America
P. Simon, 1968
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  "俺たち、付き合わないか?二人で未来を築いて行こうよ。
  ちょっとした蓄えならここにあるんだ!"

  それで俺らは、1箱のタバコとミセス・ワーグナーのパイを買って
  AMERICAを探しに歩き出した。

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  "キャシー"
  ピッツバーグで長距離バスに乗り込みながら俺は言った。
  ”今となっちゃ、ミシガンにいた頃が夢のようだな”
  サギノーからヒッチハイクで4日もかかった。
  俺はAMERICAを見つけに来たんだ。

  バスの中で笑ったり、ゲームをしたりしながら
  彼女は”ギャバジンスーツの人はスパイよ”
  俺は”気をつけろ!奴の蝶ネクタイはカメラだ”
  なんて言ってはしゃいだ。

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  ”レインコートにタバコが一本入ってるだろ、放ってくれよ”
  ”1時間前に、最後の一本吸っちゃったじゃない・・・”

  俺は仕方なく窓の景色を眺めた。
  彼女は彼女で、雑誌を読み出した。
  広大な原野から月が昇っていた。

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  "キャシー・・・、明日が見えないんだ・・・"
  寝息をたてている彼女に、俺は言った。
  "今、俺はカラッポなんだ、虚しいんだ、どうしてなんだろう?"

  ニュージャージー有料道路を走る、車の数をぼんやり数えながら、
  ”あいつらもAMERICAを探しに来てるんだろ・・・”
  ”みんなAMERICAを探しに来てるんだろ・・・”

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この曲も、私がもっとも好きな曲のひとつです。(3本の指に入ります)
恋人たちの旅立ちから、終焉に近づくまでの流れが、一遍の小説のようです。

ヒッチハイクで始まり、長距離バスに乗り込み楽しく過ごした。でも、ゲームにも
飽きて会話も減り出した。やがてタバコも無くなり、お互いがそれぞれ景色を見たり
雑誌を読んだり、となって、二人で築く未来が見えなくなってきてしまった。

「アメリカを探す」って、どういう事なんでしょう?世界の最強国になってしまった
アメリカでは、若者は一体何を目指して生きるんだ?という疑問なのか。
アポロが月に着陸する頃、日本は公害を撒き散らしながらアメリカを
追っていました。アメリカは、ソ連との睨み合いの中で膠着状態だったかも
しれません。

まあ、そんな国家レベルの病みを歌っているのではないでしょうけど、
アメリカの若者は、未来を見失っていたのかもしれません。
彼らは未開の地を訪れ、強大な国家を作り上げたフロンティアスピリットに
溢れる国民ですから。

これが、後にPaulのソロで発表される「American Tune」になると、
「疲れ果てて、ただ安らぎが欲しい」にまでなってしまうのですね。


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