non fiction 2004


著者名 タイトル 出版社
オリヴィエーロ・ディリベルト 悪魔に魅入られた本の城 晶文社
喜国雅彦 本棚探偵の回想 双葉社
穂村弘 もうおうちへかえりましょう 小学館
お厚いのがお好き?スタッフ お厚いのがお好き? フジテレビ出版
森達也 下山事件 新潮社
穂村弘 世界音痴 小学館
米本和広 カルトの子 文春文庫
大崎善生 将棋の子 講談社
大崎善生 聖の青春 講談社
大森望・豊崎由美 文学賞メッタ斬り! PARCO出版
松本清張 日本の黒い霧 文藝春秋
姫野カオルコ ガラスの仮面の告白 角川文庫
福田和也 悪の読書術 講談社現代新書
森本哲郎 愛蔵版 ことばへの旅 新潮社



























愛蔵版 ことばへの旅(2004.1.30)
森本哲郎   新潮社


 古今東西の名文を列挙して、それぞれのことば達に絡めて森本哲学を語る
文庫版の『ことばへの旅』(全6巻)を1冊にまとめたもの。読み応えあり。
 第一巻の単行本が出たのが1973年だというから、もう30年以上前の本だと
いうのに、全然古くない…のは当たり前かな。なにせ取り上げていることば達に
いたっては紀元前だの平安時代だのばっかりだもんね…。

 それにしても、1節読む毎にうーんと唸り、考えさせられる。普通の小説を読む
3倍も4倍も時間をかけて、それでもなんだか速く読み過ぎちゃったかな、流して
しまったかな、と思う。それこそ座右の書にして、何度も何度も読み返すにふさわ
しい。

 「本を読むのに、何よりもたいせつなことは、ゆっくり読むということである。」
この文にどきっとした人は読む価値あり(笑)。

 いやーそれにしても森本哲郎ってスゴイ人だなあ。ことばに重みがあるのに押
しつけがましくならない。博学なのにモノを知らない人間にもわかりやすい(笑)。
わたしは千夜一夜物語もカフカの『城』もギリシヤ神話もカルメンもオセローも読ん
でいない自分がつくづく情けない。



悪の読書術(2004.2.20)
福田和也   講談社現代新書


 「成熟した大人になるには、読むべき本と読んだら恥ずかしい本がある。白州
正子、村上春樹、林真理子、高村薫ら人気作家の戦略的な読み方。」…と表紙
に書いてある。で、戦略的な読み方を期待したんだけど…。

 もともと本書は女性誌に連載していたものらしく、若い女性を読者に想定した
ですます調のやわらかい文体で戦略的な読書(=悪の読書)について書いて
いる。いわく、ファッションにTPOがあるように読書にもTPOがある。本は面白け
れば、あるいはタメになればいいのだ、というのは甘えであり、ロークラスの本
を面白いと思うことを、恥ずかしいと感じる感性が成熟した大人への第一歩であ
る…。

 主旨はわかる。賛同できる部分もかなりたくさんある。
 でも、実は福田和也は初めて読むわたしは、もっとばっさりと鋭い切り口をこ
の本に期待していただけになんだか拍子抜けだった。
 なーんだか全編において歯にものが挟まったような、むにゃむにゃ…という
書き方なんだよねえ。で、結局どうなのよ? 大人の女は斉藤美奈子を小脇
に抱えていればいいわけ? 白州正子ならいいわけ? と、思わずつっこみた
くなるような。

 ただ、芥川賞と直木賞に関する部分は、賞の生まれたきっかけなど恥ずか
しながら全然知らなかったわたしにはおもしろかった。今の両賞は商業的に
過ぎるというような議論がよくなされるけれど、それこそが両賞を生んだ理由
だったのね…。

