朝日新聞掲載記事(平成1710月17日付より)

 新旧の村名、分類し網羅    在野の研究家が体系化、本に

 江戸、天保期の史料を基礎に、全国の村の合併の歴史をたどる出版物『日本地名分類法』(非売品、日本地名研究所発行)を、 在野の研究家、滝澤主税・長野県地名研究所所長(75)が編んだ。6万余の村が合併していく経緯を20年以上かけて調べ、村名を体系たてて分類した労作だ。東日本、西日本、総索引の全3編で計2042ページ。長野県の旧和田村が、長門町との今月1日の合併を前に日本宝くじ協会の助成を受けて各編約170冊を印刷し、全国の図書館のほか、ドイツのベルリン国立図書館にも送った。

 基礎とした史料は、1835(天保6)年の「天保郷帳」(重要文化財)。郷帳とは郷村高帳の略で、村別の石高が書かれており、全85冊が内閣文庫に現存する。明示に近く、村名も豊富で充実している。

 天保時代の村名は、1875〜77年の第1次町村合併を経て1889年の第2次合併で多くが消滅した。1953年の昭和の大合併と現在の平成の大合併で、和田村のように江戸時代から続いてきた村名が消えたところも多い。

 滝澤さんは、図書分類法の一つで1929年に森清が考案した「日本十進分類法(NDC)」を地名に適用し、「日本地名分類法(NTC)」を新たに考案した。それをもとに天保郷帳に挙げられた84国、6万3794村を国郡別に整理し、8桁のコードを割り当て、ふりがなをつけた。北海道の北見国や渡島国など10カ国と沖縄の琉球国は、資料がそろわず今回は含めなかった。

 1889年を基準に、その前後の町村名や今年4月1日現在の市町村名、吉田東伍著『大日本地名辞書』の該当する巻とページなどが記載されている。旧国名からも、村のふりがなからも引ける。今年3月末の合併特例法による申請、協議、告示済みの市町村はコピーの別冊を付けた。「今後は集落地名のほかに山名や峠名、河川名などの自然地名も加えたい」と滝澤さんは話す。

 滝澤さんがNTCを考案した最大の狙いは、地名保護のきっかけにすることだという。日本の文化財保護法は、地名に文化財としての法的措置をしていない。長野県地名研究所のホームページに近く『日本地名分類法』の全体を載せてアクセスできるようにし、NTCの普及を図る。

 吉田金彦・日本語語源研究所代表は「現在の地名辞典の索引には出てこないような、伝統的な古い町村名を網羅した大変便利なものだ。コードの利便性も含め、地名研究のスタートラインに立つための第一級の資料だ」と評価している。