
食後1〜2時間のRLP-C(レムナント・コレステロール)を測定する意義
冠動脈リスクを評価するためには、中性脂肪だけ測定してればいい訳ではありません。
健常例と2型糖尿病例のRLP-C値の日内変動を追ってみると、健常例では変動が少なく、カットオフ値を超える時間はわずかです。一方糖尿病例では、朝食前のみ低値となり、他の時間は一日中高値を持続しています。
この結果からも糖尿病例では一日の大部分で高RLP(レムナント)血症を認め、鋭敏に冠動脈リスクを評価するためには、空腹時のみの測定では不十分であり、食後のRLP-C値測定し、評価する必要があります。
つまり、1日24時間のうちで、真に空腹状態にあるのは朝食前の2〜3時間のみであり、より高く動脈硬化のリスクを評価するには、食後1〜2時間しての測定が必要になる訳です。
「レムナントとは」
レムナントとは、食事由来のカイロミクロンや肝臓由来のVLDLが代謝されて小粒子化されたものです。正常では速やかに代謝されて肝臓に取り込まれ、血中には残っていないのですが、代謝が滞っている場合には、血中に停滞してしまい増加する訳です。
レムナントとは、代謝が停滞して残っているもの(残り物)という意味です。
レムナントというのは英語の「remain(残る)」が語源と言われています。レムナントは、血中でリポ蛋白リパーゼなどの酵素により代謝された正常なリポ蛋白以外の「残りのリポ蛋白」というイメージを持ってもらえば良いと思います。リポ蛋白は、サイズが小さくなる程中性脂肪(TG)の含量が減って、蛋白含量が増えてきます。
インスリン抵抗性によるリポ蛋白リパーゼ活性の低下は、動脈硬化惹起性リポ蛋白である小粒子LDLやレムナントの血中への出現を促します。
レムナントは健康な人ではすぐに代謝されてしまいます。ですが、メタボリックシンドローム状態ではレムナントが増加します。レムナントはそれ自体が内皮機能を非常に低下させることがわかっています。そのため RLP-C(レムナント・コレステロール)は動脈硬化の発症、進展に深く関与するため、“恐玉コレステロール”とも言われています。
日本動脈硬化学会が2002年に出した脂質異常症の診断基準は、高コレステロール血症では空腹時に総コレステロールが220r/dl以上です。。しかし脂質異常症と言っても、コレステロールが多い高コレステロール血症のほか、中性脂肪が多い高中性脂肪(トリグリセド)血症、両方の脂質が多い混合型脂質異常症もあります。
これらの治療で忘れてならないのは(1)高血圧(2)糖尿病(3)喫煙(4)ストレス―などの危険因子です。これらがありますと、動脈硬化から心筋梗塞、脳梗塞などを引き起こすリスクがグンと跳ね上がります。病気のタイプやコレステロール値といった、危険因子を考慮しながら治療を進めることが大切なわけです。(食事療法や運動療法だけで改善する場合もあるし、薬物療法が必要なケースもあります。コレステロール値を下げて心臓病などの原因を取り除くのが目的なので、低い状態をどれだけ維持できるかにかかっています。治療をやめないで続けることがポイント」です。)
脂質異常症の合併症
動脈硬化症 脂質異常症でもっとも問題となる合併症は、動脈硬化症です。動脈硬化を起こすと種々な重篤な疾患を引き起こします。
T.脳 脳梗塞、脳出血
U.心臓 狭心症、心筋梗塞
V.腎臓 腎硬化症、腎不全
W.血管 大動脈瘤(破裂)、閉塞性動脈硬化症、脱疽
脂肪肝
中性脂肪が高いと、脂肪肝を引き起こします。
脂質異常症の診断基準
LDLコレステロール 140mg/dl以上
中性脂肪 150mg/dl以上
HDLコレステロール 40mg/dl未満
脂質異常症の治療方法
T.食事療法 脂質異常症では食事療法がもっとも大切です。
U.運動療法
V.薬物療法 運動療法と食事療法を行っても治療が不十分な場合には、薬物療法を行います。
(高コレステロール血症の管理目標)
他の動脈硬化危険因子がある場合 --- 総コレステロール200mg/dl未満
虚血性心疾患がある場合 --------- 〃 180mg/dl未満
脂質異常症によい運動
運動負荷テストという運動時にどれぐらいの酸素を身体に取り入れることができるかというテストからATポイントという指標をだします。
このATポイントの脈拍数が120拍とすると120拍以上の運動は無酸素運動という強度の強い糖質代謝の運動になります。 120拍以下の運動は脂質代謝といい、脂肪を分解し酸素と結合してエネルギーにする比較的強度のゆるい運動です。これを有酸素運動と言います。
有酸素運動が効果的な理由
脂質異常症の疾患者の中には無症状の心疾患の人がいたりします。急に強い運動を実施することは危険です。強い運動を行なわなくても持久的な運動である有酸素運動を長期間行なうことで改善がみられます。また、善玉コレステロールであるHDLコレステロールが増えることで心血管系の疾患を予防することができます。
運動の種目と強さの目安
運動の種類 早歩きや、ゆっくりと泳ぐ水泳や水中歩行、ゆっくりとしたサイクリングなどの有酸素運動、ストレッチ体操 。