 とりあえず、やっぱり『作家の値打ち』くらい読んでおくべきなのかしら。



ガラスの仮面の告白(2004.3.1)
姫野カオルコ   角川文庫


 これってすごいエッセイなんじゃないだろうか。
 とにかく、そこまで語っていいのか!?というような赤裸々な内容。いやー、
これがあの『ツ、イ、ラ、ク』を書いた同じ著者だなんて…。嫌いじゃないけど。

 八つ墓村のような故郷から上京し、団鬼六賞受賞でSM作家として学生デビュ
ー。しかしそんな肩書きとは裏腹にキスもセックスも縁のなかった人生…。読ん
でいて、笑いながら、切なくなる。「ぽた、ぽた、ぽた。」と涙で字を滲ませながら
原稿を書いている様子は鼻の奥がツンとするよ…。

 お笑いに徹したような前半からちょっと壊れ気味の後半へ。でも彼女はそれで
も、トウキョウで前を向いて生きていくのだ。芥川賞&直木賞ダブル受賞はまあ
ダメかもしれないけれど、直木賞はいずれ取ってもらいたいなあ、ホントに。



日本の黒い霧 松本清張全集30(2004.5.16)
松本清張   文藝春秋


 終戦直後、占領下の日本で起きた数々の不可解な事件。ある事件は迷宮入
りし、ある事件は冤罪の匂いが。それらの事件を松本清張が推理する。
「下山国鉄総裁謀殺論」「『もく星』号遭難事件」「二大疑獄事件」「白鳥事件」
「ラストヴォロフ事件」「革命を売る男・伊藤律」「征服者とダイヤモンド」「帝銀事
件の謎」「鹿地亘事件」「推理・松川事件」「追放とレッド・パージ」「謀略朝鮮戦
争」の12篇と、最後に「なぜ『日本の黒い霧』を書いたか」を収録。

 それぞれ、名前を知っている事件あり、まったく知らなかった事件ありだった
けれど、かなり興味深く読んだ。いやー、これってホントに現実の話…?

 ほとんど資料の残っていない中で、松本清張の組み立てる推理はかなり論
理的だし、的を射ているような気がする。あまりにも謀略が多すぎて頭がくらく
らするけれど…。

 以前山崎豊子の『沈まぬ太陽』を読んだ時、主人公が労働組合で活躍してい
た為に「アカ」のレッテルを貼られ、あまりにも過酷な運命を辿るという物語を読
んだけれど、これを読むと当時の日本で「アカ」のレッテルを貼られるとどれだけ
大変か、というのをまざまざと知らされる。そこにアメリカの意向があったとはまっ
たく思わなかったけれど…。

 政治経済に疎いわたしだけれど、こうやって自分たちの知らない間に意図的
に情報がゆがめられ、社会の方向性が決められていくというのはかなり怖いこ
とだ。ましてや、冤罪に至ってはいつ自分の身に降りかからないという保証は
ないんだなあ、と実感。
 ちょうどイラクの占領後の方向で世界が混迷している現在、時代は違っても
かなりダブって見えるところも。時代を経て色あせず、しかもタイムリーだったか
も…な一冊。

 未読な方はぜひぜひ手にとってもらいたい。



文学賞メッタ斬り!(2004.5.31)
大森望・豊崎由美   PARCO出版


 わたしは文学賞にはかなり疎い。それこそ芥川賞・直木賞は毎回TVや新聞
でも報道されるので誰が受賞したかすぐにわかるけれど、その他の文学賞に関
しては、耳に入った時には「へえ〜」と思っても特に気をつけているわけでもな
ければ、その賞がどういった位置を占めるものなのかもさっぱりわかっていない。

 そんなわたしのような人間の為にあるような文学賞ガイドがこれ。いやー、い
ろいろと勉強になる上にとにかくもう笑わせてくれる。文学賞を決めるまでの選
考委員たちのすったもんだやその評がこんなに面白いものだったなんて…。
 さらに、巷で話題になっていて気になって手に取った本の中のかなりもものが
何らかの賞を受賞していた作品だったりして、「そうか、あれってこの賞の受賞
作だったのか…」と遅まきながら気づいた作品もたくさん。みなさんチェックして
いる人はちゃんとチェックしているのね…。

