理論化学
Theoretical Chemstry
▼無機化学
Inorganic Chemistry
有機化学
Organic Chemistry
その他
Others
 要 約      
色早見表  
 各 論      
アルカリ金属 アルカリ土類金属 ハロゲン アルミニウム
ケイ素  
 気 体      
反応式 性質 乾燥剤  
 ▼沈 殿      
塩化物イオン 水酸化物イオン 硫化物イオン 硫酸イオン
炭酸イオン クロム酸イオン ▼金属イオンの系統分析  
 工業反応      
アンモニアソーダ法 ハーバー・ボッシュ法 オストワルト法 接触法
 金属イオンの系統分析 

 

 

  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18
1 H             He
2 Li Be B C N O F Ne
3 Na Mg 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 Al Si P S Cl Ar
4 K Ca Sc Ti V Cr Mn Fe Co Ni Cu Zn Ga Ge As Se Br Kr
5 Rb Sr Y Zr Nb Mo Tc Ru Rh Pd Ag Cd In Sn Sb Te I Xe
6 Cs Ba Hf Ta W Re Os Ir Pt Au Hg Tl Pb Bi Po At Rn
7 Fr Ra

 金属イオンの系統分析とは、ある溶液中に入っている未知のさまざまな金属イオンを、沈殿などの特徴的な性質を利用することで分離し確認する操作のことです。ですから、この分野をマスターするには沈殿に関する知識が不可欠です。ですから【沈殿とイオンの性質】のウィンドウを開きながら進めていくと効率的です。

 系統分析は、操作の仕方や順番が決まっています。ですから、まずは全体の流れを図で確認して、それを頭の中に入れてから細部について説明していきましょう。


 第1属Cl-で沈殿する金属イオン

 希塩酸HClを加えることで、塩化物イオンCl-が生じます。Cl-で沈殿を生じる金属イオンが第1属のグループに属します。該当するのは、Ag+とPb2+ですね。ですからそれぞれAgCl、PbCl2となって沈殿します。逆にそれ以外の金属イオンはろ液のままで沈殿は生じません。

 ところで、AgClとPbCl2はどちらも白色です。ですから、このままではAg+かPb2+のどちらかなのかわかりません。どうすればよいでしょう?
 1つは、「熱水を加える」です。PbCl2は熱水に非常によく溶けます。それに対し、AgClはほとんど溶けません。
 もう1つは、「過剰のアンモニア水を加える」です。AgClはアンモニアによって錯イオン[Ag(NH3)2]+を形成するために、白色沈殿が溶解して無色の溶液となります。
 他にも、「過剰のNaOHaqを加える」や「硫酸ナトリウムを加える」などによっても判別できます。要は、どちらかに変化が現われるような操作をすればいい、ということです。

 第2属S2-(酸性下)で沈殿する金属イオン

 硫化水素H2Sを加えることで、硫化物イオンS2-が生じます。硫化物イオンの沈殿は、そのときの液性に気をつけるんでしたよね。【イオンと沈殿の性質】で書いた内容をもう一度見てみましょう。

 硫化物イオンの沈殿は、イオン化傾向を利用すると覚えやすいです。

沈殿しない
酸性では沈殿しない
いつでも沈殿
K  Ca Na Mg
Al
Mn
Zn
Fe
Ni
Cd
Sn
Pb
Cu
Hg
Ag
Pt
Au
-
-
-
-
Al(OH)3
MnS
ZnS
FeS
NiS
CdS
SnS
PbS
CuS
HgS
Ag2S
- 
- 

 まず、イオン化傾向で見慣れないMn,Cd,Snが入り込んでますが、より詳しいイオン化傾向ではこのようになっています。
 K〜Mg、Pt,Auはどんな条件であろうと、硫化物は絶対に沈殿しない。また、Alは沈殿は生じるが、硫化物ではなく水酸化物です。
 Mn〜Niまでは酸性条件下では沈殿を生じません。逆に言えば中性・塩基性だったら沈殿するということ。ここらへんを巧みに利用したのが【金属イオンの系統分析】なんですが、それはまた今度詳しくお話します。
 Cd〜Agでは液性に関係なくいつでも沈殿します。
 硫化物の色はときどき聞かれます。硫化物は一般に黒色沈殿が多いので、まずはそれを頭の中に入れて、それから例外を覚えましょう。MnS, ZnS, CdS, SnS の4つが該当しますが、特にZnS(白)とCdS(黄)は必ず覚えましょう。

 第1属の金属イオンを分離するために酸性の塩酸を加えた直後の操作なんです。ということは、当然液性は酸性下ということになります。ですから、もともと沈殿しないK〜Mgと、酸性では硫化物沈殿を生じないAl〜Niはろ液の中にいるだけです。一方、いつでも沈殿を生じるCd〜Agまでは酸性下であろうとなかろうと硫化物沈殿を生じることになる。ただし、第1属のAg+とPb2+はもうろ液には存在しないので、それ以外のCd2+,Sn2+,Cu2+,Hg2+が第2属に属する金属イオンです。ただし、表ではHg2+を入れていません。試験でほとんど聞かれないために入れませんでした。この族ではとにかくCu2+を覚えてください。少なくともセンターレベルまでならCu2+だけでも十分問題が解けます。もう少し高いレベルならCd2+とSn2+の2つを付け加えれば万全です。

 では、Cu2+,Cd2+,Sn2+の判別はどうすればいいでしょう?

