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成功する「まち歩き」

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いま、なぜ、「まち歩き」なのか?
都市観光の新しいかたち

「長崎さるく博」の成功によって、それまで全国でくすぶっていた「まち歩き」に一気に火が付きました。それは都市観光の新しい形として、また、住民参加によるまちづくりの有力な手法として、また、きわめて効率のよい集客手法として。そのひとつ、ひとつのノウハウを公開すると・・・。

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09秋パンフ001.jpgまちこそが観光の対象
日本のまち観光がなかなか根付かなかったのは、「名所旧跡温泉宴会観光バス」という観光パターンを商品化してきた業者や行政に大きな責任がありますが、どうやらいまここから脱出して「まち」が面白いということに観光の重心が移動しているように思えます。このことは海外旅行ではすでに経験済みで、旅行者はパリへ、ローマへ、ニューヨークへ、バンコクへと「まち」の魅力を求めて海外へ向かいます。ルーブル美術館だ、コロッセウムだ、ミュージカルだとスポットを訪ねるのはそのあとのことで、まち観光は何よりまず「まちの面白さ」を体験しようとするのです。ちかごろやっと日本人も、「まち」そのものを観光の対象にし始めました(実は、江戸時代や明治のころまで、日本でも観光の主なる目的は江戸や京や大坂のまちを巡ることだったのですが)。まちを楽しむ最善の方法は、まちを歩くこと。まちを訪ねて独特の文化や独自の生活を知り、まちの住民とふれあうのが何より楽しい。長崎はそのことにいちはやく気づいて「日本ではじめてのまち歩きの博覧会」をやりました。それだけのことです。

ガイドをする 
 どのようにやるのでしょうか。
 簡単です。来訪した人たちにまちのようすを楽しんでもらうために、歩くコースを考えて地図をつくり、ガイドさんが案内する。それだけです。
 しかし、いままでの「まち歩き」が間違っていたのは「名所を連結してそこを訪ねよ」というものが多く、相変わらず名所観光から脱却していないこと。「まち歩き観光」のよさは、そのまちの生活にふれる生活観光にあります。だから生活の舞台を歩かなくちゃならない。それは、市場あり商店街あり、繁華街あり、橋あり、樹木あり、学校あり、公園あり、記念碑ありで、だから面白い。そこに歴史遺産があるとさらに面白くなります。個人の内緒話があると、興味津々です。つまり、なじみのまちを得意顔で案内して歩いていく、そんな感じが「まち歩き」観光です。
 それを組み立てる詳細なノウハウは、まず、私が書いた『まち歩きが観光を変える』と『まち歩きをしかける』(学芸出版社)をお読みください。全国の観光関係者からのご要望にお応えして、「さるく博」なるものの成り立ちをつぶさに書き、さらに「大阪あそ歩」の経験から仕掛ける側の作法を細かく書きました。
82DC82BF95E082AB82AA8ACF8CF582F095CF82A682E9003.jpgまち歩きをしかける.jpg学芸出版社

住民主体・住民参加、そして、まちづくり
 「まち歩き」は、自分のまちを案内し、自分のまちを歩くのだから住民が支えなければ成立しません。地方の歴史の研究者が、よく知っているからといって生活実感のないまちをガイドするのは邪道です。私がニューヨークへ何度も行ったからといって、観光スポットを巡ることはできても、ニューヨーカーのように生活ぶりや住民の気質を語ることはできません。「まち歩き」のガイドはまちの住民がやるべきものなのです。こんなにわかりやすい住民主体はありません。
 歩いていると、いままで気がつかなかったまちの細部が気になります。どうすれば来訪者に喜んでもらえるまちになるかを考えはじめます。どうすれば自慢できるまちになるかに気をめぐらします。こんなすばらしい住民参加のカタチはほかにありますまい。
93FA8FED82CC8FA493X8AX82E082DC82BF95E082AB8ACF8CF582CC91CE8FDB2892B78DE881j.jpg日常の商店街でもまち歩きの対象になる
 「まち歩き」は単に観光客が物見遊山に訪れる面白半分の覗き見ではありません。そこの文化を、市民文化を知ろうとしてやってきて、それを住民が受け止める。そして、自分にとってもすばらしいまちにしようとする。このまちに生まれ、育ち、あるいは帰ってきて、このまちで死んでいく。それにふさわしいまちにしたいと思う。「まち歩き」はそんなことまで問いかけます。
 最近、住民主体のまちづくりについてさかんに議論されていますが、「まち歩き」が直接まちづくりになるとは考えていません。しかし、結果として、まちのありように意識を高めた住民が、まちづくりに積極的な参画を求めるとことは十分に考えらえます。そのようなまちづくりの手法に「まち歩き」を活用できるのも否定しません。

高効率の集客力・経済効果
 「まち歩き」の経済効率の高さについては、あまり語りたくありません。確かに「長崎さるく博」では大きな経済効果を達成しました。しかし、それは長崎に市民、行政、経済界が一体となって市全体で取り組んだ成果にほかならず、観光の一担当者が片手間にやってもそのような経済効果は発生しません。
 ガイドを担う人たちも「経済効果を求めてやっているのではない」とおそらく全員が声を高めるにちがいありません。このようなガイドさんによる「わがまち意識」の高揚など、「まち歩き」にはむしろ精神的な効果が大きいとも言えます。その結果、まちの活力が生まれたり、イメージがよくなるとすれば、それでも十分ではありませんか。
 経済効果を求めて、「カネがないからチエをだせ」とおっしゃる行政の方々には、「まち歩き」は確かに安上がりだけれど、粗末に扱うとなんの効果も生み出しませんと申しあげておきます。

成功の鍵はガイドさん
成功するまち歩き」の成功の鍵は、ガイドさんです。
 「どのようにすればガイドを養成できるのか、よく質問を受けますが、「養成はできません」というのが答えです。
 自分のまちが好きで、そこで生まれ育ったり、働いたり、家庭を持ったりしている人のなかで、「自分のまちのことを語りたい」と思っている人がガイドさんになります。そんな人を見つけるのです。さがすと、必ずおられます。その人にガイドになってもらいます。
 ガイドは、1年に数回のことですから、生活上の負担になることはほとんどありません。収入はわずかですが、生活費の支えにはなりません。その気になれば、誰でも始めることができて、退出も自由です。そんなガイドさんが理想です。
 長年働きづめてきた人生の残りを、自分のまちに実感を持って生きていきたい。社会とゆたかな接触を保ちたいという高齢者はたくさんおられます。このまちが好きだから休日にはガイドできるという若者も多いはず。子育てが終わったからやってみたいと思う女性もいます。その人たちをまとめれば、20名や30名のグループはすぐにできます。
 そのようして登場したガイドさんたちが、楽しく愉快に知的に健康にガイド活動ができるか、これが「まち歩き」を成功させるポイントです。