運動の頻度 週 3回。 (1回あたり60分で200〜300kcalのエネルギー消費を目標に)
運動の強さ 最大運動強度の60%・ATレベル脈拍の強度・年齢予測60%脈拍数のいずれかで行なう。
運動中の自覚的な運動の強さと目安
30〜60分間の間、運動しながら会話ができるような余裕のある強さで「楽からややきつい」と感じる程度 筋力トレーニングは心疾患があったり高血圧などの合併症がある場合、負担が高すぎるので避けましょう。
運動は一回あたりの運動消費エネルギーが少なく、物足りない感じがします。 また、効果がでてくるまで長い期間が必要になります。 効果が現れないといやになってやめてしまうことが多いようです。 しかし、半年、1年と継続することで確実に効果は現れます。 がんばって続けてください。
跳ね上がる動脈硬化の発症リスク
メタボリック症候群の定義と診断基準は国内8学会が合同で作成していますが、単に肥満など複数の症状が重なると動脈硬化を起こしやすくなるというのではなく、内臓脂肪の蓄積が共通原因であることを強調しています。
皮下脂肪と内臓脂肪の分布は人によって大きく異なりますが、いろいろな病気との関連を調べた結果、内臓脂肪の断面積が100平方センチ以上で脂質異常症、高血圧などが二つ以上重なると動脈硬化性疾患の発症リスクが跳ね上がることが分かりました。メタボリック症候群の診断基準では内臓脂肪の蓄積を反映するウエスト周囲径を見ると、女性のウエストの基準は男性より大きいのは、女性は内臓脂肪がつきにくく皮下脂肪がつきやすいためです。
アディポネクチンを増やす
[脂肪組織は内分泌器官] 脂肪組織は単なる備蓄臓器でなく、さまざまなホルモンなどの物質を分泌する臓器です。 脂肪細胞はかつてはエネルギーをためるただの倉庫と考えられていましたが、1990年代後半以降の研究で、多くのホルモンなどを分泌していることが明らかになりました。脂質異常症、高血圧などを起こす物質や、逆にそれらを防ぐ物質が多く見つかったが、特に重要だったのがアディポネクチンという善玉物質の発見です。これは「血液中をパトロールしながら、糖尿病や高血圧、脂質異常症などを起こすのを防ぐ働きをしています。だが、内臓脂肪がたまり脂肪細胞が肥大すると悪玉物質の分泌が増加。逆に善玉物質の分泌は抑えられてバランスが崩れてしまいます。メタボリック症候群の治療は内臓脂肪を減らしてアディポネクチンを増やすことです。
有酸素運動
健康な体づくりといえば、まず思い浮かぶのは「ウオーキング」をはじめとする“有酸素運動”ではないでしょうか。 ウオーキングの重要性はあちこちで指摘されています。国が推進する「21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21)」でも、成人男性の日常生活での歩数の目標値を、9200歩以上と定めているくらいです。しかし、こうした状況に対し、「有酸素運動よりももっと大切な運動があります。それは、「レジスタンス運動」と呼ばれる運動です(参考記事:稲毛病院(千葉県)健康支援科部長、佐藤務。下半身の筋力低下に「レジスタンストレーニング」 佐藤氏は、1997年から同病院で「ビタミン栄養療法外来」を開き、健康の維持・増進の観点から、外来患者に対し、栄養摂取や運動など、多岐にわたる生活指導を行っている。」)
レジスタンス運動とは「ダンベル運動」や「ストレッチ」、「腕立て伏せ」など筋肉に負荷をかける運動のことで、これは、ウオーキングなどの有酸素運動とは異なり、酸素を利用せずに一時的にエネルギーを作り出して体を動かす無酸素運動です。 佐藤氏が勧めるダンベル運動は、500グラムから1キログラム程度の軽めのダンベルを使い、腕の筋肉に力を入れることを意識しながら、ゆっくりと一定のペースで運動するというものです。例えば、ダンベルを握り、手首を内側に締めた姿勢を保ったまま、ダンベルを持った腕を肩の位置から前方へ屈伸させる、左右に開いたり閉じたりする、上方へ屈伸させる――などです。反動を利用せず、ゆっくり数えながら10〜15回やるとよいそうです。ストレッチも、勢いをつけずにゆっくり行いたいものです。 こうした運動は、筋肉を刺激し、筋肉を増やして骨を丈夫にします。また脂肪は、筋肉で効率よく燃焼されることが知られています。要するに、筋肉を増やすことで、脂肪を燃焼させる場所が確保できることになります。また筋肉は、安静にしていても消費するエネルギーが大きいため、筋肉量に比例して基礎代謝量もアップします。それに有酸素運動時の消費エネルギー量も筋肉量に比例しています。また筋肉は関節をまたいでいるので、関節の負担が減り、変形や炎症の危険性が減ることもプラス面と言えますし、骨の維持や増加にも役立ちます。
