大阪コミュニティ・ツーリズム
「コミュニティ・ツーリズム」という聞きなれない言葉を使いますが、これは「大阪の観光や文化を何とかしなくちゃならない」と感じていた研究者・市民が数年前から提唱してきたことで、その内容は次のようなものです。
・生活文化やライフスタイルを見せ、今の時間を体験する。
・歩く道すがら暮らしを体感し、交流する。
・ツーリズムを通じて、人々とふれあい、交流する。
・他の地域の人たちを招きいれ、交流を拡大する。
この箇条書きは橋爪教授によるものですが、要するに、物見遊山の観光ではなくて、市民レベルの生活文化の観光(市民観光)をやろうということです。ということになると、私がやってきた「まち観光」や「まち歩き観光」と全く重なり合うわけで、今後の大阪の観光はこれだと考えてた大阪市は、大阪商工会議所、大阪観光コンベンション協会、そして水都大阪2009実行委員会とともに「大阪コミュニティ・ツーリズム推進連絡協議会」を立ち上げることになり、その際、企画とプロデュースを主導するチーフプロデューサーを私が担い、橋爪教授に総合プロデューサーになってもらってスタートしました。私と橋爪さんとはかなり以前からお付き合いがあり、橋爪さんも長崎へ何度か足を運ばれて、私の「長崎さるく博」も今のようなブームになる前にいち早く見てもらっているし、私も大阪でのコミュニティ・ツーリズムの研究について相当前から知っていたので、「やってみるか」とふたりしてt取り組むことになったわけです。
なぜ、いま、大阪にコミュニティツーリズムか
なぜ、いま、コミュニティ・ツーリズムかについては、すでに「長崎さるく博」や「観光による地域活性化」のところでもくどくどと書いているように、名所旧跡・温泉宴会・観光バスの観光のみにこだわっていては、日本の都市観光が発展しないばかりか、それによる都市文化の形成や都市生活の充実が期待できなくなるということがあります。日本の都市をこのまま放置しておいては日本の国力の低下とともに世界の田舎都市になりかねません。いまこそ都市の市民文化を促進させるまちづくりが必要なんです。すなわち、コミュニティ・ツーリズムの定着が急がれるのです。
大阪には別の特殊な事情があります。
最近、大阪のイメージが悪いのです。博報堂の都市イメージ調査によると、「大阪」から何らかのイメージを浮かべる人は85%もあるのに、「行きたい」と言う人は65%しかいません。つまり「知っているけど行きたいとは思わない」と、極端に言えばこういうことになります。
大阪の都市イメージをよく分析してみると、どちらかというとマイナスのイメージが目立ちます。「食い倒れ」「庶民的」「お笑い」はまだいいのですが、「ごちゃごちゃしている」「コテコテ」「行儀が悪い」はいただけません。「怖い」「汚い」となれば大阪人である私は聞きたくもない評価です。
これらのイメージはマスコミによって拡大された誇張と誤解がありますが、大阪市民自らが自虐的に楽しんでいる部分もあります。このことで、本来の大阪という都市が持っている深い文化価値が見失われ、忘却されていくことはとてもおそろしいことです。大阪にとって大きな損失であるばかりか、日本文化の重要な部分を欠落させてしまうことにもなります。
近松門左衛門や井原西鶴、そして織田作之助にいたり開高健、司馬遼太郎につながる文学の脈絡、人形浄瑠璃(文楽・義太夫)、上方歌舞伎、能狂言、落語、講談、浪曲、喜劇といった芸能、話芸、演芸の広い土壌、日本を代表するなにわ料理・懐石料理、うどん、すき焼き、鍋物などの庶民料理の豊かさ、何を食べてもうまくて安い食道楽の食環境、華道・茶道の普及、四天王寺・住吉大社の超一級の寺社、アジアを代表する繁華街のミナミ、そしてなにより、民衆が時代に権力におもねることなく自律して受け継いできた「自分たちのまちの生活と文化」、大阪が日本の他都市よりも優れていて、市民が胸を張って誇るべきものはいくらでもあります。
これらを生かして大阪を分厚い市民文化のまちにしていくために、大阪のコミュニティ・ツーリズムの推進があります。そうすれば、イメージはおのずと変わります。「大阪は、“まち”がほんまにおもしろい」。これがキャッチフレーズです。
大阪市からの記者発表資料
そして、“大阪あそ歩”
しかし、コミュニティ・ツーリズムなんて聞きなれないし、難しそうなので、敬遠する人も多いはず。そこで、これから展開していくさまざまな事業に“大阪あそ歩”という総称をつけて言い換えることにしました。つまり、なにより「大阪」をたのしく遊ぶということなんです。
では、どのような企画をどのように展開していくのか?
