HOME アニメ 実写・特撮映画 マンガ その他雑文集



国策映画ってどんなもん?
(初出:雑記帳 2005/09/05-10/17)


日出づる國 東亞の鎮め
陸軍記念日を祝ふ歌
血染めのスケッチ 軍馬物語 国策短編シリーズ
八十億圓
内閣情報部選定
愛國行進曲
英靈讃歌 靖國神社
戦ふ女性 出征兵士を送る歌 艦隊航進譜 興亜大日本 武器なき敵 生きた慰問袋 北の健兵 学徒出陣
おわりに

本編の画像をキャプチャしましたが、著作権上問題あるようでしたらお知らせください。
(国策映画については画像のみは問題なしとの判断に基づいています)


目次へ


[出征兵士を送る歌]
(2005/09/28)


解説書より
8分 モノクローム
1940(昭和15年)
朝日映画社製作
 昭和14年に大日本雄辯会講談社が公募・選定した『出征兵士を送る歌』(作詞 生田大三郎 作曲 林伊佐緒)の歌唱指導映画。背景となる映像は、農村や都会の出征兵士の見送りと入営、出征列車、輸送船、大陸の戦線など。


 昭和14年10月に映画法が施行されていますから、この作品以降は明らかに検閲をうけていることになります。
 日本雄辯会講談社(現講談社)による公募歌謡の音楽映画ですけれど、音も映像もかなり劣化しています。音楽はワンコーラスごとにぶったぎりされ、合間に銃撃音や行進の軍靴の音(行進の音)などが挿入されています。それなりに映像にあわせた演出を試みたと思われます。
 音楽映画、歌を教えるという意図があるため、画面下に歌詞が字幕で入りますけれど、先の「愛国行進曲」のように凝ってはいません。けれど漢字交じり表記なので意味はわかりやすいですね。



 オープニングはスタッフロール、キングレコード専属歌手出演、伴奏 キング管弦楽団なんて字幕が出ます。
出征兵士を送る歌』の楽譜映像をバックに「出征・入営軍人をこの歌で送りませう」の字幕がかぶります。


 前奏が始まりますが、音飛びはするし音程は悪いし・・・ともあれ1番は男声斉唱ですが、歌詞の字幕は表示されません。


 映像は出征兵士を従え、村人が田んぼの中、あぜ道を行進する様子です。大きなノボリが2本、小さなノボリのほか、割烹着姿の女性、いかにも国防婦人会といったいでたちの人たちが国旗を振っていたりと大人たちが列になり進んでいきます。いかにも戦中ドラマに出てくるような映像でした。


 続いてはまたもあぜ道、自転車に乗った軍人が通ると畑仕事の人が手を休め万歳する様子が映ります。どうやら、軍人はそういう(無視できない、転じて皆から敬われる)存在だということを描いているのでしょうか。



 再び1番が歌われますが、今度は歌詞が表示されます。表記で面白いのがラストの「〜日本男児」の後に「」が付いているところです。5番まですべてについていました。なんとなく込められた意思があるのだろうと感じられます。


映像は軍事パレードの様子です。陸軍の行進、戦車隊、沿道の人たちは日本の旗をふっています。つづいて場面変わって雨の中の騎馬隊、コートを着ています。



 2番は女声になります。映像は街を行く兵士たちの行進と旗を振り見送る人、駅のホームでの出征風景、そして汽車が動き車窓の風景になるのですが、広がる田んぼ、田植えの人が稲を手にしたまま、万歳をして汽車を見送る様子がわかります。



 音楽は途切れ、軍艦、飛行機、機関銃の映像から戦闘風景、銃撃音がかぶります。軍艦の砲撃の様子、おそらく海軍の演習風景と思われますが、水しぶきが高く上がる映像などが挿入されています。



 3番は陸軍の行軍の映像にかぶります。戦車や馬も映りますが、海軍の映像ほど勇ましさは感じられません。



 4番は国民、銃後の人たちの映像です。穴を掘り土を天秤棒で運ぶ女性たち、戦勝祈願でしょうか、晴れ着で神社におまいりする人、慰問袋を作る女学生・・・広い講堂に一杯並べられた慰問袋を整理する女性たちが映りますが、彼女たちに頭を下げる軍人の映像もあります。


 音楽は途切れ、軍靴とひづめの音が流れます。映像は行軍、とはいえ大陸をとぼとぼ歩く軍隊のようすです。歌の内容にそぐわない映像が物悲しいですね。




 音楽、5番がフェードインします。
 映像は日の出、海、万里の長城?、そして日の丸と旭日旗がはためく空、雲間の太陽光が旭日旗そのままの映像となります。


 最後は突然スタジオ、録音風景です。オーケストラをバックに歌手たちが並び、指揮者に向かっています。歌手たちは男性は燕尾服、女性はドレスもしくは振袖姿です。まるでクラシックの演奏会みたいな情景です。それだけあらたまって歌っているということなのでしょうか。


 画面は暗転し、『出征兵士を送る歌』の字幕に続き『』ります。

 

 この作品に限らないのですが、陸軍の映像はどこやら物悲しい印象になるみたいです。行軍は埃っぽく、汗臭さ、疲労を感じさせ、いかにも大変そうに見えてしまうのです。それに対し、海軍はカッコいい。軍服も垢抜けていますし、小ぎれいなのです。したがって悲壮感は表出しません。現実的な、戦争の厳しさ、死を連想させるのは陸軍の映像だと痛感しました。


 この作品は陸軍の映像で締めくくっているので、いくら勇ましい音楽、歌を乗せたところで、やはりどこやら戦争の悲惨さを感じさせるものがあります。ただ、これまでの作品に見られた葬列を伺わせるシーンが一切なかった、というところでプロパガンダ要素が強まったと解釈もできるのでしょうか。でもね、『出征兵士を送る歌』に、これから戦場に向う人を送りだす歌に、葬送の視点を入れるわけには行かないってのが人情ではないかとも思われます。
 ただ、国中の人たちが兵士を応援しているよ、ということがよくわかる構成の映像でした。そのあたりだけをクローズアップすると戦争賛美、扇動的と拡大解釈されてしまうのでしょうね。




 『出征兵士を送る歌』の歌詞:内容考察はこちら



 戻る   雑文集TOPへ  次へ


HOMEへ



Copyright(C)2005 Chakorin. All right reserved