ASTRO CALENDAR 2004 REVIEW

●空のカレンダー2004年版


 天文現象はその年によって、当たり外れがあります。ことしは間違いなく大豊作の当たり年。宵の明星が春宵を飾るころには、期待の大彗星が接近。日食も月食も日本で見ることができます。さらに、金星が明けの明星に移り変わるさい、実に130年ぶりに太陽面を通っていくという特別付録つき。至れり尽くせりとはこのことですね。

 山中町婦人児童館が22年間にわたり発行し続けた「空のカレンダー」は2002年版をもって廃刊となりました。以後、子どもセンター発行の情報誌に「ナタリー博士、宇宙を語る」シリーズ連載で、山中発の天文情報を引き継ぎましたが、今でも事務局には「空のカレンダー」に関する問合せがあります。今回、binbokujiとsarakuの協力により、ささやかながら、ウエブ上で掲載をすることになりました。

● 春宵を飾る宵の明星・夏秋には明けの明星

「あれっ!? あの明るい星何だろう」 と誰でも気づく天体こそ、この春の金星です。昨年末から目立ち始め、今年に入ってからはいっそう際立ってきました。花見シーズンには夜桜に花をそえそうです。5月連休には一番明るくなり、以後急速に太陽に近づきます。6月8日太陽の表面を通ったあと、明けの明星として暁の東天にまわります。ことしは、年がら年中金星が旬です。

● 明るくなるか、NEAT(ニート)彗星

 この春アマチュア天文家たちが一番期待しているのは、NEAT, LINEARという大彗星の地球接近です。とりわけ、NEAT彗星は2001年の発見当時から大物ぶりが期待され、最接近前後は肉眼でも見えるだろう、予想されています。右の写真は1997年、今から7年前、春宵を駆け抜けたヘール・ボップ彗星。薄明の中に充分肉眼で認められました。この超横綱級彗星から較べると、やや見劣りがするものの三役クラスは充分張れる実力。今後の動向に注目したいものです。
 詳しいレポートは、右写真をクリックしてください。

● 5月5日・子どもの日の早朝に皆既月食

 2000年以来、日本としては今世紀最初の皆既月食が5月5日の早朝に見られます。ところが、前回と異なり、日本全国皆既になる訳ではありません。まず、月が欠け始めるのは午前3時48分。日本全国同時スタートです。ところが、地域によって月の高さも沈む時刻も異なります。東日本では月がすっぽり地球の影におさまる前に夜が明け、月も沈んでしまいます。富山ー静岡を結ぶ線より北(東)では皆既は見られません。今回の月食は南(西)にいくほど有利です。

 わが山中温泉はというと、月が沈む直前に皆既になりますが、これはあくまで計算上のこと。この町の周囲は山に囲まれています。場所によっては、欠ける前に月が山の稜線に姿を消すことも。その前後に薄明が始まりますから、好条件ではありません。今回の月食が半日ずれていたら、子どもの日の夕方から一部始終を見ることができるのに・・とちょっぴり悔やまれますね。

 皆既(かいき)月食とは、月が地球の影に完全におさまる現象で、必ず満月に起こる。満月の夜は星が月明で見えない。ところが、地球の影に潜入し、月が光を失うにしたがって、月光に埋もれていた暗い星が輝き出す。皆既の状態になると、さらに天の川まで妖しく流れ始め、神秘的なシーンになる。地球の影にすっぽり入ったからといって、通例月の姿が完全に消えるわけではない。赤銅色の円盤がぼんやり見える。その見え方は月食のたびに異なり、ファンにとっては関心のひとつである。写真で撮るとこのように赤っぽく写るが、実際のイメージとは多少異なる。今回、皆既になる前に薄明が訪れてしまうか、地域によっては月が沈んでしまう。

●5月5日早朝、山中は雨でした。午前4時すぎまで空を眺めていましたが、まったく晴れる気配はなし。その後あきらめて撤収。したがって、月食はまったく見ることができませんでした。

● 6月8日・金星の日面経過

 山中小学校が誕生した今から130年前の明治7年(1874年) 、金星が太陽の表面を横切っていくという大変珍しい天文現象が起こりました。当時は世界各国の天文学者が観測条件の良い日本にたくさん訪れました。以来実に130年。この珍しい現象が日本でも見ることができます。今回金星が太陽面にすべりこんでくるのは午後2時11分。逆に太陽面から抜け出していくのは午後8時26分ですが、このときすでに太陽は沈んでいます。この機会を逃すと、次回は8年後。さらに次のチャンスは実に113年後の平成129年12月9日まで待たねばなりません。話のタネに是非一度は目にしておきたいものです。ただし、観察には必ず投影板や太陽観察専用のサングラスなどを用いましょう。