これが結構むずかしい。チーフプロデューサーとしてはっきり申し上げますが、大阪の市民文化を盛り上げてイメージを転換するなんて一朝一夕にできるものではありません。ましてや私ひとりが大見得きっても何ひとつできません。できるとすれば、多くの市民が「そうだ」と賛同してくださること。そしてみんなで「よいしょ」と取りかかること。この方法しかありません。ところがさすが大阪です。すでに個人で、仲間と、「大阪を何とかしなくっちゃ」と独自の企画で立ち上がっておられる方々が数十人おられることを知りました。同じ思いをもってくださる方なら数百名以上、千名以上もおいでになるかもしれません。協議会設立から1ヶ月も経たない間に、私は30名を超える方々と「一緒にやろう」と握手を交わすことができました。なんとなくできそうな気がします。
これから進めていく企画は2種類あります。一つは「まち歩き」です。「まち歩き」が市民意識を刺激してまちづくりに大きな効果があることは、もうお分かりですね。もうひとつ、これが“大阪あそ歩”の特色ですが、「まち遊び」があります。「まち遊び」とは、そのものズバリで、食べたり、観たり、聞いたり、学んだり、歌ったり、体を動かしたり・・・・大阪のまちで、いろんな人たちと遊び楽しむことです。簡単なことです。遊んでもらえばいいのですから。
「まち歩き」と「まち遊び」。市民レベルでのこれらの企画を結集して、繋いで、できれば同時期に一斉に仕掛けて、「大阪は“まち”がほんまにおもしろい」と言ってもらええるような、そんな大阪のエネルギーを発信していきたいと考えています。2~3年後には、100~200の企画を集約して「大阪あそ歩」を爆発させたいと、チーフプロデューサーは密かに(公言していますが)たくらんでいるのであります。
大阪コミュニティ・ツーリズム推進連絡協議会という舌を噛みそうな名称も「大阪あそ歩協議会」という名前で呼んでもらえたらいいかな、と思っています。電話へも「ハイ、大阪あそ歩です」と対応したいと思います、なんとなくかわいいでしょ?
大阪コミュニティ・ツーリズム推進連絡協議会(大阪あそ歩協議会)
事務局:大阪市中央区南船場4-4-21 りそな船場ビル5F
電話:06-6282-5930 FAX:06-6282-5915
Email:info-osaka-asobo@octb.jp
名刺がわりと言っちゃなんですが
発足記念の4企画
「大阪あそ歩」と言っても、名前や理屈ばかりが先行したのでは「大阪あそ歩」の精神にもとります。そこで、発足と同時に4企画を立ててみなさまに供することにしました。いずれも「大阪あそ歩」の今後を占う企画です。「なるほど、こんなことをやっていくのか」と知っていただくために、ぜひ、これらの企画をご賞味いただきたいと思います(11月1日現在)
(1)もっと知りたいこのまちシリーズ① 異文化のまち・コリアタウン
日本で最大の在日コリアンのまち・生野コリアタウンを、地元のガイドさ んに案内されて歩く「まち歩き」です。このまちは、大阪ならではこそ形成
され発展しました。文献に残る日本最古の橋が「鶴橋」だということも、ご存知でしたか。
(2)もっと知りたいこのまちシリーズ② 祈りのまち・住吉
遣隋使・遣唐使が必ず立ち寄った古代難波津の守護神を祀り、いまで も民衆の祈りが色濃く残る住吉大社とその周辺の「まち歩き」です。閻魔
大王と地蔵菩薩がひとつになっためずらしい閻魔地蔵がみもの。
(3)大阪物語りシリーズ① 心中天網島~紙治と小春のこの日~
紙屋治兵衛と遊女小春が心中したその日に、その場所である大長寺で 弔いをし、本堂で近松門左衛門の「心中天網島」を、なんと、私が語りま
す。「まち歩き」と「まち遊び」の合体企画。
(4)大阪食い倒れ 料亭・料理屋を楽しむシリーズ① 高麗橋吉兆
日本で開催されたサミットで各国首脳に供せられるなど世界的な名声 を得ている日本料理の最高峰・吉兆での食事会。少々お高いのですが、
この機会にという「まち遊び」企画です(内緒ですが、鶴太良さんから芸妓さんも呼びます)。
4企画の詳細な内容
「大阪あそ歩」で何をやろうとしているのか、なんとなくお分かりでしょうか。今回提供する促成の企画を練っていても、大阪はおもしろい、深いまちだと感じました。このような企画が100も200も集まったら、東京の人だって「大阪へ遊びに行こう」といういうことになるはず。そのようなことを実現する企画を、市民が自らの手で作って実行する。それが「大阪あそ歩」です。お笑いとたこ焼きとタイガースだけに頼らずに、大阪の多様な市民文化で勝負する、そんな事業です。