 まず、CdSは一発で判断できます。上表に示すとおり、黄色沈殿だからです。CuSとSnSはどちらも黒色沈殿なので判断できません。そこで、「過剰のアンモニア水を加える」です。この操作によって、Cu2+は錯イオン[Cu(NH3)4]2+を形成して沈殿が溶解し、さらに濃青色の鮮やかな溶液になるので明らかにCu2+だと判断できます。一方、Sn2+はこの操作では錯イオンを形成しないため、SnSの黒色沈殿のままです。

 第3属OH-で沈殿する金属イオン

 最初の流れ図を見ればわかるように、第3属の金属を分離する前に、いろいろとやらなくてはいけないことがあります。[1]の「煮沸し、希硝酸を加える」という操作をしないと[2]を行うことができないんです。そして、なぜ[2]の操作をしなくてはいけないのかが、系統分析で非常によく出題(記述問題で)されるところなんです。ですから、その理由を絶対に覚えてください。

 第2属の分離の際に、硫化水素H2Sを加えましたよね。実はこいつが第3属の分離の際に邪魔なんです。理論化学の【酸化・還元】H2Sは代表的な還元剤として学習したはずです。(H2S→S+2H++2e-)つまり相手を還元させやすいんですね。この性質がFe3+にとってうざったい。酸化還元反応が起こってFe3++e-→Fe2+が生じて、Fe3+がFe2+になってしまうからです。Fe2+のままだと、[1]の操作で水酸化物Fe(OH)2となり、これは溶解度が大きく沈殿として分離できないからまずいんです。

 そこで、まず煮沸によってH2Sを追い出し、その後、酸化剤の希硝酸を加えてFe2+をFe3+に戻すわけです。そうする事で水酸化物沈殿をスムーズに分離することができます。Fe(OH)3は溶解度が小さく、沈殿として生じるからです。

 [1]が済んだ後、分離の操作 [2] を行います。アンモニア水を加えるということはNH3+H2O→NH4+OH-によってOH-が生じ、溶液の液性が塩基性になるということです。【沈殿とイオンの性質】の水酸化物沈殿の内容を確認してみましょう。

 まず、基本的に塩基性にすれば、たいていの金属イオンは水酸化物沈殿になります。沈殿しないのはアルカリ金属とアルカリ土類金属です。これらは強塩基となって完全電離し、非常に安定な状態なので沈殿を生じません。
 塩基性にする操作にはいくつかあります。まず強塩基のNaOHaqか弱塩基のNH3aqを加えるかの2通り。また、少し入れるか、たくさん入れるかによっても反応が異なってくるんです。
 少量であれば、NaOHaqであろうとNH3aqであろうと水酸化物沈殿を生じます

 水酸化物沈殿は、アルカリ金属とアルカリ土類金属以外の金属イオンはすべて沈殿を生じるんでしたよね。後で分かることですが、第5属はアルカリ土類金属のグループで第6属はアルカリ金属のグループです。ですからこれらの金属イオンはこの操作よって沈殿することはありません。ただし、第4属の金属イオンは、一緒に沈殿してしまう可能性があります。これでは分離できないように思いますよね。

 実は、第3属の金属イオンの水酸化物は第4属のそれよりも溶解度が小さく、沈殿しやすいんです。つまり、より少ないアンモニア水で、沈殿がすぐに生じるために分離可能ということです。ただ、逆にいうとアンモニア水を加えすぎて [OH-] が大きくなりすぎると第4属のイオンが一緒に水酸化物を生じてしまうことになる。そこで、場合によってはNH4Clを一緒に加え[OH-]を押さえます。これは、[NH4+]を大きくしてNH3+H2O?NH4++OH-の平衡を左に移動させ[OH-]を小さくさせることができるからです。そうすれば第4属が混入する恐れがなくなります。

 最後に、生じた沈殿の判断方法についてですがこれはすぐにできます。Fe(OH)3赤褐色沈殿でAl(OH)3白色沈殿ですから、見てすぐにわかるわけです。第3属は厳密に言うとCr3+も含まれるんですが、これについてもCr(OH)3灰緑色という特徴的な色なので判断できますね。

 第4属S2-(塩基性下)で沈殿する金属イオン

 やることは第2属と同じく、硫化物沈殿による分離です。ただし、この操作の前にアンモニア水を加えているので今度は塩基性下です。第2属のときのように、イオン化傾向で硫化物イオンをチェックしましょう。 