 それにしても、これを読むと読みたい本がざくざく出てきて困る…。とりあえず
気にはなっていたものの殆ど読んでいないファンタジーノベル大賞歴代受賞作
や、今まであまり気にしていなかった谷崎賞受賞作にはこれから少しちゃんと
注目することにしよう。



聖の青春(2004.7.1)
大崎善生   講談社


 3歳の時に腎ネフローゼを発病し、以後つねに死と隣り合わせの人生を歩ん
できた村山聖(さとし)。彼がその命のすべてを賭けたのが将棋であった。天賦
の才能と惜しみない努力のすべてを将棋に注ぎ込み、名人になることを熱望
した聖は、A級棋士としてその夢を掴む目前に29歳でその若い人生の幕を閉
じる。幼少時代から彼の最期までを、将棋雑誌のライターであった著者が丹念
に追った一冊。

 とにかく、聖の人となりがすさまじい。この個性だけでこの本は成功している。
風呂にも入らず、顔も歯も磨かず、髪も爪も伸ばし放題の聖。自分の感情を
爆発させるかのようにストレートにぶつけ、時には反感を買いながらも周囲の
人を感動すらさせてしまうようなその素直さ、頑固さに、ここまで強烈な個性を
持つ人間がいるのか、とまず驚かされた。
 そして、命を削るかのように将棋に打ち込んでいくその姿。その真摯さは病
ゆえなのか、それとも生まれつきのものなのか、彼の前ではそんなことは問
題にもならない。

 まさに、「ノンフィクションの力」を見せつけられた思い。

 ただ、文章はどうも…。この本を読んだだけでは、大崎善生がどうなのか、
というのは全然わからないな…というのが正直なところ。



将棋の子(2004.7.2)
大崎善生   講談社


 プロの棋士を目指す人間が必ず通らねばならない将励会。そこは厳然たる
年齢制限と厳しい競争の存在する社会だ。振るい落とされた者たちは、ほとん
ど外の社会を知らない赤子同然で世間に放り出されることになる。そんな厳し
い世界からはじき出されたものたちが辿るそれぞれのその後の人生を、「将棋
世界」編集長だった著者が優しい視線で追う。

 本の中心的人物は、著者と同じ札幌出身で17歳で将励会の門を叩き、25
歳で将励会を去った成田英二。しかし、読んでいてこちらの頭が痛くなるほど
彼は安易で、あまりにも楽観的で、努力をしない。母親の愛情を一身に受けて
すっかりマザコンだし。ああ、なんてダメダメなんだ、成田。

 案の上と言うべきか、将励会を去った後の彼の人生は転落の一途を辿る。
ホントに実際にあったのか?と思うほど絵に描いたような転落の仕方。読み
始めた時は、「きっと厳しい世界で一心に頂上だけを目指していた若者が、
挫折し、悩み、もがき苦しんで立ち直るような話なんだな…」と思っていたのに、
成田にはそんな悲壮感すらない。

 合間合間に挟まれる、その他の将励会退会者達のその後の人生はそれな
りに感情移入できるし、驚嘆に値するのだけれど、とにかくメインの成田だけは
どうにもこうにも煮ても焼いても…。

 ところが、終盤そんな気持が一気に吹き飛んでしまった。
 成田がいつまでも、肌身離さず大切に持ち歩いていた2つのもの。そして、
「今も将棋が自分に自信を与えてくれている。自分の支えとなっている」という
成田の言葉。

 確かに成田の人生は負け組に入るかもしれないし、彼の生き方はお世辞に
もほめられたものではない。
 けれど、彼が確かに将棋から得たもの、今も持ち続けているものがそこに
ある。それは、誰もが手に入れられるものではけしてない。選ばれた者だけが
持つことが出来るものなのだ。

