▼ 第1回 イトウ 豊富温泉
第2回 ヤモメ(山女魚)の話

第1回 イトウ
豊富温泉

遡上するペア
オス同志の喧嘩
赤い魚
産卵風景
佐呂間別川上流
イトウの孵化

●イトウの現状

知来要の渓流魚っちんぐ # #
知来要 #
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■遡上するペア

■遡上するペア
■オス同志の喧嘩

■オス同志の喧嘩
■赤い魚

■赤い魚
■産卵風景

■産卵風景
■佐呂間別川上流

■佐呂間別川上流
■イトウの孵化

■イトウの孵化
第1回 イトウ

豊富温泉(FLY FISHER7月号掲載分)

■堰堤の中央部分がV字型  ここは道北では有名な豊富温泉だ。石油を採掘しているときに湧き出したこの温泉は皮膚病に効果があり北海道はもとより本州からの湯治客も多い。しかし今は、冬のなごりがただようゴールデンウィーク前ということもあってかゴーストタウンのようにさびれたままだ。メインストリート(100メートルぐらい)を冷たい風が枯れ草を巻きながら「ビュー」と通り抜けていくと、西部劇のガンマンでもあらわれそうな殺風景な街並だ。私が選んだ宿は、その中でも一番しょっぱい宿だった。安そうだから、ただそれだけの理由だった。宿の経営者夫婦も商売ッ気などまるでないし、むしろ無愛想だ。ここ1週間、私以外の宿泊者はいない。

■イトウの酒  私は、この宿を基地にサロベツや猿払のイトウの写真を撮影するべく滞在していたが、先日みぞれまじりの日に雪しろの水の中に潜って重いギックリ腰になってしまった。日時的にはイトウはそろそろ産卵のピークを迎えようとしているのに、焦る気持ちとは裏腹にトイレの行き来でさえ匍匐前進のありさまだった。 ガス暖房がきいて くると畳の間から 無数にはい出して くるこの宿のダン ゴ虫のように、私 の胸の奥で後悔の 虫もざわ めき始めていた。

 ギックリ腰から3日めの晩、宿の御主人が40キロ先の稚内から鍼の先生をつれて帰って来た。私のあまりにひどい状況を見かねていたらしい。治療の後も40キロ先まで送っていって戻って来た。(40キロ×4〈2往復〉=160キロ)その晩、私は鍼のおかげで壁につかまりながらなら、なんとか歩けるようになっていた。お礼を言いたくて居間に顔をだした。御主人に礼を述べると「な〜ンも」と笑顔で一言。まるで牧場の牛が鳴いてるようなのどかな返事だった。そして、それは初めて目にする別世界の生き物のようにも見えた。少なくても東京の知人やマスコミ関係者に、こんな長閑な感じの人は居ない。私はすっかりおやじさんのペースにはまってしまった。おやじさんはサハリンからの引揚者であること、サハリンには2メートルもある化け物イトウがいること、そのイトウを銃で撃って捕まえた話等、面白い話を笑顔を絶やさずに聞かせてくれた。海焼けした顔の赤いホッペがてかてかにあたたかくはずんでいた。

■イトウの酒 「どうせだめなんだら酒でも飲んでぐっすり休めよ、“イトウ”さん」イトウの話ばかりしていたら、名前までイトウさんにされてしまった。遅ればせながら、私は長年勤めた新聞社を辞めてイトウの写真を撮りに来ている事を話した。それが1円にもならない事を知ると、今度はおやじさんが、別世界の生き物でも見たような驚きの視線を私に返して来た。

 そして「イトウと同じ天然記念物だべ」と、つぶやき豪快に笑った。


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