沈殿しない
酸性では沈殿しない
いつでも沈殿
K  Ca Na Mg
Al
Mn
Zn
Fe
Ni
Cd
Sn
Pb
Cu
Hg
Ag
Pt
Au
-
-
-
-
Al(OH)3
MnS
ZnS
FeS
NiS
CdS
SnS
PbS
CuS
HgS
Ag2S
- 
- 

 まず、イオン化傾向で見慣れないMn,Cd,Snが入り込んでますが、より詳しいイオン化傾向ではこのようになっています。
 K〜Mg、Pt,Auはどんな条件であろうと、硫化物は絶対に沈殿しない。また、Alは沈殿は生じるが、硫化物ではなく水酸化物です。
 Mn〜Niまでは酸性条件下では沈殿を生じません。逆に言えば中性・塩基性だったら沈殿するということ。ここらへんを巧みに利用したのが【金属イオンの系統分析】なんですが、それはまた今度詳しくお話します。
 Cd〜Agでは液性に関係なくいつでも沈殿します。
 硫化物の色はときどき聞かれます。硫化物は一般に黒色沈殿が多いので、まずはそれを頭の中に入れて、それから例外を覚えましょう。MnS,ZnS,CdS,SnSの4つが該当しますが、特にZnS(白)とCdS(黄)は必ず覚えましょう。

 塩基性下では、Al〜Agまですべて沈殿することになります。ただしこれまでの分離によってAl,Fe,Cd〜Agはすでにろ液中には存在しません。ですから残りのZn2+, Ni2+, Mn2+ が第4属となります。特に、第4属の代表はZn2+なのでこれだけは必ず覚えておいて下さい。

 第4属中での判断方法についてですが、ZnS、NiS、MnSの判断は非常に容易です。表でわかるように、ZnSは白色沈殿、NiSは黒色沈殿、そしてMnSは淡桃色沈殿だからです。見てすぐに判断できる。ダメ押しで確認したいなら「過剰のアンモニア水を加える」でしょう。ZnSは[Zn(NH3)4]2+となって無色溶液になり、NiSは[Ni(NH3)6]2+紫色溶液になり、MnSは沈殿のままです。

 第5属SO42-で沈殿する金属イオン→アルカリ土類金属イオン

 アルカリ土類金属イオンは、イオン化傾向が大きいことからもわかるようにいままでの操作では沈殿を生じません。ではどのような操作がいいのでしょう?候補としては、「炭酸イオンを加える」か「硫酸イオンを加える」のどちらかです。

 実際には、「炭酸イオンを加える」が普通です。「硫酸イオンを加える」でももちろん沈殿は生じるのですが、問題なのはその後なんです。CaSO4もBaCO4も白色沈殿ですから、このままではどちらなのか判断できません。そこで、もう一度イオンに戻す必要があるんですが、硫酸塩は強酸塩なのでそれが難しいわけです。一方、炭酸塩は弱酸塩ですから、たとえば強酸の希塩酸を加えることですぐにイオンに戻せるわけです。

CaSO4+2HCl→×(反応は起こらない) 

CaCO3+2HCl→CaCl2+CO2+H2O

 受験化学でよく出てくる(弱の塩)+(強)→(弱)+(強の塩)の話です。より詳しい話は、【有機化合物の系統分離】を参考にして下さい。

 さて、イオンに戻したら、どうすればいいでしょう?判断方法を思いつけますか?

 1つは、「クロム酸カリウム水溶液K2CrO4aqを加える」です。Ba2+ならBaCrO4↓となって黄色沈殿を生じます。もう1つは「炎色反応」ですね。白金線に溶液をつけて炎に近づけると炎の色がイオンによって特徴的な色を示すというものです。【アルカリ金属】【アルカリ土類金属】で書いてあったことを確認しましょう。

元素
Ca
Sr
Ba
Ra
黄緑

 炎がオレンジ色になったらCa2+が、黄緑色だったらBa2+が入っていたとわかるわけです。もちろんSr2+とRa2+もあり得るわけですが、試験ではほとんど出題されないのでほとんど無視しています。もちろん万が一出たとしても炎色反応の色を覚えていれば十分対応できますよね。

 第6属どんな陰イオンにも沈殿しない金属イオン→アルカリ金属イオン

 アルカリ金属は、どんな陰イオンであろうと反応せず、沈殿を生じません。それだけイオンでいる方が安定だということですね。イオン化傾向が一番大きいのも納得できます。だからこの系統分析では一番最後に残ってしまうわけです。そして、第6属内での判断方法は、第5属と同様、炎色反応ということになります。

元素
Li
Na
K
Rb
Cs
深赤
青紫

 やはり、Na+、K+、Li+の3つが頻出です。Rb+とCs+はめったに出てきませんから無視しても構いません。

 

 以上のようにして、金属イオンをグループ分けし、さらにそのグループ内で判別していく、という手順を踏むわけです。読んでいて自然とわかるでしょうが、ここはイオンや沈殿に関する知識がないと、どうしようもない。ですからまずはそちらの知識を整理することが系統分析には不可欠です。

 

Copyright© since 2001 /Chembase. All right reserved.