 相変わらず、ちょっと文章には閉口することも。
 でも、かなり大崎好感度アップ、な一冊。



カルトの子 心を盗まれた家族(2004.7.4)
米本和広   文春文庫


 「平凡な家庭にカルト宗教が入り込んだ時、子どもはどんな影響を受けるの
だろうか。親からの愛情や関心を奪われ、集団の中で精神的、身体的虐待を
受けて心に深い傷を負った子どもたち。本書は、カルトの子が初めて自分の言
葉で語った壮絶な記録であり、宗教に関わりなく現代の子育ての闇に迫るルポ
ルタージュである。」(裏表紙より)

 本書はオウム真理教、エホバの証人、統一教会、幸福会ヤマギシ会という4
つのカルトに親が入信したために否応なくそれらのカルト集団の二世として育
てられた子ども達のルポだ。彼らの壮絶な経験は二人の子どもの親としてまっ
すぐに心に突き刺さってきた。

 この子ども達は特殊なカルトに入れられた故に悲劇的な人生を歩まなければ
ならなかった。けれどわたしはこれがカルト故だとは思わない。
 自分に子どもがいる人たちは胸に手を当てて考えて欲しい。自分のやってい
ることは本当に虐待ではないのか?と。

 ここで言われている虐待とは「チャイルド・アビューズ」、正しく翻訳すれば虐待
ではなく「不適切な子どもの扱い方」、「子どもの濫用」なのだという。状態的に
は「親子の役割が逆転した状態」で、4つのカルトの子ども達はすべて共通して
親子がこの状態に陥っているそうだ。

 親子の役割が逆転した状態とはどういう状態なのか。それは、親が子どもの
欲求に応えるのではなく、子どもが親の欲求に応えている状態だ。

 あんまり大きな声では言えないが、我が家では子ども達に早期英語教育を
やっている。3歳の上の子どもは音楽教室にも通わせている。小さい子どもに
自発的にこれらをやりたいという欲求があるはずもなく、当然これは親の(特に
わたしの)希望だ。
 わたしの頭の中にはつねに、子ども達が大きくなった時に「わたしは本当は
こうしたかったのに、お母さんは違うことを強制した。どうしてあのときわたしの
言葉を聞いてくれなかったの!」と詰られたら…という不安がある。その時に、
絶対に「お母さんはあなたのためを思ってやったのよ」なんて言いたくない。

 子どもを育てると言うことは、いろいろな価値観を植えつけることだ。それは
時には本当に怖いことだ。
 この本を読んでいて、背筋がぞくぞくするところが何カ所もあった。それはカ
ルトの親たちと、自分たちとの間の差はけして大きくない、と気づかされるから
だ。

 親はいつだって、自分のやり方に自問自答し続けなくてはいけない、と思う。
この世に絶対的な価値などないのだから。

 子供を持つ親には、ぜひ一読してもらいたい。これは、あなたの子どもの話
かもしれないのだから。



世界音痴(2004.7.26)
穂村弘   小学館


 最近一部で話題の歌人・穂村弘による初のエッセイ集。読みながらとにかく
涙が出そうになるくらい笑ってしまった。そして読んだ後切なくなってしまった。
この「世界音痴」な感覚、心当たりのある人はたくさんいるんじゃないかな。
「自然に振る舞う」やり方がどうしてもわからなくて不自然になってしまう、そう
いう体験。わりと多くの人が感じていて、多くの人が「自分だけがこうなんだろ
う」と思ってしまう、だからこの本は受け入れられて、読む人を抱腹絶倒させ、
そして心にぐさっとコトバの矢を突き立てるのだ。それにしても著者の場合はス
ゴイけど…(苦笑)。

 次のエッセイ、『もうおうちへかえりましょう』は要チェックだわ〜!