 ● 望遠鏡や双眼鏡などで直接太陽を見てはいけません。失明する危険性があります。

■ ドキュメント 6/8 金星の日面通過

 ● 2004/5/28 金星の日面通過へカウントダウン
 金星の太陽面通過まで、10日たらず。金星はぐんぐん太陽に近づき5月25日には日没後、薄明の残るまま山の稜線に姿を消します。2日前撮った金星のイメージは御覧の通り。三日月のようにやせ細っています。左写真は 銀塩カメラによる作例。f200mm F4 の望遠レンズにFuji PROVIA400を用い、1/8露出。これをデジカメで複写。右の写真は口径65mmの望遠鏡にデジカメで撮った5枚の画像を合成。金星は明るいので、比較的撮りやすい対象です。

 ● 2004/6/8  「もしもし、気象庁お天気相談所ですか?」
「はい、どういったご用件ですか?」
「昨日梅雨入りになった、とニュースで聞きましたが、何とかなりませんか」
「はあ?」
「今から1時間後、金星が130年ぶりで太陽面を通過するという稀有な天文現象がおこるのですが」
「それが何か?」
「ですから、こんな雨じゃ見られません。そこでモノは相談ですが、全国1億天文ファンのために、梅雨入り宣言を撤回するか、梅雨明け宣言をするか。どちらもダメなら少しの間だけ、空を晴れにしてください」
「ああ、そういうことでしたら、いい考えがあります。お住まいの近くに○○病院がございますね。そこの精神科で診てもらって下さい。一刻も早い方がいいです。分りましたね。ガチャ」
「もしもし、もしもし、もーしもーしっ!」
ツーッ ツーッ ツーッ ・・・

 という訳です。ダメでした。最悪です。山中で2時間近く待機しましたが、お話になりません。午後4時には微かな望みをかけ、海岸へ移動しましたが、雨脚はひどくなる一方。いえ、雨でもいいのです。こうなったら、雲間から薄日が差し、おてんと様さえ拝めりゃ、雨でも雪でもアラシでも竜巻でも、OK。「キツネの嫁入り」っていう手もありますから。キツネこのコンちゃん。今から「できちゃったコン」でもおっぱじめてくれええ・・ああ、アタマが壊れていく。ぜーんぜんダメ。すごすご帰宅の途へ。腹立たしいことに、山中では日没後に雲が切れ、一瞬夕焼けが。(3) なんでこんな時になって! 怒、怒、怒、怒、・・ 通りすがりの方。夕焼けに向かって「バカヤロウ」と叫んでいる変なおじさんを目撃したら、それは私です。でも、決して青春していた訳ではありません。●月食 ●ニート彗星 ●リニア彗星 ●今回の金星食 これで連敗記録は4に。

 ● 2004/6/9  あれ、見えないはずの金星が太陽面に・・・
 翌9日はうって変わっての好天。雲間からまぶしい太陽が顔を覗かせます。すごすごと機材を片付ける前に、ちょいと望遠鏡で太陽を覗いて見ることに。「な、なんと! これはどうしたことだ!!」 太陽の表面に黒いシミが! 一体どういうことだ。私は呆然となりました。軌道計算をした天文学者が日付を間違ったのか。いや、気の毒に思った金星が引き返してきたのか・・ そんなはずはありませんね。もう一度接眼レンズを覗くと、黒点もないのっぺらぼうの白い円盤が見えるだけでした。(画像はCGです。太陽だけは6月9日の本物画像。オンライン・アルバムに当日のくわしいレポートがあります。画像をクリックしてください。)

 ● 意外だった太陽面潜入時の光景
 その後、各地から画像が集まってきました。ところで、多くの画像を見て、「あらっ?」と感じたことがあります。水星の日面通過とは異なり、太陽面に金星がすべりこんでいく際、黒いディスクの外周がリング状に輝いたり(1)、影がつながったり(2)興味深い模様が観察される、と言われてきました。これは金星の大気によるものとされ、130年前の観測でも報告されています。しかしながら、今回、そのような映像はありませんでした。実際は(3)のように、金星の輪郭はシャープです。眼視の結果はどうだったのでしょうか? ちょっと意外な結果です。(画像はCG)

● 連敗記録更新 8月4日スターウィーク星空観察会

 8月1日から7日までの一週間は「星に親しむ週間」スターウィークにあたります。私もこの時期にあわせ、地元のプラネタリウム施設と協同で観察会を開きます。昨年は絶好の好天に恵まれたうえ、火星の大接近ブームもあって大賑わい。ことしも多くの参加者があったのですが、日中の好天とはうって変わり、雨がぱらつく有様。ハルウララではありませんが、何と連敗記録は5に。かくてはならじ、と19日に背水の陣を敷いてリターンマッチを行います。

● 怒涛の6連敗 スターウィーク・リターンマッチは砂嵐の中で
 晴間はありました。細い月が西の稜線近くに見えています。夏の大三角形も薄明の空に。後がない8月19日。スターウィークの再戦と環境省主催のスター・ウオッチングを合わせ開催。しかし、風力計が振切れるのでは、という猛烈な風が吹き荒れています。そうです、台風15号が能登沖を北上中。望遠鏡設置の騒ぎじゃありません。なんでこんなときに。しかし、オリンピックで国民の関心がアテネに向いている折、宇宙に目を向けてくれるありがたい参加者がたくさん訪れてくれました。すべて私の日ごろの精進のせいです。みなさん、こんなことで宇宙に対する関心を失わないで。

