上田城下町歴史地名大鑑

発行 長野県地名研究所 昭和63330

発行人 滝澤芳江

著 者 滝澤主税

B4版 168ページ

価 格 15,000

 昭和60(1985)上田市公民館において長期間にわたって上田城下町をめぐる「地名講座」を開催、滝澤主税が講師を担当した。講座の発案者は、当時公民館長を勤めた成澤秀敏君であった。

 講座に用いた文献資料は、藤澤直枝の「上田市史」、松野喜太郎の「松平家塁代の話」、滝澤助右衛門の「問屋日記」、上野尚志の「小県郡年表」、宮下弁覚の「一日一首稿日記」、成澤寛経の「上田の早苗・百合ささめこと」などから収集し、250枚ほどの写真は、以前から城下町で撮影を続けたもので、ほとんどの映像は既に消滅している貴重なものである。蛭沢川の改修工事が施工される以前の状態の石垣を撮影するために、早朝から長靴を履いて川のなかをカメラを持って歩いた奇人滝澤を覚えておられる方がおられるかもしれない。講座の教材はこうして編集した。

 蛭沢川の香静軒や神野には洗い場口が残っていた棗河岸(なつめかし)の優雅な風景が、上田から消え去ってから月日は流れた。そして老舗の商家は廃頽し、遊びは途絶えてしまった。雨水は氾濫せずにおとなしくパイプのなかを通って街中を通過し、弁天前の氾濫が途絶えるとともに町の活気も消滅した。

 時の流れで仕方のないことなのだろう。だが、納得しない心のわびしさだけが残るような気がする。町名も元に戻すには時が経過し過ぎた。それに経費が大変だ。地名もいずれは化石になるのである。化石になる前に僅かでも元の姿を記録しておくことが、精一杯の仕事であろう。私の妻も死んだ。250枚の写真のなかに妻の姿を隠しておいた。せめてもの講座編集者の我が儘である。

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