下山事件(2004.8.20)
森達也   新潮社


 映像作家の森達也は、あるきっかけで「祖父が下山事件に関わったらしい」
という『彼』と知り合い、興味を抱く。調べていくうちにどんどんと簡単に繋がって
いく点と点、ところがいくら調べても見えてこない真実の闇。気がつくと著者は
すっかり「下山病」を発病していた。

 松本清張の『日本の黒い霧』を予習しておいてよかった。本の大筋はそちら
と大差ない。そういう意味ではやっぱり松本清張は流石と言うべきか…。ただ、
もちろん今調べたからこそ、の新たな事実もあるし、何より著者の姿勢が共感
できるもので、かつエンタメ性も高くて一気読み。下山事件の謎自体ももちろん
興味深いけれど、この本は下山事件という戦後最大の謎を追う一ルポライター
の苦悩、みたいなものを読むのが正しい読み方なのかな…。

 どうやらいろいろと出版までにはもめ事があったようで、途中まで一緒に取材
していた記者がこの本に先行して同じテーマの本を出版している。経緯が本の
中で触れられているのだけれど、このゴタゴタがまた読み物として結構おもしろ
かったりして。このゴタゴタに関しては、社会派のメルマガ「PUBLICITY」のバッ
クナンバーにかなり詳しいことが書いてあって興味深い。
 ちなみに先行作は『葬られた夏 −追跡・下山事件』(諸永裕司) 。個人的には
読む予定はなし。それよりも矢田喜美雄『謀殺 下山事件』や(なんと今では当
たり前のようなルミノールを使っての現場検証は矢田氏が下山事件の取材の
ために入手・提供したのがそもそもなのだそうな!!)、斉藤茂男『夢追い人よ』
の方が断然読みたい!

 森氏の主張にそんなに目新しいものはないのだけれど、この本を読むと下山
事件が自分と無関係ではない事件として迫ってくる。実際『日本の黒い霧』を
読んだ時には知識として下山事件を知ることが出来た、という気持だったけれど
この本を読んだ時にはいろいろと考え込んでしまった。確かに下山事件(と一連
の国鉄の事件)を転機にして、日本の進行方向は右へと傾いていった。そして
その先に、今現在私たちが生活しているこの国がある。下山事件がなければ、
今ここにこうしている私たちはなかったかもしれないのだ。それだけの大事件で
あったこの事件を、今の日本に住む私たちが知らないというのは情けない。

 ただ、最後に言わせてもらうなら、参考文献はちゃんと巻末に挙げてほしかっ
たわ!!



お厚いのがお好き?(2004.9.13)
お厚いのがお好き?スタッフ   フジテレビ出版


 フジテレビの深夜番組「お厚いのがお好き?」を本にまとめたモノらしい。マキャ
ベリの『君主論』に始まり、『ツァラトゥストラはかく語りき』、『存在と無』、『饗宴』
などの哲学書、『罪と罰』、『失われた時を求めて』などの文学書などなどをごく
簡単に、おもしろおかしく紹介している。

 番組は未見なんだけれど(テレビほとんど見ないんで…/照)、多分これはテ
レビでみたらおもしろかったんだろうなあ。

 活字で読むと、ウケを狙った部分がちょっと上滑りしている感じ。確かにわかり
やすいと言えばわかりやすいんだけれど、ちょっとコジツケっぽかったり(苦笑)。
章のタイトルをざっと挙げてみると

第1冊  ラーメンで読み解くマキャベリの「君主論」
第2冊  ダイエットで読み解くニーチェの「ツァラトゥストラはかく語りき」
第3冊  コンビニ業界で読み解く孫子の「兵法」
第4冊  エンターテインメントで読み解くパスカルの「パンセ」
第5冊  女子アナで読み解くサルトルの「存在と無」
                ・
                ・
                ・
 切り口はおもしろいっす(笑)。
 蘊蓄はいろいろ興味深いものがあったし。「トリビアの泉」っぽくて。