筋肉を増やすためには、十分な睡眠も必要です。なぜなら、寝ている間は、体内の代謝は分解よりも合成が盛んになるため、筋肉や骨などのタンパク質の合成も活発になるからです。当然、筋肉や骨の材料であるタンパク質やビタミン、ミネラルなどの栄養素を毎日まんべんなく補給しておくことも欠かせません。もちろん、レジスタンス運動が重要といっても、有酸素運動が不要なわけではありません。しかし、最初に、運動に適した筋肉を付ける体づくりをしておかないと、激しい有酸素運動によって関節などを痛めてしまう可能性もあります。基本となる持久力のある体づくりをした上で、エネルギー代謝を上げる有酸素運動を始めましょう。こちらも、あまり無理をせず、苦しくないレベルで続けていくことがポイントです。
近年、脂質異常症の病態の理解は、血漿レベルだけでなく血管生物学のレベルでとらえられています。さらに脂質異常症による心血管イベント発症の抑制機構や、プラークの安定/不安定性に関わる種々の因子についての理解も深まっています。破裂しやすいプラークの特徴として、1)脂質コア成分の割合が高く、2)マクロファージに富み、3)血管平滑筋細胞に乏しく、4)被膜の繊維性成分が少ない点が挙げられています。そのような特徴を有するプラークは、冠動脈狭窄の程度がたとえ軽度でも破裂しやすく、引き続き起こる血栓形成を基盤としてイベント発症が生じるものと考えられます。さらに、マクロファージに富んだ領域では組織因子やMMP・1、2、9など種々のプロテアーゼが発現し、プラーク破綻に密接に関与している可能性が示されています。MMP−2の発現が強い領域ではMT1(membrane type 1)−MMPの発現が増強していること、酸化LDL濃度の増加とともにMMP−9の発現が増強することが確認されています。これらの結果は、血漿LDL増加プラークの破綻ひいては心血管イベント発症に対して、さらにどのような生物学的作用が関与しているかを説明したものです。一方、プラーク破綻とともにイベント発症に重要な役割を果たしているものに組織因子があります。組織因子はマクロファージに富んだ領域において強く発現することが示されています。最近、脂質低下療法を行うことにより組織因子の発現が低下することも示されました。以上より、LDL低下を中心としたコレステロール低下療法はプラーク破綻とその後の血栓形成という一連の過程に対して重要な意義を有しており、イベント発症に対し抑制的に作用するものであることを示唆しています。次に、血漿HDLの質的変化や機能に関し、コレステロール低下療法あるいはトリグリセリド低下がどのような作用を示すかについて報告されているのを見ると、。スタチンは一般的にHDLのCE(choresteryl ester)転送を低下させる作用を有しています。この作用がとくに、CETP遺伝子多型B1B1を有する例で動脈硬化進展抑制に対し有益であることをREGRESS(regression/growth evaluation statin study)のサブ解析結果が示しています。一方、CETPに依存しないCE転送低下が血漿トリグリセリド低下とくにTG−richであるVLDL1減少と強い相関を有していること、従って血漿トリグリセリド低下作用を有するスタチンは動脈硬化抑制に対しこれまでのスタチンに比べて高い有効性を持つ薬剤である可能性が指摘されています。Small LDL particle低下作用も、これまでのスタチンにはみられない作用として注目に値します。
日本人の代謝病態はこの50年間で著しい返還を遂げました。脂質異常症や肥満が増加し、高血圧や糖尿病は遺伝子的要因に加えて環境的因子の関与が強くなりました。動脈硬化病巣の内容や質的な面にも変化が認められます。プラークを形成する成分として、50年前は繊維主体であったものが最近は脂質の占める割合が増加していることが大きな特徴であり、そのことが剖検で確認されています。その背景に、これまで理解されなったような種々のリポ蛋白代謝異常が存在していることも次々に明らかにされました。今後は、LDL低下を中心とした従来の治療や脂質異常症の病態の理解の仕方が踏襲されて行く一方で、蓄積したコレステロールをいかにして取り去り、コレステロール逆転系を活性化させるかという側面から治療のあり方を捉え、種々の脂質異常症治療薬の生物学的作用について考察する必要があると考えられています。
| 脂質異常症の診断基準(血清脂質値:空腹時採血) | |||||||||||
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| 一次予防 まず生活習慣の改善を行った後、薬物治療の適応を考慮する。 | ランクT (低リスク群) | LDLーC以外の主要危険因子 0 | LDLーCを160未満に抑える。 |
| ランクU (中リスク群) | LDLーC以外の主要危険因子 1〜2 | LDLーCを120未満に抑える。 | |
| ランクV (高リスク群) | LDLーC以外の主要危険因子 3以上 | LDLーCを140未満に抑える。 | |
| 二次予防 生活習慣の改善とともに薬物治療を考慮する。 | LDLーC以外の主要危険因子だけでなく 冠動脈疾患の既住あり。 | LDLーCを100未満に抑える。 | |
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