● 2009年7月22日東京都で皆既日食が見られる

 といっても残念ながら、東京本土の話ではありません。皆既日食が起こるのは小笠原諸島、硫黄島でのこと。このあたりは1988年も皆既食が起こったばかり。なかなかいいとこだなあ。このとき皆既帯は北は屋久島、南は奄美大島の区域を通っていきます。1963年の北海道以来、もっとも期待される皆既日食です。先が長すぎるという人には、前景気に来る10月14日の部分日食をお忘れなく。写真は前回、2003年6月11日早朝に見られた日食。途中まで雨模様だったが、まもなく雲が切れて欠けた太陽が観察できました。

● 日食観察の際、望遠鏡、双眼鏡等で太陽を直視してはいけません。失明の危険性があります。

● 10月14日の日食

 2002年6月11日より2年ぶりの日食です。この部分日食はおおざっぱに言って、北(東)にいくほど大きく欠けます。5月5日の月食とは逆のような感じになります。石川県における欠け具合は約20%あまりですが、北海道では40%。逆に長崎ではわずか0.7%。よく気をつけていないと見逃してしまうでしょう。鹿児島県の一部や沖縄県では、太陽は欠けません。石川県において欠け始めるのは10時44分。11時36分には最大で図のような状況に。食が終わるのが12時25分のことです。

 次回の日食は2007年3月19日。しかし、欠け具合はほんのわずかで10%以内がほとんど。石川県では欠けるというより、月が太陽のヘリをかすめるていどだ。

● 山中と各地での日食の見え方

 上右図は日本各地での日食の見え方を示しています。いずれも一番大きく欠ける時の太陽の様子。時刻は日本全国ほぼ11時30分〜40分の間です。北から南(東から西)へ下がるほど、欠け具合は軽微になり、斜線部分を境界に日食は見られなくなります。(白く抜かれている区域)。右は道明からあやとりはしを眺めたとき(といっても地元以外の人にはよく分からないでしょうが)の日食シミュレーション図です。

● 辛うじて7連敗は免れる 10月14日の日食

 天文現象観察では、このところ破竹の6連敗中。今年に入ってから絶不調でした。日食当日も雨がぱらついています。食の始まる頃、山中上空は雲に覆われていますが、加賀市方面を眺めると晴れ間が。しかし、こんなことで動じ、晴間をめがけて移動すると、空の神様の思うツボです。雲がちゃんと追いかけてくるのです。

 じっと待つこと1時間。わずかに雲が切れ始めます。ピークを少し過ぎたばかりの11時43分。欠けた太陽が姿を見せました。写真はそのときのもの。5cm10倍の双眼鏡にND400のフィルタを装着。私のケータイカメラによる、日食のファーストライトです。画像クリックでアルバムにジャンプします。

● 2004年大晦日から元旦にかけての空

 空のカレンダー旧版では、「大晦日から元旦にかけての空」というコーナーがありました。気ぜわしい一年。このときぐらいは初日の出に目を向ける人も多かろう。せっかくの機会だから、夜空にも目を向けて・・という願いからです。多くの天文トピックスに湧いた2004年を締めくくるにふさわしく、年末年始にかけては天界もおおにぎわいです。

 年末年始の夜空では、珍客のマクホルツ彗星がおうし座の一角で挨拶回りをしている格好です。大晦日から元旦にかけてはアルデバラン率いるアデス星団の南10°あまり、おうしの足もとν(ニュー)星のすぐそばにいます。このころには光度も3等級近くに達しているかもしれなません。肉眼でも充分見ることができる明るさですが、太い月があって興醒めですね。彗星を見るには正月気分のぬけた、5日以降がお勧め。除夜の鐘が鳴り始めるころ、月は空高く上り、初詣客の足元を照らしてくれるでしょう。華やかな冬の星座の中で、クリーム色の土星はカッシーニ探査機の訪問でこの冬の主役格。先週の12月24日、ホイヘンスが切り離されました。タイタンへの到着予定はあくる2005年1月14日です。

 年頭の祝詞が交わされるころ、東の地平線からはおとめ座とともに木星が上ってきます。かたわらにいるスピカにくらべ木星の明るさは20倍近く。それでも純白の一等星、スピカは春の訪れを感じさせる、優しい輝きに見えるでしょう。

 初日の出に先立ち、金星が明けの明星として新春の光を投げます。このときよく注意すると、金星のすぐ上にポツリと星が見えます。これがほどよく太陽から離れている水星です。両者の間隔は1°あまり。月のおよそ2倍程度です。このシーズンに水星と金星がこれほど近づいて見えるのはめったにありません。水星を見たことのない人には、絶好のお年玉となるでしょう。太陽に近い両天体はすぐに薄明の光に姿を消し、まもなく2005年最初の日の出が訪れます。


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