 でも、ホントに本好きの人間にはちょっと物足りないんじゃないかな…。



もうおうちへかえりましょう(2004.10.19)
穂村弘   小学館


 ほむほむのエッセイ第二弾。
 うーん、ちょっとパワーダウン? 少なくとも、抱腹絶倒のエッセイだと思って
読むと少し肩すかし。序盤はわりと前作『世界音痴』に近いんだけれど、だんだ
ん、「世界音痴」なほむほむじゃなくて、「社会を鋭い視点で見つめる」一歌人、
な雰囲気に…。若い歌人の歌を解説…みたいなことまでやってるし。どうしたん
だ、ほむほむ。

 でももちろん、つまらないエッセイなんかではない。
 前作同様、チクッと心を刺すような文章も健在。
 そろそろ、エッセイじゃなくってちゃんと歌集を読んでみなくっちゃ。



本棚探偵の回想(2004.11.4)
喜国雅彦   小学館


 漫画家喜国雅彦の古本に関するエッセイ集。『本棚探偵の冒険』に続く第2弾
に当たるんだけれど、これだけ読んでも全然大丈夫。

 箱入りで非常に凝った作り、中身は抱腹絶倒。笑いの中にも、ミステリと古本
に対する限りない愛を感じる。しかし古書蒐集家ってのもホントにすごい人がた
くさんいるのね…。

 古書街に並んでいる古書店に端から1軒1軒入っていって必ず1冊欲しい本
を見つけて買う、とか、自分の好きなテーマでアンソロジーを編む、とか、予算
を決めてなるべく多くの新刊書店でなるべく多くの出版社の本を買う、とか、突
然思い立ったルールで始めるゲームがかなり面白かった。ミステリ本のトレカ
を自作する、とか自分でオリジナルカバーの全集を作る、なんてのも。ネタの
ためには何でもするその姿勢がスバラシイ(笑)。

 昔初めて挫折した本に改めて挑戦するために、1日読書の日を作って読書
のためにあちこち出かける、というネタが個人的には好きだったなあ。わたし
もこういう一日を送ってみたい…。

 そして、読みたい本もどかどかと出てきてしまった。まだまだ読んでない本が
世の中にはホントにたくさんあるのね。(>_<)
 読んでいる最中、何度もつい声を出して笑ってしまい、そばにいた相方には
かなーり怪しい目で見られてしまった。人前で読むのはやめておいた方がい
いかも(笑)。



悪魔に魅入られた本の城(2004.12.6)
オリヴィエーロ・ディリベルト   晶文社


 19世紀ドイツ。歴史家でありノーベル文学賞作家でもあるモムゼンの膨大な
蔵書が彼の不注意による失火で失われた。その後蔵書は多くの協力者の力も
あり再蒐集が行われるが、23年後、ふたたびの火災に遭い、失意のうちにモ
ムゼン本人も死亡する。
 しかし近年になって、著者であるディリベルトはなぜかイタリアで偶然彼の蔵
書の1冊を入手した。そして次々とモムゼンの蔵書が思わぬところで発見され
る。はたして貴重な蔵書の数々はモムゼンの死後、どんな数奇な運命を辿った
というのか…。

 149ページのハードカバー、にも関わらずそのうち本文と言えるのはわずか
70ページ足らず。半分もないって一体…。残りは膨大な注訳、そして解説がわ
りのエッセイと、あとがき代わりの長文。実際には読むには1時間もあれば充分。
 内容的にはかなり興味深いし、ボルヘスの引用で締められるラストも味わい
があるんだけれど、それでもやっぱりこの作りはどうか。
ある意味凝っていると言えなくもないのだけれど…。

 もともと本書は小冊子として作られたらしい。小冊子ではあるけれど内容の濃
い文章を日本で紹介したい、となるとこういう形式を取らざるをえなかったのか。
タイトルなんてめちゃめちゃ魅惑的だしね〜。

 面白かったけど、なんとなく騙されたような(苦笑)。