥるくゥる
   まわるは誰じゃ。
   それはその実の欲しい子じゃ。





  「わ ら い」
   それはきれいな薔薇いろで、
   芥子つぶよりかちいさくて、
   こぼれて土に落ちたとき、
   ぱっと花火がはじけるように、
   大きな花がひらくのよ。
   もしも泪がこぼれるように、
   こんな笑いがこぼれたら、
   どんなに、どんなに、きれいでしょう。





  「空 の 鯉」
   お池の鯉よ、なぜ跳ねる。
   あの青空を泳いでる、
   大きな鯉になりたいか。
   大きな鯉は、今日ばかり、
   明日はおろして、しまわれる。
   はかない事をのぞむより、
   跳ねて、あがって、ふりかえれ。
   おまえの池の水底に、
   あれはお空のうろこ雲。
   おまえも雲の上をゆく、
   空の鯉だよ、知らないか





  「草 の 名」
   人の知ってる草の名は、
   私はちっとも知らないの。
   人の知らない草の名を、
   私はいくつも知ってるの。
   それは私がつけたのよ、
   好きな草には好きな名を。
   人の知ってる草の名も、
   どうせ誰かがつけたのよ。
   ほんとの名まえをしってるは、
   空のお日さまばかりなの。
   だから私はよんでるの、
   私ばかりでよんでるの。





  「きりぎりすの山登り(みすずの最後の詩)」
   きりぎつちょん、山登り
   朝からとうから、山登り。
   ヤ、ピントコ、ドッコイ、ピントコ、ナ。
   山は朝日だ、野は朝露だ、
   とても跳ねるぞ、元気だぞ。
   ヤ、ピントコ、ドッコイ、ピントコ、ナ。
   あの山、てっぺん、秋の空、
   つめたく触るぞ、この髭に。
   ヤ、ピントコ、ドッコイ、ピントコ、ナ。
   一跳ね、跳ねれば、昨夜見た、
   お星のもとへも、行かれるぞ。
   ヤ、ピントコ、ドッコイ、ピントコ、ナ。
   お日さま、遠いぞ、さァむいぞ、
   あの山、あの山。まだとほい。
   ヤ、ピントコ、ドッコイ、ピントコ、ナ。
   見たよなこの花、白桔梗、
   昨夜のお宿だ、おうや、おや。
   ヤ、ドッコイ、つかれた、つかれた、ナ。
   山は月夜だ、野は夜露、
   露でものんで、寝ようかな。
   アーア、アーア、あくびだ、ねむたい、ナ。





  (娘のふさえの顔を見ながら)
  「可愛い顔をして寝とるね」(※みすずの最後の言葉)





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